この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援に興味はあるけど、1日どんな風に過ごすのか分からない…」
「朝が苦手で、決まった時間に毎日通えるか不安」
「無理をしてまた体調を崩すのが怖い」
こうした不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、就労移行支援の1日のスケジュールについて、事業所ごとに違いがあることを前提としながら、共通する基本の流れと代表的なパターンを図解で分かりやすく紹介します。
特に重要なのは、通所時間や日数は体調に合わせて調整できるという事実です。「毎日フルタイムで通えないとダメ」ということはありません。週2日・午後だけから始めて、徐々にペースを上げていく方も多くいます。
この記事で分かること
- 就労移行支援の1日の基本的な流れ(朝礼〜終礼までの共通フレーム)
- 事業所によって違う3つの代表的なスタイル(自習多め型・講座多め型・在宅併用型)
- 朝・午前・昼休み・午後・終礼それぞれの時間帯で何をするのか
- 体力や生活リズムに不安がある場合の通所ペースの考え方
- 見学・体験で確認すべきチェックポイントと質問リスト
- 朝が苦手・通勤ラッシュがつらい場合の時間帯調整の可能性
まず結論:就労移行支援の1日の流れとは
就労移行支援の1日のスケジュールは、事業所によって違いがあります。しかし、どこにも共通する基本の流れがあります。
多くの事業所では、午前10時頃から午後3時〜4時頃までを訓練時間としており、その中で「朝礼→訓練→昼休み→訓練→終礼」という流れが基本となっています。この流れを押さえておけば、どの事業所でも大まかなイメージがつかめます。
3つの重要ポイント
- 共通フレームがある:朝礼・昼休み・終礼という基本の流れは、多くの事業所で見られます
- 事業所ごとにスタイルが違う:自習中心か、講座中心か、在宅訓練も使えるかなど、訓練内容や時間配分は事業所によって大きく異なります
- 通所ペースは調整できる:週2日・午後だけといった短時間・短日数からのスタートも可能で、体調に合わせて徐々に増やしていけます
見学や体験を通じて、「自分の体力や生活リズムに合うスケジュールか」を確認しながら選ぶことが大切です。
まずは押さえたい「就労移行支援の1日の共通フレーム」
この章で分かること
- 多くの事業所に共通する1日の基本的な流れ
- 訓練時間が10時スタートの理由
- 朝礼〜終礼までの時間配分の目安
就労移行支援の1日のスケジュールは事業所によって違うとはいえ、多くの事業所に共通する基本の流れがあります。まずはこの「共通フレーム」を理解しておくと、どの事業所を見学してもイメージがつかみやすくなります。
一例として、午前10時頃から午後3時〜4時頃までを訓練時間としている事業所が多く見られます。学校や会社のように朝8時や9時ではなく、10時スタートの事業所が多いのは、朝が苦手な方や通勤ラッシュを避けたい方への配慮でもあります(ただし、開始・終了時間は事業所によって異なります)。
1日の基本的な流れは以下の通りです。
10:00〜10:15 朝礼 その日の訓練内容の確認、体調の共有、今日の目標を宣言する時間です。全体で集まって行う事業所もあれば、オンラインで行う事業所もあります。
10:15〜12:00 午前の訓練 自習、講座、グループワーク、個別訓練など、事業所によって内容は大きく異なります。50分訓練+10分休憩を1セットとして繰り返すパターンが多いです。
12:00〜13:00 昼休み 食事休憩の時間です。お弁当持参、近くで外食、事業所で軽食を取るなど、過ごし方は自由です。
13:00〜15:00(または16:00) 午後の訓練 午前に引き続き、訓練を進めます。個別面談やキャリアカウンセリングが入ることもあります。
15:00〜15:30(または16:00〜16:30) 終礼・振り返り 1日の振り返り、日報の作成、明日の予定確認を行います。
就労移行支援の1日の基本的な流れ
※時間は事業所によって異なります。上記は一例です。
重要なのは、この時間配分はあくまで目安であり、事業所によって前後するという点です。午前9時スタートの事業所もあれば、11時スタートの事業所もあります。また、「毎日この通りに過ごさなければならない」わけではなく、体調に合わせて午前だけ、午後だけ、短時間利用といった調整も可能です。
