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就労移行支援の工賃・給料はもらえる?A型との収入比較と生活費の考え方

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

「就労移行支援に通う間、収入がなくて生活できるのか不安…」
「A型なら給料がもらえると聞いたけど、就労移行とどちらがいいの?」
「障害年金だけで足りるのか、お金のイメージが持てない」

そんな不安を抱えているあなたに知ってほしいのが、就労移行支援とお金の関係、そして利用中の生活費をどう考えればよいかという現実的な選択肢です。

この記事では、就労移行支援で工賃や給料がもらえるのかという制度上の結論から、就労継続支援A型の平均賃金との比較、利用中の収入源や生活費のやりくり、ケース別の家計シミュレーション、そしてお金の相談先まで、お金にまつわる不安を一つひとつ整理できる情報をまとめました。

特に重要なのは、「就労移行支援は原則として給料が出ない訓練の場」という前提を理解したうえで、障害年金や失業給付などの収入源、支出の工夫、家族や支援者との相談を組み合わせることで、利用を続けている方も少なくないという点です。

記事内の金額・制度について
この記事で紹介する金額や制度は、執筆時点(2025年11月)の情報に基づいています。制度改正や地域差により変更される可能性があるため、最新情報は必ず自治体窓口や相談支援専門員にご確認ください。

目次

この記事で分かること

この記事を読むことで、以下のポイントが明確になります。

  • 就労移行支援では原則として工賃・給料が支給されないこと、その理由と例外
  • 就労継続支援A型の平均賃金の目安と、生活費として十分かどうかの現実感
  • 障害年金・失業給付・各種手当など、利用中に活用できる収入源の種類
  • 実家暮らし・一人暮らしなど、生活パターン別の月々の収支イメージ
  • 就労移行支援とA型を「今の収入」だけでなく「将来の年収」という視点で比較する考え方
  • お金の不安を相談できる窓口と、相談前に準備しておくとよい情報

就労移行支援と「お金」の関係をまず整理しよう

就労移行支援について調べると、「給料」や「工賃」についての説明があいまいで、余計に不安になることがあります。そもそも就労移行支援は「働く場所」なのか「学校のような訓練の場」なのか、まずはその位置づけから整理しましょう。

就労移行支援は、障害福祉サービスの一つで、一般企業への就職を目指すための訓練を受ける場です。つまり、「働いて賃金を得る場」ではなく、「働くためのスキルや習慣を身につける場」という位置づけです。このため、原則として給料や工賃は支給されません

一方、就労継続支援A型やB型は、「働く場」としての側面が強く、作業に対する対価として工賃や給料が支払われます。この根本的な違いを理解することが、お金の不安を整理する第一歩です。

就労移行支援は「働く場」ではなく「就職のための訓練の場」

就労移行支援の目的は、あくまで一般就労(企業や官公庁で働くこと)を実現するための準備です。ビジネスマナーやパソコンスキル、コミュニケーション能力を訓練し、履歴書の書き方や面接の練習、職場体験などを通じて、就職後に長く働き続けられる力を身につけます。

学校や職業訓練校と似た性質を持っているため、利用者は「生徒」「訓練生」のような立場になります。このため、雇用契約は結ばず、労働の対価としての賃金も発生しません。代わりに、訓練期間中は自分の体調や目標に合わせて柔軟にスケジュールを組むことができ、支援者との面談や振り返りを通じて、自分に合った働き方を見つけることに専念できます。

多くの方が誤解しやすいのは、「事業所に通う=働く=給料がもらえる」という連想ですが、就労移行支援は「通う=訓練する=就職の準備をする」という関係性です。

就労継続支援A型・B型とのざっくりしたちがい

就労移行支援と混同されやすいのが、就労継続支援A型・B型です。これらは名前が似ているため、「全部同じようなサービスだろう」と思われがちですが、目的も対象者も、お金の扱いも大きく異なります。

就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働く福祉サービスです。事業所と利用者が雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給料が保障されます。一般企業での就労が難しい方が、支援を受けながら働ける環境で、安定した収入を得ることを目的としています。

