この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
はじめに
ビジネスマナーを身につけたいと考えているあなた。でも、こんな疑問を抱えていませんか?
- 「人と話すのが苦手だけど、ビジネスマナーなんて学べるのかな…」
- 「電話対応や来客対応、想像するだけで緊張する。自分にできる?」
- 「発達障害があるけど、暗黙のルールが多そうで不安…」
- 「今まで働いたことがないから、何から始めればいいか分からない」
- 「就労移行支援って、本当にビジネスマナーを教えてくれるの?」
【結論】ビジネスマナーに対応した就労移行支援事業所なら、あなたのレベルや障害特性に合わせて、基礎から実践レベルまで段階的に学べます。対人不安がある方向けの個別配慮や、在宅訓練に対応している事業所もあります。
この記事では、以下の22の疑問すべてに答えます:
- 本当に学べるのか?未経験でも大丈夫か?
- 自分の障害特性でも受け入れてもらえる?
- どのくらいの期間で習得できる?
- どんな勉強・練習をするのか?
- コミュニケーションが苦手でも大丈夫?
- 一般のマナー講座との違いは?
- 利用料金はいくらか?
- どんな企業に就職できる?
- 就職後の定着率は?
- 資格は取れる?
- どうやって利用を始めるのか?
- 在宅でも学べる?
- よくある失敗は?
- 向いていない人は? …など全22項目
読み終える頃には、「自分にもできそう」「ここから始めればいいんだ」と具体的な行動イメージが湧いているはずです。
ただし、ビジネスマナーを体系的に学べる事業所は現時点では限られています。この記事では、事業所選びのポイントも詳しく解説しますので、最後までお読みください。
就労移行支援でビジネスマナーを学ぶ3つの大きなメリット
1. 経済的負担がほとんどない
- 利用料:前年の世帯収入(本人と配偶者)に応じて決定(多くの方が無料)
- 最大2年間の利用が可能
- 基本的な教材・資料は事業所が用意
- テキストや練習用の名刺などは事業所により対応が異なる
- 交通費補助のある事業所も存在
民間のマナー講座は数万円〜数十万円かかりますが、就労移行支援なら前年の世帯収入に応じて決定し、住民税非課税世帯は無料です。経済的な不安なく、じっくり学べます。
2. 障害特性に配慮した個別サポート
- 学習進度に応じたカリキュラム調整
- 対人不安への段階的なアプローチ
- 定期的な個別面談でモチベーション維持
- メンタルヘルス面でのケアも充実
- ロールプレイの難易度調整
あなたの障害特性やペースに合わせた個別学習が基本です。「できないこと」ではなく「できるようになること」に焦点を当てて、一歩ずつ前進できます。
3. 学習から就職・定着まで一貫サポート
- マナー習得から就職活動まで一貫支援
- 履歴書・面接対策も充実
- 企業実習で実践経験を積める
- 就職後の定着支援も継続(6ヶ月〜1年程度)
- 職場での困りごとにも相談対応
独学や一般のマナー講座との最大の違いは、就職後まで見据えたサポートです。「学んで終わり」ではなく、職場で実際に使えるまでサポートしてもらえます。
未経験・初心者でも本当に大丈夫?
不安になりますよね。でも安心してください。
- 利用者の約8〜9割が「働いた経験がない」または「ビジネスマナーは初めて」からスタート(一般的な傾向として)
- 「おはようございます」の言い方から段階的に学習
- 専門用語も丁寧に解説(「御中」「各位」など)
- 理解度に応じてペース調整可能
- 分からないことは何度でも質問できる環境
就労移行支援を利用する方の多くが未経験からのスタートです。「名刺の受け取り方すら知らない」という方も珍しくありません。基礎の基礎から丁寧に教えてもらえるので、心配いりません。
自分の障害特性でも受け入れてもらえる?学習についていけるのか?