見学の際には、「標準的な1日のスケジュール」を見せてもらい、自分の生活リズムと照らし合わせてみることをおすすめします。
事業所によって違うのはここ!代表的な3つのスタイル
この章で分かること
- 自習時間が多い事業所と、講座・グループワークが多い事業所の違い
- 在宅訓練を併用できる事業所のスケジュール例
- 自分にはどのスタイルが合いそうかを判断するヒント
共通フレームを理解したら、次は「事業所ごとの違い」を見ていきましょう。訓練の内容や時間配分は、事業所の方針によって大きく異なります。
ここでは、代表的な3つのスタイルを紹介します。自分にはどのスタイルが合いそうか、イメージしながら読んでみてください。
自学自習多め型(午前は自習、午後は講座など)
このスタイルは、自分のペースで学習を進めたい方に向いています。特に対人不安があったり、集団での学習が苦手な方にとっては、心理的な負担が少ないスタイルです。
1日の流れとしては、午前中を自習時間として確保し、午後に講座やグループワークを入れるパターンが多く見られます。自習時間には、PCスキル(Word、Excel、PowerPointなど)の学習、資格試験の勉強、履歴書や職務経歴書の作成、企業研究などに取り組みます。
自習といっても完全に放置されるわけではなく、スタッフが定期的に声をかけてくれたり、分からないことがあればいつでも質問できる環境が整っています。「一人で黙々と進めたいときは自習、誰かと話したいときは午後の講座に参加」というように、自分でメリハリをつけられるのがこのスタイルの利点です。
自習時間に取り組める内容の例
- PCスキルの習得(タイピング練習、Word・Excel・PowerPoint)
- 資格試験の勉強(MOS、日商簿記、ITパスポートなど)
- 履歴書・職務経歴書の作成と添削依頼
- 企業研究・求人検索
- ビジネスマナーの動画学習
- プログラミング学習(教材を使った自主学習)
- Webデザインの練習
このスタイルが合う人は、「マイペースに学びたい」「集団での学習がプレッシャーになる」「一人の時間も確保したい」という方です。ただし、自己管理が苦手な方は、自習時間にダラダラしてしまう可能性もあるため、スタッフとの定期的な面談で進捗を確認してもらうことが重要です。
講座・グループワーク多め型(授業形式に近いスタイル)
このスタイルは、学校の授業のようにスケジュールがしっかり決まっている方が安心という方に向いています。1時間ごとに講座が組まれていて、時間割のようにプログラムが進んでいきます。
講座の内容は、ビジネスマナー講座、PCスキル講座、コミュニケーション講座、模擬就活講座、企業見学など多岐にわたります。グループワークでは、チームでの作業を通じて、報告・連絡・相談の練習や、役割分担の経験を積むことができます。
このスタイルのメリットは、「今日は何をすればいいか」が明確で、迷わずに訓練に取り組める点です。また、他の利用者と一緒に学ぶことで、仲間意識が生まれやすく、孤独感を感じにくいという特徴もあります。
講座やグループワークは、全員参加の場合もあれば、自由参加の場合もあります。体調や気分によって「今日は参加が難しそう」というときに、柔軟に調整できるかどうかは事業所によって異なるため、見学時に確認しておくとよいでしょう。
このスタイルが合う人は、「決まったスケジュールがある方が動きやすい」「他の人と一緒に学びたい」「自習だけだとサボってしまいそう」という方です。
在宅訓練・オンライン併用型(通所+在宅のハイブリッド)
このスタイルは、体調や通勤の負担から毎日通所するのが難しい方に向いています。週のうち何日かを在宅訓練、残りを通所という形で、柔軟に組み合わせることができます。
在宅訓練は、2020年前後の新型コロナウイルスの影響をきっかけに、在宅での訓練を認める運用が広がったものです。現在では、対人不安や通勤の身体的負担、地理的な理由などで通所が難しい方に対して、在宅での訓練を組み合わせる事業所も増えています。
対面での支援頻度や在宅訓練の利用条件は、自治体や事業所の運営方針によって異なります。 多くの場合、定期的な対面支援(訪問または通所)と組み合わせる形になりますが、具体的な運用は事業所や自治体窓口に確認してください。
在宅訓練の日は、自宅からオンラインで朝礼に参加し、個別の課題に取り組み、終礼で1日の振り返りをするという流れが一般的です。ZoomやSlackなどのツールを使って、通所している人たちと同じ時間を共有できるため、孤立感を感じにくい工夫がされています。
