この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援を使いたいけど、交通費が毎日かかると家計が厳しい…」
「昼食代はどうなるの?自分で用意しないといけない?」
「在宅訓練ができると聞いたけど、パソコンや通信費は誰が負担するの?」
就労移行支援は利用料がほとんど無料になることは知っていても、交通費や昼食、在宅訓練にかかる費用については情報が少なく、不安に感じる方が多くいらっしゃいます。
この記事では、就労移行支援を利用する際の「お金」にまつわる疑問を、交通費・昼食・在宅訓練の3つの軸で整理し、一般的な補助のパターンや月額の負担イメージ、確認すべきポイントまで、具体的に解説します。
特に重要なのは、「原則は自己負担だが、自治体や事業所によって補助があるケースも少なくない」という事実と、「見学時に必ず確認すべき質問リスト」を持っておくことです。
この記事の中盤では、見学時に使える「お金の質問チェックリスト」を、後半では3つのケース別シミュレーション(都市部通所・郊外通所・在宅メイン)を紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事で分かること
この記事を読むことで、以下のことが分かります。
- 就労移行支援にかかる費用の全体像(利用料・交通費・昼食・在宅訓練関連)
- 交通費の補助パターン(自治体の助成・事業所の独自支給・障害者手帳の割引)
- 昼食の提供パターンと1食あたりの金額目安
- 在宅訓練のときにかかるお金(PC・ソフト・通信費など)の負担者
- 見学や相談のときに確認すべき「お金の質問リスト」
- ケース別の月額負担シミュレーション(3パターン)
まず結論:就労移行支援でかかるお金と補助の3つのポイント
就労移行支援の費用について、まず押さえておきたい結論は以下の3点です。
1. 所得に応じて利用料が0円になる方も多いが、変動費は別途かかる
就労移行支援の利用料(サービス利用料)は、世帯の収入に応じて負担上限額が設定されています。生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯は0円、一般世帯でも月額9,300円〜37,200円程度が上限です。厚生労働省等の資料によると、就労移行支援を含む障害福祉サービス利用者のうち、目安として約9割の方が自己負担0円で利用しているとされています。ただし、交通費・昼食代などの変動費は別途発生します。
2. 交通費・昼食は原則自己負担だが、補助があるケースも少なくない
交通費や昼食代は、基本的には利用者の自己負担です。ただし、自治体による交通費助成、事業所独自の交通費支給、昼食の無料提供や格安提供など、補助があるケースも少なくありません。自分の住む自治体や候補の事業所で、どんな補助があるかを事前に確認することが重要です。
3. 在宅訓練の場合、PCは貸与が多いが通信費は自己負担が基本
在宅訓練を利用する場合、パソコンやタブレット、ソフトウェアは事業所から無料で貸与されることが多いです。一方、Wi-Fiなどの通信費は現状では利用者が自分で用意するケースが多いです。ただし、事業所によっては通信費の一部補助やモバイルルーターの貸与を行っているところもあります。
就労移行支援にかかるお金の全体像
まず、就労移行支援を利用するときにかかる可能性のある費用を、大きく「固定費」と「変動費」に分けて整理します。
固定費:サービス利用料(収入状況によっては0円)
就労移行支援の利用料は、障害福祉サービス共通の「利用者負担上限額」の仕組みが適用されます。これは、世帯の収入に応じて月額の負担上限が決まる制度です。
負担区分はおおよそ次のように分かれます。
- 生活保護受給世帯:0円
- 市町村民税非課税世帯:0円
- 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満):月額9,300円
- 上記以外(一般):月額37,200円
なお、障害福祉サービスの負担区分や上限額は、自治体によって細かな違いがある場合があります。最終的な区分や金額は、お住まいの自治体の障害福祉担当窓口で確認してください。
また、就労移行支援などの就労系サービスについては、多くの自治体で月額9,300円を上限とする軽減措置が設けられています。厚生労働省等の資料によると、就労移行支援を含む障害福祉サービス利用者のうち、目安として約9割の方が自己負担0円で利用しているとされています。
つまり、収入状況によっては、就労移行支援の「利用料」そのものが0円になる方が多い制度になっています。ご自身の具体的な負担額は、お住まいの自治体から交付される「受給者証」に記載される金額で確認できます。
変動費:交通費・昼食・在宅訓練関連など
一方、以下の費用は利用料とは別に発生する可能性があります。
- 交通費:自宅から事業所までの往復の交通費(バス・電車・タクシーなど)
- 昼食代:事業所で昼食が提供されない場合の弁当代・外食代
- 在宅訓練関連:通信費(Wi-Fi・光回線)、自分でPCを用意する場合のPC代、周辺機器など
