就労移行支援で給料はもらえる?【結論】原則なし|A型B型との差と生活費

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

「就労移行支援って、通っている間にお金はもらえるの?」
「工賃が出る事業所もあるって聞いたけど、本当?」
「通所中の生活費はどうすればいいの…?」

こうした疑問を持つのは、あなただけではありません。就労移行支援の利用を検討するとき、「お金」の不安は多くの方が最初にぶつかる壁です。

この記事では、以下の内容についてわかりやすく解説しています。

  • 就労移行支援で給料・工賃はもらえるのか(結論と理由)
  • 就労移行支援・A型・B型の収入比較
  • 通所中の生活費を支える5つの方法
  • 一部の事業所で工賃が出るケースとその実態
  • 卒業後の給与目安(障害者雇用の平均データ)
  • 「就労移行支援」と「就労継続支援」、自分にはどちらが合うか

読み終える頃には、お金の不安を整理した上で「自分はどう進めばいいか」の判断ができるようになっているはずです。

※就労移行支援の基本的な仕組みや利用条件については、就労移行支援とは?基礎知識ガイドで詳しく解説しています。
目次

まず結論:就労移行支援では原則、給料・工賃はもらえません

結論から言うと、就労移行支援では原則として給料も工賃も発生しません。

理由はシンプルです。就労移行支援は「働く場」ではなく「働くための訓練を受ける場」だからです。利用者と事業所の間に雇用契約はなく、労働基準法上の「労働者」には該当しません。

イメージとしては「就職するための学校」に近い位置づけです。学校に通って授業料を払うことはあっても、学校から給料はもらえません。就労移行支援も同じ考え方です。

ただし、重要なポイントが2つあります。

1

利用料は多くの方が無料

前年度の世帯収入に応じて自己負担額が決まりますが、多くの方が無料で利用しています。「お金を払って通う」というイメージとも少し違います。

2

ごく一部の事業所では工賃が出る場合がある

訓練の一環として生産活動を行う事業所では、その成果に対して少額の工賃が支払われるケースがあります。ただし、金額は月数千円程度で、生活費をまかなえる水準ではありません。

⚠️ 給料が出ない=価値がないわけではありません

就労移行支援の目的は、一般企業への就職に必要なスキルや生活リズムを身につけること。通所期間中は収入がなくても、卒業後に安定した収入を得るための「投資期間」と考えることができます。

「通所中は収入がないから」と諦めて利用を見送る方を、実務の現場で何度も見てきました。でも、障害年金や家族のサポートを組み合わせれば、2年間の通所期間をやりくりできるケースは多いです。大切なのは、卒業後の就職で月14〜23万円の安定収入を目指せるということ。一時的な収入ゼロより、長期的な収入アップを優先する視点を持ってください。

市原早映(サービス管理責任者)

「給料」「工賃」「賃金」の違いを整理

就労移行支援のお金の話を理解するために、まず3つの言葉の違いを整理します。

給料(給与・賃金)
雇用契約を結んだ上で、労働の対価として支払われるお金です。最低賃金が保障され、労働基準法が適用されます。就労移行支援では雇用契約を結ばないため、給料は発生しません。

工賃
雇用契約を結ばずに行った作業に対して支払われるお金です。最低賃金は適用されません。就労継続支援B型で主に使われる仕組みで、就労移行支援では原則発生しませんが、一部の事業所で訓練の一環として支払われるケースがあります。

訓練手当・交通費
一部の事業所では、通所の交通費や昼食代を支給・補助しています。これは給料でも工賃でもなく、利用者の負担を軽減するための福利厚生です。

項目 給料(賃金) 工賃 訓練手当・交通費
発生する場面 一般企業・A型 B型・一部の就労移行支援 一部の就労移行支援
雇用契約 あり なし なし
最低賃金の適用 あり なし なし
金額の目安 月額14〜23万円 月額数千円〜2万円程度 実費〜月数千円程度
就労移行支援での発生 原則なし ごく一部の事業所のみ 事業所による

就労移行支援・A型・B型の収入比較

「就労移行支援」「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」は、いずれも障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスですが、目的も収入も大きく異なります。

項目 就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
目的 一般企業への就職を目指す訓練 雇用契約のもとで働く場の提供 雇用契約なしで働く場の提供
雇用契約 なし あり なし
収入 原則なし 月額約8.3万円(全国平均) 月額約2.3万円(全国平均)
最低賃金 適用なし 適用あり 適用なし
利用期間 原則2年 制限なし 制限なし
ゴール 一般企業への就職(月14〜23万円の給与) 一般就労への移行 or 継続 一般就労への移行 or 継続
※A型の月額約8.3万円、B型の月額約2.3万円は厚生労働省「令和5年度工賃(賃金)の実績」による全国平均。B型は令和6年度の計算方法変更により数字が上昇しているため、単純な前年比較には注意が必要です。

