この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
就労移行支援事業所を選ぶ際、「就職率◯%」や「定着率◯%」という数字を見かけますが、その数字の意味を正しく理解しないまま判断すると、事業所選びに失敗することもあります。本記事では、数字の裏側を見抜き、自分に合った事業所を選ぶための具体的な確認ポイントを、箇条書き+簡易説明+詳しい解説の形で解説します。
目次
まずは要点(この記事の結論)
- 最重要指標は「定着率」:就職率よりも、長く働き続けられるかを示す定着率を重視。
- 実績は「内訳」で判断:職種、雇用形態、給与など詳細データを確認。
- 透明性が信頼の証:計算方法や期間を明確に開示している事業所を選ぶ。
就職実績の数字に騙されないポイント(事例付き)
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計算方法の違いで変わる就職率
すぐ解説
例:就職率90%でも、計算式が「就職者9人 ÷ 就職活動者10人」の場合、利用開始者50人のうち40人が途中退所でも数字は高く見えます。
【確認すること】分子(就職者)の定義/分母は「利用開始者」「就職活動者」「修了者」のどれか/途中退所者を含むか。 -
集計期間による印象操作
すぐ解説
短期間だけの好成績や「累計実績」だけを強調するケースがあります。
【確認すること】最新年度(例:2024年度)の数値/月別・四半期別の推移/直近3年の比較。 -
母数の操作に注意
すぐ解説
対象人数が少ないと数値はぶれやすく、傾向判断に不向きです。
【確認すること】対象人数(n)/対象期間(◯年◯月〜◯年◯月)/障害種別や年齢構成の偏り。
定着率の正しい確認方法(質問テンプレ付き)
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確認すべき3つの期間(6か月/1年/3年)
すぐ解説
6か月=初期適応、1年=中期安定、3年=長期継続の目安です。
【質問例】各期間の定着率と対象人数(n)は? 分母は「就職者全員」か「回答者のみ」か? -
定着率を下げる要因を把握
すぐ解説
主因:職務ミスマッチ/配慮不足/健康悪化/通勤課題など。
【質問例】離職理由の上位3つと割合は? 定着支援(面談・企業訪問・医療連携)の頻度は? -
定着支援・再就職支援の実装
すぐ解説
面談の頻度、三者面談、制度活用の助言などが重要です。
【質問例】月何回・誰が・どの手段(対面/オンライン)で? 離職時の再就職支援のフローと実績は?
職種・給与実績のチェックポイント(具体例付き)
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職種実績:希望との一致度を見る
すぐ解説
事務(一般/営業/経理)、IT(サポート/QA/Web)など細分化を確認。
【質問例】直近1年の◯◯職の就職者数・雇用形態(正/契/パート)・企業規模(大/中小/ベンチャー)は? -
給与実績:平均と中央値、レンジ
すぐ解説
平均だけだと高額事例に引っ張られます。中央値とレンジで実感値を把握。
【質問例】初任給の中央値・最小/最大、賞与の有無、昇給事例(入社1年以内の昇給率など)は?
質問すべき項目チェックリスト
- 就職率100%の事業所は信頼できる?
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計算方法と分母・分子の定義を必ず確認しましょう。母数が少ない場合や集計期間が短い場合があります。
- 定着率は何%以上なら良い?
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6か月で80%以上、1年で70%以上が一つの目安ですが、業種や地域の特性も考慮しましょう。
- 実績を開示しない事業所はどうする?
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透明性に欠けるため避けるのが無難です。適切な事業所なら開示できます。
- 希望職種の実績がない場合は?
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その職種での就職が難しい可能性があるため、他の事業所も候補に入れるべきです。
- 平均給与と中央値のどちらを重視すべき?
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中央値を重視すると、極端な高額・低額事例に影響されず実態が把握できます。
出典・一次情報(公式)

この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。