特性別の相性と配慮例
ビジネスマナーの学習は、多くの障害特性に対応可能です。以下は一般的な配慮例です。
- 暗黙のルールを明文化・視覚化
- 「なぜそうするのか」を論理的に説明
- ロールプレイの前に台本を用意
- 感覚過敏への配慮(音量調整、照明など)
- 短時間(15〜30分)で区切った学習
- チェックリスト活用で手順を明確化
- メモ・録音の許可
- 多動への配慮(適度な休憩)
- 体調に応じたペース調整
- 対人練習の段階的導入
- 休憩時間の柔軟な設定
- メンタルヘルスの定期確認
- 車椅子対応、筆記補助など
- より基礎的な内容から、繰り返し学習
- 通院・体調に配慮したスケジュール
ビジネスマナーは、多くの障害特性と相性が良い分野です。「完璧を目指す」のではなく、「あなたができる範囲で、必要なマナーを身につける」ことが目標です。
ビジネスマナーに向いている人・向いていない人
こんな人におすすめ
以下のチェックリストで、3つ以上当てはまれば、ビジネスマナーの学習はあなたに向いている可能性が高いです。
□ 事務職や接客業に興味がある
□ 人と関わる仕事がしたい(苦手でも挑戦したい)
□ 基本的なコミュニケーションは取れる(筆談・メール含む)
□ ルールや手順に従うのは嫌いではない
□ 段階的に学べるなら、対人練習もやってみたい
□ 将来的に長く働きたい(マナーは一生使える)
□ 「知らなくて恥をかく」のを避けたい
上記で3つ以上当てはまれば、ビジネスマナーはあなたに向いている可能性が高いです。特に、「ルールや手順が明確なら安心できる」という方には、非常におすすめです。
注意が必要な人
以下に当てはまる方は、事前に支援員とよく相談してください。
- 対人恐怖症が重度で、人と同じ空間にいることが困難
- コミュニケーション全般を完全に避けたい(在宅完結の仕事を希望)
- ロールプレイング(練習)に強い抵抗がある
- 暗黙のルールや社会的な慣習を学ぶことに非常に強いストレスを感じる
ただし、これらに当てはまっても、段階的なアプローチや個別配慮で学習可能なケースも多いです。「今は無理でも、少しずつなら」という可能性は十分にあります。
ビジネスマナー特有の疑問:コミュニケーションが苦手でも大丈夫?
気になりますよね。結論から言うと、コミュニケーションが苦手でも、段階的なアプローチで学習可能です。
段階的アプローチの例
ステップ1:知識学習(座学)
- ビジネスマナーの基本知識を学ぶ
- 動画やテキストで学習
- 対人練習なし
ステップ2:観察学習
- 支援員や他の利用者の模範を見る
- 「こういう場面でこうする」を視覚的に理解
- まだ自分は実践しない
ステップ3:シミュレーション(少人数)
- 1対1または2〜3人の少人数で練習
- 台本を用意して、事前に確認
- 何度でもやり直しOK
ステップ4:実践練習(グループ)
- グループでのロールプレイング
- 実際の場面を想定した練習
- フィードバックを受けて改善
ステップ5:企業実習
- 実際の職場で実践
- 支援員のフォロー付き
あなたのペースに合わせて、ステップを飛ばしたり、同じステップを繰り返したりできます。「いきなり本番」ではないので、安心してください。
ビジネスマナー特有の疑問:対人不安がある場合の配慮は?
対人不安がある方向けに、多くの事業所では以下のような配慮をしています(事業所により異なります)。
- 個別練習の実施:最初は支援員と1対1で練習
- 台本・マニュアルの提供:「何を言えばいいか」を事前に確認
- 見学からスタート:他の人の練習を見るだけでもOK
- 休憩の自由な取得:無理せず、自分のペースで
- 在宅での知識学習:対面練習の前に、在宅で知識を固める
- 録画での振り返り:自分の練習を後から確認(希望者のみ)
「人前で話すのが怖い」という方も、段階的なアプローチで少しずつ慣れていけます。
ビジネスマナー特有の疑問:ロールプレイングは必須?
多くの事業所では、ロールプレイング(実践練習)を取り入れていますが、強制ではありません。
ロールプレイングの実施方法
- 最初は見学のみでもOK
- 参加したくなったら、少しずつ参加
- 1対1から始めて、徐々に人数を増やす
- 台本を用意して、事前に練習
- 失敗しても何度でもやり直せる環境
ロールプレイングは「失敗して恥をかく場」ではなく、「安全に失敗して学べる場」です。実際の職場で失敗するより、事業所で失敗する方がずっと安心ですよね。
具体的に何をどう学ぶのか?
