この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援を使いたいけど、受給者証って何?」
「障害者手帳とは違うの?どうやって取るの?」
「料金はいくらかかる?有効期限があるって本当?」
障害福祉サービスを初めて利用しようとしたとき、多くの方が「受給者証」という言葉につまずきます。この記事では、受給者証の基本から使い方、料金の仕組み、有効期間、取得方法まで、初めての方にも分かりやすく解説します。
特に重要なのは、受給者証があれば就労移行支援などの障害福祉サービスを、ほとんどの方が無料(自己負担0円)で利用できるという事実です。
この記事で分かること
- 受給者証とは何か、障害者手帳との違いが分かる
- どんな人が受給者証を取得でき、どんなサービスが使えるのか分かる
- 受給者証の中身(記載内容)と見方が分かる
- 料金の仕組みと、実際にいくら負担するのかが分かる
- 有効期間と更新手続きの流れが分かる
- 取得から利用開始までの大まかな流れが分かる
まず結論:受給者証とは何か
受給者証(障害福祉サービス受給者証)とは、障害福祉サービスを利用するための公的な証明書です。 市区町村が発行する、あなた専用の「サービス利用許可証」のようなものだと考えてください。
3つの重要ポイント
受給者証について、最初に押さえておきたい3つのポイントがあります。
- 障害者手帳がなくても取得できる:医師の診断や意見書があれば、手帳を持っていなくても申請可能です
- ほとんどの方が無料(自己負担0円)で利用できる:世帯収入に応じた負担上限があり、生活保護世帯や住民税非課税世帯は0円、一般世帯でも月額9,300円が上限です
- 有効期間がある:基本的に1年間で、更新手続きが必要です(サービスによっては3年の場合もあります)
受給者証は、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、自立訓練、グループホームなど、さまざまな障害福祉サービスを利用する際に必要になります。この証明書があることで、サービス事業所はあなたに対して正式にサービスを提供でき、自治体から報酬を受け取ることができます。
受給者証の基本|制度・仕組みの全体像
受給者証は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの利用を可能にする仕組みです。この制度により、障害のある方が必要な支援を受けながら、自立した生活や就労を目指すことができます。
法的には、市区町村が「この人には、このサービスが、この期間、この支給量で必要だ」と判断した証明書です。受給者証には、利用できるサービスの種類、1か月あたりの利用日数(支給量)、有効期間、負担上限月額などが記載されています。
障害者手帳との違い
受給者証と障害者手帳は、まったく別の制度です。この2つを混同している方が多いため、ここで明確に違いを説明します。
障害者手帳は、障害があることの「証明書」です。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類があり、等級によって受けられる公的支援(税の減免、交通機関の割引など)が決まります。しかし、手帳だけでは障害福祉サービスを利用できません。
受給者証は、障害福祉サービスを利用するための「許可証」です。手帳を持っていなくても、医師の診断や意見書があれば取得できます。逆に、手帳を持っていても、受給者証がなければ就労移行支援などのサービスは利用できません。
整理すると、以下のようになります。
- 手帳あり・受給者証なし:公的支援(割引など)は受けられるが、就労移行支援などの福祉サービスは利用できない
- 手帳なし・受給者証あり:福祉サービスは利用できるが、交通機関の割引などは受けられない
- 手帳あり・受給者証あり:両方の制度を活用できる(最も選択肢が広い)
多くの方が「手帳がないとサービスを使えない」と誤解していますが、実際には受給者証さえあれば、手帳なしでもサービスを利用できます。
監修者コメント(市原早映/サービス管理者)
