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【手帳なしでも使える】就労移行支援を診断書で申請する方法|条件から成功のコツまで完全ガイド

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

「障害者手帳を持っていないけれど、就労移行支援を使えるのか分からない」 「診断書だけで申請できるって本当?」 「手帳を取るのはハードルが高くて、他に方法はないのか知りたい」 「どこに相談すればいいのか、何から始めればいいのか分からない」

そんな悩みを持つ方も多いと思います。

実は、障害者手帳がなくても、就労移行支援を利用できるケースは十分にあります。。

そこで、この記事では、手帳を持っていない状態で就労移行支援を利用するための条件、診断書を使った申請の流れ、成功のコツまで、実務的な情報を体系的にまとめました。読み終えたとき、あなたは「自分が利用できそうか」を判断でき、明日どう動けばいいかが具体的に分かっている状態になります。

特に重要なのは、「障害福祉サービス受給者証」という仕組みを使えば、手帳がなくても医師の診断書・意見書によって申請できるという点です。

目次

この記事で分かること

  • 手帳なしでも就労移行支援を利用できる条件と、対象になる人の具体例
  • 「障害福祉サービス受給者証」とは何か、どうやって取得するのか
  • 医師に診断書・意見書を依頼するときの伝え方とポイント
  • 申請から利用開始までの流れと、おおよその期間・費用のイメージ
  • 手帳ありの場合との違い(メリット・デメリット)を比較して判断する材料
  • 申請を通りやすくする具体的なコツと、よくある失敗パターンへの対策

まず結論:手帳なしでも就労移行支援は利用できるのか?

結論から言えば、障害者手帳がなくても就労移行支援を利用できる可能性は十分にあります。

ただし、実際に利用できるかどうかは、お住まいの自治体の判断によって異なります。

「障害者手帳がないと使えない」というのは、よくある誤解です。実際には、障害者手帳ではなく**「障害福祉サービス受給者証」**という証明書があれば、就労移行支援を含む福祉サービスを利用できます。

この受給者証を取得するとき、障害者手帳がない場合は、医師の診断書や意見書を使って申請することができます。自治体が「この人には就労支援が必要だ」と判断すれば、手帳の有無にかかわらず受給者証が発行され、就労移行支援を利用できるようになります。

手帳なしで利用する際の3つの重要ポイント

  • 手帳と受給者証は別物:手帳がなくても受給者証は取得できる。受給者証が「福祉サービスを使うためのパスポート」の役割を果たす
  • 診断書・意見書が必要:医師から「就労に困難がある」「支援が必要」という内容の診断書や意見書を出してもらうことで申請の根拠になる
  • 自治体の判断による:同じ状況でも、自治体や担当者によって判断が分かれることがある。事前相談と丁寧な説明が成功のカギ

✓ 結論:手帳がなくても利用できる可能性は十分にあります

必要なのは「障害福祉サービス受給者証」であり、手帳ではありません。医師の診断書・意見書があれば、手帳なしでも受給者証を申請できます。ただし最終的な判断は自治体によって異なります。

就労移行支援の対象者と「手帳の有無」の関係

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。制度上はおおむね、「65歳未満で、一般企業での就労を希望し、一定の支援があれば就労が見込まれる人」が対象とされています。具体的な判断基準や運用は自治体によって異なります。

ここで重要なのは、制度上「障害者手帳を持っていること」を必須条件にしていないという点です。障害者の定義には、身体障害、知的障害、精神障害のほか、難病や発達障害なども含まれ、それらの診断や意見書があれば対象になり得ます。

対象者の考え方(一般的な目安)

  • 就労を希望している
  • 就労に何らかの困難や配慮が必要な状態にある
  • 18歳以上65歳未満(原則。延長されるケースもある)
  • 訓練を受けることで就労の可能性が見込まれる

※年齢要件や継続利用の取り扱いは自治体によって異なるため、詳細はお住まいの自治体に確認してください。

つまり、「障害者手帳を持っているか」ではなく、「就労に困難があり、支援が必要かどうか」が判断基準になります。実際に手帳なしで利用している人は一定数いますし、むしろ「手帳を取るかどうか迷っている段階」で就労移行支援を利用し、訓練を通じて自分の状態を理解してから手帳取得を検討する人もいます。

よくある誤解と事実

誤解:「障害者手帳がないと絶対に使えない」 事実:手帳がなくても、医師の診断書や意見書で受給者証を申請できる

誤解:「グレーゾーンだと対象外」 事実:明確な診断名がなくても、就労困難の状態が認められれば対象になるケースがある

誤解:「手帳なしだと費用が高くなる」 事実:利用料は手帳の有無ではなく、世帯収入によって決まる。手帳なしでも無料で利用できる人は多い

手帳がないときにカギになる「受給者証」とは?

