この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援の見学に行きたいけど、何を準備すればいいか分からない」
「体調が不安定だけど、見学に行っても大丈夫だろうか」
「複数の事業所を見学したいけど、断り方が分からず不安…」
そんな悩みを抱えているあなたに、この記事では就労移行支援の見学・体験について、準備から当日の流れ、事業所の比較方法まで、初めての方でも安心して進められる情報を一通りまとめました。
特に重要なのは、見学・体験は何度でも無料で利用でき、断っても全く問題ないという事実です。 あなたに合う事業所を見つけるために、遠慮なく複数の事業所を比較してください。
この記事で分かること
- 見学と体験の違い、それぞれで確認できることの全体像
- 見学前に整理しておきたい「自分の希望条件」の考え方
- 事業所の探し方と、何件くらい見学すればよいかの目安
- 見学予約の申し込み方法(電話・メールの例文付き)
- 当日の服装・持ち物・質問リストの準備方法
- 見学・体験当日の流れと、チェックしたいポイント
- 複数事業所の比較方法と、お断りの伝え方
就労移行支援の「見学」「体験」とは?基本のイメージをつかむ
就労移行支援を利用する前に、多くの方が「見学」や「体験」を経験します。しかし、初めての方は「見学と体験は何が違うの?」「行ったら何が分かるの?」と疑問に感じるかもしれません。
見学と体験は、それぞれ目的と内容が異なります。見学は「事業所の雰囲気を知る」ことが主な目的で、施設内を案内してもらい、訓練内容や支援体制について説明を受けます。一方、体験は「実際に訓練プログラムに参加してみる」ことで、自分が続けられそうかを確かめる機会です。
どちらも受給者証がなくても参加でき、費用は一切かかりません。また、見学・体験したからといって必ずその事業所を利用しなければならないわけではなく、気軽に複数の事業所を比較できます。
見学の目的と、分かること・分からないこと
見学の最大の目的は、事業所の雰囲気と基本的な情報を短時間で把握することです。所要時間は1〜2時間程度で、スタッフによる施設案内と個別説明が中心となります。
見学で分かること
- 事業所の場所・アクセス・周辺環境
- 施設内の雰囲気(明るさ・清潔さ・静かさなど)
- 訓練スペースの広さや設備(PCの台数・個別ブースの有無など)
- 提供している訓練プログラムの種類
- 支援員の対応や話しやすさ
- 通所している利用者の年齢層や雰囲気(見学時に他の利用者がいる場合)
見学では分からないこと
- 実際の訓練プログラムの難易度や進め方
- 自分が訓練を続けられそうかどうか
- 利用者同士の人間関係の詳細
- 個別支援の具体的な内容(体験や利用開始後に分かる)
見学だけでは「自分に合うかどうか」の最終判断は難しいため、気になる事業所があれば、見学後に体験利用を検討するのが一般的です。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
見学では「ここで通えそうか」という第一印象を大切にしてください。実際、見学時に「なんとなく合わないな」と感じた直感は、意外と当たることが多いです。逆に、「ここなら安心できそう」と思える事業所があれば、次は体験で具体的に確かめてみましょう。
体験利用の目的と、見学との違い
体験利用は、実際に訓練プログラムに参加して、「自分が続けられそうか」を確かめる機会です。見学よりも踏み込んだ内容で、半日〜数日間にわたって実施されることが一般的です。
体験では、実際の訓練プログラム(PCスキル訓練、グループワーク、ビジネスマナー講座など)に参加し、支援員や他の利用者とコミュニケーションを取りながら、事業所の雰囲気をより深く体感できます。体調面でも、「通所の負担はどのくらいか」「疲れ具合はどうか」などを実感できる点が重要です。
見学と体験の違い
| 項目 | 見学 | 体験利用 |
|---|---|---|
| 所要時間 | 1〜2時間程度 | 半日〜数日間 |
| 内容 | 施設案内・説明・個別相談 | 実際の訓練プログラムに参加 |
| 確認できること | 雰囲気・設備・訓練内容の概要 | 訓練の難易度・続けられそうか・人間関係 |
| 費用 | 無料 | 無料 |
| 受給者証 | 不要 | 不要 |
| 準備 | 筆記用具・メモ・質問リスト | 見学時の準備+服薬・昼食など |
