この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援に興味はあるけれど、お金がどれくらいかかるか分からなくて不安…」
「0円で通えるって本当?」
「交通費や昼食代など、実際にはどれくらいお金が必要なの?」
「親や配偶者の収入があると、自己負担はどうなるの?」
そんな悩みを抱えているあなたに、就労移行支援にかかるお金のすべてを分かりやすく解説します。
この記事では、利用料の仕組みから自己負担が0円になる条件、交通費や昼食などの実費、そして月々の総額イメージまで、20〜40代の当事者とそのご家族が「自分の場合はどうなりそうか」を具体的に把握できるようにまとめました。
特に重要なのは、就労移行支援の利用料は「世帯の収入」によって決まり、多くの方が実際には月額0円または少額で利用しているという事実です。お金の不安から一歩踏み出せずにいる方こそ、まずは正確な情報を知ってください。
この記事で分かること
- 就労移行支援の「利用料」と「実費」の違い、お金の基本構造が理解できる
- 自己負担額がどう決まるのか、自分のケースの目安がイメージできる
- 本当に0円で通えるのか、その条件と具体的なパターンが分かる
- 交通費・昼食・資格取得費など、実費としてかかるお金の全体像が把握できる
- 生活パターン別の料金シミュレーションで、月々の総額をイメージできる
- お金が不安なときの相談先や支援制度を知り、次の一歩を踏み出せる
まず結論:就労移行支援の料金は「利用料」+「実費」の2階建て
就労移行支援にかかるお金は、大きく分けて2種類あります。
就労移行支援の料金の基本構造:
- 利用料(自己負担額):障害福祉サービスを利用することに対する料金。世帯の収入によって0円〜月額37,200円の範囲で決まります。多くの方は月額0円または少額です。
- 実費:交通費、昼食代、資格取得の検定料など、利用に付随して個人が負担する費用。事業所や個人の選択によって大きく変わります。
就労移行支援の料金に関する3つの重要ポイント:
- 多くの方が利用料0円または少額:世帯の収入が一定以下の場合、利用料の自己負担は0円になります。実際の支援現場では、利用料0円またはごく少額で通所している方が大半を占めています
- 利用料以外の「実費」は人によって異なる:通所の頻度、昼食の取り方、資格取得の希望などによって、月々数千円〜2万円程度の実費がかかる場合があります
- お金の不安は相談できる:自治体や相談支援の窓口で、利用前に自分のケースの負担額を確認でき、支払いが難しい場合の相談もできます
つまり、「就労移行支援はお金がかかるから無理」と諦める必要はありません。まずは自分のケースを確認することが大切です。
就労移行支援の料金とは|制度の基本を理解する
就労移行支援は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、料金の仕組みも国の制度として定められています。この制度を正しく理解すれば、「思ったよりお金の心配は少ない」と感じる方が多いはずです。
「利用料」と「実費」の違い
就労移行支援を利用するときにかかるお金は、性質の異なる2種類に分かれます。
利用料(サービス利用料・自己負担額)とは、就労移行支援というサービスそのものを利用することに対して発生する料金です。本来は事業所が提供するサービスの対価として、国が定めた「報酬単価」の1割を利用者が負担する仕組みですが、世帯の収入に応じて「負担上限月額」が設定されており、それを超える部分は公費で負担されます。
支払先は利用している事業所で、月に1回、前月分の利用日数に応じた金額が請求されます。ただし、世帯の収入区分によって月額0円〜37,200円の上限が設定されているため、実際には多くの方が0円、または数千円程度の負担で済んでいます。
実費とは、サービス利用料とは別に、個人の選択や状況によってかかる費用です。代表的なものは通所するための交通費、事業所で食べる昼食代、資格取得のための検定料や教材費、在宅訓練の場合の通信費などです。
実費は事業所が決めるものではなく、あなた自身の生活スタイルや選択によって変わります。たとえば、週3日通所するか週5日通所するかで交通費は変わりますし、昼食を持参するか購入するかでも費用は異なります。また、資格取得を希望しない場合は検定料はかかりません。
就労移行支援の料金構造
通所頻度や生活スタイルによって変動。月数千円〜2万円程度
0円〜37,200円/月(多くの方は0円または少額)
| 項目 | 利用料(自己負担額) | 実費 |
|---|---|---|
| 何に対する費用か | サービスそのものの利用料 | 通所や訓練に付随する個人的な費用 |
| 金額の決まり方 | 世帯の収入区分で上限が決まる | 個人の選択や状況による |
| 支払先 | 利用している事業所 | 交通機関、飲食店、検定機関など |
| 月額の目安 | 0円〜37,200円(多くの方は0円または少額) | 数千円〜2万円程度(人による) |
料金は誰が・どう決めている?