学習内容の例(段階別)
ビジネスマナーの学習は、基礎から実践まで段階的に進みます。以下は一般的な学習内容の例です。
基礎段階(1〜3ヶ月目)
- 挨拶の基本(おはようございます、お疲れ様です、ありがとうございます)
- 言葉遣い(敬語の基本、丁寧語・尊敬語・謙譲語の違い)
- 身だしなみ(服装、髪型、清潔感)
- 時間管理(遅刻しない、約束を守る)
- 報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の基本
応用段階(4〜8ヶ月目)
- 電話対応(受け方、かけ方、取り次ぎ方)
- メール・ビジネス文書の書き方
- 来客対応(お茶出し、案内、名刺交換)
- 会議のマナー(座る位置、発言のタイミング)
- クレーム対応の基本
- ビジネス文書の作成(議事録、報告書)
実践段階(9〜12ヶ月目)
- 実際の職場を想定したロールプレイング
- 企業実習での実践
- 業種別のマナー(接客業、事務職など)
- トラブル対応(困ったときの対処法)
- 職場での人間関係の築き方
**【注意】上記は順調に進んだ場合の一例です。**個人差が大きく、障害特性や体調の波によってペースは異なります。焦らず、あなたのペースで進めていきましょう。
実際の1週間のスケジュール例
通所型の場合(週5日通所)
(敬語・言葉遣い)
ビジネスマナー基礎
(受け方・かけ方)
(メール・報告書)
ビジネスメールの基本
来客対応基礎
(お茶出し・案内)
実務シミュレーション
実践練習
成果物チェック
- 実質4〜5時間の訓練(無理のないペース)
- 週1回の個別面談で不安や疑問を解消
- ロールプレイは段階的に導入(見学→参加)
- 体調に応じて休憩・早退も可能
在宅型の場合(週3日通所・2日在宅)
(マナー基礎講座)
(敬語の練習問題)
(ロールプレイ)
(名刺交換・挨拶)
(メール・報告書)
文書テンプレート作成
(お茶出し・案内)
実務シミュレーション
実践練習
成果物チェック
- 在宅日は動画学習や課題提出で出席扱い
- 対面練習が必要なロールプレイは通所日に実施
- Slackで随時質問可能
- Zoomでの個別相談も実施(対人不安がある方も安心)
ポートフォリオ(成果物)の作成について
ビジネスマナーの場合、プログラミングやデザインのような「作品」は作りませんが、以下のような「成果物」を準備します。
就職活動で使える成果物
1. マナーチェックシート(自己評価表)
- 目的:自分の習得レベルを可視化
- 内容:各マナー項目について、自己評価とコメント
- 企業へのアピール:「これだけ学んできました」という証明
2. ビジネス文書のサンプル集
- 目的:文書作成能力の証明
- 内容:メール、議事録、報告書のサンプル(3〜5種類)
- 企業へのアピール:実務で使える文書作成スキル
3. ロールプレイング動画(希望者のみ)
- 目的:実践能力の証明
- 内容:電話対応や来客対応の様子を録画
- 企業へのアピール:「実際にできる」という証拠
4. 企業実習報告書
- 目的:実務経験の証明
- 内容:実習先での学び、気づき、改善点
- 企業へのアピール:実践経験と学習意欲
5. 自己PR資料(マナーに関する強み)
- 目的:面接での自己アピール
- 内容:習得したマナー、得意な場面、今後の目標
- 企業へのアピール:具体的な強みと成長意欲
これらの成果物は、就職活動で「何を学んできたか」を企業に伝える重要なツールになります。事業所のサポートを受けながら、一緒に作成していきます。
どのくらいの期間で、何ができるようになる?