相談者の多くが「手帳がないとサービスを使えない」と誤解されています。実際には、手帳がなくても医師の診断書があれば受給者証は取得できます。特に精神障害や発達障害の方は、手帳取得に時間がかかることもありますが、診断書があればすぐに就労移行支援を始められます。「手帳を取ってから」と待つ必要はありません。
どんなときに必要になるのか
受給者証が必要になるのは、障害福祉サービスを利用するすべての場面です。具体的には、以下のようなサービスを利用する際に必要です。
就労系サービスでは、就労移行支援(一般企業への就職を目指す訓練)、就労継続支援A型(雇用契約ありで働きながら訓練)、就労継続支援B型(雇用契約なしで軽作業)、就労定着支援(就職後のサポート)があります。
訓練・生活支援系サービスでは、自立訓練(生活能力の向上を目指す訓練)、自立生活援助(一人暮らしのサポート)、共同生活援助(グループホーム)があります。
その他のサービスでは、居宅介護(ホームヘルプ)、短期入所(ショートステイ)、移動支援などがあります。
これらのサービスを利用する際、事業所は必ずあなたの受給者証を確認します。受給者証がない状態でサービスを受けることはできません。
受給者証が必要になる場面と、利用できる人
受給者証を取得できる人は、障害福祉サービスの利用が必要だと市区町村が認めた方です。ここでは、具体的にどんな人が対象になるのか、どんな場面で必要になるのかを説明します。
対象となる人の条件
受給者証を取得できるのは、以下のいずれかに該当する方です。
①身体障害・知的障害・精神障害のある方
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている方は、基本的に対象になります。ただし、手帳があっても、利用したいサービスが「必要」と認められなければ受給者証は発行されません。たとえば、身体的には問題がない方が就労移行支援を希望する場合、精神的な課題や発達障害などの診断が必要になることがあります。
②手帳はないが、医師の診断がある方
これが非常に重要なポイントです。精神科、心療内科、発達障害の専門医などから診断を受けている方は、手帳がなくても受給者証を申請できます。うつ病、適応障害、社交不安障害、ADHD、ASDなど、さまざまな診断名が該当します。
医師の診断書や意見書に「就労移行支援の利用が適当」と書かれていれば、市区町村はそれを根拠に受給者証を発行します。実際、就労移行支援を利用している方の中には、手帳を持たずに受給者証だけで利用している方が一定数います。
医師の診断書や意見書に「就労移行支援の利用が適当」と書かれていれば、市区町村はそれを根拠に受給者証を発行します。実際、就労移行支援を利用している方の中には、手帳を持たずに受給者証だけで利用している方が一定数います。
③難病のある方
国が指定する難病(指定難病)の方も、障害福祉サービスの対象になります。難病の診断を受けており、日常生活や就労に支障がある場合、受給者証を取得できます。
④年齢制限
障害福祉サービスの多くは、18歳以上が対象です。ただし、サービスによっては18歳未満でも利用できるものがあります(児童福祉法による支援との区分があります)。また、65歳以上の方は、介護保険サービスが優先されるため、障害福祉サービスの利用が制限される場合があります。
手帳の有無別:申請パターン
受給者証の申請パターンは、手帳の有無によって少し変わります。
パターンA:手帳あり
すでに障害者手帳を持っている方は、申請がスムーズです。手帳のコピーと、利用したいサービスが分かる計画書(相談支援専門員が作成)を提出すれば、多くの場合、数週間から1か月程度で受給者証が発行されます。
手帳があることで、障害の存在が公的に証明されているため、追加の診断書が不要になるケースが多いです。
パターンB:手帳なし・医師の診断あり
手帳を持っていない方は、医師の診断書や意見書が必要です。精神科、心療内科、発達障害の専門医などに「就労移行支援の利用が適当」という内容の意見書を書いてもらいます。
診断書の費用は、医療機関によって異なりますが、3,000円~10,000円程度が一般的です。この診断書と計画書を提出し、市区町村が「サービスの必要性あり」と判断すれば、受給者証が発行されます。