「障害福祉サービス受給者証」とは、就労移行支援をはじめとする障害福祉サービスを利用するために必要な証明書です。イメージとしては、福祉サービスを使うためのパスポートのようなものです。

この受給者証には、以下のような情報が記載されています:

  • 利用できるサービスの種類(就労移行支援、就労継続支援など)
  • サービスの支給量(月に何日利用できるか)
  • 有効期間(1年ごとに更新するのが一般的)
  • 利用者負担上限月額(1か月あたりの自己負担の上限額)

受給者証を取得するには、お住まいの市区町村に申請し、審査を受ける必要があります。このとき、「なぜ就労支援が必要なのか」を証明する資料として、障害者手帳か、医師の診断書・意見書が必要になります。

手帳と受給者証の違い

手帳と受給者証は、しばしば混同されますが、役割が全く異なります:

  • 障害者手帳:障害があることを証明し、税金の控除や交通機関の割引、障害者雇用枠への応募などに使う
  • 受給者証:福祉サービス(就労移行支援など)を利用するために必要な証明書

つまり、手帳がなくても受給者証さえあれば就労移行支援は利用できますし、逆に手帳を持っていても受給者証がなければ利用できません。

受給者証でできること

  • 就労移行支援事業所に通所できる
  • 訓練や就職支援を受けられる
  • 利用料の負担上限が明確になる

※有効期間は通常1年。更新が必要です。

📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
実務上、「手帳がないと無理だと思っていました」という方はとても多いです。しかし実際には、精神科や心療内科に通院している方であれば、主治医に相談して診断書を書いてもらうことで受給者証を取得できるケースも多く見られます。なお、最終的な可否判断は自治体によって異なります。手帳を取ることに抵抗がある方でも、まずは診断書で申請してみることをお勧めします。利用を始めてから、必要に応じて手帳取得を検討しても遅くありません。

手帳なしで利用できる条件とチェックポイント

「自分は対象になるのだろうか?」という疑問に答えるため、ここでは手帳なしで就労移行支援を利用できる条件を具体的に整理します。

基本的な条件は、年齢・障害や病気による就労の困難さ・就労意欲・通所可能性の4つの観点から判断されます。すべての条件を完璧に満たす必要はなく、総合的に「この人には支援が必要だ」と自治体が判断すれば利用できます。

年齢・障害の状態・通院歴などの基本条件

就労移行支援を利用するための基本的な枠組みを理解しましょう。

①年齢

  • 原則18歳以上65歳未満
  • 18歳以上であれば、高校在学中でも利用できるケースがある
  • 65歳を超えても、それまでに利用していた場合は継続できることがある

②障害や病気による就労の困難さ

手帳がない場合、以下のいずれかに該当することが目安になります:

  • 精神科・心療内科・発達障害専門外来などに通院している
  • うつ病、適応障害、パニック障害、社交不安障害、双極性障害などの診断を受けている
  • 発達障害(ASD、ADHD、LDなど)の診断や、その疑いがある
  • 難病(指定難病に限らない)で体調管理が必要
  • 高次脳機能障害など、後天的な障害がある

「診断名がはっきりしない」「グレーゾーン」という場合でも、就労に困難がある状態を医師が認めて診断書・意見書を書いてくれれば、申請の根拠になります。

③通院歴・医療との繋がり

  • 現在通院中であることが望ましい(月1回以上の通院が目安)
  • 過去に通院歴があり、現在は通っていない場合でも、再度受診して診断書を依頼できる
  • 通院歴がまったくない場合は、まず精神科や心療内科を受診することから始める

④就労意欲と訓練への取り組み姿勢

  • 一般企業で働きたいという意欲がある
  • 訓練を受けることで就労の可能性が見込まれる
  • 週に何日か通所できる、またはオンライン訓練に参加できる
条件の項目 具体例
年齢 18〜65歳
通院状況 精神科・心療内科などに月1回以上通院
診断名 うつ病、適応障害、発達障害など
就労意欲 一般企業で働きたい気持ちがある

グレーゾーン・診断名が曖昧なケースはどう扱われる?