- その他:資格試験の受験料、教材費(事業所によっては自己負担の場合もある)
これらの変動費は、自治体や事業所によって補助の有無や金額が大きく異なります。そのため、見学や相談のときに必ず確認することが重要です。
| 費用の種類 | 内容 | 金額の目安 | 補助の可能性 |
|---|---|---|---|
| 固定費:利用料 | サービス利用料(月額) | 0円〜9,300円 (約9割の方が0円) |
世帯収入で自動的に決定 |
| 変動費:交通費 | 自宅〜事業所の往復 | 3,000円〜15,000円/月 (通所頻度・距離による) |
自治体助成・事業所支給あり |
| 変動費:昼食代 | 昼食(弁当・外食等) | 0円〜20,000円/月 (提供の有無・選択による) |
無料提供の事業所あり |
| 変動費:通信費 | 在宅訓練時のWi-Fi等 | 3,000円〜7,000円/月 (在宅訓練利用時) |
基本は自己負担 (一部事業所で補助あり) |
| その他 | 資格受験料・教材費等 | 事業所により異なる | 事業所により異なる |
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)多くの方が「就労移行支援は無料」と聞いて安心されますが、実際には交通費や昼食代など、毎日の「ちょっとした出費」が積み重なって家計を圧迫することがあります。私がこれまでサポートしてきた利用者さんの中にも、「交通費が思ったより高くて続けられなかった」という方がいらっしゃいました。だからこそ、事前に「自分の場合、月にいくらぐらいかかりそうか」をしっかり計算し、補助があるかどうかを確認することが大切です。
就労移行支援の交通費|補助はある?よくあるパターンと目安
就労移行支援を利用するとき、多くの人が最初に気になるのが交通費です。毎日通所する場合、往復の交通費が月に数千円から1万円以上かかることもあります。ここでは、交通費に関する補助のパターンと、確認すべきポイントを整理します。
原則は自己負担。ただし例外や補助もある
就労移行支援の交通費は、原則として利用者の自己負担です。国の制度として、交通費が自動的に支給されるわけではありません。
ただし、以下のような形で補助を受けられるケースも少なくありません。
- 自治体による交通費助成:市区町村が独自に、障害福祉サービス利用者の交通費を助成する制度を設けている場合
- 事業所独自の交通費支給:事業所が自主的に、月額◯円まで交通費を支給する場合
- 送迎サービス:事業所が送迎車を運行している場合(無料または一部負担)
- 障害者手帳による割引:公共交通機関で障害者手帳を提示することで運賃が割引される場合
これらの補助は、自治体や事業所によって有無や金額がまったく異なります。そのため、自分の住む自治体と、候補の事業所の両方に確認することが必須です。
自治体による交通費助成のイメージと確認方法
自治体の中には、障害福祉サービスを利用する人の交通費を助成する制度を設けているところがあります。助成の内容は自治体によってさまざまですが、よくあるパターンは以下のとおりです。
助成のパターン例:
- 月額上限での定額支給:月3,000円まで、月5,000円までなど
- 実費の一部補助:実際にかかった交通費の半額を補助、など
- 定期券購入費の補助:定期券代の一部を年1回補助、など
- タクシー券の交付:身体障害などで公共交通機関の利用が困難な場合、タクシー利用券を交付
助成を受けるには、自治体の障害福祉担当窓口で申請が必要です。受給者証の申請時や、相談支援専門員との面談のときに一緒に確認するとスムーズです。
確認する方法:
- 自分の市区町村名 + 「交通費助成 障害者」で検索:自治体のホームページに制度の案内が載っている場合があります
- 障害福祉担当窓口に直接電話:「就労移行支援を利用する予定だが、交通費の助成制度はあるか」と聞く
- 相談支援専門員に相談:受給者証の申請をサポートしてくれる相談支援専門員は、地域の制度に詳しいので相談してみる
自治体によっては、所得制限や対象サービスの限定がある場合もあるので、詳細をしっかり確認しましょう。
事業所独自の交通費補助・送迎サービス
自治体の助成とは別に、事業所が独自に交通費を補助したり、送迎サービスを提供したりしているケースもあります。
事業所独自の補助の例:
- 月額定額支給:月3,000円、月5,000円など、事業所から交通費として一定額が支給される
- 定期券の全額または一部負担:定期券を購入した場合、その領収書を提出すると全額または半額を事業所が負担
- 送迎サービス:事業所が送迎車を運行し、自宅近くの集合場所から事業所まで無料で送迎
- 駐車場の無料提供:自家用車で通所する場合、事業所の駐車場を無料で利用できる
ただし、これらの補助は事業所の自主的な取り組みなので、すべての事業所で行われているわけではありません。見学や問い合わせのときに、「交通費の補助や送迎サービスはありますか?」と必ず確認しましょう。
見学で確認すべき質問:
- 交通費の補助はありますか?ある場合、月額いくらまでですか?