1週間のスケジュール例(ハイブリッド型)
ハイブリッド型の1週間例
※このような形で在宅訓練を利用できるかどうかは、自治体の判断や事業所の体制によります。
在宅訓練の日の1日の流れは、以下のようになります。
- 10:00 オンライン朝礼(Zoomで参加、ビデオオフも可)
- 10:15〜12:00 個別課題(プログラミング学習、資格勉強など)
- 12:00〜13:00 昼休み
- 13:00〜15:00 個別課題の続き、または講座動画の視聴
- 15:00 オンライン終礼、日報提出
在宅訓練の利用を希望する場合は、通所が難しい理由について、事業所や相談支援専門員、自治体と相談しながら手続きを進めていきます。多くの場合、医師の意見書などで体調面の状況を伝えたうえで、自治体が在宅訓練の可否や内容を判断します。具体的な手続きや受給者証への反映方法は自治体によって異なるため、必ず事業所や自治体窓口で確認しましょう。
このスタイルが合う人は、「対人不安がある」「通勤ラッシュがつらい」「体調が不安定で毎日通所は難しい」「最終的にリモートワークで働きたい」という方です。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「事業所によって違う」と聞くと不安になる方も多いのですが、実はこれは良いニュースでもあります。自分に合ったスタイルを選べるということですから。見学では「自分がここで過ごすイメージが湧くか」を大切にしてください。時間割が完璧でも、雰囲気が合わなければ続きません。逆に、多少不安があっても「ここなら相談できそう」と感じられる事業所であれば、調整しながら進めていけます。
この章のポイント
- 自習多め型は、マイペースに学びたい人向け
- 講座多め型は、決まったスケジュールがある方が安心な人向け
- 在宅併用型は、通所負担を減らしたい人向け
- どのスタイルも、体調に合わせて柔軟に調整可能
就労移行支援の1日を時間帯ごとに解説|通所前から終礼まで
この章で分かること
- 朝礼・午前・昼休み・午後・終礼それぞれで何をするのか
- 休憩時間の過ごし方のバリエーション
- 1日の振り返り(日報)の内容と書き方
ここからは、1日の流れを時間帯ごとに詳しく見ていきます。「朝礼って何をするの?」「休憩時間はどんな雰囲気?」など、具体的な様子を知ることで、通所のイメージがより明確になります。
通所前〜朝礼まで(起床・準備・通所)
1日は朝の準備から始まります。朝が苦手な方にとっては、ここが一番のハードルかもしれません。
多くの事業所は10時スタートなので、通勤に1時間かかる場合でも、9時に家を出れば間に合います。通勤ラッシュの時間帯(7〜8時台)を避けられるため、満員電車が苦手な方にとっては大きなメリットです。
朝のルーティンとしては、以下のようなイメージです。
- 7:30〜8:00 起床
- 8:00〜8:30 朝食・身支度・服薬(必要な方)
- 8:30〜9:00 余裕を持って準備
- 9:00 自宅を出発
- 10:00 事業所に到着
事業所に着いたら、まずは自分の席に荷物を置き、朝礼の時間まで少しリラックスします。水分補給をしたり、スタッフに軽く挨拶したり、他の利用者と雑談したりする時間です。
朝礼は10:00〜10:15の15分程度が一般的です。全員で集まって行う事業所もあれば、各自の席でオンライン朝礼に参加する事業所もあります。内容は以下のような流れです。
- 体調の確認(「今日の調子はどうですか?」)
- 今日の予定の共有(講座のスケジュール、個別面談の予定など)
- 今日の目標を一人ずつ宣言(「今日はExcelの関数を5個覚えます」など)
朝礼は参加が推奨されますが、体調が悪い場合は遅刻や欠席の連絡を入れれば問題ありません。
✅ 朝のルーティンチェックリスト
💡 ポイント:余裕をもって準備することで、心に落ち着きが生まれます
朝が苦手な方や、通勤に不安がある方は、最初から毎日10時スタートを目指す必要はありません。午後からの参加や、週2〜3日からのスタートも可能です。見学時に「朝が苦手で不安」ということを正直に伝えれば、スタッフと一緒に無理のないスケジュールを考えることができます。
午前の訓練(自習・講座・個別訓練など)
朝礼が終わったら、午前の訓練が始まります。訓練内容は事業所によって大きく異なりますが、ここでは一般的なパターンを紹介します。
自習多めの事業所の場合