就労移行支援の料金の仕組みは、国・自治体・事業所がそれぞれの役割で決定しています。
国(厚生労働省)の役割は、障害者総合支援法に基づいて、サービスの報酬単価(事業所が受け取る金額)と、利用者の負担上限月額の基準を定めることです。つまり、「利用料の大枠」は全国共通のルールで決まっています。
自治体(市区町村)の役割は、あなたが住んでいる地域の障害福祉課などが、受給者証を発行する際に、あなたの世帯の収入状況を確認し、負担上限月額を決定することです。同じ収入区分でも、自治体によっては独自の減免制度を設けている場合もあります。
事業所の役割は、国が定めた報酬単価に基づいてサービスを提供し、あなたの負担上限月額に応じて、毎月の利用料を請求することです。事業所が勝手に料金を設定することはできません。
一方、実費については事業所や地域の状況によって異なります。たとえば、交通費助成制度がある自治体もあれば、昼食を格安で提供する事業所もあります。見学の際に、実費についても確認しておくと安心です。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
利用料の仕組みは複雑に見えますが、実際には「世帯の収入が低ければ0円、一定以上でも月額上限がある」というシンプルな構造です。私がこれまで支援してきた利用者の方々を見ても、利用料0円またはごく少額で通所されている方が大半です。「お金がないから無理」と諦める前に、まずは自治体や相談支援の窓口で、あなたのケースを確認してみてください。多くの場合、思ったより負担は少ないはずです。
利用料(自己負担)の仕組み|世帯所得と負担上限額
就労移行支援の利用料は、「あなた個人の収入」ではなく、「世帯全体の収入」をもとに決まります。この「世帯」の考え方と、負担上限月額の仕組みを理解することが、自分のケースを把握する第一歩です。
「世帯所得」で自己負担の上限が決まる
就労移行支援の自己負担額は、本来はサービスの利用日数に応じて計算されますが、実際には「負担上限月額」が設定されているため、どれだけ多く利用してもその上限を超えることはありません。
この負担上限月額は、あなたが属する「世帯」の収入によって決まります。ここでいう「世帯」とは、18歳以上の障害者の場合、原則として本人とその配偶者を指します。つまり、一人暮らしや実家暮らしで未婚の場合は「本人のみ」、結婚している場合は「本人+配偶者」の収入が対象です。
世帯の収入は、前年度の市町村民税の課税状況で判断されます。具体的には、以下の4つの区分に分かれます。
収入区分と負担上限月額:
- 生活保護世帯:負担上限月額0円
- 市町村民税非課税世帯:負担上限月額0円
- 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満):負担上限月額9,300円
- 上記以外(所得割16万円以上):負担上限月額37,200円
「市町村民税非課税世帯」とは、世帯全員が市町村民税を課税されていない世帯を指します。一人暮らしで収入が少ない、または障害年金のみで生活している場合などが該当します。
「所得割16万円」というのは、市町村民税の所得割額が年間16万円未満かどうかという基準です。目安として、年収が300万円程度以下であれば該当することが多いですが、扶養家族の有無や控除の内容によって変わるため、正確には必ず自治体や税理士に確認してください。
自分のケースの「だいたいの上限額」をイメージする
正確な負担上限月額は受給者証の申請時に決定されますが、自分がどの区分に近いかを事前にイメージしておくことで、家族への説明や家計の計画が立てやすくなります。
パターン別の例:
- 一人暮らし・障害年金のみ受給:市町村民税非課税世帯に該当する可能性が高く、負担上限月額0円になるケースが多い
- 実家暮らし・未婚・本人無収入:本人のみが世帯なので、市町村民税非課税世帯に該当し、負担上限月額0円になるケースが多い
- 実家暮らし・未婚・アルバイト収入あり:目安として本人の収入が年間100万円前後までであれば市町村民税非課税の可能性が高いですが、扶養状況や控除で変わるため自治体に確認を
- 配偶者あり・配偶者が働いている:配偶者の収入も含めて判断されるため、所得割16万円未満なら9,300円、それ以上なら37,200円
これらはあくまで目安です。扶養家族の有無、医療費控除、障害者控除などによって結果は変わります。自分のケースを正確に知りたい場合は、受給者証の申請前に、必ず自治体の障害福祉課や相談支援専門員に相談しましょう。
あなたはどのケースに近い?