「診断名がはっきりしない」「グレーゾーンと言われた」という場合でも、就労移行支援を利用できる可能性は十分にあります。

※ここで言う「グレーゾーン」とは、正式な診断名はついていないものの、生きづらさや就労の難しさが続いている状態を指しています。言葉の響きに抵抗がある方もいるかもしれませんが、「診断名の有無だけで対象が決まるわけではない」ということをお伝えしたいという意図です。

自治体が判断するのは「診断名があるかどうか」ではなく、**「就労に困難があり、支援が必要かどうか」**です。明確な診断名がなくても、医師が「就労には配慮が必要」「支援があれば就労可能」という内容の意見書を書いてくれれば、それが申請の根拠になります。

グレーゾーンでも利用できたケース

  • 発達障害の「傾向がある」とされたが、確定診断はない段階で利用開始
  • うつ状態が続いているが、うつ病と診断するには至らないと言われた状態で申請
  • 社交不安が強く、医師から「就労には支援が必要」という意見書をもらって利用

自治体による判断の違い

同じ診断書・意見書でも、自治体や担当者によって判断が分かれることがあります。ある自治体では「診断名が明確でないと難しい」と言われても、別の自治体では「医師の意見書があれば問題ない」と受理されることもあります。

もし一度断られた場合でも、以下の対応が可能です:

  • 担当者を変えてもう一度相談する
  • 医師に診断書の内容を具体的に書き直してもらう
  • 相談支援事業所や基幹相談支援センターに同行してもらう
  • 都道府県の障害福祉課に相談する
Q:診断名がない場合はどうすればいい?

A:医師に「就労に困難がある」「支援が必要」という内容の意見書を書いてもらえるか相談しましょう。診断名よりも、「どんな配慮や支援が必要か」を具体的に記載してもらうことが重要です。

Q:通院していないと申請できない?

A:現在通院していなくても、過去の通院歴があれば再受診して診断書を依頼できます。通院歴がまったくない場合は、まず精神科や心療内科を受診することから始めましょう。

ここまで読んだら: 自分が条件に当てはまりそうか、おおよそのイメージが持てたでしょうか。迷う場合は、まず相談窓口(市区町村の障害福祉課や相談支援事業所)に連絡して、「自分のケースでも利用できそうか」を聞いてみましょう。

診断書・意見書で申請する具体的な流れ

ここからは、「手帳なし・診断書あり」の状態で、実際にどうやって申請するのかを5つのステップで説明します。

申請から利用開始まで、おおよそ1〜2か月程度かかるのが一般的ですが、自治体や時期によって前後します。焦らず、一つずつ進めていきましょう。

STEP1

相談窓口に連絡する

自治体の障害福祉課、または相談支援事業所に連絡

STEP2

医師に診断書・意見書を依頼

通院先の医師に、就労支援が必要な旨を説明

STEP3

受給者証を申請する

必要書類を揃えて自治体に申請。面談を受ける

STEP4

支給決定〜事業所との契約

受給者証が発行されたら、事業所と契約

STEP5

通所開始〜就職支援スタート

訓練と並行して就職活動も進めていく

まずはどこに相談する?相談窓口の選び方

申請の第一歩は、「どこに相談するか」を決めることです。相談窓口は主に3つあり、それぞれに役割と向いている人が異なります。

①市区町村の障害福祉課・福祉事務所

役割:受給者証の申請窓口。申請に必要な書類や手続きを案内してくれる 向いている人:「まず制度の基本を知りたい」「何から始めればいいか分からない」という人 メリット:申請の流れを直接聞ける。その場で必要書類をもらえることもある デメリット:事業所の具体的な紹介や、個別の悩みに寄り添うサポートは限定的

②相談支援事業所・基幹相談支援センター

役割:障害福祉サービス全般の相談に乗り、サービス等利用計画を作成する専門機関 向いている人:「自分に合った事業所を探してほしい」「申請手続きを一緒に進めてほしい」という人 メリット:相談支援専門員が親身に相談に乗ってくれる。計画作成も依頼できる デメリット:事業所によって対応の質に差がある

③就労移行支援事業所

役割:実際に訓練を提供する事業所。見学や体験利用も受け付けている 向いている人:「利用したい事業所が決まっている」「まず雰囲気を見てから決めたい」という人 メリット:訓練内容や雰囲気を直接確認できる。申請のサポートもしてくれることが多い デメリット:受給者証がないと正式利用はできない(体験利用は可能)

どこから始めるのがおすすめ?