体験利用も見学と同様に無料で、受給者証は不要です。体験後に「やはり合わない」と感じた場合は、遠慮なくお断りできます。逆に、体験で「ここなら通えそう」と確信できた場合は、受給者証の申請手続きに進むことになります。
見学・体験の前に整理したい「自分の希望条件」
見学や体験に行く前に、まず「自分がどんな事業所を求めているのか」を整理しておくことが重要です。漠然と見学に行くよりも、自分の希望や優先順位が明確になっていた方が、事業所を比較しやすくなります。
希望条件を整理する際は、大きく3つの視点で考えるとよいでしょう。通いやすさ(場所・時間・通所ペース)、訓練内容・就職支援の内容、そして体調への配慮や不安なことです。これらをメモに書き出しておくと、見学時の質問もスムーズになります。
完璧に条件を固める必要はありません。「できれば週3日くらいから始めたい」「PCスキルを身につけたい」といった大まかなイメージで十分です。見学を通じて、自分の希望がより具体化していくこともあります。
通いやすさ(場所・時間・通所ペース)をどう考えるか
通いやすさは、就労移行支援を続けるうえで最も重要な要素の一つです。どんなに良いプログラムがあっても、通所が大きな負担になると続けられません。
まず考えたいのは通所時間です。自宅から事業所まで、片道何分かかるか、乗り換えは何回必要か、満員電車に乗る必要があるかなどを確認しましょう。一般的には、片道30分〜1時間以内が理想的とされていますが、体調や体力に不安がある場合は、もっと近い場所を選ぶ方が安心です。
次に通所ペースを考えます。週5日フルタイムで通うのか、週2〜3日から始めるのか、午前中だけ・午後だけといった短時間利用も可能かなど、事業所によって柔軟性が異なります。体調に波がある方は、「最初は週2日、慣れたら増やす」といった段階的な通所に対応してくれる事業所を選ぶとよいでしょう。
通いやすさセルフチェック
訓練内容・就職支援に求めることを言語化してみる
就労移行支援の事業所によって、提供している訓練内容は大きく異なります。PCスキルやビジネスマナーなどの基礎的な内容が中心の事業所もあれば、WebデザインやプログラミングなどIT特化型の事業所、軽作業や清掃などの実習を重視する事業所もあります。
「自分は何を学びたいのか」「どんな仕事に就きたいのか」をある程度イメージしておくと、事業所選びがスムーズになります。たとえば、「事務職に就きたいからExcelやWordを使えるようになりたい」「在宅ワークを目指したいからPCスキルを重点的に学びたい」「まずは体調を安定させることが優先で、軽めの作業から始めたい」など、大まかな方向性で構いません。
また、就職支援についても、「履歴書・職務経歴書の書き方を丁寧に教えてほしい」「面接練習を何度もしてほしい」「障害をオープンにして働ける企業を紹介してほしい」など、自分が重視するポイントを考えておきましょう。
- IT特化型事業所を優先
- カリキュラムの充実度を確認
- 資格取得支援の有無
- 実践的なプロジェクト経験
- 通所ペースの柔軟性
- 体調配慮の実績
- 個別サポートの手厚さ
- 静かな環境・休憩スペース
- グループワークの充実度
- 利用者同士の交流機会
- SST(社会生活技能訓練)
- 少人数での練習環境
配慮してほしいこと・不安なことをメモにしておく
体調や障害特性について、事業所にどこまで伝えるべきか迷う方は多いです。しかし、見学・体験の段階で率直に伝えておくことで、「ここは配慮してもらえそうか」「自分の状態を理解してもらえそうか」を判断する材料になります。
たとえば、「朝が苦手で、午前中は体調が安定しない」「人混みや騒音が苦手」「急な予定変更に対応するのが難しい」「服薬の時間を確保したい」など、日常生活で困っていることを簡単にメモしておきましょう。見学時に全て伝える必要はありませんが、重要なポイントだけでも共有しておくと、その後の相談がスムーズになります。
また、「他の利用者と話すのが苦手」「グループワークが不安」といったコミュニケーション面の不安も、遠慮せずに伝えて大丈夫です。多くの事業所は、個別対応や段階的なサポートに慣れています。
見学時に伝えたいことメモテンプレート
見学先の探し方と、候補の絞り込み方
見学に行く事業所をどうやって探すか、何件くらい見学すればよいか、多くの方が迷うポイントです。情報収集の方法はいくつかありますが、インターネット検索、市区町村の障害福祉課への相談、主治医や支援機関からの紹介などが一般的です。
