この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「発達障害があると、就職は難しいのでは…」
「自分の特性に合った仕事が見つかるか不安」
「ADHDの特性で、今まで仕事が長続きしなかった」
「就労移行支援って、発達障害でも使えるの?」
そんな悩みを抱えているあなたに知ってほしいのが、発達障害のある方に特化した就労移行支援の存在です。
この記事では、ADHD・ASD・LDなど発達障害のある方が就労移行支援を利用する際に知っておくべき主要なポイントを、分かりやすくまとめました。発達障害の特性を「弱み」ではなく「働き方の個性」として活かすための支援が、今は充実しています。
この記事で分かること
- 発達障害(ADHD・ASD・LD)のある方が就労移行支援を利用できる条件と手続きが分かる
- 自分の特性に合った事業所の選び方が分かる
- ADHD・ASD・LDそれぞれに適した訓練内容と支援方法が分かる
- 利用料金と自己負担の仕組みが分かる
- 発達障害特化型と一般型の事業所の違いが分かる
- 実際に就職した方のケーススタディから、成功のイメージがつく
まず結論:発達障害と就労移行支援の3つの重要ポイント
就労移行支援とは、障害のある方が一般企業への就職を目指すための公的サービスです。発達障害のある方も、もちろん利用できます。
発達障害のある方にとって、就労移行支援は単なる「就職準備の場」ではありません。自分の特性を理解し、強みを活かせる働き方を見つけるための、オーダーメイドの支援を受けられる場所です。
発達障害×就労移行支援の3つの重要ポイント
- 障害者手帳がなくても利用できる:医師の診断書があれば、手帳の取得前でも申請可能。発達障害の診断を受けていれば、就労移行支援の対象になります
- 発達障害に特化した事業所が増えている:ADHD・ASD・LDそれぞれの特性を理解したスタッフによる個別支援を受けられる事業所が全国に広がっています
- 多くの方が無料または低額で利用可能:利用料は世帯収入に応じた負担上限制で、自己負担0円で利用している方が多く見られます
発達障害のある方の就職は「難しい」というよりも、「自分に合った方法をまだ知らない」ことが原因になっているケースも少なくありません。就労移行支援は、その「合った方法」を一緒に見つけてくれる場所です。
発達障害と就労移行支援の基本|制度の仕組みを理解する
就労移行支援とは何か
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。一般企業への就職を目指す障害のある方に対して、就労に必要な知識やスキルの訓練、就職活動の支援、就職後の定着サポートを提供します。
利用期間は原則2年間で、この間に職業訓練、ビジネスマナー、自己理解、企業実習などを行いながら、就職を目指します。就職後も最大3年半の定着支援を受けられるため、「就職して終わり」ではなく、「働き続けられる」ところまでサポートしてもらえます。
発達障害のある方が利用できる根拠
発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など)は、発達障害者支援法にもとづいて障害者総合支援法の対象とされており、精神障害者保健福祉手帳の交付対象にも含まれます。具体的には、以下の診断を受けている方が対象となります。
- ADHD(注意欠如・多動症):注意力の困難、多動性、衝動性が特徴
- ASD(自閉スペクトラム症):社会的コミュニケーションの困難、こだわりや感覚過敏が特徴
- LD(学習障害/限局性学習症):読み書き・計算など特定の学習に困難がある
- その他の発達障害:DCD(発達性協調運動症)なども含まれる
障害者手帳がなくても利用できます
「手帳を持っていないから無理」と諦めていませんか? 就労移行支援は、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)がなくても利用できます。医師の診断書や意見書があれば、市区町村の判断で受給者証が発行されます。まずは診断書だけで申請可能です。
発達障害特化型と一般型の違い
就労移行支援事業所には、「発達障害特化型」と「一般型(総合型)」があります。どちらを選ぶかは、あなたの特性や希望によって変わります。
発達障害特化型の特徴
発達障害に関する専門知識を持つスタッフが在籍し、ADHD・ASD・LDそれぞれの特性を理解したうえでの支援を行います。同じ発達障害のある利用者が多いため、「自分だけが違う」という孤立感を感じにくいのも特徴です。