手帳がない場合、審査に少し時間がかかることがあります(1~2か月程度)。また、自治体によっては「手帳取得を勧める」と言われることもありますが、手帳取得は強制ではありません。診断書があれば申請は可能です。
パターンC:手帳なし・診断なし
現時点で診断を受けていない方は、まず医療機関を受診し、診断を受ける必要があります。「何となく生きづらい」「働くのが難しい」という悩みがある方は、精神科や心療内科、発達障害の専門クリニックに相談してみましょう。
診断を受けた後、医師に「就労移行支援を利用したい」と伝えれば、意見書を書いてもらえます。
受給者証の中身と見方|ここだけは押さえたいポイント
受給者証には、さまざまな情報が記載されています。ここでは、実際に受給者証を手にしたときに、どこを見ればいいのか、何が書いてあるのかを説明します。
受給者証は、市区町村によって書式が少し異なりますが、記載内容はおおむね共通しています。カードサイズのものや、A4用紙のものなど、自治体によって形式は異なりますが、情報の中身は同じです。
基本情報(氏名・住所・生年月日など)
受給者証の上部には、利用者本人の基本情報が記載されています。氏名、生年月日、住所、受給者証番号などです。
受給者証番号は、サービス利用時に事業所が必ず確認する重要な番号です。この番号で、自治体のシステムにあなたの情報が紐づいています。事業所に通い始めるときは、この番号を伝えることになります。
サービスの種類
受給者証には、利用できるサービスの種類が記載されています。たとえば、「就労移行支援」「就労継続支援B型」など、具体的なサービス名が書かれています。
複数のサービスを同時に利用する場合(たとえば、就労移行支援とグループホームを併用する場合)、それぞれのサービス名が記載されます。
ここで注意したいのは、受給者証に書かれていないサービスは利用できないという点です。たとえば、受給者証に「就労移行支援」しか記載されていない場合、就労継続支援B型を利用することはできません。別のサービスを追加で利用したい場合は、受給者証の変更申請が必要です。
支給量(1か月に利用できる日数)
支給量とは、1か月あたりに利用できる日数の上限のことです。たとえば、「22日」と書かれていれば、その月に最大22日までサービスを利用できます。
就労移行支援の場合、多くの自治体が「月22日」または「月20日」を標準的な支給量としています。これは、平日の営業日数に合わせた設定です。
支給量を超えて利用することはできません。たとえば、支給量が20日の場合、21日目以降は利用できないか、または全額自己負担になります(事業所によっては、超過分の利用を認めないこともあります)。
ただし、支給量が足りないと感じた場合は、市区町村に相談して増量を申請することも可能です。体調が安定してきて、もっと通いたいという場合や、資格試験前に集中的に訓練したい場合などは、支給量の増加を検討しましょう。
有効期間(開始日と終了日)
受給者証には、「この期間だけ有効です」という開始日と終了日が記載されています。
就労移行支援の場合、初回の有効期間は通常1年間です。1年後に更新手続きをすれば、さらに1年延長できます(最長2年まで)。
就労継続支援A型・B型の場合、有効期間は1年間のことが多いですが、自治体によっては3年間の長期設定をしているところもあります。
グループホームなどの居住系サービスの場合、1年ごとの更新が一般的です。
有効期間が切れる前に、必ず更新手続きをしましょう。期限が切れてしまうと、一時的にサービスを利用できなくなります。多くの事業所は、期限の1~2か月前に「更新手続きをしましょう」と声をかけてくれますが、最終的には自分で管理することが大切です。
負担上限月額(自己負担の上限額)
負担上限月額とは、あなたが1か月に支払う自己負担額の上限のことです。障害福祉サービスの利用料は原則1割負担ですが、世帯の収入に応じて負担上限が設定されています。
受給者証には、この負担上限月額が記載されています。たとえば、「0円」「9,300円」「37,200円」などと書かれています。
この金額については、次のセクションで詳しく説明します。
費用の仕組み|自己負担はいくらかかる?
