この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「自分にはエンジニアなんて無理かも…」「就労移行支援で本当にエンジニアになれるの?」
そんな不安を抱えながら、この記事にたどり着いたあなたへ。まずお伝えしたいのは、その不安を感じることは自然で、むしろ真剣に考えている証拠だということです。そして、その真面目さこそが、エンジニアに必要な資質の一つなのです。
この記事では、「向いてない」と感じる理由を一つひとつ解消しながら、あなたがエンジニアを目指すための具体的な道筋を、制度情報と実践的なステップに基づいてお伝えします。就労移行支援は原則最長24ヶ月の利用期間内で、未経験からITスキルを習得し就職を目指す制度です。
【結論】「向いてない」と感じるのは自然です。適切なサポートがあればエンジニアを目指せます
「向いてない」と感じる5つの理由と解決策
理由1:「プログラミング経験がゼロだから」
この不安、本当によく分かります。周りの人はみんな経験者に見えて、自分だけが取り残されている気がしますよね。でも実際のところ、就労移行支援を利用してエンジニアになった方の多くは、プログラミング未経験からのスタートです。むしろ、変な癖がついていない分、基礎からしっかり学べるメリットもあるんです。
未経験者が成功する理由
- 基礎から体系的に学べるカリキュラム
- あなたの理解度に合わせた個別指導
- 分からない時にすぐ質問できる環境
- 同じ境遇の仲間と励まし合える
就労移行支援では、HTMLの基本的なタグの書き方から始めて、段階的にスキルアップできる仕組みが整っています。「プログラミングって何?」というレベルからでも全く問題ありません。
未経験者へのアドバイス
最初の1ヶ月は「パソコンに慣れること」が目標です。タイピング練習やパソコンの基本操作から始めますので、焦る必要はありません。むしろ、未経験だからこそ丁寧に基礎を固められるチャンスだと考えてください。
理由2:「数学や理系科目が苦手だから」
「エンジニア=理系」というイメージがあるかもしれませんが、これは大きな誤解です。実際のWeb開発やアプリ開発では、高度な数学はほとんど使いません。必要なのは四則演算(足し算・引き算・掛け算・割り算)ができればOKです。それよりも重要なのは、「論理的に考える力」と「問題を分解して考える力」です。
文系出身エンジニアが活躍する分野
- Webフロントエンド開発:デザインやユーザー体験を重視
- アプリ開発:企画力やアイデア力を活かせる
- システム運用・保守:コミュニケーション能力が重要
- Webデザイン寄りの開発:美的センスが武器になる
IT業界で活躍しているエンジニアには文系出身者も少なくありません。あなたが持っている「人の気持ちを考える力」や「分かりやすく説明する力」は、ユーザー目線のサービスを作る上で大きな強みになります。
理由3:「集中力が続かないから」
ADHDや注意力の問題を抱えている方からよく聞く不安です。でも、この特性は実はエンジニアの仕事と相性が良いことも多いんです。
なぜ集中力が続かない人でも大丈夫なのか
- 短時間で区切って作業する方法が確立されている
- 興味を持ったことには驚異的な集中力を発揮できる
- 在宅勤務やフレックス制度で自分のリズムで働ける
- 視覚的な成果がすぐ見えるのでモチベーションを保ちやすい
就労移行支援では、ポモドーロ・テクニック(25分作業+5分休憩)などの時間管理術を学びながら、あなたに合った学習方法を見つけていきます。
集中力をキープする工夫
- ポモドーロ・テクニック:25分作業+5分休憩のサイクルで集中力を維持
- タスクの細分化:大きな目標を小さなステップに分解し、達成感を積み重ねる
- 視覚的な目標設定:進捗が見えるとモチベーションがアップする
- 環境調整:静かな場所、適切な照明、気温管理で集中しやすい環境を作る
集中力に自信がない方へ
エンジニアの仕事は、実は「長時間集中する」よりも「短時間で深く集中する」ことの方が大切です。あなたの「好きなことには没頭できる」という特性は、プログラミングでは大きな武器になりますよ。
理由4:「コミュニケーションが苦手だから」
「エンジニアなら人と話さなくていい」と思っていたのに、実際にはチームワークが必要だと聞いて不安になっていませんか?確かにエンジニアでもコミュニケーションは必要です。でも、エンジニアのコミュニケーションは、あなたが苦手としている雑談や空気を読むようなものとは違います。
エンジニアのコミュニケーションの特徴
- 文字ベース(チャット・メール)が中心