認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング(SST)など、発達障害に効果的なプログラムを取り入れている事業所も多くあります。また、IT・プログラミングなど発達障害のある方が活躍しやすい職種に特化した訓練を提供するところもあります。
一般型(総合型)の特徴
精神障害、身体障害、知的障害など、さまざまな障害のある方が一緒に訓練を受けます。多様な人と関わる経験ができるため、就職後の職場環境に近い雰囲気で訓練できるメリットがあります。
地域によっては発達障害特化型の事業所がない場合もあり、一般型でも発達障害の理解があるスタッフがいれば十分な支援を受けられます。
| 比較項目 | 発達障害特化型 | 一般型(総合型) |
|---|---|---|
| 利用者の構成 | 発達障害のある方が中心 | さまざまな障害のある方が在籍 |
| スタッフの専門性 | 発達障害に特化した知識・経験 | 幅広い障害への対応(発達障害への理解度は事業所による) |
| プログラム | SST、認知行動療法など専門プログラムが充実 | 汎用的なビジネススキル訓練が中心 |
| 雰囲気 | 同じ特性の仲間がいる安心感 | 多様な人との交流で視野が広がる |
| 向いている人 | 専門的な支援を受けたい、同じ特性の人と一緒がいい | 多様な環境に慣れたい、地域に特化型がない |
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「発達障害特化型と一般型、どちらが良いかは一概には言えません。私の経験では、特化型で同じ特性の仲間と出会って安心感を得られる方もいれば、一般型で多様な人と関わることで視野が広がる方もいます。大切なのは、見学や体験利用で『自分がここにいて楽かどうか』を感じ取ること。事業所の雰囲気やスタッフとの相性は、実際に行ってみないと分かりません。」
ADHD・ASD・LDの特性別|就労移行支援でできること
発達障害といっても、ADHD・ASD・LDでは特性が大きく異なります。それぞれの特性に合った支援を受けることで、就職成功率は格段に上がります。
ADHDのある方への支援
ADHDのある方は、注意力の維持が難しい、衝動的に行動してしまう、スケジュール管理が苦手といった特性を持つことが多いです。一方で、興味のあることへの集中力が高い、アイデアが豊富、行動力があるといった強みもあります。
就労移行支援で受けられる訓練
- タスク管理・時間管理のスキル習得(ツールの活用法)
- 集中力を維持するための環境調整の方法
- 衝動性をコントロールするためのセルフモニタリング
- マルチタスクを避けるシングルタスク化の練習
- 報連相(報告・連絡・相談)のタイミングを掴む練習
ADHDのある方には、ToDoリストアプリ、タイマー、リマインダーなどのツールを活用したタスク管理が効果的です。就労移行支援では、これらのツールの使い方を実践的に学べます。
ADHDのある方に向いている仕事の例
- クリエイティブ職(デザイン、企画、ライティング)
- 営業職(行動力を活かせる)
- IT・プログラミング(興味があれば高い集中力を発揮)
- 接客・販売(変化のある環境を好む方に)
ASDのある方への支援
ASDのある方は、暗黙のルールや空気を読むことが苦手、急な変更への対応が難しい、感覚過敏があるといった特性を持つことが多いです。一方で、ルーティンワークへの高い集中力、細部への注意力、正確性、特定分野への深い知識といった強みもあります。
就労移行支援で受けられる訓練
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):対人コミュニケーションの練習
- 暗黙のルールを「明文化」して理解する訓練
- 感覚過敏への対処法(イヤーマフ、サングラスの活用など)
- 急な変更への対応スキル(事前に想定パターンを準備)
- 自己特性の説明練習(面接や職場で伝えるために)
ASDのある方には、ルールが明確で、一人で集中できる時間がある仕事が向いていることが多いです。事業所では、企業実習を通じて「自分に合う職場環境」を見極める支援も行います。
ASDのある方に向いている仕事の例
- データ入力・事務(正確性を活かせる)
- プログラミング・エンジニア(論理的思考を活かせる)
- 経理・会計(数字への強さを活かせる)
- 研究・分析職(特定分野への集中力を活かせる)
- 図書館司書・アーカイブ整理(静かな環境で働ける)
LDのある方への支援
