この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援って、本当に無料や低額で利用できるの?」 「後から追加料金を請求されたりしない?」
お金のことは、一番気になりますよね。障害福祉サービスの料金には、**多くの人が見落としがちな「2種類のお金」**があります。
この記事では、国の制度で上限が決まっている**「①サービス利用料」と、事業所ごとに異なる「②食事代などの実費」**を明確に分けて、あなたの月々の総支出がどう決まるのかを徹底解説します。読み終わる頃には、お金に関する不安が解消され、安心してサービス選びができるようになっているはずです。
まずは要点(ここだけ読めばOK)
利用料は「原則1割」ですが、世帯の収入区分ごとに「負担上限月額」が定められ、ひと月の支払いはその上限を超えません。
区分は「生活保護=0円」「低所得(非課税)=0円」「一般1=9,300円(※通所・ホームヘルプ等)」「一般2=37,200円」。
同じ月に複数のサービスを使っても「上限管理」により合算調整されます(上限額を超えての負担は生じません)。
食事代・交通費などの実費は上限管理の対象外です(事業所・自治体の取扱いで有無や額が異なります)。
あなたが支払う「月々の総額」の全体像
まず、毎月の支払いが何で構成されるのか、シンプルに理解しましょう。
月々の総額 = ①サービス利用料(上限あり)+ ②実費(上限なし)
- ①サービス利用料(上限あり)→ 安心
詳しく解説
国の制度で上限が決まっているため、どんなに多く利用しても月額上限(0円〜37,200円)を超えることはありません。ほとんどの方が0円〜9,300円の範囲に収まります。 - ②実費(食事代・交通費など)→ 要確認
詳しく解説
事業所ごとに異なり、上限がないため、見学時の確認が必須です。食事代、交通費、教材費、検定料などが該当します。
この記事では、この2つを順番に詳しく解説していきます。
①サービス利用料の仕組み(ほとんどの場合0円〜9,300円)
料金の基本構造(原則1割+負担上限月額)
- 原則1割負担
詳しく解説
障害福祉サービスの利用者負担は報酬額の1割が基本です(例:報酬20,000円→自己負担2,000円)。ただし、後述の「負担上限月額」を超えての支払いはありません。 - 負担上限月額(4区分)
詳しく解説
世帯の収入状況に応じて「生活保護/低所得(非課税)/一般1/一般2」に区分され、月ごとの上限額が定められています。詳細は下の早見表をご覧ください。 - 上限管理(複数サービスでも安心)
詳しく解説
同一月内に複数のサービスを利用する場合でも、指定の「上限額管理者」が合算して調整し、上限を超える自己負担が発生しないように管理されます。
自己負担0円になる条件(生活保護・低所得)
生活保護世帯:自己負担は0円です。
低所得世帯(市町村民税非課税):自己負担は0円です(注:3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、概ね年収300万円以下が目安とされています)。
一般1・一般2:0円ではありませんが、月の上限額(一般1:9,300円/一般2:37,200円)を超えての負担はありません。
負担上限月額の早見表(全国統一基準)
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限(月額) |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(※目安:3人世帯・障害基礎年金1級受給で概ね年収300万円以下) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税(所得割16万円未満)※入所(20歳以上)・GH利用者を除く | 9,300円(通所・ホームヘルプ等) |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
【重要】上限額を決める「世帯」の範囲とは?
この上限額の判定で最も重要なのが「世帯」の考え方です。
- 18歳以上の場合:本人と配偶者のみ
詳しく解説
重要ポイント:親や兄弟と同居していても、親の収入は合算されません。 ご本人が未婚で収入が非課税基準以下の場合、親の収入が多くても自己負担は0円になります。これは非常に重要なポイントです。 - 18歳未満(障害児)の場合:保護者の属する世帯
詳しく解説
親の収入が合算されて判定されます。住民票上の世帯が基準となります。
②【見学で要確認】上限のない「実費」とは?
サービス利用料とは別に、自己負担となる可能性がある費用です。これらは負担上限月額の対象外となるため、必ず見学・体験時に確認しましょう。
- 食事代(昼食の提供がある場合)
詳しく解説
昼食の提供がある場合、1食あたり数百円程度の食材料費がかかることがあります。月20回利用なら月額1万円程度になる場合も。 - 交通費
詳しく解説
自宅から事業所までの交通費。自治体によっては助成制度がある場合もありますが、基本的には自己負担です。 - 教材費や資格取得費用
詳しく解説
PCの資格試験の受験料、テキスト代など。事業所によって取り扱いが大きく異なります。 - その他の活動費
詳しく解説
レクリエーションの参加費、外部実習に伴う交通費など。事前に確認しておきましょう。
より実践的な計算例(ケーススタディ)
計算の考え方(共通)
例1|一般1(通所中心)で、昼食(1食500円)を月20回利用した場合
①サービス利用料:報酬総額8万円の1割=8,000円(上限9,300円以内)②実費:500円 × 20日 = 10,000円
月額合計:8,000円 + 10,000円 = 18,000円
例2|一般2(複数サービス併用)の場合
①サービス利用料:報酬総額45万円の1割=45,000円 → 上限37,200円で打ち止め②実費:食事代なし、交通費月5,000円
月額合計:37,200円 + 5,000円 = 42,200円
例3|低所得(非課税)世帯
①サービス利用料:区分が低所得のため0円(報酬総額にかかわらず)②実費:昼食代500円×15日=7,500円、交通費3,000円
月額合計:0円 + 10,500円 = 10,500円
よくある質問(FAQ)
就労移行支援の料金はどのように計算しますか? 報酬総額の1割が基本ですが、世帯区分ごとの「負担上限月額」を超えての負担はありません(月単位で適用)
自己負担0円になる条件は? 生活保護世帯、または市町村民税非課税の「低所得」世帯です。該当すれば、その月の自己負担は0円です。
上限額は毎月リセットされますか? はい。負担上限は「月単位」で適用されます。同じ月に複数サービスを使っても、合算して上限内に調整されます。
食事代や交通費は上限管理の対象ですか? 対象外です。サービス利用料とは別に、事業所や自治体の取扱いで実費がかかる場合があります(食材料費、交通費、教材費など)。
通所日数が増えると費用も増え続けますか? サービス利用料は1割負担が増えますが、月ごとの負担には上限があるため「上限額を超えての負担」は生じません。ただし実費(食事代など)は別途かかります。
世帯の範囲はどう決まりますか? 18歳以上は「本人と配偶者」、18歳未満は「保護者の属する世帯」が判定単位です。世帯の範囲により区分・上限が変わります。
見学時に確認したい費用のチェックリスト
見学時の費用チェック
まとめ:お金の不安を解消して、安心してサービス選びを
就労移行支援の料金について、不安は解消されたでしょうか。
- サービス利用料は国の制度で上限が定められており、ほとんどの方が0円〜9,300円の範囲に収まる
- 親の収入は関係ない(18歳以上の場合)
- 本当に注意すべきは、上限のない**「実費(食事代・交通費など)」**。これは事業所ごとに異なるため、必ず見学時に確認すること
この3点を押さえておけば、費用に関する後悔やトラブルは確実に防げます。この記事のチェックリストを活用し、納得のいくサービスを選んでください。
出典(一次情報)と更新履歴
・最終更新日:2025年8月13日

この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。