- 定期券を購入した場合、補助はありますか?
- 送迎サービスはありますか?ある場合、ルートや利用条件は?
- 自家用車での通所は可能ですか?駐車場はありますか?
障害者手帳などで使える交通機関の割引
障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)を持っている場合、公共交通機関の運賃が割引されることがあります。この割引は、就労移行支援の利用に限らず、日常的に使える制度です。
割引の代表的なパターン:
- JR・私鉄・地下鉄:普通乗車券が5割引(手帳の等級による)、定期券は3割引など
- バス:運賃が5割引、定期券が3割引など
- タクシー:1割引(手帳を提示した場合)
- 航空機:国内線で割引あり(一部航空会社)
ここで挙げた割引内容はあくまで代表的な例です。実際の割引率や対象区間は、交通事業者ごとに異なりますので、必ず各社の窓口やホームページで最新情報をご確認ください。
精神障害者保健福祉手帳の場合、JRの割引が適用されないことがあるなど、手帳の種類によって使える範囲が違う点に注意が必要です。
また、介護者(同伴者)も割引対象になる場合があります。手帳に「第1種」「1級」などの記載がある場合、同伴者1名も同じ割引を受けられることが多いです。
詳しくは、利用する交通機関の窓口やホームページで確認するか、障害福祉窓口で「公共交通機関の割引制度」について聞いてみましょう。
| 交通機関 | 割引内容(代表例) | 同伴者割引 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| JR・私鉄 | 普通乗車券5割引 定期券3割引 |
第1種:同伴者1名も5割引 | 精神手帳は対象外の場合あり |
| バス | 運賃5割引 定期券3割引 |
第1種:同伴者1名も5割引 | 事業者により異なる |
| 地下鉄 | 運賃5割引 定期券3割引 |
第1種:同伴者1名も5割引 | 自治体により異なる |
| タクシー | 運賃1割引 | なし | 手帳提示が必要 |
| 航空機 | 国内線で割引あり | 第1種:同伴者1名も割引 | 航空会社により異なる |
就労移行支援の昼食代|提供パターンと金額の目安
就労移行支援の事業所には、1日の多くの時間を過ごすことになります。そこで気になるのが「昼食をどうするか」です。事業所によって昼食の提供パターンはさまざまで、無料提供のところもあれば、完全に自分で用意するところもあります。
無料〜格安で昼食提供があるケース
一部の事業所では、昼食を無料または格安で提供しています。これは事業所が自主的に行っているサービスで、国の制度として義務付けられているわけではありません。
昼食提供のパターン:
- 完全無料:事業所が材料費・調理費をすべて負担し、利用者は無料で食べられる
- 材料費のみ負担:100円〜300円程度の材料費だけを利用者が負担し、事業所のスタッフや利用者が一緒に調理する
- 格安の弁当提供:300円〜600円程度で、事業所が手配した弁当を購入できる
- 週に数回のみ提供:毎日ではなく、週に2〜3日だけ昼食提供がある
昼食提供がある事業所では、栄養バランスを考えたメニューを提供していることが多く、「自分で献立を考えるのが苦手」「コンビニ弁当ばかりになってしまう」という人には大きなメリットです。
また、利用者同士で一緒に食事をすることで、自然なコミュニケーションが生まれ、孤立感の軽減にもつながります。
昼食提供がある事業所を選ぶメリット:
- 毎日の昼食代を節約できる(特に無料提供の場合)
- 栄養バランスの取れた食事ができる
- 利用者同士の交流の機会になる
- 昼食の準備や片付けの負担が減る
ただし、食物アレルギーや宗教上の理由で食事制限がある場合は、事前に事業所に相談し、対応可能かを確認しましょう。
自分で用意する場合の費用感と節約の工夫
昼食提供がない事業所の場合、または提供があっても利用しない場合は、自分で昼食を用意する必要があります。
昼食の選択肢と1食あたりの目安:
- 弁当持参:200円〜400円程度(材料費のみ)