LD(学習障害)のある方は、読み・書き・計算など特定の領域に困難があります。知的能力は平均かそれ以上であっても、特定のタスクだけが極端に苦手というアンバランスさが特徴です。
就労移行支援で受けられる訓練
- 読み書きの困難を補うツールの活用(音声読み上げソフト、音声入力など)
- 計算の困難を補うツールの活用(電卓、表計算ソフトの活用)
- 自分の苦手を説明し、合理的配慮を求める練習
- 強みを活かせる業務の切り出し方を学ぶ
- メモ・記録の工夫(録音、写真、図解など)
LDのある方は、「読み書きが苦手」という表面的な困難だけでなく、それによって「自信を失っている」ケースが多いです。就労移行支援では、ツールを活用して困難を補いながら、強みを発見・強化する支援を受けられます。
LDのある方に向いている仕事の例
- 接客・販売(対面コミュニケーションが中心)
- 営業(書類よりも対話中心の業務)
- 製造・物流(読み書きの比重が少ない)
- 介護・福祉(人と関わる仕事)
- IT(読み書きの困難をツールで補いやすい)
複数の特性がある方への支援
発達障害は、ADHDとASDの併存、ADHDとLDの併存など、複数の特性を持つ方も少なくありません。その場合、どちらか一方に特化した支援ではなく、総合的なアセスメント(評価)に基づく個別支援が重要になります。
多くの事業所では、利用開始時に詳細なアセスメントを行い、あなたの特性を多角的に把握します。その結果をもとに、個別支援計画を作成し、あなただけのプログラムを組み立てます。「自分は何タイプなのか分からない」という方も、専門スタッフと一緒に自己理解を深めていけます。
💡 グレーゾーン(診断がついていない方)へ
「発達障害の傾向はあるが、正式な診断はまだ」という方もいらっしゃいます。医師が「発達障害の傾向がある」「就労支援が必要」と判断して意見書を書いてくれれば、利用できる可能性があります。まずはお住まいの市区町村の障害福祉課に相談してみてください。
事業所の選び方|発達障害のある方が重視すべき5つのポイント
就労移行支援事業所は全国に約3,400箇所以上あり、選択肢は豊富です。しかし、すべての事業所が発達障害に詳しいわけではありません。あなたに合った事業所を選ぶために、以下の5つのポイントを確認しましょう。
ポイント①:発達障害への理解と専門性
事業所のWebサイトやパンフレットで、「発達障害」「ADHD」「ASD」などのキーワードが明記されているかを確認します。さらに、見学時に以下の質問をしてみてください。
- 発達障害のある利用者は現在何名いますか?
- スタッフに発達障害の専門知識を持つ方はいますか?(資格や研修歴)
- SSTやセルフモニタリングなど、発達障害向けのプログラムはありますか?
- 感覚過敏への配慮(静かな個室、照明調整など)はできますか?
発達障害のある利用者が一定数いる事業所は、支援のノウハウが蓄積されている可能性が高いです。逆に「うちは精神障害全般を見ています」としか答えられない事業所は、発達障害への理解が浅い可能性があります。
ポイント②:就職実績と定着率
「就職率」だけでなく、「就職後の定着率」を必ず確認しましょう。発達障害のある方にとって重要なのは、就職することではなく、働き続けられることです。
見学時に確認すべき数字は以下の通りです。
- 直近1年の就職者数
- 就職後6ヶ月時点の定着率
- 発達障害のある方の就職先の職種・業界(自分の希望と合っているか)
- 障害者雇用と一般雇用(オープン・クローズ)の比率
定着率が70〜80%以上であれば、就職後の支援もしっかりしている事業所と言えます。
ポイント③:訓練内容とプログラム
発達障害のある方に効果的なプログラムが用意されているかを確認します。
確認したいプログラム例
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)
- 自己理解プログラム(特性の棚卸し)
- 認知行動療法に基づくプログラム
- タスク管理・時間管理ツールの活用訓練
- 模擬職場訓練(実際の業務に近い環境での訓練)
- 企業実習(外部の企業で実際に働く体験)
「パソコン訓練」「ビジネスマナー」だけでなく、発達障害の特性に合わせた自己理解やスキル習得のプログラムがあるかがポイントです。
ポイント④:サポート体制と個別対応
発達障害のある方は、一人ひとりの特性が異なります。画一的なプログラムではなく、個別対応がどこまでできるかを確認しましょう。
- 個別支援計画は定期的に見直されますか?
- 担当スタッフは固定ですか?複数ですか?
- 困ったときにすぐ相談できる体制はありますか?
- 体調不良時の柔軟な対応(短時間訓練、在宅訓練など)は可能ですか?