【本当に0円?】自己負担が0円/少額になるケース
「就労移行支援は0円で通える」という情報を目にして、「本当なの?」と疑問に思う方は多いです。実際、支援現場では利用料0円またはごく少額で通っている方が大半を占めていますが、それは「世帯の収入」が一定以下の場合に限られます。
自己負担が0円になる代表的なパターン
利用料の自己負担が0円になるのは、以下のいずれかに該当する場合です。
生活保護を受給している世帯に属する場合、負担上限月額は0円です。生活保護を受けている場合、就労移行支援の利用料は「生活扶助」の一部として公費で負担されるため、利用者本人の負担はありません。
市町村民税非課税世帯に属する場合も、負担上限月額は0円です。これは、世帯全員が市町村民税を課税されていない状態を指します。
具体的には以下のようなケースが該当します。
- 一人暮らしで収入がない、または障害年金のみで生活している
- 実家暮らしで未婚、かつ本人に収入がない、または年収が一定以下
- 結婚しているが、本人・配偶者ともに収入がない、または障害年金のみ
- アルバイトやパートで働いているが、年収が一定以下
目安として、単身者の場合、年収が100万円前後までであれば非課税になることが多いです。ただし、給与収入以外の所得がある場合や、親の扶養に入っている場合などは判断が複雑になるため、必ず自治体の税務課や障害福祉課に確認してください。
0円ではないけれど、自己負担が少額で済むケース
完全に0円ではなくても、月額9,300円の負担上限が適用されるケースもあります。
市町村民税課税世帯で、所得割16万円未満の場合、負担上限月額は9,300円です。これは、世帯に一定の収入はあるものの、それほど高くない場合を指します。
おおよその目安として、以下のようなケースが該当します。
- 配偶者がパートや契約社員で働いており、世帯年収が300万円程度以下
- 本人がアルバイトで年収150万円程度、配偶者も同程度の収入
- 親の扶養に入っているが、親の所得が低い場合(自治体によって判断が異なる)
この場合、毎日通所しても月額9,300円以上の請求はされません。週5日通所した場合でも、1日あたり約430円程度の負担で済む計算になります。
また、事業所によっては利用日数に応じて実際の自己負担額が決まるため、週3日しか通所しない場合などは、9,300円より少ない金額で済むこともあります。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)「0円で通える」という情報を見て、「自分は該当しないかも」と不安になる方がいますが、実際には市町村民税非課税世帯の基準は想像より幅広いケースで該当します。特に、実家暮らしでも18歳以上で未婚なら原則として親の収入は関係ない点は、多くの方が誤解されています。**まずは自治体に確認してみてください。**また、仮に月額9,300円の負担になったとしても、毎日の通所で得られるスキルや就職のサポートを考えれば、十分に価値のある投資だと私は思います。
利用料以外にかかる「実費」一覧
利用料が0円または少額で済んでも、実際には通所や訓練に付随して「実費」がかかります。この実費は人によって大きく異なるため、自分のケースを具体的にイメージすることが重要です。
通所にかかるお金:交通費・昼食代など
交通費は、実費の中で最も大きな割合を占めることが多い項目です。自宅から事業所までの往復分が、通所のたびにかかります。
電車やバスを利用する場合、定期券を購入すれば1日あたりの単価を下げられます。たとえば、片道300円(往復600円)の場合、1ヶ月定期券が15,000円程度なら、週5日通所(月20日)で1日750円、週3日通所(月12日)なら1日1,250円の計算になります。ただし、通所日数が少ない場合は定期券より都度払いの方が安くなることもあります。
一部の自治体では、障害者に対する交通費助成制度を設けています。たとえば、月額3,000円までの交通費を助成する、ICカードに一定額をチャージするなどの制度がある地域もあります。自治体の障害福祉課や、利用を検討している事業所に確認してみましょう。