最初から1カ所に絞り込む必要はありません。気になる事業所を3〜5カ所程度リストアップし、その中から実際に見学する候補を2〜3カ所に絞り込むのが現実的です。多すぎると比較が大変ですし、体調面でも負担になります。逆に1カ所だけだと、比較対象がなく「本当にここでよいのか」という不安が残りやすくなります。
候補を絞り込む際は、まず通いやすさ(アクセス)で一次選別し、次に訓練内容や就職支援の特徴で優先順位をつけるとスムーズです。Webサイトやパンフレットだけでは分からない部分も多いため、気になる事業所があれば、まずは電話やメールで問い合わせてみることをおすすめします。
情報収集のルートと、注意したいポイント
就労移行支援の事業所を探す際、情報収集のルートはいくつかあります。それぞれのメリット・デメリットを理解して、複数の情報源を組み合わせるのが理想的です。
インターネット検索は最も手軽な方法です。「就労移行支援 ◯◯市」「就労移行支援 IT特化」などで検索すると、多くの事業所がヒットします。各事業所のWebサイトでは、訓練内容・就職実績・雰囲気などが紹介されていますが、良い面だけが強調されている場合もあるため、鵜呑みにせず参考程度に考えましょう。
市区町村の障害福祉課に相談すると、地域内の事業所リストを提供してもらえます。公的機関なので、特定の事業所に偏らない情報が得られる点がメリットです。ただし、担当者によっては詳しい内容まで把握していないこともあるため、基本情報を入手したら、自分で各事業所に問い合わせることが大切です。
主治医や支援機関(地域活動支援センター、相談支援事業所など)からの紹介も有力な情報源です。あなたの状態をよく知っている人からの紹介なので、ある程度マッチングが考慮されています。ただし、紹介された事業所が必ずしも最適とは限らないため、他の選択肢も並行して検討することをおすすめします。
何件くらい見学・体験してもよい?回り方の目安
「見学は何件くらい行ってもいいのか」という質問をよく受けますが、結論としては2〜3件程度が現実的な目安です。ただし、これはあくまで目安であり、1件だけでも、4件以上でも問題ありません。
1件だけの見学で決める場合、比較対象がないため「他の事業所の方が合っていたかも」という不安が残りやすくなります。一方、4件以上見学すると、情報が多すぎて混乱したり、疲労が溜まったりする可能性があります。体調に波がある方は、無理のない範囲で計画を立てましょう。
見学の回り方としては、1週間に1カ所程度のペースが無理なく続けられる目安です。体調が安定している方は、1週間に2カ所程度でも構いませんが、見学後は疲れることも多いため、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。
見学件数別のメリット・デメリット
| 見学件数 | メリット | デメリット | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 1件のみ | 負担が少ない・早く決められる | 比較対象がなく不安が残る | ★★☆☆☆ |
| 2〜3件 (推奨) |
比較検討できる・体調負担も少ない・決断しやすい | 特になし | ★★★★★ |
| 4件以上 | 多くの選択肢から選べる | 情報過多で混乱・疲労が溜まる・決断が遅れる | ★★☆☆☆ |
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)実務上、多くの利用者は2〜3カ所見学してから事業所を決定しています。「たくさん見学しないと失敗するかも」と不安になる方もいますが、見学は体力を使います。無理に多くの事業所を回るよりも、自分の優先順位に合った2〜3カ所をじっくり見る方が、結果的に満足度の高い選択ができます。
見学・体験の申し込み方と、連絡のマナー
見学や体験を申し込む際、電話とメール(またはWebフォーム)のどちらでも対応している事業所がほとんどです。どちらを選んでも問題ありませんが、電話が苦手な方はメールやフォームでも全く問題ありません。
申し込み時に伝える内容は、基本的に以下の項目です。
- 氏名・連絡先
- 見学または体験を希望していること
- 希望する日時(複数候補があると調整しやすい)
- (可能であれば)簡単な状況説明(「現在休職中で、就労移行支援の利用を検討している」など)