障害福祉サービスの利用料は、原則として「サービス費用の1割を自己負担」というルールになっています。しかし、実際にはほとんどの方が無料(自己負担0円)でサービスを利用しています。その理由は、世帯収入に応じた負担上限があるからです。
基本ルール:1割負担+負担上限
障害福祉サービスの費用は、国と自治体が大部分を負担し、利用者は原則1割を負担します。ただし、負担が重くなりすぎないように、世帯の収入に応じた負担上限月額が設定されています。
たとえば、1か月のサービス費用が100,000円だった場合、1割負担なら10,000円を支払うはずですが、負担上限月額が9,300円であれば、実際に支払うのは9,300円です。負担上限を超えた分は、公費で負担されます。
負担区分と上限額
負担上限月額は、以下の4つの区分に分かれています。この区分は、あなたと生計を同一にする世帯の収入で決まります。
以下は、負担区分と上限額の詳細です
| 負担区分 | 対象となる世帯 | 負担上限月額 | 該当する人の割合(目安) |
|---|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | 約5〜10% |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 (年収目安:単身100万円以下、2人世帯156万円以下) |
0円 | 約60〜70% ※最も多い |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯 (所得割16万円未満) (年収目安:600万円以下) |
9,300円 | 約20〜30% |
| 一般2 | 上記以外 (所得割16万円以上) |
37,200円 | 約5%未満 ※該当者は少ない |
世帯の範囲(誰の収入を見るか)
負担区分を決める際の「世帯」の範囲は、サービスの種類によって異なります。
18歳以上の障害者(障害児以外)の場合
- 障害者本人と配偶者の収入のみで判定します。
- 親や兄弟姉妹と同居していても、その収入は含まれません。
これは、障害者総合支援法の考え方によるもので、成人した障害者の自立を促進するためです。
ただし、20歳未満で障害基礎年金を受給していない方や、障害児の場合は、保護者の収入も含めた世帯全体で判定されます。
具体例:ケース別の自己負担額シミュレーション
いくつかの具体的なケースで、実際の自己負担額を見てみましょう。
監修者コメント(市原早映/サービス管理者)
「お金がかかるから利用できない」と諦める方が時々いらっしゃいますが、実際には当事業所でも利用者の約70%が自己負担0円です。親と同居していても、18歳以上であれば本人の収入のみで判定されるため、多くの方が無料で利用できます。経済的な理由で諦める前に、ぜひ一度相談してください。
その他の費用(交通費・昼食代など)
受給者証に関連する自己負担額とは別に、以下の費用が発生することがあります。
交通費
事業所への通所にかかる交通費は、原則として自己負担です。ただし、一部の事業所では交通費の補助を行っているところもあります。また、自治体によっては、障害者手帳を持っている方に対して、公共交通機関の割引制度があります。
昼食代
事業所で昼食を提供している場合、その費用は別途かかります。1食300円~500円程度が一般的です。ただし、昼食提供を行っていない事業所も多く、その場合はお弁当を持参するか、外で食べることになります。
教材費・資格受験料
就労移行支援などで、専門スキルを学ぶ場合、教材費や資格受験料が別途かかることがあります。事業所によっては、これらを無料で提供しているところもあります。見学時に確認しましょう。
有効期間と更新手続き|いつまで使える?切れたらどうなる?
受給者証には有効期間があり、期限が来たら更新手続きが必要です。ここでは、有効期間の考え方、更新の流れ、期限を切らさないための工夫を説明します。
有効期間の基本的な考え方
受給者証の有効期間は、サービスの種類によって異なりますが、多くの場合は1年間です。
就労移行支援の場合、最長2年間の利用が原則ですが、受給者証の有効期間は1年ごとに区切られます。1年目の受給者証が切れる前に更新手続きをして、2年目の受給者証を発行してもらいます。
就労継続支援A型・B型の場合、有効期間は1年間のことが多いですが、自治体によっては3年間の長期設定をしているところもあります。安定して利用できている方には、長期の受給者証が発行されることがあります。
グループホームなどの居住系サービスの場合、1年ごとの更新が一般的です。