初めての方は、市区町村の窓口か相談支援事業所に連絡するのがおすすめです。特に相談支援事業所は、申請手続きのサポートから事業所選びまで一貫して支援してくれるので、「何から始めればいいか分からない」という人には心強い存在です。

事業所が決まっている場合は、直接事業所に連絡して見学・体験利用を申し込み、そこで申請の流れを教えてもらうこともできます。

窓口 役割 向いている人
市区町村窓口 申請手続きの案内 制度を知りたい人
相談支援事業所 総合的な相談・計画作成 伴走支援がほしい人
就労移行事業所 訓練提供・見学対応 事業所が決まっている人

医師に診断書・意見書を依頼するときのポイント

診断書や意見書は、受給者証申請の根拠となる重要な書類です。ただ「診断書をください」と言うだけでなく、**「何のために必要か」「どんな内容を書いてほしいか」**を医師に具体的に伝えることが大切です。

診察前に準備しておくこと

医師との診察時間は限られているため、事前に以下の内容をメモにまとめておくと、スムーズに依頼できます。

  • 利用したいサービス:就労移行支援を利用したいこと
  • 困っていること:仕事が続かない、対人関係が苦手、朝起きられない、集中力が続かない、など具体的に
  • どんな配慮があれば働けそうか:静かな環境、短時間勤務から始める、在宅勤務、など
  • 就労の意欲:働きたい気持ちはあるが、今の状態では難しいと感じていること

医師への伝え方の例

「就労移行支援という福祉サービスを利用したいので、診断書または意見書を書いていただけますか?就労には意欲がありますが、今の状態では仕事が続かず、専門的な訓練と支援が必要だと感じています。」

「具体的には、〇〇(対人不安、集中力の低下など)が原因で、職場での〇〇(業務遂行、コミュニケーションなど)に困難があります。就労移行支援で訓練を受けながら、自分に合った働き方を見つけたいと考えています。」

診断書・意見書に書いてもらうと良い内容

  • 病名・診断名(あれば)
  • 就労に困難をきたしている症状や状態
  • 現在の治療状況(通院頻度、服薬など)
  • 就労には支援や配慮が必要であること
  • 訓練を受けることで就労の可能性が見込まれること

医師によっては、「障害福祉サービス用の意見書」という定型フォームを使うこともあります。自治体から指定の様式がある場合は、それを医師に渡して記入してもらいます。

診断書の費用

診断書の作成には、通常3,000円〜10,000円程度の文書料がかかります(保険適用外)。医療機関によって金額が異なるため、事前に確認しておくと安心です。

医師に伝える内容チェックリスト

※チェックを入れながら準備を進めましょう(ページを更新すると消えます)

受給者証申請〜支給決定までのステップ

診断書が手に入ったら、いよいよ受給者証の申請です。ここでは、申請から支給決定までの流れを説明します。

必要な書類(一般的なケース)

自治体によって多少異なりますが、以下の書類を準備します:

  • 障害福祉サービス受給者証交付申請書(自治体の窓口でもらえる)
  • 医師の診断書または意見書
  • サービス等利用計画案(相談支援事業所が作成、またはセルフプラン)
  • 所得証明書類(世帯の収入を証明するもの)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 印鑑(自治体によって不要な場合もある)

サービス等利用計画案とは?

これは、「どのサービスをどのくらい利用するか」「どんな目標を持つか」を記載した計画書です。相談支援事業所に依頼すれば、相談支援専門員が作成してくれます(無料)。自分で作成する「セルフプラン」も可能ですが、初めての方は相談支援事業所に依頼するのがおすすめです。

申請から利用開始までの流れ
1

相談窓口に連絡・相談

2

医師に診断書・意見書を依頼

3

必要書類を揃えて自治体に申請

4

面談・審査(1〜2か月)

5

受給者証発行・事業所と契約

6

通所開始・訓練スタート

期間の目安

申請から受給者証の発行まで、早ければ2週間、通常1〜2か月程度かかります。混雑する時期(年度初めなど)はさらに時間がかかることもあります。

その間も、多くの事業所では「体験利用」として無料で訓練に参加できるため、待っている時間を無駄にせず、事業所の雰囲気を確認しながら過ごせます。

📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
面談では、「なぜ就労移行支援が必要なのか」を具体的に伝えることが重要です。「仕事が続かない」だけでなく、「朝起きられず遅刻が多い」「人と話すと緊張して言葉が出ない」など、日常生活や職場での具体的な困りごとを伝えましょう。抽象的な表現よりも、具体的なエピソードの方が審査する側も判断しやすくなります。

ここまで読んだら: 申請の流れが具体的にイメージできたでしょうか。まずは相談窓口(市区町村の障害福祉課、または相談支援事業所)に連絡して、「手帳なしで申請したい」と伝えてみましょう。

