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発達障害のある方のタスク管理をラクにするAIの使い方|優先順位の悩みを解決

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

「やることが20個もあって、何から手をつければいいか全くわからない」

「『全部やらなきゃ』と思うと、頭が真っ白になって何もできなくなる」

「時間を見積もっても、いつも大幅にずれてしまう」

こんな経験、ありませんか?

発達障害(ADHD・ASD等)の特性があると、タスク管理は想像以上に高いハードルになります。周りの人は「優先順位をつければいいじゃん」と簡単に言いますが、その「優先順位をつける」こと自体が難しいんですよね。

この記事では、そんなタスク管理の悩みを、AIというツールを使ってラクにする方法をお伝えします。


目次

なぜタスク管理がこんなに大変なのか(発達特性との関係)

タスク管理が苦手なのは、決して「やる気がない」からでも「能力が低い」からでもありません。発達特性による、脳の情報処理の違いが原因です。

ADHDの特性がある場合

ワーキングメモリの容量が小さいため、複数のタスクを同時に頭の中に保持しておくことが難しいです。

「あれもこれもやらなきゃ」と思っているうちに、何から始めるつもりだったか忘れてしまう。タスクが5個を超えると、もう頭の中で整理できなくなります。

優先順位をつけるのが苦手なのも、ADHDの典型的な特性です。「どれも重要に見える」「どれから手をつければいいか判断できない」。結果、一番簡単なタスクや、一番目についたタスクに手をつけてしまい、本当に重要なタスクが後回しになります。

時間の感覚が曖昧なのも困りごとの一つです。「これは30分でできるだろう」と思っても、実際には2時間かかったり。逆に「これは3時間かかる」と思っても、実際には30分で終わったり。時間の見積もりが極端にずれるので、スケジュールが崩れやすいです。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある場合

全体像を把握するのが苦手で、細部にばかり注目してしまうことがあります。

大きなプロジェクトを小さなステップに分解できず、「報告書を書く」という大きなタスクを前に、「どこから始めればいいの?」と固まってしまいます。

優先順位の基準が曖昧なことにも、強いストレスを感じます。「重要」って何?「緊急」の定義は?明確な基準がないと、どう判断すればいいかわからず、延々と悩み続けてしまいます。

完璧主義の傾向も、タスク管理を難しくします。「完璧にやらなければ」というプレッシャーから、一つのタスクに膨大な時間をかけてしまい、他のタスクが全く進まなくなります。

共通する困難

発達障害のある方に共通して見られるのが、計画を立てることの難しさです。

「今週中にこれを終わらせよう」という大きな目標は立てられるのに、それを「今日は何をする」「午前中は何をする」という小さなステップに分解できません。

また、予定変更への対応も大きなストレスです。せっかく立てた計画が崩れると、「もうどうすればいいかわからない」とパニックになってしまいます。

これらの困りごとは、努力不足ではなく、脳の情報処理の特性によるものです。適切なツールとサポートがあれば、十分に補うことができます。


AIを使うと、タスク管理の何がラクになるのか

AIは、あなたの「頭の中の整理」を代わりにやってくれるツールです。

優先順位を自動で判断してくれる

Before(AIなし)

  • 20個のタスクを前に、どれが重要かわからず固まる
  • 「全部重要に見える」と、何も手をつけられない
  • 締切を過ぎてから気づいて、慌てる

After(AIあり)

  • タスクの一覧をAIに渡すだけ
  • AIが「今日やるべき3つ」を選んでくれる
  • 締切、重要度、所要時間を考慮して判断してくれるので、迷わなくていい

大きなタスクを小さく分解してくれる

Before(AIなし)

  • 「報告書を書く」という大きなタスクを前に、何から始めればいいかわからない
  • 考えているうちに時間が過ぎて、結局何もできない

After(AIあり)

  • AIに「報告書作成を小さなステップに分解して」と頼む
  • 「1. テンプレートを開く(5分)」「2. データを集める(10分)」と、具体的な行動レベルまで分解してくれる
  • 最初の1ステップだけやればいいので、手をつけやすい

時間の見積もりをサポートしてくれる

Before(AIなし)

  • 「これは30分でできるだろう」という希望的観測で予定を立てる
  • 実際には2時間かかって、予定が崩れる

After(AIあり)

  • AIに「このタスクにどれくらい時間がかかるか」を聞く
  • 過去の似たタスクのデータから、現実的な時間を教えてくれる
  • 「今日できる量はこれだけ」と判断できる

「やらないリスト」を作ってくれる

Before(AIなし)

  • 「全部やらなきゃ」というプレッシャーで、何もできなくなる
  • 優先度の低いタスクに時間を使ってしまい、重要なタスクができない

After(AIあり)