有効期間は、受給者証に「令和○年○月○日から令和○年○月○日まで」という形で明記されています。
サービスごとの期間の違い
サービスによって、利用できる期間の上限が異なります。
就労移行支援は、原則として最長2年間です。2年以内に一般企業への就職を目指します。やむを得ない理由がある場合(体調不良で休みが多かった、など)、1年間の延長が認められることもありますが、基本的には2年が上限です。
就労継続支援A型・B型は、期間の上限がありません。 長期間、安定して利用し続けることができます。ただし、受給者証の有効期間は1年または3年ごとに区切られるため、定期的な更新は必要です。
自立訓練は、最長2年間(または3年間、サービスの種類による)です。
このように、サービスごとに利用できる期間の考え方が異なるため、自分が利用するサービスの上限を確認しておきましょう。
更新の流れ(STEP1〜STEP4)
- 現在のサービスを継続するか、変更するか
- 支給量(利用日数)は適切か
- 次の1年間の目標は何か
更新手続きを忘れた場合・期限が切れた場合の対応
もし更新手続きを忘れて、受給者証の有効期限が切れてしまった場合、どうなるでしょうか。
期限が切れた瞬間に利用できなくなるわけではありませんが、正式には「サービスを利用できない状態」になります。事業所によっては、「受給者証が切れている間は、一時的に利用を停止します」と言われることもあります。
ただし、多くの場合、更新手続きを速やかに行えば、遡って受給者証が発行されることがあります。たとえば、4月1日に有効期限が切れたが、4月15日に更新手続きをした場合、4月1日から有効な受給者証が発行されることがあります。
これは自治体の判断によりますが、「うっかり忘れていた」という理由であれば、多くの自治体が柔軟に対応してくれます。
とはいえ、期限切れは避けるべきです。更新時期が近づいたら、早めに動きましょう。
監修者コメント(市原早映/サービス管理者)
実務上、更新を忘れて期限が切れてしまうケースは年に数件あります。多くの自治体は柔軟に対応してくれますが、中には「期限が切れた期間は遡及できない」という厳格な自治体もあります。事業所としては、利用者の期限を管理し、2か月前には必ず声をかけるようにしていますが、最終的にはご本人での管理が重要です。スマホのリマインダー設定を強くおすすめします。
期限を切らさないための工夫
受給者証の期限を切らさないための具体的な工夫をいくつか紹介します。
①スマホのカレンダーにリマインダーを設定
受給者証を受け取ったら、すぐにスマホのカレンダーに「受給者証の更新」と入力し、有効期限の2か月前にリマインダーが出るように設定します。これが最も確実な方法です。
②受給者証の写真を撮って保存
受給者証の写真をスマホで撮影し、いつでも確認できるようにしておきます。有効期限を忘れたときに、すぐに確認できます。
③事業所のスタッフに声をかけてもらう
事業所のスタッフに「更新時期が近づいたら教えてください」と伝えておきます。多くの事業所は、利用者の受給者証の期限を管理しているため、忘れずに声をかけてくれます。
④相談支援専門員と定期的に連絡を取る
相談支援専門員は、受給者証の更新時期を把握しています。定期的に連絡を取り合うことで、更新を忘れるリスクが減ります。
取得から利用開始までの流れ(ダイジェスト)
受給者証を取得し、実際にサービスを利用し始めるまでの流れを、6つのステップで説明します。詳しい手続きは別記事で解説していますが、ここでは全体の流れをつかんでください。
まず、どのサービスを利用したいかを決めます。就労移行支援、就労継続支援A型・B型、自立訓練など、自分の目標に合ったサービスを選びましょう。
その後、具体的な事業所を探します。Webで検索したり、自治体の障害福祉課で事業所リストをもらったりします。気になる事業所があれば、見学や体験利用を申し込みましょう。
多くの事業所は、無料で見学・体験利用を受け付けています。実際に訪問して、雰囲気やカリキュラムを確認することが大切です。
利用したい事業所が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉課に相談に行きます。ここで、受給者証の申請について説明を受けます。
自治体によっては、最初に「基幹相談支援センター」や「計画相談支援事業所」に相談するよう案内されることもあります。その場合は、そちらに行きましょう。
受給者証の申請には、「サービス等利用計画」が必要です。この計画書は、相談支援専門員が作成します。