昼食代は、事業所で昼食をどう取るかによって変わります。多くの事業所では、近隣の飲食店で購入する、コンビニで購入する、お弁当を持参するなど、利用者が自由に選べるようになっています。
昼食を毎日購入する場合、1食500円として週5日なら月10,000円、週3日なら月6,000円程度かかります。お弁当を持参すれば、材料費のみで済むため、月数千円に抑えられます。
一部の事業所では、格安で昼食を提供している場合もあります。たとえば、1食200〜300円程度で栄養バランスの取れた食事を提供する事業所もあるため、見学時に確認してみてください。
通所回数別の実費概算(1ヶ月あたり)
| 通所パターン | 交通費 (往復600円) |
昼食代 (1食500円) |
月額合計 |
|---|---|---|---|
| 週5日(月20日) | 12,000円 | 10,000円 | 22,000円 |
| 週4日(月16日) | 9,600円 | 8,000円 | 17,600円 |
| 週3日(月12日) | 7,200円 | 6,000円 | 13,200円 |
| 週5日(お弁当持参) | 12,000円 | 3,000円 | 15,000円 |
| 週3日(お弁当持参) | 7,200円 | 2,000円 | 9,200円 |
資格取得・訓練にかかる実費
就労移行支援では、就職に役立つ資格取得を支援する事業所が多くあります。資格の種類によっては、検定料や教材費が自己負担になる場合があります。
検定料は、資格の種類によって大きく異なります。代表的な資格の検定料は以下の通りです。
- MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト):1科目10,780円
- 日商簿記3級:2,850円
- ITパスポート:7,500円
- 普通自動車運転免許:30万円前後(教習所による)
事業所によっては、検定料の一部または全額を補助してくれる場合もあります。また、不合格になった場合の再受験料をどうするかも、事業所ごとに対応が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
教材費は、使用するテキストやオンライン教材によって異なります。事業所が無料で提供する場合もあれば、市販のテキストを自分で購入する場合もあります。おおむね1冊1,000〜3,000円程度ですが、複数の資格を取得する場合は数万円になることもあります。
私物の準備費用として、筆記用具、ノート、USBメモリ、マウスなどの事務用品が必要になる場合があります。これらは数千円程度で済むことが多いです。
在宅訓練の場合に考えておきたい費用
在宅訓練を利用する場合、通所にかかる交通費や昼食代は節約できますが、代わりに自宅での環境整備にかかる費用が発生します。
通信費(インターネット回線)は、在宅訓練に必須です。すでに自宅にインターネット環境がある場合は追加費用はかかりませんが、新たに契約する場合は月額3,000〜5,000円程度かかります。
電気代は、日中の在宅時間が増えることで若干上がる可能性があります。ただし、夏場のエアコンや冬場の暖房を除けば、月数百円〜1,000円程度の増加で済むことが多いです。
PC・周辺機器については、多くの事業所が無料貸与していますが、マイクやヘッドセットなどは自分で用意する必要がある場合もあります。これらは数千円で購入できます。
在宅訓練の詳細については、別記事「就労移行支援の在宅訓練ガイド」で詳しく解説しています。
ケース別・毎月いくら?料金シミュレーション
ここまでの情報をもとに、生活パターン別に「毎月いくらぐらいかかるか」をシミュレーションしてみましょう。あくまで目安ですが、自分に近いケースを参考にしてください。
一人暮らし・実家暮らしなど生活パターン別の例
生活パターン別・月額シミュレーション
障害年金や手当と組み合わせた「家計のイメージ」
就労移行支援を利用しながら、障害年金や手当を受給している場合、家計全体のバランスをイメージすることが重要です。
たとえば、障害基礎年金2級を受給している一人暮らしの方の場合、月額約65,000円の年金収入があります。ここから就労移行支援にかかる費用(利用料0円+交通費・昼食など月20,000円程度)を引いても、家賃や光熱費、食費、医療費などに使える金額は残ります。