- コンビニ弁当・おにぎり:400円〜700円程度
- 外食(定食屋・ファストフード):600円〜1,000円程度
- 事業所近くのパン屋・スーパー:300円〜500円程度
月20日通所すると仮定した場合、昼食代は以下のようになります。
- 弁当持参:4,000円〜8,000円/月
- コンビニ:8,000円〜14,000円/月
- 外食:12,000円〜20,000円/月
弁当を持参するのが最も節約になりますが、毎日作るのが負担という場合は、週に数回だけ作る、冷凍おかずを活用する、などの工夫も有効です。
節約の工夫:
- 週末にまとめて作り置きをして冷凍保存
- スーパーの見切り品や特売を活用
- おにぎりだけ、サンドイッチだけなど、シンプルなメニューにする
- コンビニでも値引き時間を狙う
また、事業所によっては、電子レンジや冷蔵庫、給湯設備が自由に使える場合があります。カップ麺やレトルト食品を持参して、事業所で温めて食べることができれば、さらに費用を抑えられます。
| 昼食パターン | 1食あたりの目安 | 月20日の合計 | メリット/デメリット |
|---|---|---|---|
| 事業所で無料提供 | 0円 | 0円 | ◎ 費用ゼロ・栄養バランス◎ △ アレルギー対応要確認 |
| 事業所で格安提供 | 100円〜600円 | 2,000円〜12,000円 | ◎ 低価格・栄養バランス◎ △ 提供日が限定の場合あり |
| 弁当持参 | 200円〜400円 | 4,000円〜8,000円 | ◎ 最も節約できる △ 毎日の準備が負担 |
| コンビニ弁当 | 400円〜700円 | 8,000円〜14,000円 | ◎ 準備不要・種類豊富 △ 費用がかさむ |
| 外食 | 600円〜1,000円 | 12,000円〜20,000円 | ◎ 選択肢が多い △ 最も費用が高い |
アレルギー・食事制限がある場合の注意点
食物アレルギーや、宗教上の理由、健康上の理由で食事制限がある場合は、事業所の昼食提供を利用する前に必ず相談しましょう。
事前に伝えておくべきこと:
- 特定の食材に対するアレルギー(卵・乳製品・小麦・そば・落花生など)
- ハラール食、ベジタリアン、ヴィーガンなどの宗教的・思想的な制限
- 糖尿病、腎臓病などで塩分・糖分・タンパク質の制限がある場合
- 嚥下障害で食事形態に配慮が必要な場合
多くの事業所は、可能な範囲で対応してくれますが、完全な個別対応が難しい場合もあります。その場合は、自分で弁当を持参するか、事業所近くのアレルギー対応レストランを探すなどの工夫が必要です。
アレルギーは命に関わることもあるので、遠慮せずにしっかり伝えることが大切です。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)昼食の提供パターンは事業所によって本当にさまざまです。私が以前勤めていた事業所では、無料でお弁当を提供していましたが、利用者さんからは「とても、ありがたい」「みんなで一緒に食べる時間が楽しい」という声をいただいていました。昼食は毎日のことなので、金額だけでなく、「一人で食べるか、みんなで食べるか」「栄養バランスはどうか」といった視点でも考えてみてください。
就労移行支援の在宅訓練|かかるお金と補助
新型コロナウイルスの影響もあり、在宅訓練(リモートでの訓練)を取り入れる事業所が増えています。在宅訓練を利用する場合、通所にかかる交通費はゼロになりますが、一方で、パソコンや通信費などの費用が発生する可能性があります。
PC・タブレット・ソフトなど機器の貸与パターン
在宅訓練を行う場合、パソコンやタブレットが必要になります。多くの事業所では、これらの機器を無料で貸与しています。
よくある貸与パターン:
- PC・タブレットの無料貸与:訓練期間中、事業所がパソコンやタブレットを無料で貸してくれる
- ソフトウェアのライセンス提供:Microsoft Office、Adobe Creative Cloud、Zoomなどのライセンスを事業所が提供