「週5日、毎日同じ時間に通所」が難しい方も多いです。体調に合わせた柔軟な対応ができる事業所を選びましょう。
ポイント⑤:通いやすさと環境
継続して通うためには、物理的な通いやすさも重要です。
- 自宅から片道1時間以内で通えるか
- 駅からのアクセス(徒歩何分か)
- 感覚過敏に配慮された環境か(騒音、照明、匂いなど)
- 静かに集中できるスペースはあるか
- 在宅訓練に対応しているか(通所が難しい日の選択肢)
特にASDで感覚過敏のある方は、見学時に実際の訓練スペースの環境(明るさ、音、人の密度)を確認しておくことをおすすめします。
なお、見学には家族や支援者と一緒に行くことも可能です。一人で判断するのが不安な方は、信頼できる人に同行してもらい、客観的な意見をもらうのも良い方法です。
見学時に使えるチェック表
見学の際は、以下のチェック表を参考にしてください。印刷して持っていくと便利です。
| チェック項目 | A判定(推奨) | C判定(要注意) |
|---|---|---|
| ①発達障害の利用者割合 | 30%以上 | 10%以下または把握していない |
| ②専門スタッフの有無 | 発達障害の専門資格・研修歴あり | 特になし |
| ③発達障害向けプログラム | SST、自己理解、認知行動療法などあり | 特別なプログラムなし |
| ④就職後6ヶ月定着率 | 70〜80%以上 | 50%以下または非公開 |
| ⑤感覚過敏への配慮 | 静かな個室、照明調整など対応可 | 配慮なし |
| ⑥通所の柔軟性 | 短時間・週2〜3日からOK | 週5日フルタイム必須 |
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「事業所選びで私が最も重視してほしいのは、『体験利用』です。見学だけでは分からない雰囲気が、1日でも実際に訓練に参加すると見えてきます。体験利用は無料で、利用期間にもカウントされません。気になる事業所が複数あれば、遠慮なく2〜3箇所を体験比較してください。」
利用料金の仕組み|自己負担はいくらかかる?
就労移行支援は障害福祉サービスなので、国の制度により利用料に上限が設けられています。多くの方が無料または低額で利用できます。
負担上限額の仕組み
利用料は「世帯の収入」に応じて月額の上限が決まります。この「世帯」とは、本人と配偶者のみを指し、親や兄弟は含まれません。つまり、実家暮らしでも本人に収入がなければ、無料で利用できることが多いです。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 月額上限 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) ※参考目安:世帯収入600万円程度以下 | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※利用者の自己負担状況は年度や地域によって異なります
実際には、就労移行支援を利用する方の多くが「生活保護」または「低所得」区分に該当し、自己負担0円で利用しているケースが目立ちます。離職中で収入がない方や、前年の所得が低い方は、自己負担が0円となる可能性が高いと考えられます(※最終的な区分はお住まいの市区町村が判断します)。
その他にかかる可能性のある費用
利用料以外に、以下の費用がかかる場合があります。
- 交通費:事業所までの往復交通費(自治体によっては助成制度あり)
- 昼食代:事業所によっては昼食提供あり(無料〜数百円)
- 資格受験料:取得を目指す資格の受験料(事業所が補助するケースも)
- 教材費:基本的に事業所負担だが、一部自己負担の場合あり
なお、初回の見学・相談は無料です。見学時に「実際に利用している方は月にいくらくらいかかっていますか?」と具体的に聞いてみると、リアルな費用感が分かります。
申請から利用開始までの流れ
就労移行支援を利用するには、市区町村から「障害福祉サービス受給者証」を取得する必要があります。申請から利用開始までの流れを、ステップごとに説明します。
※必要書類や手続きの流れは自治体によって異なる場合があります。詳細はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
STEP1:事業所を探す・見学する
まずは気になる事業所に問い合わせ、見学を申し込みます。インターネットで「就労移行支援 発達障害 〇〇(地域名)」などで検索すると、候補が見つかります。
見学は無料で、1〜2時間程度です。事業所の雰囲気、訓練内容、スタッフの対応を確認しましょう。2〜3箇所は見学して比較することをおすすめします。
STEP2:体験利用する
気になる事業所が見つかったら、体験利用を申し込みます。体験利用は無料で、利用期間(原則2年)にはカウントされません。実際の訓練に参加し、自分に合うかどうかを確認できます。
体験期間は事業所によって異なりますが、1日〜1週間程度が一般的です。「ここに通いたい」と思える事業所が見つかったら、次のステップに進みます。
STEP3:市区町村の窓口で相談・申請
お住まいの市区町村の障害福祉課(または福祉事務所)に行き、就労移行支援の利用を申請します。申請に必要な書類は以下の通りです。