また、自治体によっては障害者手当や医療費助成などがあるため、それらも含めて考えると、無理なく就労移行支援を利用できるケースは多いです。
ただし、家賃の高い地域に住んでいる、医療費が多くかかる、通院頻度が高いなどの事情がある場合は、家計が厳しくなることもあります。その場合は、次のセクションで紹介する相談先や支援制度を活用してください。
お金が不安なときに使える相談先・支援制度
「就労移行支援を利用したいけれど、お金が不安…」という方のために、相談できる窓口や、負担を軽くする制度をまとめました。一人で抱え込まず、必ず相談してください。
まずはどこに相談すればいい?主な窓口
市区町村の障害福祉課・福祉事務所は、受給者証の申請窓口であり、利用料の負担上限額を決定する場所でもあります。自分の世帯がどの収入区分に該当するか、受給者証の申請前に確認することができます。また、自治体独自の減免制度や交通費助成制度についても、ここで教えてもらえます。
相談支援事業所・相談支援専門員は、就労移行支援を利用する際のサービス等利用計画を作成する専門家です。お金の不安についても相談でき、利用可能な制度や事業所の情報を教えてもらえます。受給者証の申請前に、まずは相談支援専門員に会って、自分のケースを整理することをおすすめします。
基幹相談支援センターは、各市区町村に設置されている障害者の総合相談窓口です。どこに相談すればいいか分からない場合は、まずここに連絡してみましょう。
利用を検討している事業所にも、料金について直接質問できます。見学や体験利用の際に、利用料だけでなく実費についても詳しく聞いてみてください。優良な事業所であれば、丁寧に説明してくれます。
お金の不安を相談できる窓口
減免・助成制度など、知っておきたい「お金のサポート」
自治体によっては、就労移行支援の利用を支援するための独自の制度を設けている場合があります。
交通費助成制度は、障害者の社会参加を支援するために、月額一定額までの交通費を助成する制度です。たとえば、月額3,000円まで助成、ICカードに月1,000円チャージなど、自治体によって内容は異なります。
食事提供サービスを行っている事業所もあります。格安で栄養バランスの取れた昼食を提供することで、利用者の負担を軽くしています。
資格取得費用の補助を行っている事業所や、自治体の就労支援プログラムもあります。検定料の一部または全額を補助してくれる場合があるため、確認してみましょう。
生活福祉資金貸付制度は、都道府県社会福祉協議会が実施している低利または無利子の貸付制度です。生活費が不足している場合や、就職活動にかかる費用を工面する際に利用できる場合があります。
| 制度名 | 内容 | 問い合わせ先 |
|---|---|---|
| 交通費助成 | 月額一定額までの交通費を助成 | 市区町村障害福祉課 |
| 食事提供サービス | 格安で昼食を提供 | 各事業所 |
| 資格取得費用補助 | 検定料の一部または全額を補助 | 各事業所・自治体 |
| 生活福祉資金貸付 | 低利または無利子の生活費貸付 | 都道府県社会福祉協議会 |
これらの制度は、自治体や事業所によって有無や内容が大きく異なります。必ず事前に確認してください。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)お金の不安から相談をためらう方がいますが、相談することで使える制度が見つかることも多いです。特に交通費助成は、知らずに損をしている方が少なくありません。また、「今月は支払いが厳しい」という状況になっても、事業所に早めに相談すれば、分割払いや一時的な免除など、柔軟に対応してくれることもあります。一人で抱え込まず、必ず相談してください。
支払いの実務:請求・引き落とし・トラブルを防ぐコツ
利用料や実費の支払いが実際にどう行われるのか、トラブルを避けるためのポイントをまとめました。
毎月の請求の流れと支払い方法
利用料の請求は、毎月1回、前月分の利用実績に基づいて事業所から行われます。たとえば、4月に20日間利用した場合、5月初旬に4月分の請求書が届き、5月末までに支払うという流れが一般的です。
