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発達障害のある方の会議メモをラクにするAIの使い方|聞き逃し・忘れる悩みを解決

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

「会議中にメモを取ろうとすると、話が聞けなくなる」

「話を聞いていると、メモを取る余裕がない」

「会議が終わった後、『結局何が決まったんだっけ?』と思い出せない」

こんな経験、ありませんか?

発達障害(ADHD・ASD等)の特性があると、会議での「聞く」と「書く」の同時処理は、想像以上に高いハードルになります。周りの人は「メモを取りながら聞けばいいじゃん」と簡単に言いますが、その「同時にやる」こと自体が難しいんですよね。

この記事では、そんな会議の記録の悩みを、AIというツールを使ってラクにする方法をお伝えします。


目次

なぜ会議のメモがこんなに大変なのか(発達特性との関係)

会議のメモが取れないのは、決して「やる気がない」からでも「能力が低い」からでもありません。発達特性による、脳の情報処理の違いが原因です。

ADHDの特性がある場合

ワーキングメモリの容量が小さいため、聞きながら重要な部分を選んでメモする、という複数の処理を同時にできません。

話を聞いていると、「これは重要だからメモしなきゃ」と思います。でも、メモを取り始めると、その間に次の話が進んでしまって聞き逃してしまう。「あれ、今何て言ってた?」と戸惑っているうちに、さらに話が進んでいく。この悪循環で、結局何も記録できなくなります。

注意の切り替えが苦手なのも、困りごとの一つです。メモを取ることに集中すると、話し手の声が耳に入らなくなります。逆に話を聞こうとすると、メモを取ることを忘れてしまいます。

重要度の判断が瞬時にできないのも、大きな課題です。「これは重要かな?メモすべきかな?」と考えているうちに、話がどんどん進んでしまいます。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある場合

聴覚情報の処理に時間がかかるため、話し手の言葉を理解するだけで精一杯です。

「〇〇については、△△の観点から、□□を検討し、××という方向で進めたいと思います」という複雑な文章を聞いた時、その意味を頭の中で整理するのに時間がかかります。理解し終わった頃には、次の話題に移っていて、メモを取るタイミングを逃してしまいます。

全体と詳細のバランスが取れないのも困りごとです。細かい数字や固有名詞にばかり注目してしまい、「で、結局何が決まったの?」という全体像が見えなくなります。

暗黙の前提が理解できないことも、記録を難しくします。「じゃあ、例の件で進めましょう」と言われても、「例の件って何?」と混乱してしまいます。

共通する困難

発達障害のある方に共通して見られるのが、口頭指示の記憶の難しさです。

会議中は理解できていても、会議が終わって数時間後には、「あれ、何を言われたんだっけ?」と忘れてしまいます。特に複数の指示が同時に出されると、頭の中で整理できず、何も覚えていないという状況になります。

また、議事録を書くプレッシャーも大きなストレスです。「正確に書かなければ」「漏れがあってはいけない」というプレッシャーから、会議中ずっと緊張状態が続きます。

これらの困りごとは、努力不足ではなく、脳の情報処理の特性によるものです。適切なツールとサポートがあれば、十分に補うことができます。


AIを使うと、会議の記録の何がラクになるのか

AIは、あなたの「聞きながら書く」という負担を大きく軽減してくれるツールです。

会議中は「聞くこと」だけに集中できる

Before(AIなし)

  • メモを取ろうとすると、話が聞けなくなる
  • 話を聞いていると、メモを取る余裕がない
  • 結果、どっちも中途半端になる

After(AIあり)

  • 会議を録音しておくだけ(スマホの録音機能でOK)
  • 会議中は、聞くことだけに集中できる
  • 会議後、録音をAIに渡せば、自動で要点をまとめてくれる

「結局何が決まったの?」が明確になる

Before(AIなし)

  • 1時間の会議で、何が決まったのか覚えていない
  • 自分のメモを読み返しても、意味がわからない
  • 「誰が・何を・いつまでにやるのか」が曖昧

After(AIあり)

  • AIが「決定事項」「検討中の事項」を分けて整理してくれる
  • 「誰が・何を・いつまでに」を明確にしてくれる
  • 会議後すぐに、次のアクションが分かる

議事録作成の時間が大幅に短縮される

Before(AIなし)

  • 1時間の会議の議事録を書くのに、2時間かかる
  • 何を書けばいいか悩んで、手が止まる
  • 完璧に書こうとして、いつまでも終わらない

After(AIあり)

  • 録音をAIに渡すだけで、5分で要点が出てくる
  • AIが作った要約を、少し調整するだけで完成
  • 議事録作成の時間が、2時間→15分に短縮

AI活用のステップ

ステップ1:会議を録音する

まず、会議を録音します。スマホの録音機能で十分です。

注意点:

  • 必ず参加者全員の許可を取ってから録音してください
  • 会議の最初に「議事録のために録音してもいいですか?」と聞く
  • 1人でも嫌がる人がいたら、録音しない

録音できない場合は、会議後すぐに覚えている内容をメモして、そのメモをAIに整理してもらうこともできます。

ステップ2:録音を文字起こしする

録音した音声を、文字に変換します。

文字起こしの方法:

  • Zoomの自動文字起こし機能を使う
  • スマホの録音アプリの「テキスト化」機能を使う
  • Google Docsの音声入力機能を使う(録音を再生しながら、マイクに向ける)

完璧な文字起こしでなくても大丈夫です。多少の誤字や聞き取れなかった部分があっても、AIは文脈から理解してくれます。

ステップ3:AIに「要点をまとめて」と頼む

文字起こしができたら、それをAIに渡して、要点をまとめてもらいます。

AIに、こんな風にお願いしてみましょう:

この会議の文字起こしから、以下を抽出してください:
1. 要点を5つ(重要度順)
2. 決定事項のリスト
3. 誰が・何を・いつまでにやるのか

すると、AIが自動で整理してくれます。


AIへのお願い文(プロンプト)の例

ここでは、イメージがつく程度の簡単な例を2つだけご紹介します。

例1:1時間の会議から要点5つを抽出する

以下の会議の文字起こしから、要点を5つ抽出してください。
重要度が高い順に並べてください。

【文字起こしテキスト】
田中:今日は新商品のプロモーション計画について話し合いたいと思います。
山田:予算はどのくらいですか?
田中:100万円で考えています。SNS広告とインフルエンサー施策を組み合わせたいです。
山田:インフルエンサーは誰かもう決まってますか?
田中:まだです。来週までに候補を3名リストアップします。
山田:わかりました。私は広告のクリエイティブ案を作りますね。
田中:締切は来週金曜でお願いできますか?
山田:了解です。

このように、会議の文字起こしをそのままAIに渡すだけで、重要なポイントを抽出してくれます。

例2:決定事項と「次のアクション」を明確にする

この会議の文字起こしから、以下を明確にしてください:
1. 決定事項(確定したこと)
2. 保留事項(まだ決まっていないこと)
3. 各タスクの「担当者」「内容」「期限」

【文字起こしテキスト】
(上記と同じ内容)

すると、AIがこんな風に整理してくれます:

【決定事項】
- 予算を100万円とする
- SNS広告とインフルエンサー施策を実施する

【保留事項】
- インフルエンサーの人選(来週までに検討)

【アクションリスト】
- 田中:インフルエンサー候補を3名リストアップ(来週まで)
- 山田:広告クリエイティブ案を作成(来週金曜まで)

これで、「誰が・何を・いつまでに」が明確になりました。


もっと詳しく知りたい方向けの「AIプロンプト集の使い方ガイド」

ここまで、会議の記録でAIを活用する基本的な方法をお伝えしました。

「もっと色々な場面でAIを使いこなしたい」という方は、こちらのガイドも参考にしてみてください:

【就労移行】AIプロンプト集の使い方ガイド|生成AI活用方法

このガイドでは、AIプロンプトを上手に使うための基本的な考え方や、様々な業務場面での応用方法が学べます。会議の記録だけでなく、メール作成、タスク管理、コミュニケーションなど、幅広い場面でAIを活用する方法が理解できます。

将来的に、会議・文字起こしに特化したより詳しいプロンプト集が追加された際にも、このガイドの知識があれば、すぐに使いこなせるようになります。

注意点とまとめ

録音には必ず許可を取る

会議を録音する際は、必ず参加者全員の許可を取ってください。

許可の取り方:

  • 会議の最初に「議事録作成のために録音してもいいですか?」と聞く
  • 全員が了承したことを確認する
  • 1人でも嫌がる人がいたら、録音しない

無断で録音すると、プライバシー侵害になる可能性があります。

個人情報や機密情報は書き込まない

文字起こしをAIに渡す際、個人情報や機密情報は削除してから渡しましょう。

削除すべき情報:

  • 顧客の個人情報(名前、住所、電話番号、メールアドレス)
  • 社外秘のプロジェクト名、製品名
  • 具体的な契約金額、売上データ
  • 人事情報

安全な方法:

固有名詞を置き換える:

【元の文字起こし】
田中商事の山田太郎様から、500万円の案件について問い合わせがありました。

【置き換え後】
A社のB様から、大型案件について問い合わせがありました。

AIの要約をそのまま使わない

AIが作った要約は「たたき台」です。最終的には自分で確認して、必要に応じて調整してから使いましょう。

確認するポイント:

  • 重要な決定事項が抜けていないか
  • 担当者や期限が正確か
  • 文脈が正しく理解されているか

就労移行支援のスタッフと一緒に使うと安心

就労移行支援を利用している方は、AIの使い方をスタッフと一緒に練習できます。

「この会議、録音してもいいでしょうか?」「文字起こしがうまくいかないんですが」といった悩みも、一緒に考えてもらえます。

職場でAIツールを使う際の許可の取り方や、社内規定の確認方法なども、サポートしてもらえるので安心です。

まとめ:完璧な議事録は目指さなくていい

「全部を正確に記録する」のは、プロの議事録作成者でも難しいことです。

でも、「要点5つ」と「次のアクション」だけなら、AIを使えば簡単に記録できます。

AIは、あなたを評価する相手ではなく、苦手を補うための道具です。「聞くことと書くことの同時処理」という苦手なことを、AIというツールで補えば、あなたは会議に集中できるようになります。

この記事のポイント

  • 会議のメモが取れないのは、発達特性による情報処理の違いが原因
  • AIを使えば、会議中は「聞くこと」だけに集中できる
  • 録音→文字起こし→AIに要約依頼、の3ステップで完了
  • 完璧を目指さず、要点だけ記録できれば十分

今日からできること

次の会議で、スマホの録音機能を使ってみてください(許可を取ってから)。

録音した音声を文字起こしして、AIに「要点を5つ教えて」と頼んでみましょう。

それだけで、「議事録作成がこんなにラクになるんだ」という感覚を得られるはずです。

AIは、あなたの会議記録の強力なパートナーになってくれます。


5. 記事内で紹介したプロンプト集(A群)のタイトル一覧

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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