ビジネスマナーの習得期間は、個人差が大きいです。以下は一般的な目安です。
- 1〜3ヶ月:基本的な挨拶、言葉遣い、身だしなみが身につく。報告・連絡・相談ができるようになる。
- 4〜6ヶ月:電話対応、メール作成、来客対応の基本ができる。ロールプレイングに参加できるようになる。
- 7〜12ヶ月:実際の職場を想定した対応ができる。企業実習で実践経験を積む。自分の課題を認識し、改善できる。
上記は順調に進んだ場合の一例です。「3ヶ月で完璧に」というわけではありません。焦らず、あなたのペースで進めていきましょう。
習得レベルの目安
初級レベル(3ヶ月程度)
- 基本的な挨拶ができる
- 敬語を意識して使える(完璧ではなくてもOK)
- 時間を守れる
- 報告・連絡・相談の重要性を理解している
中級レベル(6ヶ月程度)
- 電話対応ができる(台本があればスムーズ)
- ビジネスメールが書ける
- 来客対応の基本ができる
- ロールプレイングに参加できる
上級レベル(12ヶ月程度)
- 実際の職場で基本的なマナーを実践できる
- トラブル時の対応方法を知っている
- 自分の課題を認識し、改善に取り組める
- 企業実習で評価を得られる
ビジネスマナーは「完璧を目指す」ものではなく、「実務で使えるレベル」を目指します。少しずつできることを増やしていきましょう。
なぜ就労移行で学ぶのか?一般のマナー講座との違い
一般のマナー講座と就労移行支援、どちらで学ぶべきか迷いますよね。以下の比較を参考にしてください。
最大2年間利用可能
受講期間のみ
障害特性に応じた配慮
メンタルヘルスケアも充実
就職支援は別サービス
何度でも練習できる
失敗しても大丈夫な環境
復習は自己責任
あなたのペースで進められる
延長は基本的に不可
対人不安への段階的アプローチ
一般参加者と同じ扱い
体調に合わせて柔軟に変更
ペース調整は困難
台本・マニュアル提供
強制ではない
全員参加が前提
職場での困りごとにも対応
就労移行支援の最大の強みは、「学習から就職、そして定着まで一貫してサポートしてもらえる」ことです。障害特性に配慮しながら、あなたのペースで学べるのも大きなメリットです。
一般のマナー講座は短期集中で学べますが、就職支援や定着支援はありません。また、障害への配慮も期待できません。
どちらが良いかは、あなたの状況次第です。「じっくり学びたい」「就職までサポートしてほしい」という方には、就労移行支援がおすすめです。
どんな企業に就職できる?職種と業務内容
就職先の業種・職種(傾向)
ビジネスマナーを習得すると、幅広い業種・職種で活躍できます。以下は一般的な就職先の例です。
事務職(最も多い)
- 一般事務、営業事務、総務事務、経理事務など
- 業務内容:データ入力、書類整理、電話対応、来客対応、メール対応など
接客・販売職
- 小売店、飲食店、受付業務など
- 業務内容:接客、商品案内、レジ対応、電話対応など
軽作業・製造職
- 工場、倉庫、清掃業など
- 業務内容:組立、検品、梱包、清掃など(マナーは最低限でOK)
福祉・介護職
- 介護施設、福祉施設など
- 業務内容:利用者対応、記録作成、電話対応など
IT・Web業界の補助職
- ヘルプデスク、カスタマーサポートなど
- 業務内容:問い合わせ対応、マニュアル作成、データ入力など
**【注意】障害者雇用枠での就職の場合、専門職として採用されるケースは現状では稀です。**補助的な業務からスタートし、徐々にステップアップするのが一般的です。
就職後の業務内容例
事務職の場合:
- データ入力・整理(Excel、Wordの基本操作)
- 電話対応・取り次ぎ
- 来客対応(お茶出し、案内)
- メール対応(定型文の送信、問い合わせ対応)
- 書類作成・整理(議事録、報告書など)
- 郵便物の仕分け・発送
接客・販売職の場合:
- お客様対応(挨拶、商品案内)
- レジ対応
- 商品陳列・整理
- 電話対応(予約受付、問い合わせ対応)
- クレーム対応の初期対応(上司へのエスカレーション)
軽作業・製造職の場合:
- 組立・検品・梱包作業
- 清掃業務
- 在庫管理(データ入力)
- 報告・連絡・相談(マナーの基本が活きる)
ビジネスマナーは「どの職種でも必要な基礎スキル」です。特に事務職や接客職では、マナーの習得が就職の大きな武器になります。
給与の目安
障害者雇用枠での就職の場合、給与は以下が一般的です(地域により異なる)。
- 月給:15万〜22万円程度
- 時給:900円〜1,200円程度(パート・アルバイトの場合)
- 都市部:18万〜25万円程度