午前中は自習時間として、各自が決めた課題に取り組みます。PCスキルの学習、資格試験の勉強、履歴書の作成など、自分のペースで進められます。スタッフは定期的に巡回して声をかけてくれるので、分からないことがあればその場で質問できます。
50分訓練+10分休憩を1セットとして、2〜3セット繰り返すパターンが多いです。休憩時間には席を立って、トイレに行ったり、飲み物を買いに行ったり、軽くストレッチをしたりします。
講座多めの事業所の場合
1時間ごとに講座が組まれていて、授業のように進んでいきます。例えば、10:15〜11:15はビジネスマナー講座、11:15〜12:00はExcel基礎講座、といった具合です。
講座は講師が前で説明し、参加者が一緒に実践する形式が多いです。グループワークの時間があれば、3〜5人のチームに分かれて、課題に取り組みます。
| 項目 | 自習多め型 | 講座多め型 |
|---|---|---|
| 自習時間 | 午前中2〜3時間 | 30分〜1時間 |
| 講座・グループワーク | 午後に1〜2コマ | 1日3〜4コマ |
| スケジュールの自由度 | 高い(自分で決める) | 低い(時間割に従う) |
| 対人接触 | 少なめ | 多め |
| 向いている人 | マイペース、対人不安がある | スケジュールが明確な方が安心 |
午前中に個別面談が入ることもあります。サービス管理責任者(サビ管)やキャリアアドバイザーと、今後の訓練計画や就職活動の進め方について相談する時間です。面談の頻度は人によって異なり、毎週1回の方もいれば、月1〜2回の方もいます。
午前中の訓練で大切なのは、無理をしないことです。体調が悪いときや集中力が続かないときは、スタッフに相談して休憩を長めに取ったり、自習に切り替えたりすることができます。
昼休み・休憩の過ごし方
昼休みは12:00〜13:00の1時間が一般的です。食事をとって、午後の訓練に備えてリラックスする時間です。
「昼休みが一番気まずそう…」と不安に感じる方も多いのですが、過ごし方は自由です。無理に誰かと話す必要はありませんし、一人で静かに過ごしたい場合はそれも尊重されます。
昼休みの過ごし方のバリエーション
- お弁当を持参して、自分の席で食べる:一番多いパターンです。一人で静かに食べたい方は、席で本を読んだりスマホを見たりしながら過ごします。
- 近くのコンビニやカフェで外食:気分転換に外に出る方もいます。近くに飲食店が多い事業所であれば選択肢が広がります。
- 事業所の休憩スペースで他の利用者と雑談:仲良くなった利用者同士で、雑談しながら食事をすることもあります。無理に会話に入る必要はなく、自然な流れで輪に入れるタイミングを待てば大丈夫です。
- スタッフと相談や雑談:何か困っていることがあれば、昼休みにスタッフに相談することもできます。「今日の午前中の講座で分からないことがあって…」といった気軽な相談でもOKです。
休憩時間に横になれる部屋や、仮眠スペースを用意している事業所もあります。体調が優れないときや、午後に備えて少し休みたいときに利用できます。
昼休みの過ごし方も、見学時に確認しておくと安心です。「一人で過ごしても変じゃないか」「休憩スペースはあるか」などを聞いてみましょう。
午後の訓練〜終礼・振り返り
昼休みが終わると、午後の訓練が始まります。午前と同様に、自習や講座、グループワークなどに取り組みます。
午後は疲れが出てくる時間帯なので、無理をしないことが大切です。集中力が続かないときは、スタッフに相談して早退したり、自習に切り替えたりすることもできます。「午後はしんどい」と感じる日が続く場合は、午前だけの利用に切り替えることも検討できます。
午後の訓練の後半には、個別面談や就職活動の準備が入ることもあります。履歴書の添削、模擬面接、企業研究などを、スタッフと一緒に進めます。
終礼・振り返り(15:00〜15:30または16:00〜16:30)
1日の最後は終礼です。朝礼と同じように、全員で集まって行う事業所もあれば、各自で日報を書いて提出する形式の事業所もあります。
終礼では、以下のようなことを行います。
- 今日の訓練内容の振り返り
- 今日の目標は達成できたか
- 明日の予定確認
- 体調や気分の共有
日報は、紙に書く場合もあれば、Googleフォームなどで提出する場合もあります。内容は簡単で、以下のような項目が一般的です。
- 体調(良好、普通、やや不調など)
- 今日取り組んだこと