詳しい障害の内容や経歴を最初から全て話す必要はありません。事業所側も、見学時に改めて詳しくヒアリングする前提で対応してくれます。
電話で予約する場合のポイントと伝える内容
電話で予約する場合、緊張して何を話せばよいか分からなくなることもあります。あらかじめ伝えたい内容をメモしておくと、落ち着いて対応できます。
電話をかけるタイミングは、平日の10時〜16時頃が理想的です。朝の開所直後や夕方の閉所間際は避けた方が、相手も余裕を持って対応してくれます。
電話での基本的な流れは以下の通りです。
- 「もしもし、就労移行支援の見学について問い合わせたいのですが」と切り出す
- 氏名と連絡先を伝える
- 見学(または体験)を希望していることを伝える
- 希望する日時を伝える(「来週の火曜日か水曜日の午後でお願いできますか」など)
- 所要時間や持ち物について確認する
- 当日の集合場所や注意事項を聞く
もし、電話中に言葉に詰まったり、聞き逃したりしても大丈夫です。「すみません、もう一度お願いできますか」と素直に聞き返せば、丁寧に説明してくれます。
メール・フォームで申し込むときに書いておきたい項目
メールやWebフォームで申し込む場合、件名と本文を簡潔にまとめることを意識しましょう。長文になる必要はなく、必要な情報が伝わればOKです。
メールの基本構成
- 件名:「見学のお願い」「体験利用について」など、一目で分かる内容
- 本文:
- 挨拶(「初めてご連絡いたします」など)
- 氏名・連絡先
- 見学または体験を希望している旨
- 希望する日時(複数候補)
- 簡単な状況説明(任意)
- 締めの挨拶
返信は通常1〜2営業日以内に来ます。3日以上返信がない場合は、念のため電話で確認してもよいでしょう。
当日までの準備チェックリスト(服装・持ち物・質問リスト)
見学・体験の予約が取れたら、当日までに準備しておきたいことがいくつかあります。服装・持ち物・質問リストを事前に整えておくと、当日焦らずに済みます。
特に重要なのは質問リストです。見学中は説明を聞くことに集中してしまい、後から「あれも聞けばよかった」と後悔することがあります。事前に聞きたいことをメモしておくと、大事なポイントを聞き逃しません。
準備といっても、完璧にする必要はありません。「これくらいでいいかな」と思える程度で十分です。大切なのは、当日リラックスして事業所の雰囲気を感じ取ることです。
服装の目安と、気をつけたいポイント
見学・体験時の服装は、清潔感のあるカジュアルな服装で問題ありません。スーツである必要はなく、普段着でも大丈夫ですが、あまりにもラフすぎる服装(部屋着のようなもの)は避けた方が無難です。
具体的には、襟付きのシャツやブラウス、チノパンやスラックス、清潔なスニーカーなどが理想的です。女性の場合、シンプルなワンピースでも構いません。男性の場合、Tシャツにジーンズでも清潔感があれば問題ありませんが、穴の開いたジーンズや派手なプリントTシャツは避けましょう。
靴については、サンダルやクロックスではなく、きちんとした靴(スニーカーや革靴)を履いた方が印象が良くなります。冬場はコートを着ていくことになりますが、事業所に入る前に脱いで手に持つか、指定の場所にかけるようにしましょう。
当日の持ち物リスト(必須・あれば安心)
見学・体験当日に持っていくものは、事業所から特に指定がなければ最小限で構いません。以下のリストを参考に、自分に必要なものを準備しましょう。
必須の持ち物
- 筆記用具(メモを取るため)
- メモ帳またはノート
- スマートフォン(連絡用)
- 現金(交通費など)
あれば安心な持ち物
- 質問リストのメモ
- 障害者手帳のコピー(持っている場合、提示を求められることがある)
- 自分の希望条件をまとめたメモ
- 飲み物(体調管理のため)
- 服薬している薬(体験利用で長時間滞在する場合)
- マスク(感染症対策)
体験利用で半日以上滞在する場合は、昼食代や軽食を持参した方がよいこともあります。事前に事業所に確認しておきましょう。
見学・体験当日の持ち物チェックリスト
事前に準備しておきたい「質問リスト」
見学・体験時に質問する内容を事前に整理しておくと、当日スムーズに確認できます。以下に、カテゴリ別の質問例を挙げます。全てを聞く必要はなく、自分が気になる項目だけピックアップしましょう。
訓練内容について
- どんなプログラムがありますか?