- 要件や仕様など「事実」を伝えることが主
- 定型的なやり取りが多い
- 対面よりもオンラインツールを使用
- 業務連絡は構造化されている
SlackやChatworkといったビジネスチャットツールを使えば、あなたのペースで返信できますし、顔を合わせる機会も最小限です。「おはようございます」「お疲れさまです」といった定型文を準備しておけば、日常的なコミュニケーションもスムーズに進みます。
理由5:「年齢的に遅いのでは?」
30代、40代から「今さらエンジニア?」と思っているかもしれません。でも実は、プログラミングに年齢制限はありません。
| 年齢層 | 強み |
|---|---|
| 20代(未経験) | エネルギーと柔軟性、長期的なキャリア形成 |
| 30代 | 前職の経験を活かせる、責任感と継続力 |
| 40代以上 | 人生経験に基づく問題解決力、安定性 |
厚生労働省の令和6年障害者雇用状況調査(2024年12月公表)によると、民間企業で働く障害者数は67万7,461人となり、21年連続で過去最高を更新しました。IT業界でも障害者雇用は増加傾向にあり、年齢よりも「学び続ける意欲」と「実務で活かせるスキル」が重視されています。実際に、30代・40代から就労移行支援を利用してエンジニアになった方もいます。
30代以上の方へのアドバイス
あなたがこれまで培ってきた社会人経験、業界知識、ビジネスマナーは、若手エンジニアにはない大きな強みです。前職の経験×プログラミングスキルという組み合わせは、企業から高く評価されますよ。
実は「向いている」5つのサイン
細かいことが気になる性格
「なんでこうなるんだろう?」「ここがおかしい気がする」といった細かさは、エンジニアにとって最重要スキルです。バグを見つける観察力、ユーザー目線での違和感に気づく感性、品質にこだわる完璧主義。あなたが「細かすぎる」と思っている性格は、「品質へのこだわり」という長所です。この特性があれば、テストエンジニアや品質管理の仕事で大いに活躍できます。
ひとつのことを深く追求したい
「これはどういう仕組みなんだろう?」と深掘りしたくなる好奇心は、エンジニアの成長に不可欠です。技術は日々進化しています。だからこそ、「もっと知りたい」「もっと良くしたい」という探究心がある人こそ、長く活躍できるエンジニアになれるのです。
ルーティンワークが得意
「毎日同じことの繰り返しでも苦にならない」というあなた。それは素晴らしい適性です。システム運用やテスト業務では、決められた手順を正確に実行することが求められます。あなたの「地道に続けられる力」は、確実に評価されます。
視覚的な情報が得意
図や絵で考える方が理解しやすいというあなたは、フロントエンド開発に向いています。WebサイトやアプリのUI(ユーザーインターフェース)を作る仕事では、視覚的センスが非常に重要です。「見た目」にこだわれる人は、ユーザーに喜ばれるサービスを作れます。
マイペースで作業したい
「人に合わせるのが疲れる」「自分のペースで進めたい」という希望は、エンジニアの働き方にぴったりです。IT業界は、他の業界に比べて在宅勤務やフレックス制度など柔軟な働き方を許容する企業が多く、あなたが最もパフォーマンスを発揮できる環境を選べます。
就労移行支援でエンジニアになるための5ステップ
自己理解を深める(1〜3ヶ月目)
まずは、あなた自身の特性や強み、苦手なことを理解することから始まります。週5日の通所リズムを確立し、自分の得意・不得意を把握し、ストレス管理の方法を身につけます。この時期は焦らず、生活リズムを整えることが最優先です。パソコンの基本操作やタイピング練習から始めて、少しずつプログラミングに触れていきます。
基礎スキルを習得する(4〜9ヶ月目)
生活リズムが安定したら、本格的にプログラミングを学び始めます。HTML/CSS(Webページの基本構造)、JavaScript基礎(動きのあるWebページ作成)、データベース基礎、バージョン管理(Git)などを学習します。分からないことがあればすぐに質問できる環境で、つまずいたポイントを支援員や仲間と解決していけるのが就労移行支援の強みです。
実践力を身につける(10〜15ヶ月目)
基礎が固まったら、チーム開発プロジェクトへの参加、ポートフォリオ作品の制作、企業実習・インターンシップ、コードレビューの経験など、実際のプロジェクトに近い形で学習を進めます。この時期に作るポートフォリオ(作品集)は、就職活動で最も重要なアピール材料になります。
就職活動を始める(16〜20ヶ月目)
