この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労支援施設では、実際どんな仕事をするのだろう」——見学の予約を入れる前に、中身を知っておきたいという方は多いはずです。
先に押さえておきたいのは、「就労支援施設」という名前の施設は制度上存在しないということ。就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型という3つのサービスがまとめてそう呼ばれています。
そして3つは、やることが根本から違います。就労移行支援は「訓練」、A型は「雇用契約を結んだ仕事」、B型は「雇用契約を結ばない作業」。この違いを知らないまま見学に行くと、話がかみ合いません。
- 3つのサービスで何をするのかが具体例つきでわかる
- 受け取れるお金の実額(国の最新統計)がわかる
- 全国150市区・1,545事業所を調べてわかった通い方の実態がわかる
「就労支援施設」と呼ばれる3つのサービス
| 比較項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|---|
| やること | 就職するための訓練 | 雇用契約を結んで働く | 雇用契約を結ばずに作業する |
| 受け取るお金 | 原則なし | 賃金(最低賃金以上) | 工賃 |
| 平均額(2024年度) | — | 月額91,451円 | 月額24,141円 |
| 利用期間 | 標準2年(最大1年更新) | 制限なし | 制限なし |
| 事業所数 | 2,941か所 | 4,575か所 | 17,059か所 |
| 利用者数 | 36,667人 | 88,967人 | 348,016人 |
事業所数・利用者数は国保連令和5年12月実績、平均額は厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」による。
数のうえでB型が圧倒的に多く、就労移行支援がいちばん少ないことがわかります。「就労支援施設」という言葉でイメージされる作業所の多くは、B型を指していることが少なくありません。
就労移行支援の中身は「仕事」ではなく「訓練」
就労移行支援では、原則としてお金は受け取りません。その代わりに、一般企業への就職に必要なことを2年以内で身につけます。おもな内容は次のとおりです。
- 生活リズムを整える通所訓練(毎日決まった時間に通う)
- ビジネスマナー・報連相・コミュニケーションの練習
- パソコン操作、事務スキル、簿記、デザイン、プログラミングなどの技能訓練
- 自己理解と、体調の波・必要な配慮の整理
- 履歴書の作成、面接練習、企業での職場実習
- 就職後の職場定着に向けたフォロー
1,545事業所を調べてわかった「通い方」の実態
エラベルでは全国150市区の就労移行支援事業所1,545件について、公開情報を集計しています(2026年8月時点)。訓練の中身は事業所ごとに違いますが、通い方には共通した傾向がありました。
1日の開所時間は6時間が中央値
平日の開所時間が公開されている1,314件の中央値は6.0時間。10時〜15時が20.3%、10時〜16時が17.9%と続き、6時間以下の事業所が60.9%を占めます。フルタイム勤務よりゆるやかな時間割が標準です。
定員は20人がもっとも多い
定員が判明した1,309件のうち20人が53.9%、次いで6人が15.3%、10人が14.7%。98.4%が定員20人以下で、少人数で運営されています。
土曜に開いている事業所は約半分
土曜の開所時間を公開しているのは52.4%。平日に通いにくい事情がある方でも、選択肢は残っています。
IT・プログラミング対応は約2割
公式サイトでIT・プログラミングの学習に対応していると確認できたのは20.7%、在宅訓練に対応しているのは21.7%。どちらも「探せばあるが多数派ではない」水準です。
訓練の中身は就労移行支援でIT・プログラミングは学べる?や就労移行支援の1日のスケジュールで、より具体的に確認できます。
就労継続支援A型の仕事内容
A型は事業所と雇用契約を結びます。労働者として働くので、都道府県の最低賃金以上の賃金が支払われ、労働時間や休憩、有給休暇も労働基準法にしたがいます。
仕事内容として挙げられることが多いのは、パソコンでのデータ入力や書類作成、ネット通販の受注・梱包・発送、飲食店やカフェでの調理・接客、施設や車両の清掃、部品の組み立てや検品といった作業です。事業所が自ら事業を営み、その収益から賃金を支払う仕組みなので、何をするかは事業所ごとに大きく変わります。
2024年度の平均賃金は月額91,451円(4,220事業所)でした。1日4〜6時間・週4〜5日という勤務が多く、フルタイムで働く前段階の受け皿になっています。
就労継続支援B型の作業内容
B型は雇用契約を結びません。そのぶん労働時間の縛りがなく、週1日・1時間からという通い方も認められます。体調に波がある方が生活のリズムをつくる場として選ばれています。
作業内容としてよく挙げられるのは、袋詰めやシール貼りなどの軽作業、部品の組み立て、農作業や園芸、パンや菓子の製造販売、喫茶店の運営、清掃、リサイクル品の仕分けなどです。
受け取るのは賃金ではなく工賃で、最低賃金は適用されません。ただし国の指定基準では1人あたりの平均工賃が月額3,000円を下回ってはならないと定められており、これを満たさない事業所には重点的な指導監査が入ります。2024年度の全国平均は月額24,141円(18,245事業所)でした。
どれを選べばいいかの目安
「就職」が目標 → 就労移行支援|「安定した収入を得ながら働きたい」 → A型|「まずは体調と生活リズムを整えたい」 → B型
上下の関係ではありません。B型で体調を整えてからA型や就労移行支援へ進む方、就労移行支援の訓練が体力的に厳しくてB型に切り替える方、どちらも実際にいます。サービスを変えるときは受給者証の変更申請が必要なので、相談支援専門員に早めに伝えておきましょう。
自分にどれが合うかを整理したい方は、就労移行支援・A型・B型の30秒セルフチェックが近道です。
よくある質問(FAQ)
あわせて読みたい記事
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。
