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【騙されないで】就労移行支援の「就職実績」の正しい見方|定着率・給与の必須確認ポイント

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

就労移行支援事業所を選ぶ際、「就職率◯%」や「定着率◯%」という数字を見かけますが、その数字の意味を正しく理解しないまま判断すると、事業所選びに失敗することもあります。

「就職率95%!」一見すると魅力的な数字ですが、この数字だけを信じて事業所を決めるのは危険です。実は、就労移行支援の実績には数字の裏に隠されたカラクリがあることも少なくありません。もし見抜けないと、「入ってみたけど、聞いていた話と全然違った…」という取り返しのつかないミスマッチに繋がりかねません。

本記事では、数字の裏側を見抜き、自分に合った事業所を選ぶための具体的な確認ポイントを、**「見学でそのまま使える質問テンプレート」**とともに解説します。

目次

まずは要点(この記事の結論)

最重要指標は「定着率」:就職率よりも、長く働き続けられるかを示す定着率を重視。

実績は「内訳」で判断:職種、雇用形態、給与など詳細データを確認。

透明性が信頼の証:計算方法や期間を明確に開示している事業所を選ぶ。

なぜ「就職率」だけで選ぶと失敗するのか?

高い就職率はもちろん素晴らしいですが、それだけでは「就職の質」が分かりません。

例えば、

  • すぐに辞めてしまうような、本人に合わない職場への就職も1件とカウントされる
  • 週1日・数時間のアルバイトでの就職も1件とカウントされる

というケースも考えられます。就労移行支援の本当のゴールは、**「その職場で、自分らしく安定して働き続けること」**のはずです。

就職実績の数字に騙されないポイント(事例付き)

  • 計算方法の違いで変わる就職率
    すぐ解説
    例:就職率90%でも、計算式が「就職者9人 ÷ 就職活動者10人」の場合、利用開始者50人のうち40人が途中退所でも数字は高く見えます。
    【確認すること】分子(就職者)の定義/分母は「利用開始者」「就職活動者」「修了者」のどれか/途中退所者を含むか。
  • 集計期間による印象操作
    すぐ解説
    短期間だけの好成績や「累計実績」だけを強調するケースがあります。
    【確認すること】最新年度(例:2024年度)の数値/月別・四半期別の推移/直近3年の比較。
  • 母数の操作に注意
    すぐ解説
    対象人数が少ないと数値はぶれやすく、傾向判断に不向きです。
    【確認すること】対象人数(n)/対象期間(◯年◯月〜◯年◯月)/障害種別や年齢構成の偏り。

最重要指標「定着率」の正しい確認方法

「就職」がゴールテープだとすれば、「定着」はゴールした後も元気に走り続けている状態を指します。あなたがまず確認すべきなのは、この定着率です。

定着率は「6ヶ月で80%以上」が一つの目安

一般的に、就職後の大きな壁は最初の6ヶ月と言われています。この期間を乗り越えられるサポート体制があるかどうかが、事業所の質を測る大きな指標になります。まずは**「就職後6ヶ月の定着率が80%を超えているか」**を一つの基準としてみましょう。

  • 確認すべき3つの期間(6か月/1年/3年)
    すぐ解説
    6か月=初期適応、1年=中期安定、3年=長期継続の目安です。
    【質問例】「各期間の定着率と対象人数(n)は? 分母は『就職者全員』か『回答者のみ』か?」
  • 定着率を下げる要因を把握
    すぐ解説
    主因:職務ミスマッチ/配慮不足/健康悪化/通勤課題など。
    【質問例】「離職理由の上位3つと割合は? 定着支援(面談・企業訪問・医療連携)の頻度は?」
  • 定着支援・再就職支援の実装
    すぐ解説
    面談の頻度、三者面談、制度活用の助言などが重要です。
    【質問例】「月何回・誰が・どの手段(対面/オンライン)で? 離職時の再就職支援のフローと実績は?」

職種・給与実績のチェックポイント(具体例付き)

定着率と合わせて必ず確認したいのが、**「どんな仕事に就いているか」**という実績の内訳です。

希望する職種での就職実績があるか?