手帳あり/手帳なしでの違いとメリット・デメリット

「結局、手帳を取ったほうがいいのか?」という疑問に答えるため、ここでは手帳ありの場合と手帳なしの場合での違いを整理します。

結論から言えば、どちらが正解ということはなく、あなたの状況や考え方によって選択は変わります。ここで示す情報をもとに、自分にとってのメリット・デメリットを天秤にかけてみてください。

サービス利用・お金・働き方の観点での違い

手帳の有無によって、以下のような違いが生じます。

観点 手帳あり 手帳なし
就労移行支援の利用 利用可能(手帳が証明になる) 利用可能(診断書・意見書で申請)
利用料 世帯収入による(手帳の有無は関係ない) 世帯収入による(手帳の有無は関係ない)
障害者雇用枠への応募 可能(手帳が必須) 不可(一般枠のみ)
税金の控除 障害者控除が受けられる 受けられない
交通機関の割引 割引が受けられる(等級による) 受けられない
公共施設の割引 割引が受けられる施設が多い 受けられない
申請手続き 受給者証申請がスムーズ(手帳が証明になる) 診断書の準備が必要。自治体によって判断が分かれることも

手帳ありのメリット

  • 障害者雇用枠に応募できる(配慮を受けやすい求人に応募できる)
  • 税金の控除(障害者控除・特別障害者控除)が受けられる
  • 交通機関や公共施設の割引が使える
  • 受給者証の申請がスムーズ(手帳が証明になるため審査が早い)

手帳なしのメリット

  • 心理的なハードル(「障害者」というラベルへの抵抗感)がない
  • 一般雇用枠で働くことを前提にできる(手帳を使わない選択肢が残る)
  • 手帳取得の手間や時間がかからない

デメリット

  • 手帳あり:心理的な抵抗感、家族や周囲への説明が必要になる場合がある
  • 手帳なし:障害者雇用枠に応募できない、各種割引が使えない、受給者証申請が手帳ありより手間

手帳取得の心理的ハードルと、判断するためのヒント

多くの方が、手帳を取ることに心理的な抵抗を感じます。「障害者というレッテルを貼られたくない」「自分はそこまでではない」「家族に知られたくない」といった気持ちは、自然なものです。

ここでは、決めつけずに考えるためのヒントを提示します。

手帳を取るかどうか、考える視点

  • 目的から逆算する:「障害者雇用枠で働きたい」なら手帳は必須。「一般雇用で働きたい」なら手帳なしでも問題ない
  • 今すぐ決めなくていい:就労移行支援を利用しながら、自分の状態や働き方を考える時間を持てる。訓練を通じて「やはり配慮が必要」と分かってから手帳取得を検討しても遅くない
  • 手帳は道具:手帳は「使うか使わないか」を自分で選べる。取得したからといって、必ず使わなければいけないわけではない
  • 周囲に知られるかどうか:手帳を持っていても、職場や周囲に見せる義務はない。障害者雇用枠で働く場合は開示が前提だが、一般枠なら開示しなくても良い

よくある誤解

誤解:「手帳を取ったら一生『障害者』として生きなければいけない」 事実:手帳は更新制。症状が改善すれば返還できる。また、持っているだけで使わない選択肢もある

誤解:「手帳を持っていると周囲にバレる」 事実:自分から見せない限り、周囲に知られることはない

誤解:「手帳を取ると就職で不利になる」 事実:一般雇用枠では手帳の有無を開示する義務はない。障害者雇用枠では、手帳があることで配慮を受けやすくなる

🤔 手帳取得を考えるときの視点
  • 今の自分の状態で、どんな働き方が現実的か?
  • 障害者雇用枠に興味があるか?(配慮を受けながら働きたいか)
  • 手帳を持つことで得られるメリット(税金控除、割引など)は自分にとって重要か?
  • 手帳を取ることへの心理的なハードルは、どのくらいか?
  • まずは就労移行支援を利用してから、改めて考えても遅くないか?

ここまで読んだら: 手帳を取るかどうかは、焦って決める必要はありません。まずは就労移行支援を利用しながら、自分に合った働き方を考える時間を持つこともできます。

手帳なしでも料金は変わらない?利用料金・自己負担の仕組み

「お金がどのくらいかかるのか?」という不安は、就労移行支援の利用を検討する上で最も大きな関心事の一つです。ここでは、利用料の仕組みと、実際にいくらかかるのかを具体的に説明します。

利用者負担上限額の仕組み

就労移行支援の利用料は、サービス利用料の1割が原則ですが、世帯の収入に応じて月額の負担上限が設定されています。つまり、1割を払うのではなく、上限額までしか負担しなくて済む仕組みです。

さらに、多くの方は負担上限額が0円、つまり無料で利用できます。

区分 世帯収入の目安 月額負担上限
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) 9,300円
一般2 市町村民税課税世帯(所得割16万円以上) 37,200円

※世帯とは、本人と配偶者。親や兄弟姉妹と同居していても、本人が18歳以上なら親の収入は含まれない。

実際にはどのくらいの人が無料で利用しているか?

