この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
【就労移行支援】在宅訓練で成功する人の選び方・進め方|リモート就職への完全ガイド
「自宅で訓練を受けられるなら、自分にもできるかもしれない」 「でも、一人でちゃんと続けられるか不安だし、本当に就職につながるの?」
就労移行支援の在宅訓練は、通所の負担なく専門スキルを学べる大きなチャンスです。しかし、その一方で、事業所選びと日々の進め方を間違えると、孤立してしまったり、スキルが身につかなかったりするリスクも伴います。
この記事では、単なる制度解説にとどまらず、在宅訓練を成功させてリモート就職を実現している人たちが、どのように事業所を選び、日々を過ごしているのか、その具体的な「選び方」と「進め方」のすべてを、この1ページに凝縮しました。
まずは要点(ここだけで全体像が掴めます)
在宅訓練成功の4ステップ
- STEP1:自己診断で向き不向きを判断(チェックリスト付き)
- STEP2:リモート就職につながる事業所を厳選(5つの見極めポイント)
- STEP3:4つの自己管理術で訓練効果を最大化
- STEP4:在宅経験を武器に就職活動を成功させる
費用面の安心ポイント
- サービス利用料は国の制度で上限が決まっており、多くの方が0円〜9,300円で利用可能
- PC貸与や教材費は事業所が負担するケースが多い
- 通信費(月5,000円程度)は基本的に自己負担
STEP 1:まず知る|在宅訓練はあなたに合っているか?
在宅訓練は万能ではありません。成功するかどうかは、あなたの性格や状況、そして最終的な目標によって大きく左右されます。まずは客観的に自分の適性を判断しましょう。
在宅訓練 適性診断
✓ 在宅訓練が向いている可能性が高い人
△ 慎重に検討すべき人(ハイブリッド型がおすすめ)
判定の目安:✓項目が4つ以上なら在宅訓練、△項目が多い場合は通所と組み合わせた「ハイブリッド型」を検討しましょう。
STEP 2:選ぶ|リモート就職につながる事業所の見極め方
在宅訓練を成功させるかどうかは、事業所選びで8割が決まります。以下の5つのポイントで、厳しくチェックしましょう。
- ①リモート支援の実績と文化
見学で確認すべき質問例
「在宅利用者は現在何名いますか?」「在宅訓練での就職実績(特に在宅・リモート求人)を具体的に教えてください」「在宅利用者の定着率はどれくらいですか?」
合格ライン:在宅利用者が全体の30%以上、リモート就職実績が年間5件以上 - ②オンラインで完結する教材とカリキュラム
見学で確認すべき質問例
「全てのカリキュラムがオンラインで提供されていますか?」「オンラインでチームを組んで行う模擬案件はありますか?」「使用する学習プラットフォームを実際に見せてもらえますか?」
合格ライン:90%以上がオンライン完結、チーム作業の経験も積める - ③サポートの速度と質
見学で確認すべき質問例
「チャットでの質問後、平均どのくらいで返信がありますか?」「週に何回、1on1の面談時間が確保されていますか?」「画面共有でのリアルタイムサポートは可能ですか?」
合格ライン:2時間以内の返信、週1回以上の個別面談 - ④コミュニケーションの仕組み
見学で確認すべき質問例
「オンライン朝会や雑談チャネルなど、利用者同士が交流する機会はありますか?」「孤立感を防ぐための具体的な取り組みは?」「利用者同士でサポートし合う文化はありますか?」
合格ライン:毎日の朝会、雑談チャンネル、ピアサポートの仕組みがある - ⑤リモート求人との連携
見学で確認すべき質問例
「在宅勤務が可能な企業の求人紹介は、どのくらいありますか?」「リモートワーク求人専門の転職エージェントとの連携はありますか?」「過去の修了生で、実際にリモートで働いている方は何名いますか?」
合格ライン:リモート求人が全体の50%以上、専門エージェントとの連携あり
チェック項目 | A判定事業所 | C判定事業所(要注意) |
---|---|---|
在宅利用者の割合 | 30%以上 | 10%以下 |
質問への返信時間 | 2時間以内 | 翌日以降 |
個別面談の頻度 | 週1回以上 | 月1回程度 |
リモート求人の割合 | 50%以上 | 20%以下 |
STEP 3:実践する|在宅訓練を成功させる4つの自己管理術
良い事業所を見つけたら、次は日々の訓練を成功させる「自己管理術」の出番です。リモートワーカーになるための実践的なスキルとして身につけましょう。
- ①環境を制する:集中力を高める物理的空間の作り方
具体的な実践方法
訓練専用スペースの確保:可能な限り、寝室とは別の場所にデスクを設置。難しい場合は、パーテーションやカーテンで区切りを作る。