あなたがIT専門職を目指しているのに、その事業所の卒業生のほとんどが軽作業に就職しているとしたら、ミスマッチが起こる可能性が高いです。自分の希望するキャリアに近い実績があるかを確認しましょう。

「平均給与」ではなく「給与の中央値」を確認

「平均給与25万円」と聞くと高く感じますが、これは一人だけ月収50万円の人がいると、数字が大きく引き上げられてしまうことがあります。 一方で**「中央値」**は、卒業生全員を給与順に並べたときの「真ん中の人の給与」です。こちらの方が、より実態に近いリアルな給与水準を把握できます。

  • 職種実績:希望との一致度を見る
    すぐ解説
    事務(一般/営業/経理)、IT(サポート/QA/Web)など細分化を確認。
    【質問例】「直近1年の◯◯職の就職者数・雇用形態(正/契/パート)・企業規模(大/中小/ベンチャー)は?」
  • 給与実績:平均と中央値、レンジ
    すぐ解説
    平均だけだと高額事例に引っ張られます。中央値とレンジで実感値を把握。
    【質問例】「初任給の中央値・最小/最大、賞与の有無、昇給事例(入社1年以内の昇給率など)は?」

見学で使える!質問テンプレート集

少し勇気がいるかもしれませんが、あなたの未来のために、見学や相談の際にはっきりと質問しましょう。誠実な事業所なら、必ず丁寧に答えてくれます。以下をコピー&ペーストしてそのまま使えます。

🎤 定着率について

「公式サイトで定着率が◯%と拝見したのですが、これは就職後どの時点(例:6ヶ月、1年)での数字でしょうか?また、どのような計算式で算出されているか教えていただけますか?」

🎤 実績の内訳について

「卒業された方は、どのような職種や雇用形態(正社員、契約社員など)で就職されることが多いですか?もし差し支えなければ、給与の中央値がどれくらいになるか教えていただくことは可能でしょうか?」

🎤 定着支援について

「就職後の定着支援として、月何回程度、どのような方法(対面/オンライン)でフォローをされていますか?また、離職時の再就職支援の実績があれば教えてください。」

質問すべき項目チェックリスト

見学や相談の際は、以下の項目を必ず確認しましょう:

  • ✅ 就職率の計算方法(分子/分母)と対象人数(n)を確認
  • ✅ 集計期間(年度)と月別/四半期別の推移を確認
  • ✅ 定着率(6か月・1年・3年)と分母の定義を確認
  • ✅ 職種の内訳と希望職種の一致度を確認
  • ✅ 給与の平均値・中央値・レンジ、賞与/昇給の有無を確認
  • ✅ 透明性(根拠資料の閲覧可否、データ更新時期)を確認

よくある質問

就職率100%の事業所は信頼できる?

計算方法と分母・分子の定義を必ず確認しましょう。母数が少ない場合や集計期間が短い場合があります。例えば、数ヶ月の間に就職したのが1名だけで、その1名が就職した場合も「就職率100%」になります。

定着率は何%以上なら良い?

6か月で80%以上、1年で70%以上が一つの目安ですが、業種や地域の特性も考慮しましょう。IT業界とサービス業では離職率が異なるため、業界平均との比較も重要です。

実績を開示しない事業所はどうする?

透明性に欠けるため避けるのが無難です。個人情報などを理由に一部を開示できないことはあっても、全体の傾向や統計データすら開示しないのは、実績に自信がないか、情報公開に対する意識が低い可能性があります。

希望職種の実績がない場合は?

その職種での就職が難しい可能性があるため、他の事業所も候補に入れるべきです。また、なぜその職種の実績がないのか理由を聞いてみることも大切です。

平均給与と中央値のどちらを重視すべき?

中央値を重視すると、極端な高額・低額事例に影響されず実態が把握できます。その場合でも、「卒業生の多くは月収◯円〜◯円くらいの範囲に収まっています」といった概算の幅を聞くことは有効です。

まとめ:数字の裏側を見抜き、あなたに最適な選択を

就労移行支援を選ぶ際に、就職実績は非常に重要な判断材料です。しかし、表面的な数字に惑わされてはいけません。

  1. 「定着率」を最重視し、その計算背景を確認する
  2. 「職種」と「給与(中央値)」で就職の質を判断する
  3. 情報を誠実に「開示する姿勢」があるかを見極める

この記事の質問テンプレートを武器に、ぜひ複数の事業所を見学し、あなた自身が納得できる場所を見つけてください。あなたの新しい一歩を心から応援しています。

出典・一次情報(公式)

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。


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