- 地方:15万〜20万円程度
**【注意】障害者雇用枠の場合、一般雇用よりも給与が低めに設定されているケースが多いです。**ただし、勤続年数や実績に応じて昇給する企業もあります。
資格取得について
ビジネスマナーに関連する資格は、就職活動で有利になることがあります。以下は代表的な資格です(事業所により対応が異なります)。
取得可能な資格の例
ビジネス実務マナー検定(3級・2級)
- 内容:ビジネスマナー全般
- 難易度:3級は比較的取得しやすい
- 就職での評価:事務職で評価されやすい
秘書検定(3級・2級)
- 内容:秘書業務・ビジネスマナー
- 難易度:3級は基礎レベル、2級は実務レベル
- 就職での評価:事務職・秘書職で評価される
ビジネス文書検定(3級・2級)
- 内容:ビジネス文書の作成能力
- 難易度:3級は基礎レベル
- 就職での評価:事務職で評価される
サービス接遇検定(3級・2級)
- 内容:接客・サービス業のマナー
- 難易度:3級は基礎レベル
- 就職での評価:接客業で評価される
**【注意】資格取得を目指す場合、受験料は自己負担が一般的です。**事業所によっては補助制度がある場合もあるので、確認してください。
資格はあくまで「プラスアルファ」です。資格がなくても就職はできますし、実務経験の方が重視される場合もあります。
ビジネスマナーに強い事業所の選び方:点数化チェックリスト
確認すべきチェックポイント(合計20点満点)
見学の際に、以下のポイントを確認して点数をつけてみてください。合計14点以上なら見学推奨、18点以上なら積極的に検討する価値があります。
□ ビジネスマナーの専門カリキュラムがある(3点)
□ ロールプレイング環境が整っている(2点)
□ 個別対応が可能(1対1練習、台本提供など)(2点)
□ 企業実習の機会がある(2点)
□ 就職実績が具体的に公開されている(2点)
□ 支援員の経験・専門性が高い(2点)
□ 在宅訓練に対応している(1点)
□ 少人数制または個別学習が可能(1点)
□ 定着支援が充実している(6ヶ月以上)(2点)
□ 障害特性への配慮が明確(1点)
□ 見学・体験時の説明が丁寧で具体的(1点)
□ 利用者の雰囲気が自分に合っている(1点)
**【重要】事業所によってサービス内容には大きな差があります。**複数の事業所を見学して比較することを強くおすすめします。
特に重要なポイント
1. ロールプレイング環境(3点配点)
実践練習ができる環境が整っているか。電話機、応接セット、名刺などの備品があるか。
2. 個別対応の柔軟性(2点配点)
対人不安がある方向けの配慮があるか。1対1練習や台本提供など。
3. 企業実習の機会(2点配点)
実際の職場で実践経験を積めるか。提携企業があるか。
これらのポイントを重視して、事業所を選んでください。
利用にかかる費用と条件
利用料金
利用料金は、前年度の世帯収入(本人と配偶者の合計収入)により決定します。
- 住民税非課税世帯:0円
- 世帯収入が一定以下の方:月額上限9,300円
- 世帯収入が一定以上の方:月額上限37,200円
世帯収入別シミュレーション例:
- 本人のみ(障害年金受給):0円
- 本人のみ(年収200万円):0円
- 夫婦世帯(世帯年収300万円):月額9,300円
- 夫婦世帯(世帯年収600万円):月額37,200円
多くの方が無料で利用できます。経済的な不安なく、じっくり学べるのが就労移行支援の大きなメリットです。
利用条件
以下のいずれかに該当する方が利用できます。
- 障害者手帳をお持ちの方(身体、精神、療育)
- 医師の診断書・意見書がある方(手帳がなくてもOK)
- 18歳以上65歳未満の方(原則)
- 一般企業への就職を希望される方
**【注意】手帳がなくても、医師の診断書があれば利用できます。**まずは自治体の障害福祉窓口に相談してみましょう。
その他の費用
基本的に無料:
- 教材費・資料代(基本的なテキストや資料)
- ロールプレイング用の備品(電話機、名刺など)
事業所により異なる:
- 交通費(補助がある事業所もあります)
- 昼食代(提供する事業所もあります)
- 資格試験の受験料(自己負担が一般的)
- 高額なテキスト(必要な場合、事業所により対応が異なる)
見学の際に、詳細を確認してください。
利用開始までの流れ
就労移行支援を利用するには、以下のステップで進めます。
Step 1:情報収集(今週中)
やること:
- ビジネスマナーのカリキュラムがある事業所をリストアップ(※多くの事業所では体系的な対応をしていません)