時間の区切り:「ポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩)」を活用。スマホアプリでタイマーを設定し、休憩時間は必ず席を立つ。
誘惑の排除:ゲーム、漫画、テレビなど気が散るものを視界から排除。スマホは別の部屋に置くか、通知をオフにする。 - ②時間を制する:タスク管理とスケジュールの立て方
具体的な実践方法
タスク可視化ツールの活用:Trello、Notion、GoogleカレンダーなどでTO DOリストを作成。「今日やること」「今週やること」を明確に分ける。
朝会での宣言:オンライン朝会で「今日の目標」を宣言し、夕方に「達成度」を報告する習慣を作る。
振り返りの習慣:週末に「うまくいったこと」「改善点」を書き出し、翌週の計画に反映する。 - ③コミュニケーションを制する:テキストでの報・連・相
具体的な実践方法
結論ファーストの文章:「相談があります」ではなく「○○について、AかBかで迷っています」のように、結論や論点を最初に書く。
質問の具体化:「わからない」ではなく「○○の手順の3番目で、エラーが出て先に進めません」のように、状況を詳しく説明。
感謝の表現:「ありがとうございます」だけでなく「おかげで○○ができました」のように、具体的な感謝を伝える。 - ④孤独を制する:意識的な雑談と相談の習慣
具体的な実践方法
雑談チャンネルの活用:業務連絡だけでなく、「今日のお昼は○○でした」「この本面白かったです」など、何気ない投稿を心がける。
小さな相談の習慣:週1回の面談を待たず、「ちょっとした疑問」もすぐにチャットで相談。遠慮は禁物。
同期との繋がり:同じ時期に訓練を始めた仲間との定期的な情報交換会(オンライン飲み会など)を企画・参加。
在宅訓練の1日(成功パターン)
実際に在宅訓練で成果を上げている人たちの、典型的な1日のスケジュールをご紹介します。
在宅訓練の1日(成功パターン)
ポイント:在宅でも「出社している感覚」を保つため、朝会と終礼は必ず参加。休憩時間は画面から離れ、メリハリをつける。
STEP 4:卒業後を見据える|在宅訓練から在宅就職への橋渡し
在宅訓練で身につけたスキルは、就職活動で大きな武器になります。適切にアピールして、理想のリモートワークを実現しましょう。
- 在宅勤務スキルを棚卸しする
履歴書・職務経歴書への記載例
ITスキル:Zoom、Slack、Teams、GoogleWorkspace、Trello、GitHub等の実務経験
自己管理能力:「在宅環境で6ヶ月間、自律的にスケジュール管理を行い、月20日の訓練を完遂」
リモートコミュニケーション:「テキストベースでの報告・連絡・相談、オンライン会議でのファシリテーション経験」
チームワーク:「リモート環境でのグループプロジェクト(○名チーム)を複数回経験」 - 面接でのアピール方法
具体的な回答例
自己管理について聞かれたら:「在宅訓練で6ヶ月間、毎日決まった時間に学習を継続できました。タスク管理ツールで進捗を可視化し、週次で振り返りを行う習慣が身についています」
リモートワーク経験について:「オンラインでのチーム作業を通じて、画面共有での説明や、チャットでの迅速な情報共有のコツを掴みました」
コミュニケーションについて:「文字だけのやり取りでは誤解が生まれやすいため、結論を先に書く、感謝を具体的に表現するなど、工夫してきました」 - 段階的な職場適応戦略
移行プランの例
訓練後半(2-3ヶ月前から):週1-2日は事業所に通所し、対面でのコミュニケーションにも慣れる
就職直後(1-3ヶ月):出社メインで職場の文化や人間関係を把握、リモートワークは週1-2日から開始
定着期(3-6ヶ月):業務に慣れたら、上司と相談してリモート日数を段階的に増加
ポイント:「在宅訓練の経験があるから完全リモートで」ではなく、段階的な移行で信頼関係を構築することが成功の鍵
費用の詳細|在宅訓練でかかるお金と補助制度
在宅訓練を始める前に、費用面もしっかり把握しておきましょう。
費用項目 | 一般的な金額 | 補助・支援の有無 | 確認ポイント |
---|---|---|---|
サービス利用料 | 0円〜9,300円/月 | 国の制度で上限あり | 世帯の収入区分を確認 |
PC・タブレット | 無料貸与が多い | 事業所負担 | 貸与の有無、返却条件 |
ソフトウェア | 無料提供が多い | 事業所アカウント | Office、Adobe等再試行の利用可能性 |
通信費(Wi-Fi等) | 3,000円〜7,000円/月 | 基本的に自己負担 | 安定した回線速度が必要 |
教材・資格受験料 | 事業所により異なる | 一部補助あり | 自己負担分の上限額 |
よくある質問(FAQ)
在宅訓練は誰でも利用できますか?