支払い方法は事業所によって異なりますが、口座振替(自動引き落とし)が最も多いです。指定の口座から自動的に引き落とされるため、支払い忘れの心配がありません。事業所によっては、請求書払い(振込)や現金払いに対応している場合もあります。
利用開始時に、支払い方法を事業所と相談して決めます。口座振替の場合は、初回の引き落としまで1〜2ヶ月かかることもあるため、その間は請求書払いや現金払いになることがあります。
毎月の支払いの流れ
支払いが難しくなったときの相談と対応
急な出費や収入の減少などで、利用料の支払いが難しくなった場合、絶対に一人で抱え込まず、事業所に早めに相談してください。
多くの事業所では、支払いが困難な利用者に対して、分割払いや一時的な支払い猶予などの柔軟な対応をしてくれます。無断で滞納したり、連絡を絶ったりすると、最悪の場合サービスの利用停止につながることもあります。
また、世帯の収入状況が変わった場合(配偶者が退職した、本人の収入が減ったなど)は、負担上限月額の区分が変わる可能性があります。自治体の障害福祉課に相談し、受給者証の変更申請を行うことで、利用料が減額されることもあります。
やってはいけないこと:
- 無断で滞納する
- 連絡を絶つ
- 「払えないから利用をやめる」と一人で決める
やってほしいこと:
- 支払いが難しいと分かった時点で、すぐに事業所に相談
- 世帯の収入状況が変わったら、自治体に相談
- 生活全般の困りごとも含めて、相談支援専門員に相談
こんな人は早めに動いた方がいい|診断チェックリスト
以下のチェックリストで、当てはまる項目が多いほど、就労移行支援の利用を具体的に検討する価値があります。お金の不安がある方こそ、まずは相談から始めてみましょう。
こんな人は早めに動いた方がいい
- 5個以上該当:就労移行支援があなたに合っている可能性が高いです。まずは見学や相談から始めてみましょう。
- 3〜4個該当:就労移行支援が選択肢の一つになりそうです。自治体や事業所に相談して、負担額を確認してみてください。
- 1〜2個該当:他の支援サービスの方が合っている可能性もあります。相談支援専門員に相談してみましょう。
よくある質問(FAQ)
就労移行支援の料金について、よく寄せられる質問をまとめました。
Q1:本当に0円で通えるのですか?条件は何ですか?
A:はい、世帯の収入が一定以下の場合、利用料の自己負担は0円になります。具体的には、生活保護受給世帯または市町村民税非課税世帯に該当する場合です。一人暮らしで障害年金のみ受給、実家暮らしで本人無収入(18歳以上で未婚)などのケースが該当します。支援現場では、利用料0円またはごく少額で通っている方が大半を占めています。ただし、交通費や昼食代などの実費は別途かかります。
Q2:親と同居していても、親の収入は関係ないのですか?
A:**18歳以上で未婚の場合、原則として本人のみが「世帯」となるため、親の収入は負担上限月額の判定には影響しません。**ただし、自治体によっては「家計の主宰者」を基準にする場合もあるため、受給者証の申請時に必ず自治体に確認してください。結婚している場合は、配偶者の収入も含めて判定されます。この点は多くの方が誤解されているため、実家暮らしの方も諦めずにまず相談してみてください。
Q3:交通費や昼食代は事業所が負担してくれないのですか?
A:基本的には利用者の自己負担です。ただし、自治体によっては交通費助成制度がある場合や、事業所が格安で昼食を提供している場合もあります。見学や体験利用の際に、実費についても詳しく確認してください。
Q4:資格取得の費用は自己負担ですか?
A:事業所によって対応が異なります。検定料を全額または一部補助してくれる事業所もあれば、全額自己負担の事業所もあります。また、不合格になった場合の再受験料についても、事前に確認しておくと安心です。
Q5:利用料が0円でも、何か裏があるのではないかと不安です
A:裏はありません。障害者総合支援法に基づく公的なサービスであり、利用料は国の制度として決まっています。「0円だから質が悪い」ということもありません。ただし、事業所によって支援の質やカリキュラムには差があるため、複数の事業所を見学して比較することをおすすめします。
Q6:途中で世帯の収入が変わったら、利用料はどうなりますか?