- 気づいたこと・感想
- 明日やりたいこと
📝 1日の振り返りシート(日報の例)
💡 日報は一言でもOK。完璧に書く必要はありません。
日報は「完璧に書かなければ」と思う必要はありません。「今日はExcelの勉強をしました」の一文だけでも十分です。スタッフは日報を通じて、利用者の体調や訓練の進み具合を把握し、必要なサポートを考えます。
終礼が終わったら、その日の訓練は終了です。帰宅時間も事業所によって異なりますが、15:30〜16:30頃が一般的です。帰宅ラッシュを避けた時間帯なので、通勤と同様に、比較的ゆったりと帰ることができます。
この章のポイント
- 朝は10時頃スタートで、通勤ラッシュを避けられる事業所が多い
- 午前・午後は自習や講座に取り組み、50分+10分休憩が基本
- 昼休みは一人で過ごしてもOK、無理に交流する必要はない
- 終礼では簡単な日報を書くが、一言でも十分
「体力的に通えるか不安…」への通所ペースと調整の考え方
この章で分かること
- 週2日・短時間からのスタートが可能であること
- 段階的に通所ペースを増やしていく具体的なステップ
- 遅刻・早退・欠席の連絡方法と考え方
- 朝が苦手な場合の時間帯調整の方法
「毎日フルタイムで通えないとダメなのでは?」と不安に感じる方は多いですが、実際には週2日・午後だけ・短時間からのスタートも可能です。体調や生活リズムに合わせて、無理のないペースから始め、徐々に増やしていくことができます。
就労移行支援の最終目標は「就職」ですが、そのためには「安定して通える」ことが前提です。無理をして体調を崩してしまっては元も子もありません。最初は週2日・午後だけから始めて、3ヶ月後には週5日通えるようになった、という例も珍しくありません。
大切なのは、自分のペースで段階的に増やしていくという考え方です。スタッフと相談しながら、無理のない範囲で調整していきましょう。
週何日・何時間からスタートできる?
通所ペースは、事業所とスタッフと相談しながら決めていきます。一般的なパターンとしては、以下のような段階的な増やし方があります。
開始時(最初の1〜2ヶ月)
- 週2〜3日、午後だけ(13:00〜15:30)からスタート
- または、週2〜3日、午前だけ(10:00〜12:00)からスタート
- 体調や気分に合わせて、無理のない範囲で通う
この段階では、「通所する習慣をつけること」が第一の目標です。訓練内容よりも、まずは「決まった曜日に事業所に行く」というリズムを作ることに集中します。
中間期(3〜4ヶ月目)
- 週3〜4日、午前+午後(10:00〜15:30)に増やす
- または、週5日、午後だけ(13:00〜15:30)に増やす
- 生活リズムが整ってきたら、徐々に時間と日数を増やす
この段階では、訓練内容にも集中し始めます。PCスキルの習得、講座への参加、グループワークへの参加など、より積極的に訓練に取り組みます。
安定期(5〜6ヶ月目以降)
- 週5日、午前+午後(10:00〜15:30)で安定して通所
- 就職活動も並行して進める
- 必要に応じて、企業見学や実習にも参加する
この段階では、「働く」ことを意識した訓練が中心になります。模擬面接、履歴書の作成、企業見学など、就職活動に直結する内容に取り組みます。
| 時期 | 通所日数 | 時間帯 | 進捗度 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 週2日 | 午後のみ(13:00〜15:30) | スタート |
| 2〜3ヶ月目 | 週3日 | 午後のみ or 1日通所 | 慣れてきた |
| 4〜5ヶ月目 | 週4日 | 1日通所(10:00〜15:30) | 安定 |
| 6ヶ月目〜 | 週5日 | 1日通所(10:00〜15:30) | 就活準備 |
重要なのは、この「段階的な増やし方」は目安であり、人によってペースは異なるということです。最初から週5日で通える人もいれば、半年経っても週3日がちょうどいいという人もいます。
スタッフは、利用者一人ひとりの体調や生活リズムを見ながら、適切なペースを一緒に考えてくれます。焦らず、自分のペースで進めていきましょう。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「最初から週5日で通わなければ」と焦る必要はまったくありません。私の経験上は、利用者さんの約7割が週2〜3日・短時間からのスタートでした。大切なのは「続けられること」です。無理をして体調を崩すより、少しずつ増やしていく方が、結果的に早く安定します。「今週は調子が良かったから来週は1日増やしてみようか」というペースで十分です。