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばず、作業に応じた工賃が支払われるサービスです。体調や障害の特性によって長時間働くことが難しい方、まずは短時間から作業に慣れたい方などが利用します。工賃の水準は事業所や作業内容によって大きく異なりますが、全国平均は月額1〜2万円程度と、生活費の主な柱にはなりにくい金額です。

項目 就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
目的 一般就労を目指す訓練 雇用契約による就労 非雇用での就労訓練
雇用契約 なし あり なし
工賃・給料 原則なし(一部事業所で訓練工賃あり) あり(最低賃金以上、平均8万円前後/月) あり(平均1〜2万円/月)
利用期間 原則2年間 制限なし 制限なし
サービスの性質 訓練・準備の場 働く場(支援付き) 働く場(支援付き)
向いている人 一般企業への就職を目指す人 支援を受けながら働きたい人 短時間・マイペースで働きたい人
※サービスの詳細は事業所や自治体によって異なる場合があります

これらに対し、就労移行支援は「訓練」が目的なので、A型のような雇用契約もB型のような作業工賃も原則ありません。その代わり、利用期間は原則2年間と定められており、その間に一般企業への就職を目指します。

📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
実務の現場でよく聞かれるのが、「A型とどちらが自分に合うのか」という質問です。多くの方が「今すぐお金が必要だから」とA型を選ばれますが、実際には体調や目標に合わず、数ヶ月で辞めてしまうケースも見られます。一方、就労移行で丁寧に準備した方は、就職後の定着率が高く、結果的に収入も安定する傾向があります。大切なのは、「今の収入」だけでなく「将来の働き方」も含めて考えることです。

就労移行支援で工賃・給料はもらえる?【結論と例外】

それでは、就労移行支援で工賃や給料はもらえるのでしょうか。ここでは結論を先にお伝えし、その後で例外的なケースについても説明します。

結論から言うと、就労移行支援では原則として賃金・工賃は支給されません。ただし、一部の事業所では訓練の一環として少額の「訓練工賃」を支給することがあります。この例外についても、金額や目的をしっかり理解しておくことが重要です。

原則:給料・工賃は支給されない

就労移行支援では、雇用契約がないため、賃金・工賃は原則として支給されません。訓練の場であり、働く場ではありません。

⚠️

例外:訓練工賃がある事業所も一部存在

一部の事業所では、訓練の一環として月数百円〜数千円程度の訓練工賃を支給することがあります。ただし生活費の柱にはなりません。

原則:就労移行支援では賃金・工賃は支給されない

就労移行支援で賃金が支給されない理由は、利用者と事業所の間に雇用契約がないためです。労働基準法では、雇用契約を結んだ労働者に対して賃金を支払うことが義務付けられていますが、就労移行支援の利用者は「訓練を受ける人」であって「労働者」ではありません。

このため、事業所で行う作業や課題は「訓練」として位置づけられ、その対価としての賃金は発生しません。たとえば、パソコン入力の練習、ビジネスメールの書き方、模擬的な事務作業などは、すべて「スキルを身につけるための訓練」であり、「労働」ではないという扱いになります。

また、就労移行支援の財源は税金(障害者総合支援法に基づく給付費)で賄われており、その目的は「就職の実現」です。事業所は利用者一人ひとりに個別支援計画を作成し、面談や振り返りを重ねながら、就職までの道筋をサポートします。このサポートに対して国や自治体から給付費が支払われる仕組みなので、利用者への賃金支払いは想定されていません。

一部の事業所で行われる「訓練工賃」とは?

