この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
IT・AI分野に強い就労移行支援を選ぶときは、「ゴール(職種×働き方)→カリキュラム→講師/支援体制→実績→求人事例の順**で具体的に確認するのが近道です。本記事では、最短で比較できるチェックリストと、見学・体験時に聞くべき質問をまとめました。
まずは要点(ここだけ押さえればOK)
- 目標職種と働き方(通所/在宅/ハイブリッド)を最初に固定し、学習内容と求人事例が一致しているかを見る。
- 資格は“手段”。ITパスポートやMOS等は就職の土台づくり、採用ではポートフォリオ/実務課題の完成度がより重要。
- 講師の実務経験(現場歴・指導年数・週あたりの個別指導時間)と企業連携/模擬案件の有無を確認。
- 就職実績は内訳まで:職種別の人数、定着率(3か月/6か月/1年)、賃金の中央値、雇用形態、在宅割合を開示しているか。
- オンライン学習だけでなく、タスク管理/報連相/リモートでの働き方訓練があると実務移行がスムーズ。
- 配慮事項(感覚過敏、疲労、通院など)に合わせた学習ペース調整と就職後フォローの仕組みを必ず確認。
IT・AIに「強い」事業所を見分ける5ポイント
-
カリキュラムの深さ
基礎PC→実務課題→ポートフォリオの流れがあるか。
詳しく解説
基礎PCスキルを学んだ後、Git(コード管理)、issue(課題管理)、レビュー(コード確認)といった現場必須ツールを使い、実務課題を経てポートフォリオを完成させる流れが理想です。 -
講師・支援体制
講師の現場経験と個別指導の時間が十分か。
詳しく解説
講師の現場年数や担当領域、週あたりの個別指導時間、質問対応までの待ち時間を確認。レビュー例や添削の具体性も事前に見せてもらえると安心です。 -
企業連携
実習やプロジェクトが就職につながっているか。
詳しく解説
実習回数よりも実習から採用につながった割合や事例が重要。匿名でも年度・業界・職種の内訳が説明できるかを確認しましょう。 -
成果物の質
ポートフォリオが第三者に説明できる形か。
詳しく解説
成果物がGitHubやNotion、スライドで整理され、可読性(見やすさ)、再現性(手順通り再現可能)、汎用性(他案件にも応用可能)が備わっていると評価が上がります。 -
実績の透明性
就職者数や定着率が職種別に公開されているか。
詳しく解説
就職者数は分母や集計期間と合わせて確認。職種別内訳、雇用形態、定着率(3/6/12か月)まで開示されていれば比較の信頼性が高まります。
補足:ここでいうAIは機械学習の専門職」に限らず、Excel/関数・Power BI/Looker・RPA(Power Automate/UiPath)など**実務で使う“データ/自動化リテラシー”**を含みます。
代表職種と必要スキル早見表
代表職種 | 主な業務 | 必要スキルの目安 |
---|---|---|
ITサポート・ヘルプデスク | アカウント発行、機器設定、問い合わせ対応、チケット起票 | PC基礎、Office、社内ツール(Teams/Slack)、チケット管理(Jira/Redmine) |
QA/テスター | テスト設計・実行、バグ報告 | テスト観点、手順書作成、バグ管理、報告書作成 |
Web制作/コーディング | LP制作、WordPress更新、簡単なJS | HTML/CSS、CMS、基本的なSEO/アクセシビリティ |
データアシスタント | データ入力/整形、簡単な可視化 | Excel/関数、Googleスプレッドシート、BI基礎(Power BI/Looker Studio) |
RPA/ノーコード運用 | 定型業務の自動化、フロー保守 | Power Automate/UiPath基礎、業務整理、エラー対応 |
事務×IT(DX補助) | 文書テンプレ整備、マクロの運用、手順化 | Excel/VBAやGASの基本、情報整理、ナレッジ作成 |
ITサポート・ヘルプデスク
主な業務:アカウント発行、機器設定、問い合わせ対応、チケット起票
必要スキル:PC基礎、Office、社内ツール(Teams/Slack)、チケット管理(Jira/Redmine)
QA/テスター
主な業務:テスト設計・実行、バグ報告
必要スキル:テスト観点、手順書作成、バグ管理、報告書作成
Web制作/コーディング
主な業務:LP制作、WordPress更新、簡単なJS
必要スキル:HTML/CSS、CMS、基本的なSEO/アクセシビリティ
データアシスタント
主な業務:データ入力/整形、簡単な可視化
必要スキル:Excel/関数、Googleスプレッドシート、BI基礎(Power BI/Looker Studio)