ここで重要なのは、「収入があるかどうか」だけで選ぶべきではないということです。

就労移行支援は通所中の収入はゼロに近いですが、卒業後に一般企業で月14〜23万円の給与を得ることを目指します。短期間の「投資期間」を経て長期的な収入アップを狙う仕組みです。

一方、A型・B型は通所しながら収入を得られますが、一般企業への就職が前提ではないため、収入水準はA型でも月8万円台にとどまります。

通所中の生活費を支える5つの方法

就労移行支援に通っている間、収入がほぼゼロになることへの不安は当然です。ここでは、通所中の生活費を支えるために利用できる制度や方法を5つ紹介します。

① 障害年金

障害の程度が一定以上で、年金の納付要件を満たしている場合に受給できます。就労移行支援に通いながらの受給も可能です。

障害基礎年金の金額目安:

  • 1級:年間約101万円(月額約8.4万円)
  • 2級:年間約81万円(月額約6.8万円)
※障害厚生年金を受給できる場合は、上記に加算されます。受給要件や金額は個人の状況により異なります。また、金額は年度により変動します。最新の金額は日本年金機構の公式サイトでご確認ください。

② 生活保護

世帯収入が国の定める基準(最低生活費)に満たない場合に受給できます。就労移行支援に通所しながらの受給も可能です。

就労移行支援の利用料は、生活保護受給世帯の場合0円になります。

③ 失業保険(雇用保険の基本手当)

就労移行支援を利用する前に離職した場合、一定の条件を満たせば失業保険を受給できる場合があります。

⚠️ 就労移行支援中の失業保険受給は難しいケースが多い

就労移行支援に通所しながらの失業保険受給は、ハローワークの判断により受給が認められないケースも多いのが実情です。「訓練に専念するため求職活動ができない」とみなされ、支給停止になる場合があります。必ず事前にハローワークで確認してください。

④ 自立支援医療(精神通院医療費の軽減)

精神科に通院している場合、医療費の自己負担が原則1割に軽減されます。就労移行支援と直接の関係はありませんが、通院費の負担を抑えることで生活費の圧迫を軽減できます。

⑤ 家族のサポート・貯蓄

制度だけでは生活が難しい場合、家族のサポートや貯蓄を活用している方も少なくありません。

就労移行支援の利用期間は原則2年間です。「いつまでに就職するか」のスケジュールを立て、その期間の生活費を事前に計画しておくことが大切です。

💡 お金のことで悩んだら、まず相談を

市区町村の障害福祉窓口に相談してください。利用できる制度は自治体によって異なり、交通費補助や日用品費の支給など、ここでは紹介しきれない支援がある場合もあります。また、事業所のスタッフも生活費の相談に乗ってくれることが多いです。一人で抱え込まず、早めに相談しましょう。

工賃が出る就労移行支援事業所はあるの?

ごく一部の就労移行支援事業所では、訓練の一環として行う生産活動に対して工賃を支払っています。

ただし、以下の点を理解しておいてください。

  • 工賃を支払っている事業所は全体のごく一部
  • 金額は月数百円〜数千円程度が一般的
  • 生活費をまかなえる金額ではない
  • 工賃は「達成感やモチベーションの向上」が主な目的
  • 工賃の有無で事業所を選ぶべきではない

⚠️ 工賃の有無で事業所を選ばないでください

就労移行支援の最大の価値は「卒業後に一般企業で安定した収入を得るためのスキルとサポート」です。月数千円の工賃よりも、就職率・定着率・カリキュラムの質で事業所を選ぶことが、長期的に見て圧倒的に重要です。

相談者の中には「工賃が出る事業所を探しています」と最初に聞く方もいますが、私は必ず「工賃よりも就職率・定着率を見てください」と答えます。月3,000円の工賃と、卒業後の月15万円の給与では、年間で18万円以上の差になります。工賃は”おまけ”として考え、本筋のスキル習得・就職支援の質で選びましょう。

市原早映(サービス管理責任者)

就労移行支援に通いながらアルバイトはできる?

就労移行支援に通所しながらのアルバイトは、原則として認められていません。

就労移行支援は「働くことが難しい方」を対象としているため、アルバイトができる状態であれば訓練を受ける必要がないと判断される場合があります。

ただし、ごくまれに自治体の判断でアルバイトが認められるケースもあります。認められる場合でも、時間や収入に制限がつくのが一般的です。

アルバイトを検討している場合は、事業所と自治体の障害福祉窓口の両方に相談してください。自己判断で始めると、就労移行支援の利用資格に影響が出る可能性があります。

卒業後の給与はどのくらい?