ただし、一部の就労移行支援事業所では、訓練の一環として少額の「訓練工賃」を支給することがあります。これは、金銭管理の訓練や、働くことへのモチベーション向上、達成感の体験などを目的としたものです。

就労に向けた訓練の一環として、軽作業などの工賃作業を用意している事業所もあります。訓練工賃の金額や支給方法は事業所によって異なりますが、行った作業の内容や量に応じて、月に数百円〜数千円程度の少額の工賃が支給されるイメージです。
ただし、あくまで「お小遣い程度」の金額であり、生活費の柱としては期待できません。訓練工賃の有無や条件は、見学や相談の際に各事業所に確認してみてください。

重要なのは、この訓練工賃は生活費の柱として期待できる金額ではないということです。あくまで「お小遣い」や「ちょっとした達成感」のレベルであり、家賃や食費を賄うことはできません。むしろ、「少額でもお金をもらう経験」を通じて、働くことの責任感や金銭管理の感覚を養うことが目的です。

訓練工賃を支給している事業所は全体の一部であり、多くの事業所では訓練工賃自体がありません。見学や相談の際に、「訓練工賃はありますか?」と確認することはできますが、その有無でサービスの質が決まるわけではありません。

🎯

訓練工賃の目的

  • 金銭管理の練習
  • 働くことへのモチベーション向上
  • 達成感の体験
  • 責任感の養成
⚠️

注意点

  • 生活費の柱にはならない
  • 金額:月数百円〜数千円程度
  • すべての事業所で支給されるわけではない
  • 「お小遣い」レベルの位置づけ

就労継続支援A型の給料水準と働き方

では、「給料がもらえる」と言われる就労継続支援A型では、実際にどれくらいの収入が得られるのでしょうか。A型の給料水準と働き方の特徴を理解することで、就労移行支援との比較がしやすくなります。

就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働くサービスなので、最低賃金以上の給料が保障されます。ただし、働く時間や日数には個人差があり、体調や障害の特性に応じて柔軟に調整できる一方で、フルタイム勤務と比べると収入は限られます。

A型の平均賃金の目安(全国平均・自治体例)

厚生労働省が公表している「令和5年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援A型の全国平均月額賃金はおおむね8万円前後とされています(年度や地域によって変動があります)。これは、週20〜30時間程度働いた場合の目安で、時給換算すると地域の最低賃金に準じた金額になります。

ただし、この平均値には地域差や個人差が大きく反映されています。都市部では時給1,000円を超える事業所もある一方、地方では最低賃金ギリギリの事業所も見られます。また、週5日フルタイムで働ける方と、体調に配慮して週3日・1日4時間程度の方では、月収に2〜3倍の差が出ることもあります。

たとえば、時給1,000円で週5日・1日5時間働いた場合、月収は約10万円です。一方、時給900円で週3日・1日4時間の場合、月収は約4万円程度になります。A型を検討する際は、自分の体調や生活リズムで「どれくらい働けそうか」を現実的に考えることが大切です。

A型の月収シミュレーション(計算例)

時給 週の勤務 1日の時間 月収目安(週4週換算)
1,000円 週5日 5時間 約10万円
1,000円 週4日 5時間 約8万円
900円 週5日 4時間 約7万2,000円
900円 週3日 4時間 約4万3,000円
※実際の月収は、勤務日数や事業所の給与規定により変動します。あくまで目安としてご参照ください

なお、最新の賃金データは厚生労働省のWebサイトで公表されていますので、詳しく知りたい方は確認してみてください。

A型で働くときの働き方・雇用契約・社会保険

就労継続支援A型では、事業所と利用者が雇用契約を結びます。これは、一般企業での雇用契約と同じ法的な位置づけであり、労働基準法が適用されます。このため、最低賃金の保障、労働時間の管理、有給休暇の付与など、労働者としての権利が守られます。

また、一定の条件を満たせば、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することになります。具体的には、週20時間以上働き、かつ月額賃金が一定額以上の場合、社会保険への加入が義務付けられるケースが多いです。社会保険に加入すると、将来の年金額が増える、医療費の自己負担割合が変わるなどのメリットがある一方、保険料の負担が発生するため、手取り額は減少します。

A型で働く場合、自分の収入と社会保険料のバランスを考え、「手取りでいくら残るのか」「障害年金との兼ね合いはどうなるのか」を事前に確認することが重要です。事業所のスタッフや相談支援専門員に相談すれば、具体的な試算をしてもらえることもあります。

📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
A型を選ぶ方の中には、「給料が出るから安心」と考える方もいますが、実際には社会保険料の負担や、障害年金の支給額への影響(所得によっては減額・停止の可能性)を考慮する必要があります。月収8〜10万円でも、手取りは6〜7万円程度になることもあり、一人暮らしの生活費をすべて賄うのは難しいケースも目立ちます。A型を選ぶ際は、「給料額」だけでなく「手取り額」と「生活費の内訳」を具体的に計算してみることをお勧めします。

就労移行支援とA型、どちらが自分に合う?【収入と将来の視点】

ここまでの説明で、就労移行支援は給料が出ない訓練の場、A型は給料が出る働く場、という違いが分かりました。では、どちらを選ぶべきなのでしょうか。

この選択を「今の収入」だけで判断すると、将来のキャリアや体調とのミスマッチが起きやすくなります。ここでは、複数の視点から考えるためのポイントを整理します。

「今の収入」だけで選ぶリスク

「今すぐお金が必要だから」とA型を選ぶ方も一定数います。確かに、A型なら月8万円前後の収入が得られるため、短期的な生活費の足しになります。しかし、A型の作業内容が自分の希望や適性と合わない場合、長く続けることが難しくなります。

たとえば、将来的にパソコンを使った事務職に就きたいと思っているのに、A型で軽作業や清掃作業を続けても、事務職に必要なスキルは身につきません。結果として、「A型での経験が就職に活かせない」「A型を辞めて就労移行に通い直す」という二度手間になることもあります。

また、A型での収入があると、障害年金の支給額が影響を受けたり、家族の扶養から外れたりする可能性もあります。これらを考慮せずにA型を選ぶと、「思ったより手取りが少ない」「生活が楽にならない」という結果になりかねません。

一方、就労移行支援は訓練期間中の収入がゼロになりますが、訓練を通じて身につけたスキルや資格、就職活動のサポートによって、一般就労後の年収は大幅に上がる可能性があります。たとえば、就労移行でWebデザインやプログラミングを学び、IT企業に就職した方の中には、年収200〜300万円以上を得ている方もいます。これは、A型での年収(約100万円前後)の2〜3倍です。

一般就労を目指すか、福祉的就労を続けるか

もう一つの判断軸は、「将来どんな働き方をしたいか」です。一般就労を目指すなら就労移行支援、福祉的就労を続けるならA型やB型、というのが基本的な考え方です。

一般就労とは、企業や官公庁で雇用契約を結んで働くことです。障害者雇用枠での採用も含まれます。一般就労のメリットは、収入が安定すること、キャリアアップの可能性があること、社会的な評価を得やすいことです。一方、体調管理や業務のプレッシャーなど、負担も大きくなります。

福祉的就労とは、A型やB型で支援を受けながら働き続けることです。福祉的就労のメリットは、体調や障害の特性に配慮してもらいやすいこと、無理なく働けること、支援者がいる安心感があることです。一方、収入は限られ、キャリアアップの機会も少ないのが現実です。

どちらが正解というわけではなく、自分の体調、目標、生活スタイルに合った選択をすることが大切です。迷ったときは、相談支援専門員や事業所のスタッフに相談し、複数の選択肢を比較しながら決めることをお勧めします。

就労移行 or A型? 選び方診断チェックリスト

✓ 就労移行支援が向いている可能性が高い人

△ A型が向いている可能性が高い人

判定の目安:
✓が4つ以上なら、そちらのサービスが向いている可能性があります。ただし、最終的には相談支援専門員や事業所スタッフと相談して決めることをお勧めします。

就労移行支援を利用しながら生活費をどう確保するか【収入源まとめ】

就労移行支援を利用する場合、給料が出ないのであれば、生活費はどうやって確保すればよいのでしょうか。ここでは、利用中の収入源として活用できる制度や支援を整理します。

多くの方が不安に感じるのは当然ですが、実際には障害年金、失業給付、各種手当、家族の支援、生活保護など、複数の選択肢を組み合わせることで、利用を続けている方も少なくありません

障害年金・手当などの「ベース収入」

就労移行支援を利用する方の多くが、障害年金を受給しています。障害年金は、障害の程度や加入していた年金の種類によって、1級・2級・3級に分かれ、それぞれ支給額が異なります。