必要書類(一般的な例)
- 申請書(窓口でもらえる)
- 障害者手帳、または医師の診断書・意見書
- マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
- サービス等利用計画案(相談支援専門員が作成)
障害者手帳がなくても、精神科・心療内科の診断書があれば申請できます。「発達障害の診断を受けているが手帳は持っていない」という方も、診断書で申請可能です。
STEP4:認定調査を受ける
申請後、市区町村の担当者から「認定調査」を受けます。これは、あなたの生活状況や障害の状態を確認するための面談です。自宅や事業所など、希望の場所で受けられます。
調査では、日常生活の困りごとや、就労に向けての希望などを聞かれます。ありのままを伝えれば大丈夫です。
STEP5:受給者証の発行
審査を経て、障害福祉サービス受給者証が発行されます。発行までの期間は自治体によって異なりますが、1〜2ヶ月程度が目安です。
受給者証には、利用できるサービスの種類、支給量(利用できる日数)、負担上限月額などが記載されています。
STEP6:正式利用開始
受給者証を受け取ったら、事業所と正式に契約し、利用開始です。受給者証に記載された開始日から、2年間の利用期間がカウントされます。
なお、申請中でも「体験利用」として訓練に参加できるため、受給者証の発行を待つ間も時間を無駄にしません。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「手続きが複雑そうに見えますが、実際には事業所のスタッフがサポートしてくれます。見学に行けば、その後の流れを丁寧に説明してもらえますし、書類の書き方も教えてもらえます。『自分で全部やらなきゃ』と思わなくて大丈夫。まずは気になる事業所に連絡してみてください。」
こんな人は早めに動いた方がいい|診断チェックリスト
就労移行支援を利用するタイミングは人それぞれですが、以下に当てはまる方は早めに相談することをおすすめします。
就労移行支援の利用タイミング診断
✓ 今すぐ相談をおすすめする人
△ まずは主治医に相談すべき人
判定の目安
- ✓が4つ以上:今すぐ事業所見学を検討してよいタイミングです
- ✓が2〜3つ:情報収集を始め、主治医にも相談してみましょう
- △が2つ以上:まずは体調の安定を優先し、主治医と相談しながら検討しましょう
就労移行支援は「体調が安定してから」利用するものです。今すぐ就職を目指すのではなく、まずは生活リズムを整えることから始める方も多くいます。焦らず、自分のペースで進めましょう。
チェックが多かった方への次の一歩
「✓が4つ以上だった」という方は、まずはお住まいの地域で「就労移行支援 発達障害 〇〇(地域名)」と検索してみてください。気になる事業所が見つかったら、見学を申し込んでみましょう。見学は無料で、行ったからといって利用を強制されることはありません。
ケーススタディ|発達障害のある方の就職成功例
実際に就労移行支援を利用して就職した方の事例を紹介します。それぞれの特性に合わせた支援を受けることで、自分らしい働き方を実現しています。
ADHDAさんの就職ストーリー
訓練では、ToDoリストアプリ(Todoist)とリマインダーを活用したタスク管理を徹底的に練習。SSTでは「忘れそうなことは、その場でスマホにメモする」「期限の確認を口頭で復唱する」などの具体的なスキルを身につけました。
💡 就職後1年が経過し、安定して働き続けています
ASDBさんの就職ストーリー
企業実習では、経理部門で2週間の実習を経験。静かな環境で数字を扱う仕事が自分に合っていることを実感しました。
💡 感覚過敏への配慮として、静かな席に配置してもらっています
LD+ADHDCさんの就職ストーリー
ADHDの特性については、ポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩)を取り入れ、短時間の集中を繰り返すスタイルを確立。接客の模擬訓練では、対面でのコミュニケーション力が高いことが分かり、「読み書きより対話中心の仕事が向いている」という方向性が見えてきました。
💡 「苦手なことを無理にやらなくていい」と思えるようになったことが、最大の変化でした
よくある質問(FAQ)
Q1:発達障害の診断書はどこでもらえますか?
A:精神科または心療内科で発達障害の診断を受けると、診断書を発行してもらえます。発達障害の診断には専門的な検査(WAIS、AQ、CONNERSなど)が必要な場合があり、初診から診断まで1〜3ヶ月程度かかることもあります。診断書の発行費用は医療機関によって異なりますが、数千円程度となることが多いです。具体的な金額は、受診予定の医療機関に事前に確認しておくと安心です。
Q2:障害者手帳を取りたくないのですが、就労移行支援は使えますか?
A:はい、使えます。障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書があれば受給者証を申請できます。ただし、障害者雇用枠での就職を目指す場合は、入社時までに手帳が必要になることが多いです。就労移行支援を利用しながら、手帳の取得を検討することも可能です。
Q3:利用中に仕事が見つかったらすぐ辞められますか?