- 周辺機器の貸与:マイク、Webカメラ、ヘッドセットなども貸してくれる場合がある
- 自分のPCでもOK:自分で持っているPCを使ってもよい(ただし、スペックやOSの条件がある場合も)
貸与されるPCのスペックは、訓練内容によって異なります。一般的な事務作業やプログラミング、Webデザインなどの訓練に必要なスペックを満たしたものが提供されます。
貸与の条件や注意点:
- 返却義務:訓練終了後または退所時には返却が必要
- 故障時の対応:通常の使用による故障は事業所が負担、故意や過失による破損は利用者負担の場合もある
- 持ち出し禁止:自宅以外の場所への持ち出しが制限される場合がある
- データの取り扱い:訓練終了時にデータを消去する必要がある
見学時には、「PCの貸与はありますか?」「返却条件や故障時の対応はどうなっていますか?」と確認しましょう。
| パターン | 費用 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 事業所から無料貸与 | 0円 | ・費用負担ゼロ ・ソフトも提供される ・故障時の対応も安心 |
・返却義務あり ・持ち出し制限がある場合 ・スペックが選べない |
| 自分のPCを使用 | 既に所有していれば0円 購入なら50,000円〜 |
・自分の好きなスペック ・訓練後も使える ・データ管理が自由 |
・初期費用がかかる ・故障時は自己負担 ・スペック要件を満たす必要 |
| レンタル利用 | 3,000円〜8,000円/月 | ・初期費用が抑えられる ・故障時の交換が容易 ・必要な期間だけ利用 |
・長期利用で割高に ・事業所が対応していない場合 ・契約手続きが必要 |
通信費は誰が負担?よくあるルール
在宅訓練を行うには、インターネット環境が必須です。Zoomでのオンライン面談や、クラウドでの課題提出、チャットでのやり取りなど、常時インターネットに接続する必要があります。
通信費の負担:
在宅訓練の通信費は、現状では基本的に利用者の自己負担となるケースが多いです。自宅にすでにWi-Fi環境がある場合は、それを利用することになります。
推奨される通信環境:
- 回線速度:下り30Mbps以上(Zoomなどのビデオ通話をスムーズに行うため)
- 接続の安定性:モバイルルーターよりも光回線などの固定回線が望ましい
- データ容量:無制限プランが望ましい(動画視聴や大きなファイルのやり取りがあるため)
自宅にインターネット環境がない場合、新たに契約する必要があり、月額3,000円〜7,000円程度の費用がかかります。
例外的に補助されるケース:
一部の事業所や自治体では、通信費の一部補助やモバイルルーターの貸与などを行っている場合もあるため、在宅訓練を希望する際は「通信費やインターネット環境の扱い」についてもあわせて確認しておくと安心です。
在宅訓練ならではの注意点(通所日との兼ね合いなど)
在宅訓練は便利な一方で、いくつか注意すべき点があります。
在宅訓練の制度上の前提:
就労移行支援の在宅訓練は、厚生労働省の通知に基づいて実施されています。現行制度の基本的な考え方としては、完全に在宅だけで訓練を行うのではなく、月に1回以上は事業所職員による訪問や通所などの「対面での支援」を組み合わせることとされています。
具体的な在宅訓練の可否や頻度、運用の細かいルールは、自治体や指定権者(市区町村など)の判断によって異なることがあるため、希望する場合は事業所や相談支援専門員を通じてお住まいの自治体に確認しましょう。
この「対面」は、必ずしも事業所に通所する必要はなく、スタッフが自宅を訪問する形でも認められています。
在宅訓練を希望する場合の流れ:
- 事業所に相談:在宅訓練を希望する理由(身体的理由、対人不安、地理的理由など)を伝える
- 自治体に申請:受給者証の申請時に、在宅訓練を利用したい旨を伝える(医師の意見書があると承認されやすい)
- 訓練計画の作成:在宅訓練の頻度、通所日の設定などを事業所と相談して決める
- 定期的な見直し:体調や状況に応じて、在宅と通所のバランスを調整する