公表されている統計では、就労移行支援の利用者の多くが負担上限額0円、つまり無料で利用しているとされています。残りの方も、多くが月額9,300円以内の自己負担におさまっています。具体的な割合は年度や自治体によって異なるため、詳しくはお住まいの自治体や事業所に確認してください。

「市町村民税非課税世帯」とは、年収が概ね200万円以下の世帯です。本人が働いておらず、配偶者の収入も低い場合、多くの方がこの区分に該当します。

手帳なしでも利用料は変わる?よくある勘違い

「手帳がないと利用料が高くなる」という誤解がありますが、これは事実ではありません。

利用料は手帳の有無ではなく、世帯の収入によって決まります。手帳を持っているかどうかは、利用料には一切影響しません。

❌ よくある勘違い

「手帳がないと利用料が高くなる」→ 事実ではありません。利用料は世帯収入で決まり、手帳の有無は関係ありません。

✅ 正しい理解

利用料は、あなたと配偶者の収入に基づく区分で決定します。手帳の有無は無関係です。

その他の費用

就労移行支援の利用料以外に、以下の費用がかかる場合があります:

  • 交通費:事業所への通所にかかる交通費(事業所によっては一部補助あり)
  • 昼食代:お弁当を持参すれば0円。事業所で注文する場合は1食300〜500円程度
  • 教材費:基本的に無料だが、一部の専門的な教材や資格受験料は自己負担の場合がある

多くの事業所では、交通費の一部補助や、昼食の無料提供を行っているところもあります。見学時に確認しましょう。

ここまで読んだら: 「手帳がないと費用が高くなる」という誤解が解けたでしょうか。利用料は世帯収入で決まるため、あなたの状況を自治体や事業所に相談してみましょう。

申請を通りやすくする「成功のコツ」とよくある落とし穴

ここまで読んで、「申請の流れは分かったけれど、実際に通るか不安」と感じている方も多いでしょう。ここでは、申請を通りやすくするための具体的なコツと、よくある失敗パターンを紹介します。

面談で伝えるべき「困りごと」の整理の仕方

受給者証の申請では、自治体の担当者との面談があります。この面談で、「なぜ就労移行支援が必要なのか」を具体的に伝えることが、審査を通過するための最大のポイントです。

面談で聞かれること(例)

  • 現在の生活状況(一人暮らしか、家族と同居か、日中の過ごし方など)
  • これまでの就労経験(どんな仕事をしていたか、何が原因で辞めたか)
  • 現在困っていること(体調、対人関係、生活リズムなど)
  • 就労移行支援を利用して何をしたいか(どんなスキルを身につけたいか、どんな働き方を目指すか)
  • 他のサービス(医療、福祉など)の利用状況

伝え方のコツ:具体的なエピソードを話す

抽象的な表現よりも、具体的なエピソードの方が、審査する側も状況を理解しやすくなります。

❌ 悪い例:「仕事が続きません」 ✅ 良い例:「これまで3回転職しましたが、いずれも半年以内に辞めています。朝起きられず遅刻が続いたり、上司とのコミュニケーションがうまくいかず、叱責されることが増えて退職しました。」

❌ 悪い例:「対人関係が苦手です」 ✅ 良い例:「職場で雑談に入れず、孤立してしまいます。電話対応では緊張して言葉が出なくなり、お客様に怒られることもありました。休憩時間も一人で過ごすことが多く、周囲から『暗い』と言われていました。」

面談前に整理しておきたいこと
これまでの就労経験 どんな仕事を、どのくらいの期間?
辞めた理由 何が原因でうまくいかなかった?
日常生活の困りごと 朝起きられない、外出できない、など
仕事での困りごと 業務遂行、コミュニケーション、など
どんな配慮があれば働けそうか 静かな環境、短時間勤務、在宅勤務、など

自治体・担当者によって判断が分かれるポイント

同じ診断書・同じ状況でも、自治体や担当者によって判断が分かれることがあります。これは、「どの程度の困難があれば支援が必要か」という基準が、明確に数値化されていないためです。

判断が分かれやすいケース

  • 診断名が曖昧、またはグレーゾーンと言われている
  • 過去の就労経験が長い(「働けていた実績があるなら、支援は不要では?」と判断される可能性)
  • 通院頻度が少ない(「症状が軽いのでは?」と見なされる可能性)
  • 就労意欲が伝わりにくい表現をしてしまった

もし一度断られたら?