相談支援専門員と面談し、あなたの状況、希望するサービス、目標などを話し合います。この面談をもとに、相談支援専門員が計画書を作成します。
計画書には、以下のような内容が書かれます。
- 利用者の状況(障害の種類、生活の課題など)
- 利用するサービスの種類
- 支給量(1か月あたりの利用日数)
- 達成したい目標
- サービスを提供する事業所名
計画書ができたら、市区町村に受給者証を申請します。必要書類は以下のとおりです。
- 申請書(自治体の窓口でもらえます)
- サービス等利用計画(相談支援専門員が作成)
- 医師の診断書または意見書(手帳がない場合)
- 障害者手帳のコピー(持っている場合)
- 印鑑
- マイナンバーが分かるもの
自治体によって必要書類が異なるため、事前に確認しましょう。
申請後、市区町村の担当者が、あなたの状況を確認するための調査を行うことがあります。自宅に訪問して面談する場合もあれば、電話で簡単に確認するだけの場合もあります。
この調査では、日常生活の状況、サービスの必要性などを確認されます。特に難しいことを聞かれるわけではないので、リラックして答えましょう。
審査が通ると、受給者証が発行されます。発行までの期間は、自治体によって異なりますが、申請から1か月程度が一般的です。
受給者証が届いたら、事業所に受給者証番号を伝え、正式に利用を開始します。多くの事業所は、受給者証が発行される前でも、体験利用として無料でサービスを提供してくれます。
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ケーススタディ|具体的な利用イメージ
ここでは、3人の具体例を通じて、受給者証の取得から利用までのイメージをつかんでください。
ケース1:Aさん(26歳・社交不安障害・手帳なし)
Before:悩みと状況
Aさんは、26歳の男性で、大学卒業後に一般企業に就職しましたが、対人不安が強く、1年で退職しました。その後、アルバイトを転々としましたが、人と話すことが苦手で、長く続きませんでした。
精神科を受診したところ、社交不安障害と診断されました。医師から「就労移行支援を利用してみては」と勧められましたが、障害者手帳は持っていませんでした。
どう動いたか
Aさんは、市区町村の障害福祉課に相談に行きました。窓口で「手帳がなくても、医師の診断書があれば受給者証を申請できます」と説明を受け、安心しました。
その後、相談支援専門員と面談し、就労移行支援を利用する計画書を作成してもらいました。医師に診断書を書いてもらい(費用5,000円)、計画書とともに申請しました。
申請から約1か月後、受給者証が発行されました。Aさんは、Webデザインを学べる就労移行支援事業所に通い始めました。
After:どうなったか
Aさんの負担区分は「市町村民税非課税世帯」で、自己負担は0円でした。完全無料で、週5日、事業所に通いながらWebデザインを学びました。
最初は対面でのコミュニケーションに苦労しましたが、事業所のスタッフが丁寧にサポートしてくれたおかげで、徐々に慣れていきました。1年半後、在宅勤務可能なWeb制作会社に就職しました。
受給者証の有効期間は1年間で、1年目の終わりに更新手続きをして、2年目も継続して利用しました。
ケース2:Bさん(32歳・うつ病・精神障害者保健福祉手帳あり)
Before:悩みと状況
Bさんは、32歳の女性で、会社員として働いていましたが、長時間労働によりうつ病を発症し、休職後に退職しました。精神障害者保健福祉手帳(2級)を取得しました。
再就職を考えていましたが、体調が不安定で、すぐにフルタイムで働く自信がありませんでした。医師から「就労移行支援で、まずは生活リズムを整えてから就職を目指しては」とアドバイスを受けました。
どう動いたか
Bさんは、市区町村の障害福祉課に行き、受給者証の申請方法を聞きました。手帳を持っていたため、手続きはスムーズでした。
相談支援専門員と面談し、「まずは週3日から始めて、徐々に日数を増やす」という計画を立てました。手帳のコピーと計画書を提出し、約2週間で受給者証が発行されました。
After:どうなったか
Bさんの負担区分は「一般1」で、月額9,300円の自己負担でした。最初は週3日から始め、3か月後には週5日通えるようになりました。
事業所では、ビジネスマナーやPC操作を学びながら、体調管理のスキルも身につけました。1年後、事務職として一般企業に就職しました。就職後も、事業所の就労定着支援を受けながら、安定して働いています。