- PCスキル訓練はどのレベルまで学べますか?
- 個別対応とグループワーク、どちらが中心ですか?
- 在宅訓練(オンライン対応)は可能ですか?
就職支援について
- 就職実績はどのくらいですか?
- どんな業種・職種への就職が多いですか?
- 履歴書・職務経歴書の添削はしてもらえますか?
- 面接練習は何回くらいできますか?
体調への配慮について
- 体調が悪い日の欠席・早退は柔軟に対応してもらえますか?
- 週何日から通所できますか?
- 午前だけ、午後だけの利用も可能ですか?
- 通院のための休みは取りやすいですか?
費用・手続きについて
- 利用料以外にかかる費用はありますか?
- 交通費の補助はありますか?
- 利用開始までにどのくらいの期間がかかりますか?
見学当日の流れと、チェックしたいポイント
見学当日は、受付から始まり、施設案内、訓練見学、個別相談という流れが一般的です。所要時間は1〜2時間程度で、事業所によって多少異なります。
当日は緊張するかもしれませんが、事業所のスタッフも慣れていますので、リラックスして臨みましょう。分からないことや不安なことがあれば、遠慮なく質問して大丈夫です。
見学の目的は、「ここで通えそうか」「自分に合っているか」を感じ取ることです。施設の設備や訓練内容だけでなく、スタッフの対応や利用者の雰囲気にも注目してみてください。
よくある当日の流れ(受付〜見学〜個別相談)
見学当日の一般的な流れは以下の通りです。事業所によって順番や内容が多少異なる場合もあります。
見学当日の一般的な流れ
見学中に見ておきたい「雰囲気」のポイント
見学では、説明を聞くだけでなく、事業所の雰囲気を自分の五感で感じ取ることが大切です。以下のポイントを意識して観察してみてください。
施設の環境
- 清潔さ:床や机、トイレなどが清潔に保たれているか
- 明るさ・静かさ:自分にとって集中しやすい環境か
- 設備の充実度:PCの台数、個別ブースの有無、休憩スペースの広さなど
スタッフの対応
- 話しやすさ:質問に丁寧に答えてくれるか、威圧感はないか
- 利用者への接し方:見学中に利用者に対応している場面があれば、どんな態度で接しているかを観察
- 説明の分かりやすさ:専門用語ばかりでなく、初心者にも分かりやすく説明してくれるか
利用者の様子
- 年齢層:自分と近い年代の人がいるか
- 雰囲気:リラックスしているか、ピリピリした空気はないか
- 利用者同士の交流:和気あいあいとしているか、それぞれ黙々と作業しているか
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)見学では、「この事業所のスタッフは信頼できそうか」という直感を大切にしてください。どんなに設備が立派でも、スタッフとの相性が合わなければ続けるのは難しくなります。逆に、「この人なら相談しやすそう」と思えるスタッフがいる事業所は、長く通える可能性が高いです。
体験利用をする場合の流れと注意点
見学で「ここは良さそうだ」と感じたら、次は体験利用を検討しましょう。体験利用では、実際の訓練プログラムに参加することで、見学だけでは分からなかった詳細を確認できます。
