この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援は原則2年って聞くけど、もし就職できなかったらどうなるんだろう…」 「延長できるって本当?自分も対象になるのかな?」
2年間という期間は、期待と同時に大きなプレッシャーにもなりますよね。でも、ご安心ください。この制度は、あなたを切り捨てるためにあるのではありません。2年間で着実にステップアップし、万が一期間が足りなくても、次の道がきちんと用意されています。
この記事では、単なる制度解説だけでなく、2年間を最大限に活用するための「成功ロードマップ」、延長が認められるケース・認められないケースの具体例、期間満了後の「あなたに合った次のステップ」の見つけ方まで、あなたの不安が解消されるよう、徹底的に寄り添って解説します。
まずは要点(ここだけで全体像が掴めます)
2年間活用の4ステップ
- STEP1:なぜ「原則2年」なのかを理解し、不安を和らげる
- STEP2:2年間を最大限に活用するロードマップで計画的に進む
- STEP3:延長(最大1年)の条件と申請方法を把握する
- STEP4:期間満了後の4つの選択肢から最適な道を選ぶ
安心ポイント
- 2年は「期限」ではなく「集中期間」として設定されている
- 延長は条件を満たせば最大1年間可能
- 期間満了後も複数の選択肢があり、道が閉ざされることはない
- 支援は一人ひとりの状況に合わせて柔軟に調整される
STEP 1:まず知る|なぜ「原則2年」なのか?
2年という期間は、目標を明確にし、集中して訓練に取り組むことで、就職の成功確率を高めるために設定されています。決して罰則や期限切れを目的としたものではありません。
- 集中的な訓練期間として設計
詳しく解説
統計的に、2年間で多くの方が就職に必要なスキルと経験を身につけられることが分かっています。期限ではなく、効果的な「集中期間」として設定されています。 - 予算と支援リソースの効率的配分
詳しく解説
限られた支援リソースを最大限に活用し、より多くの方に質の高い支援を提供するための期間設定です。個人の状況に応じた柔軟な対応も可能です。 - 目標設定とモチベーション維持
詳しく解説
明確な期間があることで、利用者と支援員が共通の目標を設定し、計画的に訓練を進められます。緊張感を持ちつつ、着実にステップアップできる仕組みです。
STEP 2:計画する|2年間を最大限に活用するロードマップ
「2年で就職できなかったらどうしよう」という不安を、「2年で就職するためにどう動くか」という前向きな行動計画に転換しましょう。
期間 | フェーズ | 主な取り組み内容 | 成功のポイント |
---|---|---|---|
最初の半年 | 基盤づくり期 | 生活リズムの安定、PC基礎スキル習得、自己理解の深化、事業所の環境に慣れる | 焦らず基礎固めに集中。小さな達成を積み重ねる |
半年〜1年 | スキル習得期 | 専門スキル学習(Web、IT、事務など)、模擬課題への挑戦、同期との協力学習 | 得意分野を見つけて伸ばす。苦手分野も少しずつ改善 |
1年〜1年半 | 実践・応用期 | 企業実習、ポートフォリオ作成、応募書類準備、面接練習 | 実習を通じて自信をつける。フィードバックを活かす |
最後の半年 | 就職活動期 | 企業への応募、面接、内定後の条件調整、働き方のすり合わせ | 積極的に応募。不採用も学びと捉えて改善 |
STEP 3:検討する|利用期間の延長(最大1年)が認められるケース
延長の可否は、「あと少し時間があれば、就職の確実性が大きく高まる」という合理的な理由を、市区町村に示せるかどうかが鍵となります。
- ✓ 認められやすいケース
具体例と理由
医療的理由での遅れ:「治療やリハビリと並行していたため通所頻度が少なく、計画通りに進まなかった」
就職がほぼ確実:「A社から内定予定だが、入社前に○○のスキル習得を求められている」
適性発見による方向転換:「訓練途中で本人の適性が別職種にあると判明し、新たな学習に時間が必要」
ポイント:客観的な証拠(医師の意見書、企業からの要請書など)があることが重要 - ✗ 認められにくいケース
理由と改善点
漠然とした理由:「まだ就職活動のやる気が出ないから」「もう少しのんびり訓練したい」
進捗が見られない:「2年間で特に成長が見られず、延長しても変化が期待できない」
計画性の不足:「延長後の具体的な計画やゴールが不明確」
改善のヒント:延長の必要性を具体的データで示し、明確な目標と計画を立てることが大切
延長申請の流れと必要書類
延長申請の手続きの流れ