自治体・事業所の承認が必要です。通所困難な理由(身体的制約、感染症リスク、地理的制約など)と、在宅で訓練を継続できる環境(通信環境、集中できる空間など)が求められます。
障害者手帳がないと在宅訓練は利用できませんか?
手帳がなくても利用可能です。医師の意見書などに基づき、市区町村がサービスの必要性を判断します。
就職後の在宅勤務に本当に役立ちますか?
在宅でのスキル(自己管理、リモートコミュニケーション、各種ITツール)は確実に活かせます。ただし、職場適応のため段階的な移行(最初は出社メイン)が推奨されます。
通所と組み合わせることはできますか?
はい、「ハイブリッド型」が一般的です。例えば、週3日在宅・週2日通所など、個人の状況に応じて柔軟に調整可能です。
孤立感が不安ですが、どんな対策がありますか?
優良な事業所では、オンライン朝会、雑談チャンネル、グループワーク、定期面談など、孤立を防ぐ仕組みが整っています。利用者同士のピアサポートも重要です。
在宅訓練中にトラブルが起きたらどうすればいいですか?
まずは事業所のサポート窓口に相談しましょう。技術的な問題、学習の進捗、人間関係など、どんな小さなことでも早めの相談が解決の鍵です。
トラブル事例と対策|失敗から学ぶ成功の秘訣
実際に起こりがちなトラブルとその対策をご紹介します。
- ケース1:サボり癖がついて、訓練に参加しなくなった
原因と対策
原因:明確な目標設定がない、外部からのプレッシャーがない
対策:①週単位・月単位の具体的な目標設定 ②朝会で毎日の目標を宣言する仕組み ③進捗を可視化するツールの活用 ④同期との定期的な情報交換会 - ケース2:質問しづらくて、わからないことが積み重なった
原因と対策
原因:「迷惑をかけたくない」という遠慮、質問の仕方がわからない
対策:①「小さな質問歓迎」の文化がある事業所を選ぶ ②質問テンプレートを活用(「○○の△△で困っています。□□を試しましたがうまくいきません」) ③定期面談以外にも気軽に相談できる窓口の確認 - ケース3:家族の理解が得られず、集中できない
原因と対策
原因:家族が「在宅=暇」と誤解、訓練時間の理解不足
対策:①家族への事前説明(訓練スケジュール、重要性を共有) ②可能であればパーテーションで物理的に区切る ③「訓練中」の表示を明確に ④事業所からの説明資料を家族にも共有 - ケース4:技術的なトラブルで訓練が中断される
原因と対策
原因:通信環境の不安定、機器の故障、ソフトウェアの問題
対策:①事前の環境チェック(回線速度、使用機器のテスト) ②バックアップ手段の確保(モバイル回線、代替機器) ③事業所の技術サポート体制の確認 ④トラブル時の連絡手順の明確化
まとめ:在宅訓練は、あなたの未来を変える大きなチャンス
在宅訓練は、単に「通わなくていい」という選択肢ではありません。リモートワーカーとして活躍するための実践的な訓練の場です。
この記事で紹介した「事業所の見極め方」と「4つの自己管理術」を実践すれば、あなたは在宅訓練のメリットを最大限に活かし、希望する働き方を実現できるはずです。
成功への最後のアドバイス
- 完璧を求めすぎない:最初は慣れないことだらけです。小さな改善を積み重ねることが大切
- 積極的にコミュニケーションを取る:遠慮は禁物。わからないことは即座に質問
- 将来の目標を明確に:「なぜ在宅訓練を選ぶのか」「どんな働き方を実現したいのか」を常に意識
- 柔軟性を保つ:在宅だけにこだわらず、通所との組み合わせも検討
あなたの在宅訓練が成功し、理想のリモートワークが実現することを心から応援しています。
出典・一次情報
- 障害者総合支援法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省:障害者の就労支援(制度概要)
- 就労系障害福祉サービスにおける在宅でのサービス利用に関する留意事項(PDF)
- 障害のある人のテレワーク就労及び遠隔訓練のための支援マニュアル(PDF)

この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。