体調が不安定な日の「遅刻・早退・欠席」の考え方
就労移行支援を利用する方の多くは、体調が不安定な時期を経験しています。「今日は朝起きられなかった」「午後から体調が悪くなった」というのは、決して珍しいことではありません。
大切なのは、無理をしないことと、きちんと連絡することです。
遅刻・早退・欠席のルール
多くの事業所では、以下のようなルールが設けられています。
- 遅刻・欠席の場合は、事前に連絡を入れる(電話、メール、LINEなど、事業所が指定する方法で)
- 理由は簡潔でOK(「体調不良のため」「通院のため」など)
- 無断欠席は避ける(どうしても連絡できない場合は、翌日でもよいので理由を伝える)
連絡をきちんと入れることで、スタッフも安心しますし、「報告・連絡・相談」の練習にもなります。就職後も、体調不良で休む際には会社に連絡を入れる必要があるため、この習慣は非常に重要です。
📞 連絡のポイント
連絡例文
「おはようございます。◯◯です。今日は体調不良のため、お休みさせていただきます。明日は通常通り10時に伺う予定です。よろしくお願いします。」
「お疲れ様です。◯◯です。午後から体調が悪くなってきたので、早退させていただきます。明日は様子を見て、参加できそうであれば連絡します。」
このように、簡潔でよいので、状況を伝えることが大切です。
また、欠席や早退が続く場合は、スタッフと面談をして、通所ペースを見直すこともあります。「週5日は難しそうなので、週3日に減らしましょう」といった調整も可能です。無理をせず、相談しながら進めていきましょう。
朝が苦手/ラッシュがつらい場合の時間帯調整
「朝が苦手で、10時スタートでも厳しい」「通勤ラッシュの電車に乗れない」という悩みを持つ方は多くいます。こうした場合、時間帯の調整が可能な事業所もあります。
時間帯調整の例
- 午前遅め参加:朝礼には間に合わないが、11時頃から参加する
- 午後から参加:午前中は自宅で休み、昼休み後の13時から参加する
- 早めの時間帯:逆に、ラッシュを避けるために9時スタートに調整する事業所もある
- 在宅訓練との併用:通所が難しい日は在宅訓練に切り替える
時間帯の調整が可能かどうかは事業所によって異なるため、見学時に必ず確認しましょう。「朝が苦手で不安です」と正直に伝えれば、スタッフが一緒に対策を考えてくれます。
また、朝の通勤練習として、最初は午後からスタートし、徐々に午前中の参加を増やしていくという方法もあります。就職後に備えて、少しずつ朝型の生活リズムに整えていくイメージです。
重要なのは、「最初から完璧にできなくてもいい」ということです。少しずつ調整しながら、自分に合った通い方を見つけていきましょう。
この章のポイント
- 週2〜3日、午後だけからのスタートも可能
- 段階的にペースを上げていくのが一般的
- 遅刻・早退・欠席は、連絡を入れればOK
- 朝が苦手な場合は、時間帯調整や在宅訓練との併用を検討できる
見学・体験で「自分に合う1日のスケジュール」を見つけるコツ
この章で分かること
- 見学・体験で確認すべき3つのポイント
- スケジュール表のチェック項目
- そのまま使える質問リスト
事業所の見学や体験利用は、「自分に合う1日のスケジュールか」を確認する絶好の機会です。パンフレットやWebサイトだけでは分からない、雰囲気や細かいルールを実際に体験することができます。
ご家族や支援者の方が同行される場合は、「家での様子」や「体調面の心配」などを事業所に伝えていただくと、より具体的な通所プランを一緒に考えやすくなります。
見学・体験では、以下の3つを意識して確認しましょう。
- ①スケジュールの柔軟性:体調に合わせて調整できるか、短時間・短日数からのスタートは可能か
- ②雰囲気:スタッフや他の利用者の雰囲気、自分がここで過ごすイメージが湧くか
- ③具体的なサポート内容:個別面談の頻度、在宅訓練の有無、質問への対応
✅ 見学・体験チェックリスト
スケジュール表のどこをチェックすればいい?
見学時には、1日のスケジュール表(タイムテーブル)を見せてもらえます。ここで確認すべきポイントを整理しましょう。
チェックポイント①:訓練時間の長さ
- 1日の訓練時間は何時間か(4時間?5時間?6時間?)
