この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就職できたのは嬉しいけど、職場でうまくやっていけるか不安…」 「もし仕事でつまずいたら、誰に相談すればいいんだろう?」
就職はゴールではなく、新しいスタートです。その大切なスタートを支え、あなたが職場で安定して輝き続けるための強力なサポーターが**「就労定着支援」**です。
これは単なる”お悩み相談”ではありません。あなたが職場で直面するかもしれない様々な課題に対し、専門家があなたと企業の間に入り、具体的な解決策を実行してくれる、いわば「仕事版のパーソナルコーチ」です。
この記事では、定着支援の基本的な仕組みから、具体的な悩みをどう解決してくれるのかまで、実践的な活用術を徹底解説します。
まずは要点(ここだけで全体像が掴めます)
対象期間:就職後6か月〜最長3年(制度上の上限あり)。
サポート内容:職場訪問・定期面談・業務や人間関係の調整。
利用条件:就労移行支援などを利用し、一般就労した方が対象。
主な目的:早期離職の防止と安定した就労の継続。
流れ:契約→就職後の計画作成→定期フォロー→終了手続き。
定着支援でできること(悩み別ケーススタディ)
あなたが職場で遭遇するかもしれない「困った!」の場面で、定着支援員がどのようにサポートしてくれるのか、具体的なケースで見てみましょう。
- Case 1:「仕事の量が多すぎる・難しすぎる…」
支援員はこうサポートします
あなたとの面談で状況を整理した後、上司との三者面談を設定。「業務内容の再調整」「マニュアルの整備」「指示方法の明確化」などを企業側に提案し、あなたの負担を軽減します。実際に業務量の調整や、作業手順の見直しを行った成功事例も多数あります。 - Case 2:「人間関係で悩んでいる…」
支援員はこうサポートします
あなたの気持ちを受け止め、どうすれば働きやすくなるかを一緒に考えます。必要であれば、上司に「定期的に声をかけてもらう」「指示は特定の人からに統一してもらう」など、環境調整を依頼します。あなたが直接言いにくいことも、支援員が代わりに伝えてくれます。 - Case 3:「体調管理や生活リズムが崩れてきた…」
支援員はこうサポートします
通院と仕事の両立について、勤務スケジュールの調整を企業に相談します。また、主治医や家族とも連携し、あなたの生活全体が安定するようサポートします。服薬時間の調整や、疲れやすい時間帯の業務配分なども提案してくれます。 - Case 4:「スキルアップしたいけど、どうすれば…」
支援員はこうサポートします
あなたの希望と企業のニーズを照らし合わせ、具体的なキャリアプランを一緒に立てます。必要な研修の提案や、新しい業務への段階的な取り組み方を企業と調整してくれます。
定着支援の仕組みと流れ(統合タイムライン)
就職後のサポートは、実はいくつかのフェーズに分かれています。この全体の流れを理解しておくと、安心して利用できます。
期間 | フェーズ | 支援の主体 | この期間にやること(あなたと支援員の動き) |
---|---|---|---|
就職後 〜6か月 | 初期定着サポート | 就労移行支援事業所など | 就職直後の環境に慣れるためのサポート。 悩みがあれば、まずはここに相談します。 |
就職後 2〜5か月頃 | 移行準備 | あなた+相談支援専門員 | 7か月目以降のサポートに向け、**就労定着支援事業所**を選定し、**受給者証**の申請準備を行います。 |
就職後 7か月〜 | 本格的な定着支援 | 就労定着支援事業所 | 新しい受給者証で契約し、月1〜2回の面談や職場訪問などを通じて、長期的な安定就労をサポートします。 |
〜最長3年半 | 支援の終了 | – | 支援期間(最長3年)が満了するか、サポートがなくても安定して働けると確認できた時点で支援は終了となります。 |
定着支援を120%活用する3つのコツ
- 1. 「小さな悩み」のうちに相談する
詳しく解説
問題が大きくなる前に「最近少し疲れ気味で…」といったレベルで共有しましょう。早期対応が、長く働き続ける秘訣です。支援員は日々の小さな変化も報告してもらうことで、早めの対応を促すことができます。 - 2. 面談は「報告」ではなく「作戦会議」
詳しく解説
事前に「相談したいことリスト」を準備。面談前に議題や質問をまとめて共有すると、時間を有効活用できます。支援員を、あなたのキャリアを一緒に考える「作戦パートナー」として活用しましょう。 - 3. 「できたこと」も共有する
詳しく解説
うまくいったことや成長した点を共有することで、支援員はあなたの強みを企業に伝えやすくなり、より良い配慮や業務の提案につながります。目標や課題を定期的に振り返り、計画をブラッシュアップすることも大切です。
サポート内容一覧
- 職場訪問による業務・環境チェック(例:作業負荷の見直し)
- 定期的なオンライン/対面面談(例:月1〜2回の進捗確認)
- 上司や同僚との関係調整支援(例:三者面談の設定)
- 業務遂行の工夫やツール提案(例:タスク管理ツール導入)
- 体調管理や生活リズムのアドバイス(例:通院スケジュール調整)
利用期間と条件
- 利用期間:就職後6か月〜最長3年
- 対象:一般就労に移行した障害者(就労移行支援などの利用歴がある場合)
- 契約形態:本人と事業所間での契約
- 費用:自己負担は原則なし(自治体の制度に準ずる)
よくある質問(FAQ)
定着支援は誰が受けられますか?
就労移行支援などを経て一般就労した障害者が対象です。
訪問頻度はどのくらいですか?
月1〜2回が一般的ですが、必要に応じて増減します。
企業にはどんな説明をしますか?
業務や勤務環境の改善提案や配慮事項の共有を行います。
3年経ったら必ず終了ですか?
制度上は3年が上限ですが、安定が確認されれば早期終了もあります。
まとめ:あなたの味方として活用しよう
就労定着支援は、あなたが就職先で孤立せず、安心して働き続けるための公的な権利であり、強力なツールです。
決して一人で抱え込まず、専門の支援員を「頼れる味方」として積極的に活用してください。あなたの新しい職場での成功を、社会全体が応援しています。
出典・一次情報

この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。