たとえば、障害基礎年金2級の場合、月額約6万5,000円が支給されます(2025年度の目安)。障害厚生年金2級の場合は、これに上乗せがあり、月額8〜10万円程度になることもあります。障害年金は、働いていても受給できるケースが多く、就労移行支援を利用している間も継続して受け取れます。

また、自治体によっては障害者手当特別障害者手当などの制度もあります。これらは月額1〜2万円程度の支給が一般的で、障害年金と併用できる場合があります。まずは、自分がどの制度を利用できるのか、市区町村の障害福祉課や相談支援専門員に確認してみましょう。

障害年金の等級別支給額の目安(2025年度)

年金の種類 等級 月額目安
障害基礎年金 1級 約8万1,000円
障害基礎年金 2級 約6万5,000円
障害厚生年金 1級 約10〜15万円(報酬比例部分による)
障害厚生年金 2級 約8〜12万円(報酬比例部分による)
障害厚生年金 3級 約5〜8万円(報酬比例部分による)
※金額は概算です。加入期間や報酬額、加算の有無により個人差があります。最新の詳細は日本年金機構のWebサイトでご確認ください

失業給付・給付金が使えるケース

退職前に雇用保険に加入していた方は、失業給付(雇用保険の基本手当)を受け取れる可能性があります。失業給付は、退職理由や加入期間によって受給期間や金額が決まりますが、一般的には月額10〜15万円程度です。

重要なのは、就労移行支援を利用している間も、条件を満たせば失業給付を受け取れるということです。ハローワークに「就労移行支援を利用しながら求職活動をしている」と申告し、定期的に認定を受けることで、給付を継続できます。

また、障害のある方向けの就職困難者としての認定を受けると、失業給付の受給期間が延長されることもあります。この手続きはやや複雑なので、ハローワークの専門援助窓口や、就労移行支援事業所のスタッフに相談しながら進めることをお勧めします。

家族・生活保護・その他の支援

収入が足りない場合、家族からの経済的支援を受けることも一つの選択肢です。実家暮らしであれば、家賃や食費の負担が大幅に軽減されるため、障害年金だけでも生活が成り立つケースが多いです。

また、収入や貯蓄が一定額以下の場合は、生活保護を申請できるケースもあります。生活保護は、最低限度の生活を保障する制度で、要件を満たすと家賃や生活費の不足分を支給してもらえる仕組みです。実際に受給できるかどうかは、資産状況や世帯の収入などをふまえて自治体が個別に判断します。生活保護を受給しながら就労移行支援を利用することも制度上認められており、就職が決まった後は段階的に保護費を減額していく仕組みになっています。

その他、自治体によっては交通費助成医療費助成など、独自の支援制度があります。これらを活用することで、実質的な支出を減らすことができます。まずは市区町村の窓口で、「どんな支援が使えるか」を一度相談してみることをお勧めします。

💰障害年金

等級により月6〜15万円程度。就労移行利用中も継続受給可能。

📋失業給付

雇用保険加入歴があれば月10〜15万円程度。ハローワークで手続き。

🎁各種手当

障害者手当、特別障害者手当など。自治体により月1〜2万円程度。

👨‍👩‍👧家族の支援

実家暮らしや家族からの経済的サポート。話し合いが重要。

🏠生活保護

収入・資産が基準以下の場合。自治体が個別審査。家賃・生活費の不足分を支給。

🏛️自治体の助成

交通費助成、医療費助成など。自治体独自の制度を確認。

就労移行利用開始前の準備について
就労移行を利用する場合、収入がゼロまたは減少する可能性があります。できれば3〜6ヶ月分の生活費(家賃・食費・光熱費など)を貯金しておくと安心です。難しい場合は、家族との話し合いや、相談支援専門員への早めの相談をお勧めします。

ケース別:就労移行支援を利用したときの月々の収支イメージ

「結局、自分の場合は足りるの?足りないの?」という疑問に答えるため、ここでは生活パターン別の収支モデルを示します。あくまで一例ですが、自分の状況と照らし合わせて考えてみてください。