諦める前に、以下の対応を試してみましょう:

  • 担当者を変えて再相談:同じ自治体でも、担当者が変われば判断が変わることがある
  • 医師に診断書を書き直してもらう:より具体的に、就労困難の状態を記載してもらう
  • 相談支援事業所に同行してもらう:専門家が同席することで、適切な説明ができる
  • 都道府県の窓口に相談:市区町村の判断に納得できない場合、都道府県の障害福祉課に相談できる
⚠️ 申請で失敗しやすいパターン
  • 「なんとなく不安」など、抽象的な表現しか使わない
  • 「働きたくない」という印象を与えてしまう
  • 診断書の内容が薄い(症状や困りごとが具体的に書かれていない)
  • 面談で緊張して、うまく話せず終わってしまう

📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
申請が一度断られても、それで終わりではありません。診断書の内容を具体的にしてもらう、相談支援事業所に同行してもらうなど、できる対策はいくつもあります。「自分は対象外なんだ」と諦めず、まずは相談支援事業所や事業所のスタッフに相談してみてください。一緒に対策を考えてくれるはずです。

ここまで読んだら: 失敗しやすいパターンが分かったら、面談前に「困りごとメモ」を作成してみましょう。具体的なエピソードを整理しておくことで、自信を持って面談に臨めます。

それでも迷うときに考えたいことと次の一歩

ここまで読んで、「なんとなく分かったけれど、まだ迷っている」という方もいるでしょう。それは自然なことです。大きな決断には、迷いがつきものです。

ここでは、迷っているときに考えたいことと、具体的な次の一歩を提示します。

迷ったときに考えたい3つの視点

  1. 「完璧に準備してから」ではなく、「まず相談してから」 すべてを理解してから動き出す必要はありません。相談窓口に連絡するだけ、事業所を見学するだけでも、次のステップが見えてきます。
  2. 「一人で抱え込まない」 申請手続きや、手帳取得の判断など、一人で悩む必要はありません。相談支援事業所、事業所のスタッフ、医師など、サポートしてくれる人はたくさんいます。
  3. 「まずは体験してから決める」 受給者証が発行される前でも、多くの事業所で無料の体験利用ができます。実際に訓練を受けてみて、「自分に合いそうか」を確認してから正式利用を決めても遅くありません。

明日からできる具体的なアクション

迷っているなら、まずは以下のいずれか一つを実行してみましょう。小さな一歩が、大きな変化につながります。

明日できることリスト

一人で抱え込まないでください

「手帳がないから無理かもしれない」「自分は対象外かもしれない」と一人で悩むより、まずは誰かに相談することが大切です。相談することで、「意外と使えそうだ」「こんな方法があったのか」と気づくことも多いです。

相談先は、市区町村の窓口、相談支援事業所、就労移行支援事業所、主治医など、複数あります。どこから始めても構いません。一つの窓口で断られても、別の窓口では親身に対応してくれることもあります。

就労移行支援は、あなたが働きたいと思う気持ちを応援するための制度です。手帳がないことは、利用を諦める理由にはなりません。まずは、小さな一歩を踏み出してみてください。

手帳なしでの就労移行支援利用|よくある質問(FAQ)

ここでは、手帳なしでの就労移行支援利用に関して、よくある質問に答えます。

Q1:手帳がないと絶対に利用できないのでは?

A:いいえ、利用できます。医師の診断書・意見書があれば、手帳なしでも受給者証を申請できます。実際に、手帳を持たずに利用している方は一定数います。

Q2:診断名がはっきりしないのですが、申請できますか?

A:診断名が曖昧でも、医師が「就労には支援が必要」という内容の意見書を書いてくれれば、申請の根拠になります。自治体によって判断が分かれる場合もありますが、まずは相談してみることをお勧めします。

Q3:手帳なしだと利用料が高くなりますか?

A:いいえ、利用料は手帳の有無ではなく、世帯収入によって決まります。手帳がなくても、無料で利用できる方は多いです。

Q4:申請から利用開始まで、どのくらいの期間がかかりますか?

