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発達障害のある方のメール作成をラクにするAIの使い方|書き出しの悩みを3分で解決

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

目次

メールを書くたびに感じる不安

「メールの書き出しが思いつかなくて、画面の前で30分も固まってしまった」

「敬語が合っているか不安で、何度も書き直して結局2時間かかった」

「やっとメールを書き終えたけど、送信ボタンを押す勇気が出ない」

こんな経験、ありませんか?

メール1通を書くのに、これほど時間と労力がかかってしまうのは、あなただけではありません。発達障害(ADHD・ASD等)の特性がある方にとって、ビジネスメールを書くことは、想像以上に高いハードルになることがあります。

この記事では、そんなメール作成の悩みを、AIというツールを使ってラクにする方法をお伝えします。難しい操作は一切ありません。スマホがあれば、今日から使えます。


なぜメールを書くのがこんなに大変なのか(発達特性との関係)

メールを書くことが苦手なのは、決して「努力不足」や「社会人としての自覚が足りない」からではありません。脳の情報処理の特性によるものです。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある場合

暗黙のルールが読み取りにくいため、「どこまで丁寧に書けばいいのか」「この表現は失礼にあたらないか」という判断に、非常に時間がかかります。

「普通はこう書く」「常識的に考えて」といった曖昧な基準には、明確な答えがありません。そのため、何度も書き直したり、送信をためらったりしてしまうのです。

ADHD(注意欠如・多動症)の特性がある場合

頭の中で考えていることを整理して文章にするのが難しいことがあります。伝えたいことはたくさんあるのに、それを順序立てて、簡潔にまとめることができない。

結果、長文になってしまったり、逆に情報が足りなくて伝わらなかったりします。また、途中で別のことに気が散って、メールを書き終えられないこともあります。

共通する困難:完璧主義との戦い

「完璧なメールを書かなければ」というプレッシャーも、発達障害のある方に多く見られる特徴です。

小さなミスが気になって何度も見直したり、「もっと良い表現があるはず」と延々と推敲を続けたり。その結果、送信できないまま時間だけが過ぎていきます。

でも、大切なのは「完璧なメール」を書くことではなく、必要な情報が、必要な人に、適切なタイミングで届くことです。


AIを使うと、メール作成の何がラクになるのか

AIは、あなたの「伝えたいこと」を、適切な形式の文章に変換してくれるツールです。

具体的にどう変わるか

Before(AIなし)

  • 白紙の画面を前に、何から書けばいいか悩む(30分)
  • 書いては消し、書いては消しを繰り返す(1時間)
  • 敬語が正しいか不安で、何度も見直す(30分)
  • 送信ボタンを押す勇気が出ない

After(AIあり)

  • 箇条書きで「伝えたいこと」をメモする(1分)
  • AIに「丁寧なメールにして」と頼む(1分)
  • 出てきた文章を確認して、必要なら微調整(1分)
  • 合計3分で送信できる

AIに任せられる部分、自分が判断する部分

AIに任せられること:

  • 文章の下書き作成
  • 敬語への変換
  • 長すぎる文章の要約
  • トーンの調整(丁寧・カジュアル・簡潔)

自分が判断すること:

  • 何を伝えたいか(内容)
  • 相手は誰か(関係性)
  • いつまでに返信が欲しいか(締切)
  • 最終的に送信するかどうか

「ゼロから書く」のと「たたき台があってそれを修正する」のでは、心理的なハードルが全く違います。


AI活用の3つのステップ

ステップ1:困っている状況をそのままAIに話す

まず、AIに「何を伝えたいか」を箇条書きでメモするように話しかけます。

例えば、こんな風に:

取引先に会議の日程調整をお願いしたい。
先日の企画書を修正したから確認してほしい。
今週中にフィードバックがほしい。
候補日は金曜日の午前か、月曜日の午後。

完璧な文章にする必要はありません。思いついたことを、そのまま箇条書きで書き出せばOKです。

ステップ2:AIに「整理・言い換え」を頼む

次に、AIに「これを丁寧なビジネスメールにして」と頼みます。

これを丁寧なビジネスメールにして

すると、AIがこんな風に整えてくれます:

田中課長

お疲れ様です。

先日ご指摘いただいた企画書の修正が完了いたしましたので、
ご確認をお願いできますでしょうか。

ご多忙のところ恐縮ですが、今週中にフィードバックを
いただけますと幸いです。

ご確認いただけるお時間として、以下の候補日をご提案いたします:
・金曜日 午前中
・月曜日 午後

ご都合の良い時間をお知らせください。
よろしくお願いいたします。

箇条書きだったメモが、丁寧なビジネスメールに変わりました。

ステップ3:自分の言葉に微調整する

AIが作った文章をそのまま使ってもいいですが、必要に応じて微調整します。

調整の例:

  • 「もう少し短くして」→150字以内にまとめてもらう
  • 「もっと丁寧にして」→より丁寧な表現に変更
  • 「カジュアルにして」→社内向けのトーンに調整

AIは、こうした追加の指示にも柔軟に対応してくれます。

最後に、宛先や日時が正しいか確認して、送信ボタンを押すだけです。


AIへのお願い文(プロンプト)の例

ここでは、イメージがつく程度の簡単な例を2つだけご紹介します。

例1:日程調整メールを作る

次の要点を丁寧なビジネスメール(200字以内)にしてください。

【宛先】営業部 田中課長

【要点】
先日の企画書、修正しました。
確認してほしいです。
今週中にフィードバックもらえると助かります。

【候補日時】
金曜日の午前中、または月曜日の午後

このように、伝えたい内容を箇条書きで整理してAIに渡すだけで、整った文章ができあがります。

例2:3つのトーンで候補を出す

相手との距離感がわからない時は、3つのトーンで同時に候補を出してもらうと便利です。

次の内容を3つのトーンでメール文にしてください。

【内容】
明日の10時の打ち合わせ、急用が入ってしまいました。
15時に変更してもらえませんか。

【出力形式】
1. 丁寧(目上の方・初めての方向け)
2. フラット(同僚・普段やり取りのある方向け)
3. 超簡潔(チャットツール・急ぎの連絡向け)

すると、AIが3つのバージョンを同時に作ってくれるので、相手や状況に合わせて選ぶだけでOKです。


安全に使うための注意点

AIは便利なツールですが、使い方を間違えると情報漏洩などのリスクがあります。安全に使うために、以下の点に注意しましょう。

個人情報はAIに書き込まない

絶対に入力してはいけない情報:

  • 顧客の名前、住所、電話番号、メールアドレス
  • 社内の機密情報(未発表の製品名、売上データ、契約金額)
  • パスワードやアカウント情報

安全な使い方の例:

❌ 危険な例

田中太郎様(tanaka.taro@example.com)宛に、
新商品「プロジェクトX」の見積もり500万円で
契約書のドラフトメールを作って

⭕ 安全な例

取引先宛に、新商品の見積もりについて
契約書ドラフトを添付したメールのテンプレートを作って。
具体的な金額や商品名は後から自分で入れます。

固有名詞は{ }で空欄にしておき、AIが作った文章に後から自分で入れると安全です。

AIの回答をそのままコピペしない

AIが作った文章は「たたき台」です。必ず自分で確認して、必要に応じて調整してから送信しましょう。

最終確認のポイント:

  • 宛先は合っているか
  • 日付や時間は正しいか
  • 誤字脱字はないか
  • 相手との関係性に合ったトーンか

就労移行支援のスタッフと一緒に使うと安心

就労移行支援を利用している方は、AIの使い方をスタッフと一緒に練習できます。

「このメール、AIで作ったんですが、送って大丈夫でしょうか?」と確認することで、安全な使い方が身につきます。

また、職場でAIツールを使う際の許可の取り方や、社内規定の確認方法なども、一緒に考えてもらえます。


まとめ:メールは「完璧」じゃなくていい

「丁寧で正しいメール」を書こうとすると、手が止まります。

でも、仕事で本当に大切なのは、必要な情報が、必要な人に、適切なタイミングで届くことです。

AIは、その「届けるため」のサポートツールです。あなたを評価する相手ではなく、苦手を補うための道具です。

この記事のポイント

  • メールが書けないのは、発達特性による情報処理の違いが原因
  • AIを使えば、箇条書きのメモが3分で丁寧なメールに変わる
  • 「ゼロから書く」より「たたき台を修正する」方が心理的ハードルが低い
  • プロンプトは難しくない。伝えたいことを箇条書きにするだけ
  • 個人情報は入力せず、最終確認は自分で行う

今日からできること

まずは、無料のAIツール(ChatGPTやGemini)にアクセスして、試しに1通作ってみてください。

完璧を目指さなくて大丈夫です。7割の下書きをAIに任せて、3割だけ自分で調整すればOKです。

「あ、こんなに簡単にできるんだ」という感覚が、あなたの働き方を変える第一歩になります。


プロンプト集一覧

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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