実家暮らしで就労移行支援を利用するケース

モデルケース:Aさん(20代・発達障害・実家暮らし)

収入

  • 障害基礎年金2級:約6万5,000円
  • 家族からの小遣い:1万円
  • 合計:約7万5,000円

支出

  • 家に入れるお金:2万円
  • 交通費:5,000円(事業所が一部補助)
  • 昼食代:1万円(事業所で昼食補助あり)
  • スマホ・サブスク:5,000円
  • 交際費・趣味:1万円
  • 医療費:5,000円
  • 貯金:1万5,000円
  • 合計:約7万5,000円

実家暮らしの場合、家賃や光熱費の負担がないため、障害年金だけでも生活が成り立つケースが多いです。ただし、家族との話し合いで「家に入れるお金」や「生活費の分担」を決めておくことが大切です。

一人暮らしで就労移行支援を利用するケース

モデルケース:Bさん(30代・精神障害・一人暮らし)

収入

  • 障害厚生年金2級:約9万円
  • 失業給付(6ヶ月間):約12万円
  • 合計:約21万円

支出

  • 家賃:5万円
  • 光熱費:1万円
  • 食費:3万円
  • 交通費:1万円
  • スマホ・ネット:1万円
  • 医療費:1万円
  • 日用品・雑費:1万円
  • 交際費:1万円
  • 貯金:7万円
  • 合計:約21万円

一人暮らしの場合、家賃や光熱費の負担が大きいため、障害年金だけでは厳しく、失業給付や家族の支援が必要になることが多いです。失業給付が切れた後は、生活保護の申請や、短時間のアルバイトとの併用なども検討する必要があります。

ケース別の収支比較(月額)

項目 実家暮らしAさん 一人暮らしBさん
【収入】
障害年金 約6万5,000円 約9万円
失業給付 なし 約12万円(6ヶ月間)
家族の支援 約1万円 なし
収入合計 約7万5,000円 約21万円
【支出】
家賃 0円(実家) 5万円
家に入れるお金 2万円
光熱費 0円(家族負担) 1万円
食費 1万円(昼食代) 3万円
交通費 5,000円 1万円
通信費 5,000円 1万円
医療費 5,000円 1万円
その他 1万円 2万円
貯金 1万5,000円 7万円
支出合計 約7万5,000円 約21万円
収支バランス ±0円(収支均衡) ±0円(失業給付期間中)
※金額はあくまで一例です。実際の収支は個人の状況により大きく異なります

A型から就労移行に移る・並行して考えるケース

モデルケース:Cさん(40代・身体障害・A型から移行を検討)

A型利用時の月収

  • A型の給料:約8万円
  • 障害年金:約6万5,000円
  • 合計:約14万5,000円

就労移行に移った場合の月収

  • 障害年金:約6万5,000円
  • 家族の支援:3万円
  • 合計:約9万5,000円

収入差:月5万円減

A型から就労移行に移ると、一時的に収入が減ります。ただし、就労移行で専門スキルを身につけ、一般就労に成功すれば、月収15〜20万円以上になる可能性があります。「今の5万円」を取るか、「将来の+10万円」を取るか、という判断になります。

ここまで読んだ方へ:自分の数字を書き出してみましょう
紙やスマホのメモ帳に、現在の収入(年金・手当・貯金など)と月々の支出(家賃・食費・医療費など)を書き出してみてください。「足りる/足りない」が具体的に見えてくると、次に相談すべき内容も明確になります。

就労移行支援利用中の「支出の工夫」と制度の使い方

収入を増やすのが難しい場合、支出を減らす工夫も重要です。ここでは、就労移行支援を利用する際に活用できる制度や、固定費の見直しポイントを紹介します。

利用料・交通費・昼食代の負担を減らす方法

就労移行支援の利用料は、世帯の収入によって0円〜9,300円/月の負担上限が設定されています。生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯の場合、利用料は0円です。実際、多くの利用者が無料で利用しています。