A:自治体によって異なりますが、申請から受給者証の発行まで、通常1〜2か月程度です。その間も、多くの事業所で無料の体験利用ができます。

Q5:一度申請が断られました。もう利用できないのでしょうか?

A:諦めないでください。診断書の内容を具体的にしてもらう、相談支援事業所に同行してもらう、担当者を変えて再相談するなど、できる対策はあります。

Q6:通院していないのですが、今から受診して診断書をもらえますか?

A:はい、可能です。精神科や心療内科を受診し、これまでの経緯や困りごとを伝えれば、医師が診断書を書いてくれる場合があります。ただし、初診ですぐに書いてもらえるとは限らないため、何度か通院が必要な場合もあります。

Q7:障害者雇用枠で働きたいのですが、手帳なしでも応募できますか?

A:いいえ、障害者雇用枠への応募には、原則として障害者手帳が必要です。障害者雇用を希望する場合は、手帳取得を検討しましょう。

Q8:手帳を取るかどうか迷っています。就労移行支援を利用しながら考えることはできますか?

A:はい、できます。多くの方が、訓練を受けながら自分の状態や働き方を考え、その上で手帳取得を検討しています。焦って決める必要はありません。

Q9:他の都道府県の事業所を利用することはできますか?

A:基本的には、お住まいの市区町村内、または近隣の事業所を利用するのが原則ですが、在宅訓練(オンライン)に対応している事業所であれば、他の都道府県の事業所を利用できるケースもあります。ただし運用は自治体ごとに大きく異なるため、必ず事前にお住まいの自治体へ確認が必要です。

Q10:家族に知られずに利用することはできますか?

A:18歳以上であれば、基本的には本人の意思で申請できます。ただし、世帯収入の証明などで家族の協力が必要になる場合もあります。どうしても家族に知られたくない事情がある場合は、相談支援事業所に相談してみてください。

📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「手帳がないから無理だと思っていた」という方が、実際に診断書で申請して利用を始めるケースは非常に多いです。まずは諦めずに、相談窓口に連絡してみてください。あなたの状況に合った方法を一緒に考えてくれるはずです。一人で悩まず、まず一歩を踏み出すことが大切です。

まとめ:手帳なしでも就労移行支援は利用できる|3つのポイントと次の一歩

この記事では、障害者手帳がなくても就労移行支援を利用できること、そのための申請方法と成功のコツを解説しました。最後に、重要なポイントを3つにまとめます。

3つの重要ポイント

  1. 手帳と受給者証は別物 就労移行支援の利用に必要なのは「障害福祉サービス受給者証」であり、障害者手帳ではありません。手帳がなくても、医師の診断書・意見書で受給者証を申請できます。ただし最終的な判断は自治体によって異なります。
  2. 利用料は世帯収入で決まる 手帳の有無は利用料に影響しません。多くの方が無料(負担上限額0円)で利用しており、手帳なしでも同じです。
  3. 具体的に伝えることが成功のカギ 申請時の面談では、「なぜ支援が必要か」を具体的なエピソードで伝えることが重要です。抽象的な表現ではなく、日常生活や職場での具体的な困りごとを説明しましょう。

次にやるべきこと

この記事を読んで、「自分も利用できるかもしれない」と思ったら、以下のいずれか一つから始めてみてください:

  • 市区町村の障害福祉課に電話して、手帳なしでの申請について相談する
  • 近くの相談支援事業所を検索し、問い合わせる
  • 気になる就労移行支援事業所のWebサイトを見て、見学・体験利用に申し込む
  • 通院先の医師に、「就労移行支援を利用したい」と相談する予定を立てる

どれも、今日・明日からできることです。完璧に準備してから動き出す必要はありません。まずは相談することで、次のステップが見えてきます。

手帳を取るかどうかは、焦って決めなくて大丈夫

手帳を取るかどうかは、就労移行支援を利用しながら考えることもできます。訓練を通じて自分の状態や働き方が見えてきたら、その時点で改めて判断しても遅くありません。

就労移行支援は、あなたが「働きたい」と思う気持ちを応援するための制度です。手帳がないことは、その第一歩を諦める理由にはなりません。

一人で悩まず、まずは誰かに相談してみてください。あなたに合った働き方を見つけるための支援が、きっと見つかります。

監修者情報

市原早映(いちはら さえ) サービス管理責任者

就労移行支援事業所にて10年以上の実務経験。精神障害、発達障害のある方を中心に、延べ500名以上の就労支援に携わる。利用者一人ひとりに寄り添った支援を心がけ、「分かりやすく、安心できる説明」をモットーに日々の支援を行っている。

出典・一次情報

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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