体験利用の期間は事業所によって異なりますが、半日〜数日間が一般的です。1日だけ体験する事業所もあれば、1週間程度の体験期間を設けている事業所もあります。体調に不安がある場合は、短期間から始めて、様子を見ながら延長することもできます。
体験利用も見学と同様に無料で、受給者証は不要です。体験後に「やはり合わない」と感じた場合は、遠慮なくお断りできます。
体験日程の組み方と、体調とのバランス
体験利用の日程を組む際は、無理のないスケジュールを立てることが最優先です。見学を数カ所回った後に連続して体験を入れると、疲労が溜まってしまいます。
理想的なペースは、見学と見学の間に1週間程度の休息を挟み、体験も同様に余裕を持って計画することです。たとえば、1週目にA事業所の見学、2週目にB事業所の見学、3週目に休息、4週目にA事業所の体験、といった具合です。
体験利用中は、毎日体調を記録しておくことをおすすめします。「今日は疲れた」「集中できた」「他の利用者と話せた」など、簡単なメモで構いません。これが、事業所を比較する際の貴重な材料になります。
見学・体験スケジュール&体調記録表
| 日付 | 予定(事業所名・見学or体験) | 体調(当日記入) | メモ・感想 |
|---|---|---|---|
体験中に意識したい「これだけは確認しておきたいこと」
体験利用では、見学では確認できなかった以下のポイントを意識的にチェックしましょう。
訓練プログラムの難易度
- 自分のレベルに合っているか、難しすぎないか
- 分からないときに質問しやすい雰囲気か
- 個別対応とグループワークのバランスはどうか
通所の負担
- 実際に通ってみて、通所時間や交通手段は問題ないか
- 朝の通勤ラッシュに耐えられるか
- 1日訓練を受けた後の疲労度はどうか
人間関係・コミュニケーション
- スタッフとのやり取りはスムーズか
- 他の利用者との距離感は心地よいか
- 休憩時間の過ごし方は自分に合っているか
サポート体制
- 体調が悪くなったときに相談しやすいか
- 個別面談の頻度や内容は十分か
- 困ったときにすぐに助けを求められる環境か
見学・体験後の振り返りと、事業所の比較方法
見学・体験が終わったら、記憶が新しいうちに振り返りを行うことが大切です。複数の事業所を見学した場合、時間が経つと記憶が曖昧になり、「どこがどうだったか」が分からなくなってしまいます。
振り返りでは、見学・体験中に感じたこと、確認できたこと、気になったことをメモに書き出しましょう。箇条書きで十分です。このメモが、最終的に事業所を選ぶ際の判断材料になります。
複数の事業所を比較する際は、感情だけでなく、具体的な基準で評価することも重要です。「なんとなく良さそう」だけでは、後で迷ってしまうことがあります。
振り返りの視点(通いやすさ・訓練内容・人との相性)
事業所を比較する際は、大きく3つの視点で整理すると分かりやすくなります。
通いやすさ(アクセス・通所負担)
- 自宅から事業所までの所要時間
- 交通手段(電車・バス・徒歩など)
- 乗り換えの回数、満員電車の有無
- 通所にかかる体力的・精神的負担
訓練内容・就職支援の充実度
- 提供されているプログラムの種類
- 自分が学びたい内容があるか
- 就職実績や定着支援の手厚さ
- 個別対応の柔軟性
人との相性(スタッフ・利用者との関係)
- スタッフの対応・話しやすさ
- 利用者の雰囲気