交通費については、事業所によって助成制度があります。定期代の一部を補助してくれる事業所や、自治体独自の交通費助成を利用できる地域もあります。見学の際に、「交通費の補助はありますか?」と確認しましょう。

昼食代についても、事業所が昼食を無料または低額で提供しているケースがあります。自分で弁当を持参する場合は、食費を節約できます。

事業所見学時に確認すべきポイント

医療費・固定費の見直しでできること

医療費は、自立支援医療制度を利用することで、通院・薬代の自己負担を原則1割に軽減できます。さらに、所得区分ごとに月ごとの自己負担の上限額が決まっているため、高額な医療費が続く場合でも負担を抑えやすくなります。また、限度額適用認定証を使えば、高額な医療費の負担も軽減されます。

固定費では、スマホの料金プランを格安SIMに変える、使っていないサブスクを解約する、保険の見直しをするなど、月数千円〜1万円の節約ができることもあります。 <!– ここにカスタムHTML:固定費の見直しBefore/After比較表 –> <!– スマホ代、サブスク、保険などの見直し前後の金額 –>

📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
支出の見直しは、意外と見落とされがちですが、月に数千円でも減らせれば、心の余裕が生まれます。特に、スマホ代やサブスクは、一度見直せば継続的に節約できるのでお勧めです。また、事業所によっては、家計相談に乗ってくれるところもありますので、遠慮せずに相談してみてください。

お金の不安を一人で抱え込まないためにできること

お金の話は、なかなか人に相談しづらいものです。しかし、一人で悩んでいても解決しません。ここでは、お金の不安を相談できる窓口と、相談前に準備しておくとよい情報を紹介します。

相談先の候補と、それぞれに向いている相談内容

家族:生活費の分担、家に入れるお金、将来の計画など、生活全般の相談。

相談支援専門員:障害福祉サービス全般、障害年金や各種手当の申請、生活保護の相談など。

事業所のスタッフ:就労移行支援の利用料、交通費補助、訓練中の生活リズムとお金のバランスなど。

ハローワーク(専門援助窓口):失業給付の手続き、求職活動との両立、就職後の収入見込みなど。

自治体の障害福祉課:各種手当、医療費助成、交通費助成など、自治体独自の制度の確認。

お金の相談先まとめ

相談先 相談できる内容 連絡方法
家族 生活費の分担、家に入れるお金、将来の計画、精神的なサポート 直接話し合い
相談支援専門員 障害福祉サービス全般、障害年金・手当の申請、生活保護、サービス利用計画 市区町村の障害福祉課に紹介依頼
事業所のスタッフ 利用料、交通費補助、訓練中の生活リズム、体調管理とお金のバランス 見学時・利用中の面談
ハローワーク(専門援助窓口) 失業給付の手続き、求職活動との両立、就職後の収入見込み、就職困難者認定 最寄りのハローワークに電話・来所
市区町村の障害福祉課 各種手当、医療費助成、交通費助成、自治体独自の支援制度 電話・窓口訪問
福祉事務所(生活保護担当) 生活保護の申請、受給中の就労移行利用、収入認定 電話・窓口訪問(予約推奨)
※複数の相談先を組み合わせて活用することで、より具体的な解決策が見つかります

相談時の「最初のひと言」例
「お金のことで不安があるのですが、相談に乗っていただけますか?」
「就労移行を利用したいのですが、生活費が足りるか心配で…」
このように、大まかな悩みを伝えるだけでも、相談は始められます。細かい数字がまとまっていなくても大丈夫です。

相談前にまとめておくと話しやすい「お金のメモ」

相談に行く前に、以下の情報をメモしておくと、話がスムーズに進みます。

  • 現在の月収(障害年金、手当、家族の支援など)
  • 月々の支出(家賃、食費、光熱費、医療費など)
  • 貯金額(今すぐ使えるお金)
  • 借金の有無(ある場合は金額と返済計画)
  • 今後の予定(就労移行支援をいつから始めたいか、いつまでに就職したいかなど)

相談前の家計メモ(記入用)

【現在の収入】(月額)

【月々の支出】

【貯金・借金の状況】

【今後の予定】

💡 記入のポイント:
・正確な金額がわからなくても「だいたい〇万円くらい」でOKです
・すべて埋める必要はありません。わかる範囲で記入してください
・このメモを持って、相談支援専門員や事業所スタッフに相談すると話がスムーズです

すべてを正直に話す必要はありません。「見せたくない部分は隠してもOK」という前提で、話せる範囲から相談してみましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1:就労移行支援を利用すると、障害年金はもらえなくなりますか?