- 休憩時間はどのくらいの頻度で取れるか
- 早退や遅刻がどの程度柔軟に認められるか
例えば、10:00〜16:00の6時間訓練の事業所と、10:00〜15:00の5時間訓練の事業所では、体力的な負担が異なります。最初は短めの事業所を選ぶのも一つの方法です。
チェックポイント②:自習と講座のバランス
- 自習時間はどのくらいあるか
- 講座やグループワークは全員参加か、自由参加か
- 自分のペースで進められる時間がどれだけ確保されているか
自習が多い方が合う人もいれば、講座が多い方が合う人もいます。自分の学習スタイルに合っているか確認しましょう。
チェックポイント③:在宅訓練の有無
- 在宅訓練やオンライン参加は可能か
- 週に何日まで在宅訓練を利用できるか
- 在宅訓練の日は、どのような形で訓練を進めるか(オンライン朝礼、個別課題など)
体調や通勤の負担を考えると、在宅訓練が使えるかどうかは重要なポイントです。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 10:00〜10:15✓ 必須参加? | 朝礼 |
| 10:15〜12:00✓ 自習?講座? | 午前の訓練 |
| 12:00〜13:00✓ 過ごし方は? | 昼休み |
| 13:00〜15:00✓ 早退可能? | 午後の訓練 |
| 15:00〜15:30✓ 在宅対応? | 終礼 |
そのまま使える「質問リスト」
見学や体験では、遠慮せずに質問することが大切です。ここでは、そのまま使える質問リストを紹介します。
- 週2〜3日、午後だけからのスタートは可能ですか?
- 体調が不安定な場合、どのように調整できますか?
- 朝が苦手なのですが、午後からの参加は可能ですか?
- 1日のスケジュールはどの程度固定されていますか?
- 講座やグループワークは全員参加ですか?
- 自分のペースで進められる訓練はどのくらいありますか?
- 在宅訓練やオンライン参加は可能ですか?
- 在宅訓練を利用する場合、週に何日まで可能ですか?
- 対面支援の頻度はどのくらいですか?
- 個別面談はどのくらいの頻度でありますか?
- 体調や気分について、気軽に相談できる雰囲気はありますか?
- 昼休みは一人で過ごしても変ではないですか?
これらの質問をすることで、事業所側も「この人はどんなサポートを必要としているか」を理解しやすくなります。遠慮せず、気になることは全て聞いてみましょう。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)見学や体験でよく聞かれる質問の一つが「週何日から通えますか?」です。私たちの事業所では、体調や状況に合わせて週1日からの利用相談もお受けしています。
ただし、自治体の支給決定の内容や事業所の運営方針によって、「最低週2日は通所してほしい」といった希望がある場合もあります。実際に利用を検討する際は、事業所ごとの考え方を必ず確認してみてください。大切なのは、無理のない範囲でスタートすること。「まずは週2日で様子を見て、慣れてきたら増やしていきましょう」という話し合いができる事業所を選ぶことをおすすめします。
この章のポイント
- 見学・体験では、スケジュールの柔軟性・雰囲気・サポート体制を確認
- 訓練時間の長さ、自習と講座のバランス、在宅訓練の有無をチェック
- 質問リストを活用して、気になることは全て聞く
- 家族や支援者が同行する場合は、家での様子も事業所に伝える
サビ管に聞いてみた「続けやすい通い方」のポイント
この章で分かること
- 現場のサービス管理責任者から見た、続けやすい通所ペース
- 通所が続かなくなる人の特徴と対策
- 安定して通えるようになるためのコツ
現場で利用者の支援をしているサービス管理責任者(サビ管)に、「続けやすい通い方」について聞いてみました。
まとめ〜「完璧に通える自信がなくても大丈夫」
就労移行支援の1日のスケジュールは、事業所によって違いがあります。しかし、どこにも共通する基本の流れ(朝礼→訓練→昼休み→訓練→終礼)があり、その中で自分に合ったスタイルを選ぶことができます。
この記事のポイントを振り返ります
- 就労移行支援の1日は、多くの事業所で10:00〜15:00/16:00頃の訓練時間が基本
- 事業所ごとに「自習多め型」「講座多め型」「在宅併用型」など、スタイルが異なる
- 通所ペースは、週2〜3日・午後だけからのスタートも可能で、体調に合わせて調整できる
- 朝が苦手・通勤ラッシュがつらい場合も、時間帯の調整や在宅訓練の利用で対応できる
- 見学・体験で、スケジュールの柔軟性や雰囲気を確認し、自分に合う事業所を選ぶことが大切
- 遅刻・早退・欠席は、きちんと連絡すればOK。無理をしないことが、長く続けるコツ
完璧に通える自信がなくても大丈夫です。多くの利用者が、最初は週2日・短時間からスタートしています。大切なのは、自分のペースで無理なく続けることです。
次の一歩
- 気になる事業所のWebサイトで、1日のスケジュールを確認してみる
- 見学や体験利用を申し込み、実際の雰囲気を体験する
- 自治体の障害福祉課や相談支援事業所に、就労移行支援について相談する
- この記事の「質問リスト」を参考に、見学で聞きたいことをメモしておく
一人で悩まず、まずは相談してみることから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1:毎日通わないとダメですか?