RPA/ノーコード運用
主な業務:定型業務の自動化、フロー保守
必要スキル:Power Automate/UiPath基礎、業務整理、エラー対応
事務×IT(DX補助)
主な業務:文書テンプレ整備、マクロの運用、手順化
必要スキル:Excel/VBAやGASの基本、情報整理、ナレッジ作成
もっと詳しく見る(職種選びの考え方)
未経験から挑戦する場合は、まず習得しやすく汎用性がある職種(ITサポート/QA/データ整形)を候補に。Web制作やRPAは適性や学習ペースに応じて追加します。
各職種で必要なスキルを確認し、事業所のカリキュラムがそのスキル習得に対応しているかを見極めましょう。
カリキュラムの見方(チェックポイント)
1. 基礎→実務→ポートフォリオの流れ
- PC/Office基礎→課題演習→実務シミュレーション(Git/issue/レビュー)→成果発表の一連を提供しているか。
- 目標職種ごとに標準学習プラン(例:12〜16週)と個別最適化の両方があるか。
2. 講師・個別指導
- 現場経験(年数、担当業務)を講師プロフィールで確認できるか。
- 週◯時間の個別フィードバック枠が確保されているか(レビューの待ち時間が長いと進捗が止まりやすい)。
3. 実務課題・企業連携
- 模擬案件:LP改善、ECデータ整備、テスト設計、ダッシュボード作成など実務に近い課題があるか。
- 企業連携:職場実習/短期プロジェクトの頻度と採用につながった事例を確認。
4. ポートフォリオ支援
- 成果物の形式:GitHub(コード)/Notion(仕様書・手順書)/スライド(提案)/BIダッシュボード など。
- ドキュメント整備:README、使用ツール、実行手順、担当範囲、振り返り(KPT)を1ページに集約。
- 守秘と公開:データはダミー化、企業実習の成果は公開可否を確認。非公開の場合はスクショ/動画で説明資料化。
- レビュー体制:週◯回のレビュー枠、Pull Requestでのコメント/差分説明を練習。
- 面接での見せ方:問題→アプローチ→成果→学び→再現可能性を3分で説明できる台本を作成。
- 仕上げチェック:可読性(命名・整理)/再現性(手順で実行可)/汎用性(他案件にも応用可)。
-
ポートフォリオ
すぐ解説
自分のスキルを示す成果物集です。コードやドキュメント、改善提案などが含まれます。採用面接での説明に使います。 -
模擬案件
すぐ解説
実務に近い課題を想定し、要件定義から成果物提出まで行う訓練です。現場での流れを体験できます。
ポートフォリオ例:QA/テスト
- 概要:ECサイトのテスト設計と実行
- 成果物:テスト観点表/手順書/バグ報告(Jira)
- ポイント:再現手順・証跡・改善提案を掲載
- URL:GitHub/Notion等(ダミーデータ)
5. ビジネススキル・働き方訓練
- リモート時のタスク管理/報連相/朝会/日報の習慣化。
- 面談練習(障害特性の伝え方、業務設計、配慮事項の合意形成)。
カリキュラム比較表
※以下は**例**です。
比較項目 | 事業所A(通所) | 事業所B(在宅) | 事業所C(ハイブリッド) |
---|---|---|---|
講師体制 | 現場7年 | 現場5年 | 現場8年 |
個別指導(週) | 2.0h | 1.5h(オンライン) | 2.0h(通所/在宅併用) |
実務課題 | 案件2件/月・レビュー◯ | 模擬案件中心・レビュー1回/週 | 企業連携6件/年 |
レビュー頻度(週) | 2回 | 1回 | 2回 |
ポートフォリオ本数 | 2本 | 1本 | 3本 |
就職者数(前年) | 18/30名(60%) | 12/25名(48%) | 20/32名(63%) |
6か月定着率 | 85% | 80% | 88% |
在宅就労割合 | 40% | 60% | 50% |
通所日数目安 | 週4 | 週3(在宅) | 週4(半在宅) |
配慮/支援 | 短時間可/通院配慮 | チャット/非同期連絡 | 個別スケジュール柔軟 |
実績の見方
- 就職率だけで判断しない:分母(利用者数)、対象期間、退所理由の内訳も合わせて確認。
- 職種内訳:ITサポート/QA/Web/データ/RPAなどどの職種に何名か。
- 定着率:3か月・6か月・1年の時点での在籍割合。配慮の継続状況も確認。
- 雇用形態・働き方:常勤/非常勤、在宅/出社/ハイブリッド、所定労働時間。
- 賃金の中央値:平均値だけでなく中央値も分かると実態に近い。
もっと詳しく見る(数字の比較方法)
就職率だけで判断せず、分母(対象者数)・集計期間・退所理由まで確認。職種別内訳や定着率も併せて見ることで、より正確な比較が可能です。
求人事例の見方(例)