ケース3:Cさん(40歳・発達障害・手帳なし・親と同居)
Before:悩みと状況
Cさんは、40歳の男性で、親と同居しています。これまで何度か就職しましたが、コミュニケーションの問題や、仕事のミスが多く、長く続きませんでした。
38歳のときに発達障害(ADHD・ASD)の診断を受けました。手帳は取得していませんでしたが、医師から「就労移行支援を利用して、自分に合った仕事を探してみては」と勧められました。
どう動いたか
Cさんは、市区町村の障害福祉課に相談に行きました。親と同居していたため、「親の収入も含めて判定されるのでは」と心配していましたが、窓口で「18歳以上の障害者の場合、本人と配偶者の収入のみで判定します」と説明を受け、安心しました。
相談支援専門員と面談し、就労移行支援の計画書を作成してもらいました。医師に診断書を書いてもらい(費用8,000円)、申請しました。
申請から約1か月後、受給者証が発行されました。
After:どうなったか
Cさんの負担区分は「市町村民税非課税世帯」(Cさん本人の収入で判定)で、自己負担は0円でした。親の収入は関係ありませんでした。
Cさんは、IT特化型の就労移行支援事業所に通い、プログラミングを学びました。発達障害の特性を理解してくれるスタッフのサポートを受けながら、自分に合った学習方法を見つけました。
1年半後、在宅勤務可能なIT企業にプログラマーとして就職しました。在宅勤務により、通勤のストレスがなく、自分のペースで働けています。
監修者コメント(市原早映/サービス管理者)
上記の3つのケースは、当事業所でも実際によくあるパターンです。共通しているのは、「もっと早く相談すればよかった」という声です。手帳の有無、年齢、同居家族の状況など、様々な不安があると思いますが、まずは相談してみることが第一歩です。見学や体験利用は無料ですし、合わなければ断ることもできます。一人で悩まず、ぜひ気軽に問い合わせてみてください。
こんな人は早めに動いた方がいい|診断チェックリスト
以下のチェックリストで、あなたが受給者証の取得を検討すべきかどうかを確認してみましょう。
受給者証 取得診断チェックリスト
当てはまる項目にチェックを入れてください(複数選択可)
判定の目安
- 5個以上該当:受給者証の取得を強くおすすめします。まずは市区町村の障害福祉課に相談してみましょう。
- 3〜4個該当:受給者証の取得を検討する価値があります。医師や相談支援専門員に相談してみましょう。
- 2個以下:現時点では緊急性は低いかもしれませんが、将来的に必要になる可能性があります。情報収集を続けましょう。
よくある質問(FAQ)
受給者証について、よく聞かれる質問に答えます。
Q1:受給者証と障害者手帳の違いは何ですか?
受給者証は障害福祉サービスを利用するための許可証、障害者手帳は障害の証明書です。手帳がなくても受給者証は取得でき、手帳があっても受給者証がなければサービスは利用できません。両方持っている方が選択肢は広がりますが、どちらか一方だけでも問題ありません。
Q2:障害者手帳がないと受給者証は取れませんか?
いいえ、手帳がなくても取得できます。医師の診断書や意見書があれば、手帳なしで申請可能です。実際、就労移行支援を利用している方の中には、手帳を持たずに受給者証だけで利用している方が一定数います。
Q3:受給者証の申請にはどのくらいの期間がかかりますか?
自治体によって異なりますが、申請から発行まで1か月程度が一般的です。早い自治体では2週間程度、遅い場合は2か月程度かかることもあります。手帳を持っている方は、手続きがスムーズで早く発行される傾向があります。
Q4:受給者証があれば、どの事業所でも利用できますか?
受給者証に記載されているサービスの種類の事業所であれば、基本的に利用できます。(自治体によっては事業所を変更する場合、再度申請、審査が必要な場合もあります)
また、事業所によっては「定員がいっぱい」「対象者の条件が合わない」などの理由で受け入れられない場合もあります。まずは見学や相談をして、受け入れ可能か確認しましょう。
Q5:受給者証の費用は本当に無料ですか?
受給者証の発行自体は無料です。利用料は、世帯の収入に応じた負担上限があり、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯は0円です。一般世帯でも月額9,300円または37,200円が上限で、それ以上はかかりません。ほとんどの方が0円~9,300円で利用しています。
Q6:親と同居している場合、親の収入も含めて判定されますか?