- 事業所全体の雰囲気(和気あいあい/静か/個別重視など)
これらの視点をもとに、各事業所を5段階評価(◎○△✕など)してみると、比較しやすくなります。
見学・体験後の比較&振り返りシート
| 評価項目 | A事業所 | B事業所 | C事業所 |
|---|---|---|---|
| 事業所名 | |||
| 通いやすさ (◎○△✕) |
|||
| 訓練内容 (◎○△✕) |
|||
| スタッフとの相性 (◎○△✕) |
|||
| 雰囲気 (◎○△✕) |
|||
| 総合メモ |
家族や支援者と相談するときのポイント
事業所選びを一人で決めるのが不安な場合、家族や主治医、支援機関の担当者に相談するのも一つの方法です。ただし、最終的に決めるのはあなた自身です。周りの意見に流されすぎないように注意しましょう。
家族や支援者と相談する際は、以下のポイントを意識するとスムーズです。
自分の希望を先に伝える
「私は◯◯事業所が良いと思っている」と、まず自分の意見を伝えます。その上で、「どう思う?」と意見を求めると、一方的に押し付けられる感覚が減ります。
具体的な情報を共有する
「雰囲気が良かった」だけでなく、「スタッフが丁寧に説明してくれた」「PCスキル訓練が充実している」など、具体的な理由を伝えると、相手も判断しやすくなります。
意見が分かれたときの対処
家族が「A事業所の方がいい」と言っても、あなたが「B事業所の方が合っている」と感じるなら、その理由を説明しましょう。最終的には、あなたが通い続けられる事業所を選ぶことが最優先です。
よくある不安Q&A(断り方・キャンセル・うまく話せない など)
見学・体験に関して、多くの方が抱える不安や疑問に答えます。
Q1:見学・体験後に断るのは失礼ではないですか?
A:全く失礼ではありません。見学・体験は、あなたに合う事業所を見つけるためのものです。「他の事業所と比較検討したい」「今回は見送らせていただきます」と伝えれば、事業所側も理解してくれます。多くの事業所は、見学者全員が利用を開始するわけではないことを承知しています。
Q2:複数の事業所を見学していることを伝えた方がいいですか?
A:伝えても伝えなくても、どちらでも構いません。ただし、「他の事業所も見学している」と伝えることで、強引な勧誘を避けられる場合もあります。「いくつか見学して、一番自分に合うところを選びたいと思っています」と率直に伝えて問題ありません。
Q3:体調が悪くなって当日キャンセルしたいときはどうすればいいですか?
A:できるだけ早く電話で連絡しましょう。前日や当日朝に体調が悪化した場合は、無理をせずにキャンセルして大丈夫です。「体調が優れないため、申し訳ありませんが本日の見学をキャンセルさせてください」と伝え、改めて日程を調整します。体調不良でのキャンセルは、事業所側も慣れていますので、遠慮する必要はありません。
Q4:緊張してうまく話せる自信がありません。どうすればいいですか?
A:事前に質問リストをメモにして持参し、「緊張しやすいので、メモを見ながら話してもいいですか」と伝えましょう。多くの事業所は、コミュニケーションが苦手な方への対応に慣れています。また、「人と話すのが苦手です」と最初に伝えておくと、スタッフ側も配慮してくれます。
Q5:見学だけで体験はしなくてもいいですか?
