この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援は一生に一度しか使えない」——事業所の見学でそう言われた、ネットでそう書いてあった、という相談が絶えません。2年間という期限がある制度なので、「使い切ったら終わり」と受け取ってしまうのも無理はありません。
結論から言います。就労移行支援は一生に一度ではありません。国の通知に「複数回の利用が可能である」と明記されています。
ただし2回目は自動では認められません。市区町村が一人ひとりの状況を見て支給決定するかどうかを判断します。「使える/使えない」ではなく「どう説明すれば認められるか」が実際の論点です。
- 再利用できる根拠を、国の通知の文言で確認できる
- 2回目が認められやすいケース・説明が必要なケースがわかる
- 2027年4月から加わる新しい手続きを先に知っておける
「複数回の利用が可能」と国の通知に書かれている
根拠は、厚生労働省が2025年3月31日に出した通知「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」です。適正なサービス利用等の項目に、次の一文があります。
読みどころは2つあります。ひとつは「複数回の利用が可能」と国が言い切っていること。もうひとつは、その判断を「個々の対象者の状況を勘案して」行うよう市区町村に求めていることです。
つまり制度として2回目の扉は開いています。開けるかどうかを決めるのは、あなたの住む市区町村です。
なぜ「一生に一度」と言われてしまうのか
理由1:標準利用期間が2年と決まっているから
就労移行支援には24か月という標準利用期間があります。市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合に限り、最大1年の更新が可能です。この「2年+最長1年」という枠が強く印象に残るため、枠を使い切った時点で制度そのものが終わると誤解されやすいのです。
理由2:自治体が一律に断ってしまう例が実際にあったから
同じ通知には、標準利用期間を超えて更新を行う場面について、こう書かれています。自治体によっては個別の対象者の状況を勘案せず、一律の取扱いが行われている事例が見られるため、市町村は引き続き個々の状況を勘案して判断すること——。
国がわざわざ注意を促しているということは、機械的に断られた人が現実にいたということです。「一生に一度」という説明は、制度の中身というより、こうした窓口対応の記憶が広まったものと考えるほうが実態に近いでしょう。
窓口で「2回目はできません」と言われたら、それが制度上の決まりなのか、その自治体の運用なのかを確かめてください。国の通知は複数回の利用を認めています。
2回目が認められやすいのはどんなケースか
判断基準は「個々の状況を勘案して」としか示されていないため、全国共通の合格ラインはありません。ただ、支給決定の趣旨から考えると、次のような事情は説明材料になります。
1回目のあと就職し、その後に離職した
前回の利用が無駄になっていない一方で、あらためて訓練が必要な状態です。離職の理由と、次の職場では何を変えたいのかを具体的に話せると伝わりやすくなります。
前回の途中で体調を崩し、訓練を続けられなかった
今回は通えるだけの体調が整っている、という点が焦点になります。主治医の意見や、生活リズムが安定していることを示せる材料を用意しておきましょう。
目指す職種が前回と変わった
事務職を目指していた方がIT系に切り替えるなど、必要な訓練内容が入れ替わるケースです。前回と同じことを繰り返すのではない、と説明できる状態が望ましいです。
逆に、前回の利用から間もない、通所実績がほとんどない、といった場合は、なぜ今回は続けられるのかを丁寧に説明する必要があります。ひとりで抱えず、相談支援専門員に同席してもらうのが近道です。
2年間の枠そのものの延長を考えている段階なら、就労移行支援は2年で終わり?延長の条件と2年後の進路を先に読むと、再利用と延長のどちらを狙うべきかが整理できます。
2027年4月から手続きが1つ増える
2025年10月に「就労選択支援」というサービスが始まりました。短期間の作業体験を通じて、働くことについての希望・適性・必要な配慮を本人と一緒に整理する仕組みです。
このアセスメントは、就労移行支援を標準利用期間(2年)を超えて利用したい方については、2027年4月以降、原則として受けることになります(支援体制の整備状況を踏まえつつ、とされています)。新たにA型を利用したい方も同じ時期からの予定です。
さらに通知では、就労移行支援を利用している最中でも、本人の意向や能力に変化が見られる場合があるため、相談支援を行う人などと連携して就労選択支援の情報を定期的に提供することが事業所に求められています。「2年経ったから終わり」ではなく、途中で進路を見直す前提の制度に変わりつつあるということです。
2年で区切って終わらせるのではなく、客観的なアセスメントを挟んで進路を選び直す——国が向かっているのはこの方向です。再利用を考えている方にとっては追い風になります。
2回目の利用を相談するときの進め方
前回の利用でついた担当者がいれば、その人が最短ルートです。いない場合は市区町村の障害福祉課で相談支援事業所を紹介してもらいます。
「前回は◯◯で中断したが、今は△△が整っている」「目指す仕事が変わった」など、今回利用する理由を1〜2文で言えるようにしておきます。
再利用に慣れている事業所ほど、市区町村への説明の仕方も心得ています。見学は無料なので、複数見ておくと比較できます。
受給者証の手続きは初回と同じ流れです。詳しくは受給者証の取り方ガイドを参照してください。
よくある質問(FAQ)
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この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。