※以下は例です。募集条件や待遇は企業により異なります。公開時は必ず最新の求人票で確認してください。
- 企業規模・部署:◯◯名規模/情報システム部など
- 雇用形態・期間:有期/無期、試用期間、更新の考え方
- 業務範囲:問い合わせ一次受け/テスト設計と実施/データ可視化など
- 使用ツール:Jira/Redmine、Teams/Slack、Git、BI、RPA など
- 働き方:在宅可否、出社頻度、フレックス/短時間
- 配慮事項の想定:通院・感覚過敏・集中持続時間の目安 等
- 選考フロー:書類→課題→面接回数→所要日数
もっと詳しく見る(求人票チェックのコツ)
求人票では、業務範囲・使用ツール・働き方条件(在宅可否、短時間可否)を必ず確認。配慮事項が明記されているかも重要です。
求人事例カード
求人事例(例):ITサポート(在宅可)
- 企業規模:300名/情報システム部
- 雇用形態:契約社員(正社員登用あり)
- 給与目安:月給20万〜24万円(例)
- 業務範囲:アカウント発行、FAQ整備、チケット一次対応
- ツール:Microsoft365、Teams、Jira
- 働き方:在宅週3+出社週2、短時間(6h)応相談
- 選考:書類→面接1回(7日程度)
※上記は例です。
求人事例(例):QA/テスター(短時間可)
- 企業規模:100名/開発部
- 雇用形態:パート・アルバイト(週20〜30h)
- 時給目安:1,200〜1,400円(例)
- 業務範囲:テスト設計・実行、バグ報告、回帰テスト
- ツール:Redmine、Googleスプレッドシート
- 働き方:在宅可(週4)/ 出社(週1)
- 選考:書類→課題→面接1回(10日程度)
※上記は例です。
求人事例(例):データアシスタント(BI)
- 企業規模:500名/営業企画部
- 雇用形態:契約社員(1年更新)
- 給与目安:月給21万〜25万円(例)
- 業務範囲:データ整形、ダッシュボード更新、週次レポート
- ツール:Excel、Power BI、Looker Studio
- 働き方:在宅主体(週4)+出社(週1)
- 選考:書類→面接2回(14日程度)
※上記は例です。
見学〜体験でのチェックリスト
ケーススタディ(選び方の具体例)
- 優先:Excel/関数→BI基礎→データ整形の実務課題→社内想定のレポート作成。
- 避ける:高度な機械学習だけに偏るカリキュラム。
- ポートフォリオ例:売上ダッシュボード(疑似データ)、改善提案スライド。
- 優先:短時間×高頻度の個別フィードバック、在宅併用、チャットでの非同期連絡。
- 配慮:ノイズ対策、予定変更時のルール明確化、マニュアル/手順化の練習。
- 優先:WordPress更新、LP修正、アクセシビリティ基礎、ドキュメント整備。
- ポートフォリオ例:LP改善前後の比較、運用マニュアルのサンプル。
よくある質問(FAQ)
- プログラミング未経験でもIT系に就職できますか?
-
可能です。まずは非プログラミング領域(テスト/ITサポート/データ整形)から始め、成果物を積み上げるルートが現実的です。
- 資格は何から取れば良いですか?
-
目的により異なります。全体理解はITパスポート、Office実務はMOS、データは関数/BI基礎、QAはテスト技法などゴール逆算で選びましょう。
- 在宅訓練だけで就職は可能?
-
可能ですが、タスク管理・報連相・オンラインでのチーム作業の訓練は必須です。面接で働き方を具体に説明できるようにします。
- どのくらいの期間で内定まで進めますか?
-
目安は12〜24週間。既存スキルや体調、学習時間により前後します。
- 年齢が高いと不利ですか?
-
年齢より再現性のある成果物と働き方の整備が重視されます。改善提案やドキュメント化で強みを示せます。
- ポートフォリオは何本必要?
-
職種にもよりますが、2〜3本を目標に。1本は個人制作、1本はチーム/実習由来だと説得力が増します。
出典・一次情報
- 障害者総合支援法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省:就労移行支援(制度概要・PDF)
- 障害福祉サービス等報酬改定(告示・通知・Q&A)
- 厚生労働省:統計(障害福祉・関連統計)
- ハローワーク インターネットサービス(求人票仕様等)
- 職業情報提供サイト(Job Tag)
- Microsoft Learn/Power Platform 公式ドキュメント
- Google Cloud/Looker Studio 公式ヘルプ
- GitHub Docs(バージョン管理の基礎)

この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。