- 自宅から通える範囲の事業所を検索
- 各事業所のウェブサイトを確認
ポイント:
- 通所時間は片道30分〜1時間以内が理想
- 在宅訓練対応の事業所も検討
Step 2:見学・体験(来月中)
やること:
- 気になる事業所に連絡(電話またはメールでOK)
- 見学・体験の予約を取る
- 実際に訪問して雰囲気を確認
ポイント:
- 最低2〜3ヶ所は見学する
- 質問リスト(後述)を持参
- 支援員の対応や利用者の雰囲気をチェック
Step 3:受給者証の取得(見学後1〜2ヶ月)
やること:
- 自治体の障害福祉窓口に相談
- 必要書類を準備(診断書、手帳など)
- 受給者証の申請
ポイント:
- 申請から発行まで1〜2ヶ月かかる
- 事業所のサポートを受けられる場合もある
Step 4:利用開始(受給者証取得後)
やること:
- 事業所と利用契約を結ぶ
- 個別支援計画を作成
- 利用開始
ポイント:
- 最初の1〜2週間は体験期間として短時間から
- 徐々に利用時間・日数を増やす
在宅訓練・他サービス併用について
在宅訓練
在宅訓練に対応している事業所が増えています。ただし、ビジネスマナーの場合、対面でのロールプレイングが重要なため、完全在宅は難しいケースが多いです。
一般的な在宅訓練の形:
- 週3日通所+週2日在宅
- 在宅日は知識学習(動画視聴、課題提出)
- 通所日にロールプレイングや個別面談
在宅訓練での出席扱いの条件(一般的な例):
- 朝の体調チェックフォーム送信(10:00まで)
- 1日3時間以上の学習(動画視聴、課題作成)
- 夕方の進捗報告(Slackまたはメール)
- 週1回のZoom面談参加
対人不安がある方でも、まずは在宅で知識を固めてから、徐々に通所日を増やすことができます。
他のサービスとの併用
就労継続支援B型との併用:
- 原則として併用不可
- ただし、自治体の判断により例外的に認められる場合もある
アルバイトとの併用:
- 可能(ただし、就職を目指す訓練が優先)
- 週20時間未満のアルバイトなら問題ないケースが多い
通院との併用:
- 可能(むしろ推奨)
- 通院日は事業所に報告し、柔軟に調整
詳細は、自治体の障害福祉窓口または事業所に確認してください。
よくある失敗と注意点
失敗例と回避策
ビジネスマナーの学習で、よくある失敗例と回避策をご紹介します。
失敗例1:「完璧を目指しすぎて疲弊する」 → 回避策:「60点でOK」と考える。完璧なビジネスマナーは、経験豊富な社会人でも難しいです。「最低限のマナーができれば十分」と割り切りましょう。
失敗例2:「ロールプレイを避け続けて、実践力がつかない」 → **回避策:**小さな一歩から始める。「見学だけ」「台本を読むだけ」でもOK。少しずつ慣れていきましょう。
失敗例3:「知識ばかり学んで、実践しない」 → 回避策:「知っている」と「できる」は違います。失敗してもいいので、実際に練習してみましょう。
失敗例4:「体調が悪い日も無理して通所する」 → **回避策:**無理は禁物。体調が悪い日は休む、または在宅学習に切り替えましょう。「休むことも訓練の一部」です。
失敗例5:「事業所選びを適当にする」 → **回避策:**事業所によって、カリキュラムやサポート内容に大きな差があります。最低2〜3ヶ所は見学して比較しましょう。
体調に波がある日のタスク設計テンプレート
ビジネスマナーの学習は、体調に応じてタスクを切り替えることが大切です。
体調別の作業内容
- 無理をせず、体調に合わせた作業を選択
- △の日でも「何かできた」という達成感を大切に
- ×の日は罪悪感を持たず、休むことを優先
- 体調の波を記録して、自分のペースを把握する
体調管理のコツ
- 毎朝、体調チェックシートに記入
- 無理そうな日は、早めに支援員に相談
- 「休む」ことも訓練の一部と考える
- 完全休養の日を週1回は確保
体調に波があっても、焦らず、あなたのペースで進めていきましょう。
事業所見学での質問リスト12選
見学の際に、以下の質問をすることで、事業所の実態がよく分かります。
カリキュラム関連:
- ビジネスマナーの専門カリキュラムはありますか?具体的にどんな内容を学べますか?
- ロールプレイングはどのくらいの頻度で実施されますか?見学や段階的参加は可能ですか?
- 電話対応や来客対応の練習環境(備品)は整っていますか?
- 企業実習の機会はありますか?どのような企業と提携していますか?
サポート体制:
- 個別面談の頻度はどのくらいですか?
- 対人不安がある場合、どのような配慮をしていただけますか?