A:世帯の収入状況が変わった場合(配偶者が退職した、本人の収入が増えたなど)は、自治体に相談して受給者証の変更申請を行うことで、負担上限月額が変更される場合があります(自治体判断による)。収入が減った場合は利用料が下がる可能性があり、逆に収入が増えた場合は上がる可能性があります。
Q7:利用料の支払いが難しくなったらどうすればいいですか?
A:まずは事業所に相談してください。分割払いや一時的な支払い猶予など、柔軟に対応してくれることが多いです。また、世帯の収入状況が変わった場合は、自治体に相談して負担上限月額の見直しを申請することもできます。無断で滞納したり、連絡を絶ったりすることだけは避けてください。
Q8:在宅訓練の場合も利用料は同じですか?
A:はい、在宅訓練でも通所型と同じ利用料の仕組みが適用されます。ただし、交通費はかからない代わりに、通信費や電気代などの実費が発生します。総額では在宅訓練の方が安く済むことが多いです。
Q9:体験利用にもお金はかかりますか?
A:体験利用は基本的に無料です。多くの事業所では、正式利用前に数日〜数週間の体験利用ができます。この期間は利用料も実費(交通費や昼食代など、自分で支払うもの)以外はかかりません。まずは体験利用で雰囲気を確認してから、正式に利用するか決めることができます。
Q10:お金がないから就労移行支援は無理だと思っていましたが、本当に利用できますか?
A:多くの場合、利用できます。特に、一人暮らしで障害年金のみ受給、または実家暮らしで本人無収入の場合は、利用料0円で通えることがほとんどです。交通費や昼食代などの実費はかかりますが、工夫次第で月数千円〜1万円程度に抑えることも可能です。まずは自治体や相談支援専門員に相談して、あなたのケースを確認してみてください。
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)「お金がないから無理」と諦めてしまう方が本当に多いのですが、実際に相談してみると利用料0円で通えることが分かり、「もっと早く聞けばよかった」と言われることがほとんどです。特に、実家暮らしの方は「親の収入も関係する」と誤解しているケースが多いです。18歳以上で未婚なら、原則として親の収入は関係ありません。まずは正確な情報を知ることから始めてください。
まとめ:お金の不安を整理して、見学・体験に進もう
就労移行支援の料金について、ここまでの内容を整理します。
料金に関する5つの重要ポイント:
- 利用料は「利用料(自己負担額)」+「実費」の2階建て:それぞれ性質が異なり、金額の決まり方も違います
- 多くの利用者が利用料0円または少額で通っている:市町村民税非課税世帯に該当すれば、利用料の自己負担は0円です
- 18歳以上で未婚なら、原則として親の収入は関係ない:世帯は「本人のみ」または「本人+配偶者」で判定されます。この点は多くの方が誤解しているため、実家暮らしの方も諦めずにまず相談を
- 実費は工夫次第で抑えられる:交通費助成、昼食持参、在宅訓練など、自分に合った方法を選べます
- お金が不安なときは相談できる:自治体、相談支援、事業所など、複数の相談先があります。必ず最新の情報を自治体に確認してください
お金の不安は、正確な情報を知ることで解消できることがほとんどです。「自分の場合はどうなのか」を確認せずに諦めてしまうのは、本当にもったいないことです。
今日からできる「お金の不安解消」3ステップ
STEP1:自分の世帯の状況を整理する
一人暮らしか実家暮らしか、結婚しているか、本人や配偶者の収入はどれくらいかを整理しましょう。市町村民税の課税状況が分かれば、おおよその負担区分がイメージできます。ただし、最終的な判断は自治体が行うため、必ず確認が必要です。
STEP2:自治体または相談支援専門員に相談する
自分のケースの負担上限月額を確認し、利用可能な助成制度についても聞いてみましょう。この時点で受給者証の申請をする必要はありません。まずは情報収集です。
STEP3:事業所の見学・体験利用で実費を確認する
気になる事業所に連絡して、見学や体験利用を申し込みましょう。その際、交通費、昼食代、資格取得費用などの実費についても詳しく聞いてください。複数の事業所を比較することで、自分に合った場所が見つかります。
就労移行支援は、あなたが「働きたい」という気持ちを実現するための制度です。お金の不安で一歩を踏み出せないのは、本当にもったいないことです。まずは相談から始めてみてください。
出典・一次情報
監修者情報
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