STEP 4:次に進む|期間満了後の4つの選択肢
もし2年(または延長後)で就職に至らなかった場合でも、道が閉ざされるわけではありません。あなたの状況に合った次のステップを選びましょう。
- ①就労継続支援(A型・B型)に切り替える
こんな人におすすめ・具体的な次の一手
こんな人向け:「まずは働くことに慣れたい」「生活リズムを安定させたい」「収入を得ながらスキルアップしたい」
次の一手:
・A型:雇用契約を結び最低賃金以上の工賃で働く
・B型:自分のペースで生産活動に参加し、工賃を得る
・数年後に一般就労を目指すことも可能
移行のコツ:就労移行支援で身につけたスキルを活かせる作業内容の事業所を選ぶ - ②ハローワークの障害者専門窓口を活用する
こんな人におすすめ・具体的な次の一手
こんな人向け:「訓練でスキルは身についた。あとは求人探しのサポートが欲しい」「企業との面接調整を手伝ってほしい」
次の一手:
・障害者職業相談員との定期面談
・豊富な求人データベースから条件に合う企業を探す
・面接同行や職場定着支援も利用可能
活用のコツ:就労移行支援での訓練記録を整理し、アピールポイントを明確にしておく - ③地域障害者職業センターなどの専門機関を利用
こんな人におすすめ・具体的な次の一手
こんな人向け:「自分の職業的な課題をより専門的に評価してもらいたい」「個別のリハビリテーション計画を立てたい」
次の一手:
・職業評価(適性検査、作業能力評価)を受ける
・個別の職業リハビリテーション計画を作成
・職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
利用のメリット:より専門的で個別性の高い支援が受けられる - ④就労移行支援の再利用(条件付き)
こんな人におすすめ・具体的な次の一手
こんな人向け:「一度就職したが離職してしまい、再挑戦したい」「大幅なキャリアチェンジが必要になった」
再利用の条件:
・就職後に離職し、再度就職を目指す場合
・障害の状況や生活環境に大きな変化があった場合
・自治体が再利用の必要性を認めた場合
申請のポイント:前回の利用で得た経験と、今回の利用で達成したい具体的目標を明確に示す
よくある質問(FAQ)
延長申請はいつから可能ですか?
期間満了の3ヶ月前からが目安です。早めに支援員と相談し、必要書類の準備を始めましょう。申請が遅れると手続きが間に合わない可能性があります。
延長の審査は厳しいのでしょうか?
条件を満たし、合理的な理由があれば認められます。重要なのは「延長の必要性」を客観的な証拠とともに示すことです。医師の意見書や具体的な就職計画などが審査のポイントになります。
延長後にさらに期間を延ばすことはできますか?
原則として不可能です。延長は1回限り、最大1年間となっています。延長期間中に確実に就職につなげることが重要です。
2年で就職できなかった場合、失敗とみなされますか?
決してそうではありません。個人の状況や障害特性により、必要な期間は異なります。就労移行支援は一つのステップであり、その後も様々な支援制度が用意されています。
他の事業所に移ることは可能ですか?
可能です。ただし、支給決定期間の残りを新しい事業所で利用することになります。移行を検討する場合は、現在の支援員と十分相談しましょう。
期間満了後、すぐに次の支援を受けられますか?
多くの場合、継続的な支援が受けられます。就労継続支援やハローワークなどは、期間の空白なく利用開始できることが多いです。事前に次の支援先と調整しておくことが大切です。
まとめ:2年間はあなたの未来への投資期間
就労移行支援の2年間という期間は、あなたを追い詰めるためのものではなく、**あなたの就職成功を後押しするための「集中期間」**です。
この記事で紹介した「4つのSTEP」を意識して計画的に訓練を進め、支援員と密に連携すれば、道は必ず開けます。そして、万が一思うように進まなくても、あなたを支える次の選択肢は必ず存在します。
期間を最大限に活用するための最終アドバイス
- 早めの相談を心がける:困ったことや不安があれば、すぐに支援員に相談
- 小さな進歩を積み重ねる:毎日の小さな成長を大切にし、自信をつける
- 柔軟な計画変更を恐れない:状況に応じて目標や計画を見直すのは当然のこと
- 同期や仲間とのつながりを大切にする:一人で抱え込まず、経験を共有する
一人で抱え込まず、支援者と一緒にあなただけのキャリアプランを考えていきましょう。あなたの可能性は2年という期間で決まるものではありません。
出典・一次情報

この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。