A:見学だけでも問題ありません。見学で「ここだ」と確信できた場合は、体験をスキップして利用手続きに進むこともできます。ただし、可能であれば短期間でも体験利用をしてみると、より確実に判断できます。
見学・体験後にお断りするときの伝え方
見学・体験後にお断りする場合、電話またはメールで連絡します。対面で断る必要はありません。
電話でのお断り例
「先日は見学(体験)させていただき、ありがとうございました。いくつか事業所を見学した結果、他の事業所を利用することに決めました。丁寧にご対応いただいたのに申し訳ありませんが、今回は見送らせていただきます」
メールでのお断り例
件名:見学のお礼とご連絡
本文: 先日は見学(体験)の機会をいただき、ありがとうございました。 いくつかの事業所を比較検討した結果、他の事業所を利用することに決めました。 丁寧にご対応いただいたにもかかわらず、今回は見送らせていただきます。 貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
お断りの理由を詳しく説明する必要はありません。簡潔に、感謝の気持ちを添えて伝えれば十分です。
当日体調が悪くなったときのキャンセル・日程変更
体調不良でのキャンセルは、できるだけ早く連絡することが大切です。前日に分かっている場合は前日に、当日朝に分かった場合は朝一番に連絡しましょう。
電話でのキャンセル連絡のポイント
- 「本日◯時に見学の予約をしている◯◯です」と名乗る
- 「体調が優れないため、キャンセルさせてください」と伝える
- 改めて日程調整したい場合は、その旨を伝える(「体調が回復したら、また連絡させていただいてもよろしいでしょうか」)
メールでのキャンセル連絡
メールの場合、事業所が確認するまでに時間がかかることがあります。当日キャンセルの場合は、できるだけ電話で連絡しましょう。
うまく話せない・緊張しやすい人ができる準備
コミュニケーションに不安がある方は、以下の準備をしておくと、当日の負担が軽くなります。
事前に伝えたいことをメモにまとめる
自分の状況、希望すること、配慮してほしいことを箇条書きにしたメモを用意し、見学時にスタッフに渡します。「緊張しやすいので、メモを見ながら話させてください」と伝えれば、スタッフも理解してくれます。
質問リストを持参する
聞きたいことをリスト化しておき、見学中にチェックしながら質問します。「これを確認したいのですが」とリストを見せながら質問すれば、スムーズに進みます。
「人と話すのが苦手です」と最初に伝える
見学の最初に「緊張しやすくて、うまく話せないかもしれません」と伝えておくと、スタッフ側も配慮してくれます。質問に対して「はい」「いいえ」で答えられる形にしてくれることもあります。
見学・体験の次のステップへ:利用手続きと今後の流れの全体像
見学・体験を経て、「この事業所を利用したい」と決めたら、次は利用手続きに進みます。全体の流れを簡単に整理しておきましょう。
STEP1:事業所に利用の意思を伝える
見学・体験後に「ぜひ利用したいです」と事業所に伝えます。事業所側から、次のステップ(受給者証の申請)について説明を受けます。
STEP2:受給者証の申請
市区町村の障害福祉課で、受給者証の申請手続きを行います。申請には、医師の意見書やサービス等利用計画案などが必要です。詳しい手続きは、別記事「受給者証の取り方ガイド」で解説しています。
STEP3:受給者証の発行
申請から受給者証の発行まで、自治体によって数日〜1〜2ヶ月程度かかります。受給者証が発行されたら、事業所に提出します。
STEP4:利用契約・利用開始
事業所と正式に利用契約を結び、通所を開始します。最初は週2〜3日から始めて、徐々に日数を増やしていくことが一般的です。
見学・体験から利用開始までの流れ
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
見学・体験は、あなたが安心して通える事業所を見つけるための大切なプロセスです。「早く決めなきゃ」と焦る必要はありません。納得できるまで複数の事業所を見学し、自分に合う場所を選んでください。最初の一歩を踏み出すことが、就労への道を開く鍵になります。
まとめ:見学・体験の3つのポイントと次の一歩
就労移行支援の見学・体験について、準備から当日の流れ、事業所の比較方法までを解説しました。最後に、最も重要な3つのポイントをまとめます。
1. 見学・体験は無料で、何度でも利用できる
複数の事業所を見学し、自分に合う場所を見つけることが大切です。断っても全く問題ありません。
2. 事前準備が当日の安心につながる
服装・持ち物・質問リストを準備しておくことで、当日落ち着いて事業所の雰囲気を感じ取れます。
3. 焦らず、納得できるまで比較する
「早く決めなきゃ」と焦る必要はありません。自分のペースで、納得できる事業所を選びましょう。
次にやるべきこと
- 気になる事業所を2〜3カ所リストアップする
- 見学の予約を入れる(電話またはメールで)
- この記事のチェックリストを使って、当日の準備を整える
見学・体験は、就労への第一歩です。不安もあるかもしれませんが、多くの方が同じ道を通って、自分に合う働き方を見つけています。あなたもその一人になれるよう、まずは見学の予約から始めてみてください。
出典・一次情報
監修者情報
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