18歳以上の障害者の場合、本人と配偶者の収入のみで判定されます。親や兄弟姉妹と同居していても、その収入は含まれません。ただし、20歳未満で障害基礎年金を受給していない方や、障害児の場合は、保護者の収入も含めた世帯全体で判定されます。
Q7:受給者証の有効期限が切れたらどうなりますか?
有効期限が切れると、正式にはサービスを利用できなくなります。ただし、更新手続きを速やかに行えば、多くの自治体が遡って受給者証を発行してくれます。期限を切らさないように、2〜3か月前から更新手続きを始めましょう。
Q8:就労移行支援は最長2年と聞きましたが、それ以上利用できませんか?
原則として、就労移行支援は最長2年間です。ただし、やむを得ない理由(体調不良で休みが多かった、など)がある場合、1年間の延長が認められることがあります。自治体と相談しましょう。また、2年経過後に就職できなかった場合、就労継続支援A型・B型など他のサービスに移行することも可能です。
Q9:受給者証を取得したら、必ず就労移行支援を利用しないといけませんか?
いいえ、受給者証を取得したからといって、必ず利用しなければならないわけではありません。受給者証は「利用できる権利」を証明するものであり、実際に利用するかどうかはあなたの自由です。体調が悪くなった、他の方法を見つけたなど、利用しない選択も可能です。
Q10:受給者証を持っていることを、就職活動で企業に伝える必要がありますか?
受給者証を持っていることを企業に伝える義務はありません。ただし、障害者雇用枠で就職活動をする場合は、障害者手帳が必要です(受給者証だけでは障害者雇用枠には応募できません)。一般枠で就職する場合は、受給者証や手帳の有無を伝える必要はありません。
まとめ:受給者証の3つのポイントと次の一歩
この記事で説明した内容を、3つのポイントにまとめます。
①受給者証は、障害福祉サービスを利用するための公的な証明書
受給者証があれば、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、自立訓練など、さまざまなサービスを利用できます。障害者手帳とは別物で、手帳がなくても医師の診断書があれば取得可能です。
②ほとんどの方が無料(自己負担0円)で利用できる
世帯収入に応じた負担上限があり、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯は0円です。一般世帯でも月額9,300円が上限で、多くの方が0円~9,300円の範囲で利用しています。18歳以上の障害者の場合、親の収入は含まれず、本人と配偶者の収入のみで判定されます。
③有効期間は1年間(サービスにより異なる)で、更新が必要
受給者証には有効期間があり、期限が来たら更新手続きが必要です。期限の2〜3か月前から準備を始めましょう。更新手続きは、相談支援専門員がサポートしてくれます。
次にやるべきこと
受給者証について理解が深まったら、次のステップに進みましょう。
- 市区町村の障害福祉課に相談する:お住まいの市区町村の障害福祉課に行き、受給者証の取得について相談してみましょう。窓口で丁寧に説明してくれます。電話での相談も可能です。
- 医師に相談する:すでに精神科や心療内科に通院している方は、医師に「就労移行支援を利用したい」と伝え、診断書や意見書を書いてもらえるか相談しましょう。
- 事業所を見学・体験する:気になる事業所があれば、見学や体験利用を申し込んでみましょう。受給者証がなくても、無料で見学・体験できる事業所がほとんどです。
- 別記事「受給者証の取り方ガイド」を読む:より詳しい手続きの流れや、必要書類の詳細については、別記事で詳しく解説しています。(※リンク先は後で設定)
受給者証は、あなたの新しいスタートを支える大切なツールです。まずは一歩を踏み出してみましょう。
出典・一次情報
この記事は、以下の公的な情報源をもとに作成しています。
- 障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
- 厚生労働省「障害福祉サービスについて」
- 厚生労働省「障害者の就労支援について」
- 各市区町村の障害福祉サービスに関する案内(自治体により内容が異なるため、詳細はお住まいの自治体にご確認ください)
監修者情報
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