A:いいえ、毎日通う必要はありません。週2〜3日からのスタートも可能ですし、体調に合わせて日数を調整できます。最初は少ない日数から始めて、徐々に増やしていく方が多いです。事業所によっては「最低週2日は通所してほしい」という希望がある場合もあるため、見学時に確認しましょう。
Q2:午前中だけ、または午後だけの利用はできますか?
A:はい、多くの事業所で可能です。体調や生活リズムに合わせて、午前だけ・午後だけの利用からスタートし、慣れてきたら1日利用に移行する方も多くいます。見学時に「短時間利用は可能か」を確認しましょう。
Q3:朝が苦手で、10時スタートでも不安です。どうすればいいですか?
A:午後からの参加や、在宅訓練との併用を検討できます。また、最初は午後だけ通い、徐々に朝型の生活リズムに整えていく方法もあります。見学時に「朝が苦手で不安」と正直に伝えれば、スタッフと一緒に対策を考えることができます。
Q4:他の利用者と話すのが苦手です。一人で過ごしても大丈夫ですか?
A:はい、大丈夫です。昼休みや休憩時間は一人で過ごしても問題ありません。無理に誰かと話す必要はなく、自分のペースで過ごせます。対人不安がある場合は、その旨をスタッフに伝えておくと、配慮してもらえます。
Q5:在宅訓練はどのくらい利用できますか?
A:事業所や自治体によって異なりますが、週のうち数日を在宅訓練にすることが可能な場合があります。例えば、週5日のうち3日を在宅訓練、2日を通所というハイブリッド型を認めている事業所もあります。在宅訓練の利用を希望する場合は、まず事業所や相談支援専門員に相談し、自治体の判断を仰ぐ流れになります。具体的な条件や手続きは、自治体や事業所によって異なるため、受給者証の申請前に確認しましょう。
Q6:体調が悪い日は、どう連絡すればいいですか?
A:朝礼の時間(多くは10:00)までに、電話やメール、LINEなどで事業所に連絡を入れます。理由は「体調不良のため」と簡潔に伝えれば十分です。連絡をきちんと入れることで、スタッフも安心しますし、就職後の「報連相」の練習にもなります。
Q7:見学や体験利用は、何回でもできますか?
A:多くの事業所で、見学や体験利用は複数回可能です。1回の見学だけでは判断が難しい場合は、「もう一度体験したい」と伝えましょう。複数の事業所を見学・体験して比較することもおすすめです。
Q8:1日のスケジュールは、全員同じですか?
A:基本的な流れ(朝礼→訓練→昼休み→訓練→終礼)は同じですが、訓練内容や参加するプログラムは、一人ひとりの目標や体調に合わせて調整されます。自習が多い人もいれば、講座やグループワークに多く参加する人もいます。
Q9:通勤ラッシュの時間帯を避けられますか?
A:多くの事業所は10時スタートなので、7〜8時台の通勤ラッシュは避けられます。さらに早い時間帯がつらい場合は、午後からの参加や、在宅訓練との併用も検討できます。見学時に相談してみましょう。
Q10:スケジュールについていけるか不安です。
A:最初からスケジュールに完璧について行く必要はありません。体調や気分に合わせて、柔軟に調整しながら進めていけます。不安なことがあれば、スタッフにいつでも相談できる環境が整っています。「まずは慣れること」を第一の目標にして、少しずつステップアップしていきましょう。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「1日のスケジュールについていけるか不安」という相談は、本当によく受けます。でも、心配しないでください。就労移行支援は「訓練」ですから、最初からできなくて当たり前です。大切なのは、少しずつできることを増やしていくこと。スタッフは、一人ひとりのペースに合わせてサポートします。焦らず、自分のペースで進めていきましょう。
出典・一次情報
監修者情報
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