A:はい、就職が決まれば利用を終了できます。また、就職後も最大3年半の「定着支援」を受けられるので、困ったときに相談できる窓口が残ります。就職後に再び離職した場合、残りの利用期間があれば再利用も可能です。
Q4:週5日通えなくても大丈夫ですか?
A:大丈夫です。最初は週2〜3日から始め、徐々に日数を増やしていく方が多いです。体調に合わせて柔軟に調整できる事業所を選びましょう。また、在宅訓練に対応している事業所なら、通所が難しい日は自宅からオンラインで参加することも可能です。
Q5:グレーゾーン(診断はついていないが特性がある)でも利用できますか?
A:医師が「発達障害の傾向がある」「就労支援が必要」と判断して意見書を書いてくれれば、利用できる可能性があります。まずはお住まいの市区町村の障害福祉課に相談してみてください。
Q6:就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)の違いは何ですか?
A:就労移行支援は「一般企業への就職を目指す訓練」であり、利用中は賃金・工賃は発生しません。一方、就労継続支援は「働く場の提供」であり、A型は雇用契約を結んで最低賃金以上の給与を受け取り、B型は雇用契約なしで工賃を受け取ります。一般就労を目指すなら就労移行支援、今すぐ働く場が必要なら就労継続支援が向いています。
Q7:二次障害(うつ、不安障害など)があっても利用できますか?
A:利用できます。発達障害のある方の多くが、うつや不安障害などの二次障害を抱えています。事業所では二次障害にも配慮した支援を行っています。ただし、体調が極端に不安定な場合は、まず治療を優先し、安定してから利用を検討することをおすすめします。
Q8:家族に知られずに利用できますか?
A:18歳以上であれば、原則として本人の意思で申請・利用が可能です。受給者証は本人宛に届きます。ただし、健康保険の扶養に入っている場合、医療費の明細から通院が分かる可能性はあります。詳しくは市区町村の窓口に相談してください。
Q9:途中で事業所を変更できますか?
A:できます。利用期間(原則2年)は「就労移行支援サービス全体」で計算されるため、途中で事業所を変更しても通算されます。合わないと感じたら、他の事業所への変更も検討しましょう。
Q10:発達障害でも一般雇用(クローズ就労)は目指せますか?
A:目指せます。就労移行支援では、障害者雇用(オープン)と一般雇用(クローズ)の両方の選択肢を検討できます。ただし、配慮を受けにくい一般雇用では、特性を自分でカバーする必要があります。どちらが向いているかは、訓練を通じてスタッフと一緒に考えていきます。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
「『障害者雇用か一般雇用か』で悩む方は多いですが、最初から決める必要はありません。訓練を通じて自分の特性を理解し、企業実習で実際の職場を体験してから決めても遅くありません。大切なのは『長く働き続けられる環境を選ぶこと』。焦らず、じっくり考えていきましょう。」
まとめ:発達障害のある方の就職成功に向けて
発達障害のある方が就労移行支援を利用する際の重要ポイントを整理します。
3つの重要ポイント
- 障害者手帳がなくても、診断書があれば利用できる:就労移行支援は障害者手帳がなくても申請可能。まずは診断書を持って相談してみましょう
- 発達障害特化型の事業所が増えている:ADHD・ASD・LDそれぞれの特性を理解したスタッフによる個別支援を受けられます。見学時に「発達障害の利用者がどのくらいいるか」を確認しましょう
- 多くの利用者が無料で利用している:世帯収入に応じた負担上限があり、離職中で収入がない方は自己負担0円となる可能性が高いです
次にやるべきこと
- STEP1:気になる事業所を2〜3箇所リストアップし、見学を申し込む(無料)
- STEP2:体験利用で自分に合うかどうかを確認する(無料・利用期間にカウントされない)
- STEP3:利用を決めたら、市区町村の障害福祉課で受給者証を申請する
発達障害は「弱み」ではなく「特性」です。その特性を理解し、強みを活かせる働き方を見つけることで、あなたも自分らしく働くことができます。就労移行支援は、その道筋を一緒に見つけてくれる場所です。
まずは一歩、見学の申し込みから始めてみてください。
出典・一次情報
- 障害者総合支援法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省:障害者の就労支援(制度概要)
- 厚生労働省:発達障害者支援法
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構:発達障害者の就労支援
- 発達障害情報・支援センター
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

