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就労移行支援の工賃・給料はもらえる?A型との収入比較と生活費の考え方

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

「就労移行支援に興味はあるけど、訓練中は収入がゼロになるのが不安…」 「最長2年間、どうやって生活していけばいいんだろう?」

その不安、とてもよく分かります。就労移行支援は、あなたの未来のキャリアへの大切な「自己投資」期間です。そして、その投資期間中の生活を支えるための公的な制度は、あなたが思っている以上にたくさん用意されています。

この記事は、単なる制度の紹介ではありません。あなたが利用できる全ての収入源をリストアップし、それらを組み合わせてあなただけの「生活費プラン」を作成できるように設計された、実践的なガイドです。読み終わる頃には、お金の不安が具体的な計画に変わり、安心して次の一歩を踏み出せるようになっているはずです。

目次

まずは要点(ここだけで全体像が掴めます)

生活費プランニングの4ステップ

  • STEP1:あなたが使える5つの収入源を把握する
  • STEP2:月々の支出を具体的に計算する
  • STEP3:収入と支出を組み合わせて資金計画を完成させる
  • STEP4:支出をさらに抑える3つのコツを活用する

安心ポイント

  • 就労移行支援中でも複数の公的支援制度を組み合わせて生活費を確保できる
  • A型事業所(平均月8万円)との比較で最適な選択ができる
  • 就労移行だけでは給付金の対象になりません。給付金は求職者支援訓練または公共職業訓練の受講中が前提です
  • 実家暮らしの場合は月3-4万円、一人暮らしでも月10-11万円で生活可能

STEP 1:収入の柱を組み立てる|あなたが使える4つの支援制度

就労移行支援の利用中に、あなたの収入の柱となりうる4つの主要な制度を、条件や金額の目安とともに詳しく解説します。

収入源 対象となる人(一例) 月額の目安 重要ポイント
①障害年金 障害等級に認定されている方 1級:約86,635円
2級:約69,308円
最も安定した収入の柱
②失業保険 前職で雇用保険に加入していた方 前職給与の50-80% ハローワークが訓練を指示すれば受給可能
③生活保護 収入や資産が最低生活費を下回る方 自治体・世帯による 全ての人の最後のセーフティネット
④その他 貯金の取り崩し、家族からの援助など 事前に家族と相談しておくことが大切
※金額は2025年度基準。地域や個別状況により異なります

STEP 2:支出を見える化する|生活費シミュレーション・ワークシート

次に、あなたの月々の支出を計算してみましょう。以下の表を参考に、あなた自身の金額を当てはめてみてください。

生活費計算ワークシート

一人暮らし(目安)

家賃50,000円
食費30,000円
水道光熱費10,000円
通信費5,000円
交通費・雑費10,000円
支出合計105,000円

実家暮らし(目安)

家族への費用20,000円
食費(自己負担)10,000円
水道光熱費(家族負担)
通信費5,000円
交通費・雑費10,000円
支出合計45,000円

あなたの場合

家賃・家族費用
食費
水道光熱費
通信費
交通費・雑費
支出合計0円

STEP 3:収支を計算する|あなただけの資金計画を完成させよう

STEP 1で把握した収入源と、STEP 2で計算した支出を組み合わせて、具体的な資金計画を立ててみましょう。

【重要】就労移行支援の利用だけでは職業訓練受講給付金(月10万円)は受給できません。以下は実際に利用可能な制度のみで構成した資金計画例です。
  • プランA:障害年金を活用(実家暮らし)
    収支の詳細
    収入:
    ・障害年金2級:約69,308円
    ・短時間アルバイト:15,000円
    収入合計:約84,000円

    支出:45,000円

    月間収支:+39,000円

    評価:実家暮らしなら障害年金だけでも十分に生活でき、余裕もある理想的なプラン
  • プランB:障害年金+貯金活用(一人暮らし)
    収支の詳細
    収入:
    ・障害年金2級:約69,308円
    ・貯金の取り崩し:35,000円
    収入合計:約104,000円

    支出:105,000円

    月間収支:-1,000円

    評価:ほぼ収支が合う。2年間で貯金84万円程度が必要
  • プランC:生活保護を活用(一人暮らし)
    収支の詳細
    収入:
    ・生活保護費:地域により異なる(例:都市部で月12-13万円程度)
    ・障害年金2級:約69,308円(収入認定後の差額支給)
    収入合計:最低生活費相当額

    支出:生活保護基準内

    月間収支:±0円

    評価:最低生活は保障される。医療費も原則無料
  • プランD:家族支援中心(一人暮らし)
    収支の詳細
    収入:
    ・家族からの援助:80,000円
    ・貯金の取り崩し:25,000円
    収入合計:105,000円

    支出:105,000円

    月間収支:±0円

    評価:家族の理解と協力が得られる場合の現実的なプラン。事前相談が重要
ポイント:これらのプランは実際に利用可能な制度のみで構成しています。職業訓練受講給付金は就労移行支援とは別の制度(ハロートレーニング)が対象のため、併用を検討する場合は事前にハローワークと就労移行支援事業所の両方に相談が必要です。