A:いいえ、もらえます。就労移行支援は「訓練」であり「労働」ではないため、障害年金の支給には影響しません。ただし、就職後に収入が増えた場合、就労状況や医師の診断書などもふまえて、年金機構が等級を見直す可能性があります。

Q2:失業給付を受けながら就労移行支援を利用できますか?

A:はい、できます。ハローワークに「就労移行支援を利用しながら求職活動をしている」と申告し、定期的に認定を受けることで、失業給付を継続できます。

Q3:生活保護を受けながら就労移行支援を利用できますか?

A:生活保護を受給しながら就労移行支援を利用できるケースもあります。ただし、生活保護の受給には要件があり、自治体が個別に審査します。詳しくは、お住まいの自治体の福祉事務所にご相談ください。

Q4:A型の給料だけで一人暮らしはできますか?

A:難しいケースが多いです。A型の平均月収はおおむね8万円前後で、家賃・光熱費・食費を考えると、障害年金などの他の収入がないと厳しい現実があります。

Q5:就労移行支援の訓練工賃は、どの事業所でももらえますか?

A:いいえ。訓練工賃を支給している事業所は一部であり、多くの事業所では訓練工賃自体がありません。見学時に確認してください。

Q6:就労移行支援を利用している間、アルバイトはできますか?

A:事業所や自治体の判断によります。体調や訓練に支障がない範囲であれば、短時間のアルバイトが認められることもありますが、条件は地域や制度によって異なります。まずは事業所のスタッフや自治体の窓口に相談してください。

Q7:家族に経済的な余裕がない場合、どうすればいいですか?

A:障害年金、失業給付、生活保護など、複数の制度を組み合わせることで、生活を成り立たせている方もいます。相談支援専門員や自治体窓口に相談してみましょう。

Q8:就労移行支援とA型、どちらを選ぶか迷っています。

A:「今の収入」だけでなく、「将来の働き方」「体調」「学びたいスキル」など、複数の視点で考えることをお勧めします。相談支援専門員や事業所のスタッフに相談し、自分に合った選択をしてください。

まとめ:お金の不安と向き合いながら、自分に合った一歩を選ぶ

この記事では、就労移行支援とお金の関係、A型との収入比較、利用中の生活費の確保方法、ケース別の収支イメージ、そしてお金の相談先まで、幅広く解説してきました。

この記事の3つの重要ポイント

  • 就労移行支援は原則として給料が出ない訓練の場だが、障害年金や失業給付などの収入源、支出の工夫、家族や支援者との相談を組み合わせることで、利用を続けている方も少なくない
  • A型は給料が出るが平均月収はおおむね8万円前後で、一人暮らしの生活費をすべて賄うのは難しいケースも目立ち、「今の収入」だけでなく「将来の働き方」も含めて考えることが大切
  • お金の不安は、相談支援専門員や事業所のスタッフ、自治体窓口など、複数の相談先に分けて相談することで、具体的な解決策が見つかることが多い

次にできる小さなアクション

  1. 自分の現在の収入・支出を紙やアプリに書き出してみる
  2. 市区町村の障害福祉課や相談支援専門員に、「就労移行支援を利用したいが、お金が不安」と相談してみる
  3. 気になる就労移行支援事業所やA型事業所の見学・相談を予約してみる

お金の不安は誰にでもあります。しかし、一人で抱え込まず、選択肢や相談先を知ることで、少しずつでも前に進める可能性が広がります。まずは小さな一歩から始めてみてください。

出典・一次情報

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出典・一次情報(正確版)


監修者情報

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この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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