- 在宅訓練は可能ですか?どのような形で実施されますか?
就職実績:
- ビジネスマナーを学んだ利用者の就職率はどのくらいですか?
- 具体的な就職先の業種・職種を教えてください
- 就職後の定着支援はどのくらいの期間、どのような形で行われますか?
その他:
- 利用者の障害特性の内訳を教えてください(発達障害、精神障害など)
- 見学・体験は何回まで可能ですか?体験期間はありますか?
これらの質問に、具体的かつ丁寧に答えてくれる事業所は、信頼できる可能性が高いです。逆に、曖昧な回答や「見学してから」と濁される場合は、要注意です。
よくある質問(FAQ)
Q1:敬語が苦手ですが、大丈夫ですか?
**A:大丈夫です。**敬語は段階的に学べます。最初は「〜です・ます」から始めて、徐々に尊敬語・謙譲語を習得していきます。完璧を目指す必要はありません。
Q2:ビジネスマナーの資格がないと就職できませんか?
**A:資格がなくても就職できます。**資格はあくまで「プラスアルファ」です。実際の練習や企業実習での経験の方が重視されます。
Q3:電話対応が怖いです。克服できますか?
**A:段階的なアプローチで克服可能です。**最初は台本を読む練習から始めて、徐々に慣れていきます。無理に克服する必要はなく、「電話対応が少ない職種」を選ぶのも一つの方法です。
Q4:服装(スーツ)は必須ですか?
**A:事業所により異なります。**多くの事業所では、訓練時は私服でOKです。ただし、企業実習や面接時にはスーツが必要になることが多いです。購入費用が心配な場合、支援員に相談してみましょう。
Q5:就職後もビジネスマナーの相談はできますか?
**A:できます。**就職後の定着支援(6ヶ月〜1年程度)で、職場での困りごとやマナーに関する相談も可能です。
まとめ:ビジネスマナーで新しいキャリアを
この記事のポイント
- ビジネスマナーは、就労移行支援で段階的に学べる
- 未経験・初心者でも大丈夫(約8〜9割が未経験からスタート)
- 対人不安がある方向けの配慮も充実
- 学習から就職、定着まで一貫サポート
- 多くの場合、無料で利用可能
- ただし、専門カリキュラムを持つ事業所は限られているため、事業所選びが最重要
あなたへのメッセージ
ビジネスマナーは、「難しそう」「自分には無理」と感じるかもしれません。でも、基本的なマナーは、誰でも学べば身につきます。
大切なのは、「完璧を目指す」ことではなく、「職場で最低限必要なマナーを身につける」ことです。就労移行支援なら、あなたのペースで、障害特性に配慮しながら学べます。
「できない」ではなく、「まだできていない」。この記事を読んでいるあなたは、すでに一歩を踏み出しています。次は、事業所の見学に行ってみましょう。
今すぐできる行動
Step 1:情報収集(今週中)
- ビジネスマナーのカリキュラムがある事業所をリストアップ(※多くの事業所では体系的な対応をしていません)
- 自宅から通える範囲の事業所を検索
- 各事業所のウェブサイトで、カリキュラム内容を確認
Step 2:見学・体験(来月中)
- 最低2〜3ヶ所の事業所に見学予約
- 質問リスト(前述)を持参
- 支援員の対応や利用者の雰囲気をチェック
Step 3:利用開始(3ヶ月以内)
- 自治体の障害福祉窓口で受給者証を申請
- 事業所と利用契約を結ぶ
- 体験期間から徐々に開始
参考文献・データ出典
本記事では以下の公的機関のデータを参考にしています。
使用したデータソース
一般的な傾向として記載した数値について
- 未経験者の割合、習得期間、給与水準などは、複数の事業所の実績や業界の一般的な傾向をもとに記載しています
- 個別の状況により異なる場合がありますので、詳細は各事業所に確認してください
就労移行支援事業所を探すには
全国の就労移行支援事業所を探すには、以下の公式サイトをご利用ください。
はじめの一歩を踏み出すために
ビジネスマナーは、一生使えるスキルです。一度身につければ、どんな職場でも役立ちます。
「できない」と諦める前に、まずは一歩を踏み出してみませんか?就労移行支援なら、あなたのペースで、安心して学べます。
この記事は2025年の情報に基づいて作成されています。
制度や事業所の詳細は変更される場合がありますので、最新情報は各事業所に直接お問い合わせください。
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