在宅訓練は、「通所が難しい人にも就労支援を届ける」ための制度です。対人不安がある、体調が不安定、遠方に住んでいるなど、通所が困難な理由があれば、積極的に相談してみましょう。
在宅訓練を希望する場合の相談の流れ
お金の不安を減らす!確認すべきポイントチェックリスト
ここまで、交通費・昼食・在宅訓練にかかる費用と補助について説明してきました。では実際に、事業所の見学や相談のときに、何を確認すればよいのでしょうか。
以下のチェックリストを使って、お金に関する疑問をクリアにしましょう。
見学・相談時に確認すべき質問リスト
見学・相談時に確認すべき質問チェックリスト
交通費について
昼食について
在宅訓練について(希望する場合)
その他の費用について
これらの質問は、遠慮せずに聞いて大丈夫です。むしろ、お金のことを事前にクリアにしておくことで、安心して訓練に集中できます。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)見学や相談のときに、「お金のことを聞くのは気が引ける」という方が時々いらっしゃいますが、まったく遠慮する必要はありません。私たち支援者は、利用者さんが安心して通所できる環境を整えるのが仕事ですから、お金のことも含めて、どんなことでも質問してほしいと思っています。むしろ、事前に確認せずに利用を始めてしまい、後から「こんなにかかると思わなかった」となる方が問題です。
ケース別シミュレーションで見る月々の負担イメージ
実際に、どのくらいの費用がかかるのか、具体的なケースでシミュレーションしてみましょう。
3つのケースで見る月額費用シミュレーション
- 利用料:0円
- 交通費:6,000円〜8,000円(定期券利用で節約可)
- 昼食代:0円(無料提供)
- その他:0円
- 利用料:9,300円
- 交通費:12,000円(バス代)
- 交通費助成:-3,000円
- 昼食代:6,000円(弁当持参)
- その他:0円
- 利用料:0円
- 交通費:8,000円(月8日分)
- 昼食代(通所日):3,200円
- 昼食代(在宅日):3,000円(自炊)
- 通信費:0円(既存Wi-Fi利用)
これらのシミュレーションはあくまで一例です。自分の場合にどのくらいかかりそうか、上記のチェックリストを使って確認してみましょう。
トラブルを防ぐための注意点とよくある勘違い
お金のことは、後から「知らなかった」「聞いていなかった」となると、大きなトラブルに発展することがあります。ここでは、よくある勘違いと、それを防ぐための注意点を整理します。
よくある勘違い
勘違い①:「就労移行支援は完全無料だと思っていた」
正しい情報: 利用料は収入状況によっては0円ですが、交通費・昼食・在宅訓練の通信費などは別途かかります。
勘違い②:「交通費は必ず補助される」
正しい情報: 交通費の補助は、自治体や事業所によって有無や金額が異なります。まったく補助がない場合もあります。
勘違い③:「昼食は必ず出る」
正しい情報: 昼食提供は事業所の自主的なサービスです。提供がない事業所も多くあります。
勘違い④:「在宅訓練なら通信費も事業所が負担してくれる」
正しい情報: 通信費は現状では基本的に利用者の自己負担です。一部の事業所では補助がありますが、少数です。
勘違い⑤:「契約書にサインすれば、後は何も確認しなくていい」
正しい情報: 契約書や重要事項説明書には、費用に関する重要な情報が書かれています。サインする前に必ず内容を確認し、分からないことは質問しましょう。
契約書・重要事項説明書のチェックポイント
就労移行支援の利用契約を結ぶ際には、「重要事項説明書」と「利用契約書」が交付されます。これらの書類には、費用に関する重要な情報が記載されています。
チェックすべき項目:
- 利用者負担額:自分の世帯収入区分での負担上限額
- 実費負担の項目:教材費・資格受験料・イベント参加費などで自己負担が発生する項目
- 交通費・昼食代の取り扱い:補助の有無、金額、支給方法
- 在宅訓練の費用:PC貸与の有無、通信費の扱い