STEP 4:支出をさらに抑えるための3つのコツ

資金計画が立ったら、さらに支出を抑えて余裕を作るためのコツを活用しましょう。

  • 💡 コツ①:交通費・昼食代の節約
    具体的な方法
    事業所選びで大きく変わる:
    ・交通費全額支給の事業所を選ぶ(月5,000円〜15,000円の節約)
    ・昼食無料提供の事業所を選ぶ(月10,000円〜15,000円の節約)
    ・在宅訓練対応の事業所を選ぶ(交通費ゼロ)

    ポイント:これらの実費補助に手厚い事業所を選ぶだけで、月1〜3万円の支出削減が可能です。
  • 💡 コツ②:自治体独自の助成制度を活用
    具体的な方法
    確認すべき制度:
    ・家賃補助・住宅手当(月1〜3万円)
    ・医療費助成(自己負担上限の設定)
    ・公共料金の減免制度
    ・就労準備金の支給

    相談先:お住まいの市区町村の障害福祉課、生活困窮者支援窓口、相談支援専門員に確認しましょう。
  • 💡 コツ③:障害者割引を最大活用
    具体的な方法
    活用できる割引:
    ・公共交通機関(電車・バス):50%割引
    ・携帯電話・インターネット:各社独自割引
    ・公共施設利用料:無料〜50%割引
    ・NHK受信料:全額または半額免除

    ポイント:障害者手帳があれば月3,000円〜5,000円程度の支出削減が可能です。

A型事業所との収入比較

就労移行支援を利用するか、A型事業所で働きながらスキルアップするか迷っている方のために、収入面での比較をまとめました。

項目 就労移行支援 A型事業所
契約形態 訓練契約 雇用契約
基本収入 なし(補助制度で障害年金等を活用) 最低賃金以上(全国平均8万6,752円(令和5年度)/月)
社会保険 加入なし 条件を満たせば加入
主な目的 一般就労への移行 継続就労
利用期間 原則2年(延長1年) 制限なし
※就労移行支援は訓練に特化し、A型は継続的な働く場を提供する制度です

よくある質問(FAQ)

就労移行支援では工賃や給料がもらえる?
原則として就労移行支援は訓練の場であり賃金は発生しませんが、交通費や昼食補助がある事業所もあります。生産活動を行う事業所では月額平均1万円程度の工賃が出る場合もあります。

A型事業所の平均収入は?
A型事業所では雇用契約を結び最低賃金以上が保証され、全国平均の月収は約8万円です。勤務条件によっては10万〜15万円程度になることもあります。

生活保護と就労移行支援は併用できる?
はい、条件を満たせば併用可能です。就労移行支援の利用は生活保護の自立支援の一環として認められており、むしろ推奨されています。

利用開始前にどのくらい貯金があれば安心?
職業訓練受講給付金などの制度を活用できない場合は、最低でも半年分(50万円〜60万円)の生活費を準備しておくことをおすすめします。制度が利用できる場合はそれほど多額の貯金は必要ありません。

A型から一般就労への移行は可能?
はい、実績を積めば可能です。ただし、A型は継続就労が主目的のため、一般就労を強く希望する場合は就労移行支援の方が適している場合が多いです。

まとめ:お金の不安を具体的な計画に変えて、安心してスタートを

就労移行支援の利用は、決して「無収入で耐える期間」ではありません。公的な支援制度を賢く組み合わせることで、多くの人が経済的な不安を解消し、訓練に集中しています。

この記事で紹介した4つのステップを実践すれば、あなたも安心して未来への投資期間を過ごせるはずです:

今すぐできる3つのアクション

  1. ハローワークで利用可能な制度について相談する:失業保険や職業訓練の併用可能性を確認
  2. お住まいの市区町村で利用可能な助成制度を確認する:自治体独自の支援が見つかる可能性大
  3. この記事のワークシートを使って、具体的な収支計画を立てる:不安が具体的な数字に変わる

まずは、あなた自身がどの制度を使えるのかを相談支援専門員や市区町村の窓口で確認することから始めましょう。お金の心配で夢をあきらめる必要はありません。あなただけの資金計画を立て、安心して未来への第一歩を踏み出してください。

次のステップ

生活費の計画が立ったら、次は実際に事業所を選んで受給者証の申請を進めましょう。交通費や昼食補助の手厚い事業所選びも、資金計画の重要な要素です。

事業所選びのガイドを見る

出典・一次情報

給付金の対象・要件・額:厚労省「求職者支援制度のご案内」「FAQ」「(ハロトレ)支援ページ」。(厚生労働省) 公的職業訓練=ハロートレーニング(公共/求職者支援訓練)の定義:厚労省。(厚生労働省) 就労移行=福祉サービス(制度の別立て):厚生労働省。(厚生労働省) A型の平均月収(最新):厚労省「令和5年度 工賃(賃金)の実績」。(厚生労働省) 障害年金(2025年度額):日本年金機構。(年金ホームページ)

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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