就労移行支援の通所中は収入がほぼゼロですが、卒業して一般企業に就職した場合の給与はどのくらいなのでしょうか。

厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」のデータを紹介します。

障害種別 平均月収 年収換算(概算)
身体障害者 23.5万円 約282万円
精神障害者 14.9万円 約179万円
知的障害者 13.7万円 約164万円
発達障害者 13.0万円 約156万円
※厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」より。金額は調査時点のデータであり、地域・業種・職種・雇用形態により異なります。

就労継続支援A型の月額約8.3万円、B型の月額約2.3万円と比較すると、一般企業への就職による収入増のインパクトは明らかです。

たとえば精神障害者の場合、B型の月2.3万円から一般企業の月14.9万円に変わると、月収は約6.5倍になります。年間にすると約150万円以上の差です。

もちろん、就労移行支援を利用すれば必ず就職できるわけではありませんし、就職後の給与も個人の状況によって大きく異なります。しかし、「通所中の収入ゼロ」は一時的なものであり、卒業後の収入で取り戻せる可能性が高いことは、データが示しています。

💡 スキル次第で平均を大きく上回るケースも

IT特化型の事業所を卒業した方の中には、発達障害者の平均月収13.0万円を大きく上回る月収20万円以上で就職している方もいます。就労移行支援で身につけるスキルの種類や専門性によって、卒業後の給与水準は変わります。

卒業後の給料相場や手取り額、障害年金との組み合わせについては、障害者雇用の平均給料|平均月収13〜23万円の実態で詳しく解説しています。

結局どちらが合う?就労移行支援 vs 就労継続支援の判断基準

「就労移行支援に通って一般企業を目指すべきか、それとも就労継続支援で工賃をもらいながら働くべきか」。この判断は、あなたの今の状況と将来の目標によって変わります。

あなたに合うのはどちら?

✓ 就労移行支援が向いている可能性が高い人

△ 就労継続支援が向いている可能性が高い人

どちらか迷う場合は、市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所に相談してください。あなたの状況を踏まえた上で、最適なサービスを一緒に考えてくれます。

利用料金の確認

就労移行支援の利用料は、前年度の世帯収入(本人と配偶者)によって月額上限が決まります。

所得区分 月額上限
生活保護受給世帯 0円
住民税非課税世帯(収入がおおむね300万円以下) 0円
住民税課税世帯(収入がおおむね600万円以下) 9,300円
上記以外 37,200円
※金額の基準は制度改正で変わる場合があります。「世帯」は本人と配偶者を指し、親の収入は含まれません(18歳以上の場合)。詳しくは市区町村の障害福祉窓口でご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q 就労移行支援と就労継続支援、両方を同時に利用できますか?
A 原則として同時利用はできません。どちらか一方を選んで利用します。ただし、就労移行支援を利用した後に就労継続支援に移行する、あるいはその逆のパターンは可能です。
Q 就労移行支援を利用しながら障害年金はもらえますか?
A はい、就労移行支援に通いながら障害年金を受給することは可能です。就労移行支援は「就労」ではなく「訓練」のため、障害年金の支給停止要件には該当しません。ただし、受給要件は個人の障害状態により異なるため、年金事務所で確認してください。
Q 工賃が出る事業所はどうやって探せますか?
A 「就労移行支援 工賃あり +(お住まいの地域名)」で検索するか、見学時に直接質問するのが確実です。ただし、工賃の有無よりも、就職率・定着率・カリキュラムの質を優先して事業所を選ぶことをおすすめします。
Q 通所中に生活費が足りなくなったらどうすればいいですか?
A まず事業所のスタッフに相談してください。利用できる制度の案内や、自治体窓口への橋渡しをしてくれます。場合によっては生活福祉資金貸付制度や住居確保給付金など、緊急的に利用できる制度もあります。
Q 就労移行支援から就労継続支援に変更することはできますか?
A はい、可能です。就労移行支援を利用してみたものの、一般企業への就職が難しいと判断された場合、就労継続支援A型またはB型に移行することができます。市区町村の障害福祉窓口で手続きを行います。
Q 企業実習中は給料がもらえますか?
A 原則としてもらえません。企業実習は就労移行支援の訓練の一環として行われるため、受入企業から金銭を受け取ると「雇用」とみなされ、障害福祉サービスの利用ができなくなる場合があります。

まとめ

この記事のポイント
  • 就労移行支援では、原則として給料・工賃はもらえない(「訓練の場」であり「働く場」ではないため)
  • A型は月約8.3万円、B型は月約2.3万円の収入があるが、就労移行支援は卒業後に月14〜23万円の一般企業就職を目指す「投資期間」
  • 通所中の生活費は、障害年金・生活保護・失業保険・自立支援医療・家族サポートの組み合わせで対応
  • 工賃の有無で事業所を選ぶべきではない。就職率・定着率・カリキュラムの質を優先する

就労移行支援の通所中に収入がないことは事実です。でも、それは「将来の安定した収入を得るための投資期間」です。お金の不安を整理した上で、自分に合った選択をしてください。

次のステップ

まずは事業所を見学してみましょう。通所中の生活費のことも、見学時にスタッフに相談できます。

見学・体験の流れを確認する


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監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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