- 解約時の取り扱い:貸与品の返却、未使用分の返金など
分からない言葉や、納得できない点があれば、その場で質問しましょう。サインは、すべて理解して納得してからで構いません。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)重要事項説明書は、法律で交付が義務付けられている書類ですが、専門用語が多くて分かりにくいことがあります。私たち支援者は、利用者さんに分かりやすく説明する責任があります。もし説明を聞いても分からないことがあれば、遠慮なく「もう一度説明してください」と言ってください。納得しないままサインするのは、お互いにとって良くありません。
まとめ:お金の不安を解消して、安心して一歩を踏み出そう
この記事では、就労移行支援を利用する際の交通費・昼食・在宅訓練にかかる費用と補助について、詳しく解説してきました。
3つの重要ポイント
1. 所得に応じて利用料が0円になる方も多いが、変動費は別途かかる
就労移行支援の利用料は、収入状況によっては0円で利用できる方が多いです。しかし、交通費や昼食代、在宅訓練の通信費などは別途自己負担になることが多いため、事前に月額いくらぐらいかかりそうかを計算しておくことが大切です。
2. 自治体や事業所による補助があるケースも少なくない
交通費の助成、昼食の無料・格安提供、PCの無料貸与など、自治体や事業所によってさまざまな補助があります。自分の住む自治体と、候補の事業所の両方に確認しましょう。
3. 見学時に必ずお金のことを確認する
お金のことは、後から「知らなかった」となるとトラブルの元です。見学や相談のときに、チェックリストを使って必ず確認しましょう。お金の質問をすることは、まったく失礼なことではありません。
次にできること
この記事を読んだ後、以下のステップで行動してみましょう。
STEP1:今の生活費と通所に必要そうな費用を書き出す
自分の今の生活費(家賃・光熱費・食費など)と、就労移行支援を利用した場合に新たに発生しそうな費用(交通費・昼食代など)を書き出してみましょう。月額でどのくらいの余裕があるか、または不足するかを把握します。
STEP2:自治体・相談機関で使える補助制度をざっくり確認
自分の市区町村のホームページで「交通費助成」「障害者 支援制度」などで検索してみましょう。また、障害福祉窓口や相談支援専門員に、「就労移行支援を利用する場合に使える補助制度はあるか」と聞いてみましょう。
STEP3:候補事業所に見学・相談を申し込み、具体的な金額を質問
気になる事業所に見学や体験利用を申し込み、この記事のチェックリストを使ってお金のことを確認しましょう。複数の事業所を見学して、費用やサービス内容を比較することも大切です。
STEP4:家計全体とのバランスを見て通所スタイルを検討
通所頻度を週3回に減らす、在宅訓練を組み合わせる、昼食は弁当にするなど、家計に無理のない範囲で通所スタイルを調整しましょう。事業所や相談支援専門員と相談しながら、自分に合った形を見つけることができます。
お金の不安は、誰もが感じることです。でも、事前にしっかり確認し、利用できる補助を活用することで、その不安は大きく軽減できます。
もし疑問や不安があれば、お住まいの自治体の障害福祉担当窓口や、相談支援専門員に遠慮なく相談してください。この記事の情報だけで判断せず、ご自身の状況に合わせた具体的なアドバイスを受けることが、安心して就労移行支援を利用するための第一歩です。 <!– カスタムHTML:次のステップカード(STEP1〜4を視覚的に) –>
出典・一次情報
- 障害者総合支援法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省:障害者の就労支援(制度概要)
- 就労系障害福祉サービスにおける在宅でのサービス利用に関する留意事項(PDF)
- 障害のある人のテレワーク就労及び遠隔訓練のための支援マニュアル(PDF)
監修者情報
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