スキルが身についたら、いよいよ就職活動です。履歴書・職務経歴書の添削、面接練習(模擬面接)、企業とのマッチング支援、障害特性の伝え方指導、企業見学・職場実習の調整まで、徹底的にサポートしてもらえます。あなたの特性を理解した上で、最適な企業を一緒に探してくれるので安心です。
就職後の定着支援(就職後6ヶ月〜)
就職がゴールではありません。就労定着支援では、就職後も定期的な職場訪問と面談、職場での困りごとの相談対応、企業との調整・交渉サポートが続きます。就職後も半年から1年程度は支援員が定期的に様子を見に来てくれるので、長く安心して働き続けられます。
成功するための3つのポイント
ポイント1:完璧を目指さない
「完璧にできないとダメだ」と思っていませんか?でも、エンジニアの仕事は「完璧」よりも「着実な前進」が大切です。
- 70点で良しとする勇気
- 小さな成功体験を積み重ねる
- 「できたこと」にフォーカスする
- 失敗から学ぶ姿勢を持つ
完璧主義の方へ
プログラミングには「動けばOK」という考え方があります。最初は動くコードを書くことを目指し、徐々に綺麗なコードにリファクタリング(改善)していく。この段階的なアプローチが、挫折せずに成長するコツです。
ポイント2:自分のペースを守る
周りと比べて焦る必要はありません。大切なのは、昨日の自分より少しでも成長することです。就労移行支援では、あなたの特性や理解度に合わせて学習ペースを調整できます。マイペースで確実にスキルを積み上げていってください。
- 他人と比較しない
- 自分の成長速度を受け入れる
- 休憩や休養をしっかり取る
- 無理のない目標設定をする
ポイント3:得意分野を見つける
エンジニアといっても、様々な分野があります。フロントエンドが合う人もいれば、バックエンドが合う人もいます。テストや品質管理が天職だと感じる人もいます。支援員と相談しながら、あなたに最適な道を見つけていきましょう。
得意分野の見つけ方
- いろいろな分野に触れてみる
- 「楽しい」と感じる作業を見つける
- 自分の特性に合った仕事を選ぶ
- 支援員と相談しながら方向性を決める
よくある質問
まとめ:「向いていない」は思い込みかもしれません
この記事のポイント
- 「向いていない」と感じる理由の多くは、適切なサポートで対応できる
- あなたの「課題」は、見方を変えれば「強み」になる可能性がある
- 就労移行支援なら、個別サポートで着実にスキルアップできる
- 年齢や経験よりも「学び続ける意欲」が重要
- 未経験からエンジニアを目指す道は開かれている
もしかしたら、あなたが「向いていない」と思っているのは、単に「やったことがないから分からない」だけかもしれません。プログラミングを実際に学んでみて、コードが動いた瞬間の喜びを体験してみると、意外と「楽しい」「もっとやりたい」と感じるかもしれません。
今すぐできる3つのアクション
まずは情報収集(今週中)
IT系カリキュラムのある就労移行支援事業所を2〜3箇所ピックアップし、利用条件や雰囲気を確認して見学予約を取りましょう。まずは情報を集めることから始めましょう。ネットで検索するだけなら、今すぐできますよね。
実際に体験する(来月中)
事業所を見学し、プログラミング体験授業を受け、支援員と個別相談して雰囲気や相性を確認しましょう。見学は無料ですし、利用の義務もありません。「どんな感じか見てみたい」という気軽な気持ちで大丈夫です。
一歩踏み出す(3ヶ月以内)
自分に合った事業所を選び、利用申請の手続きを始めて、学習をスタートさせましょう。「向いていないかも」という不安は、実際にやってみることでしか解消できません。
「向いていない」という言葉は、「まだ試していないだけ」という意味かもしれません。「できるかどうか分からない」と不安に思うのは自然なことです。でも、その不安を抱えたまま何もしないより、まずは小さな一歩を踏み出してみませんか?情報を集めること、見学に行くことから始められます。
参考文献・データ出典
- 厚生労働省『令和6年 障害者雇用状況の集計結果』(2024年12月20日公表)
- 厚生労働省『令和5年度からの障害者雇用率の設定等について』(民間2.5%〔2024年4月〜〕→2.7%〔2026年7月〜〕)
- 厚生労働省『就労移行支援(制度概要)』(標準利用期間24か月)
- 経済産業省『IT人材需給に関する調査』(2019年)
最終閲覧日:2025年10月20日
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この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