  • AIが「今日やらなくてもいいタスク」も教えてくれる
  • 「やらない」ことを決めることで、罪悪感なく重要なタスクに集中できる

AI活用のステップ

ステップ1:困っている状況をそのままAIに話す

まず、今抱えているタスクを、思いつくままにリストアップします。

完璧に整理する必要はありません。頭の中にあることを、そのまま箇条書きで書き出すだけでOKです。

例えば、こんな風に:

今、こんなタスクを抱えています:
- 報告書作成(締切:明日)
- メール返信5件(締切:今日中)
- 会議資料の印刷(締切:今日15時)
- 来月のプロジェクト企画(締切:来週)
- 経費精算(締切:月末)
- 取引先へ電話(締切:今週中)

締切や所要時間が分かれば書いておくと、AIがより正確に判断してくれます。でも、わからなくても大丈夫。「たぶん1時間くらい?」という曖昧な情報でも、AIは対応してくれます。

ステップ2:AIに「整理・優先順位づけ」を頼む

次に、AIに「今日やるべきこと」を選んでもらいます。

AIに、こんな風にお願いしてみましょう:

このタスク一覧から「今日やる3つ」を選んでください。
締切が近い、重要度が高い、短時間でできる、の順で優先してください。

すると、AIがこんな風に答えてくれます:

【今日やる3つ】
1. 会議資料の印刷(締切:今日15時、所要10分)
2. メール返信5件(締切:今日中、所要30分)
3. 報告書作成(締切:明日、所要2時間)

【やらないリスト(今日はやらなくてOK)】
- 来月のプロジェクト企画(締切:来週)
- 経費精算(締切:月末)
- 取引先へ電話(締切:今週中)

これで、「今日やるべきこと」が明確になりました。

ステップ3:自分の状況に合わせて微調整する

AIの提案を見て、「ちょっと多すぎる」「体調が良くないから、もっと少なくしたい」と感じたら、追加で指示を出せます。

調整の例:

  • 「3つでも多いです。1つだけにしてください」
  • 「午前中に終わる量にしてください」
  • 「一番簡単なタスクから始めたいです」

AIは、こうした追加の指示にも柔軟に対応してくれます。


AIへのお願い文(プロンプト)の例

ここでは、イメージがつく程度の簡単な例を2つだけご紹介します。

例1:山積みのタスクから「今日やる3つ」を抽出する

以下のタスク一覧から「今日やる3つ」を選んでください。
締切が近い、重要度が高い、短時間でできる、の順で優先してください。

【タスク一覧】
- 報告書作成(締切:明日、所要時間:2時間)
- メール返信5件(締切:今日中、所要時間:30分)
- 会議資料の印刷(締切:今日15時、所要時間:10分)
- 来月のプロジェクト企画(締切:来週、所要時間:3時間)
- 経費精算(締切:月末、所要時間:20分)

このように、タスクの一覧と簡単な情報をAIに渡すだけで、優先順位をつけて「今日やるべきこと」を選んでくれます。

例2:大きなタスクを小さく分解する

次のタスクを、1ステップ5〜10分でできる小タスクに分解してください。

【タスク】
報告書を作成する(締切:明日、所要時間:2時間)

【ルール】
- 各ステップは具体的な行動で書く
- 最初のステップは一番簡単なものから

すると、AIがこんな風に分解してくれます:

ステップ1(5分):前回の報告書を開いて、テンプレートをコピーする
ステップ2(10分):今回の報告に必要な数字やデータを集める
ステップ3(10分):報告書の見出しだけを書く(中身は空欄でOK)
...

こうして、「何から始めればいいか」が明確になります。


もっと詳しく使いたい方向けの「AIプロンプト集の使い方ガイド」

ここまで、タスク管理でAIを活用する基本的な方法をお伝えしました。

「もっと色々な場面でAIを使いこなしたい」という方は、こちらのガイドも参考にしてみてください:

【就労移行】AIプロンプト集の使い方ガイド|生成AI活用方法

このガイドでは、AIプロンプトを上手に使うための基本的な考え方や、様々な業務場面での応用方法が学べます。タスク管理だけでなく、メール作成、文書作成、コミュニケーションなど、幅広い場面でAIを活用する方法が理解できます。

将来的に、タスク管理に特化したより詳しいプロンプト集が追加された際にも、このガイドの知識があれば、すぐに使いこなせるようになります。


注意点とまとめ

個人情報をAIに書き込まない

AIツールにタスクを入力する際、個人情報や機密情報は書かないようにしましょう。

絶対に入力してはいけない情報:

  • 顧客名や会社名
  • 具体的な金額
  • 社外秘のプロジェクト名

安全な書き方の例:

❌ 危険な例

- 田中商事(500万円案件)の契約書作成

⭕ 安全な例

- 取引先の契約書作成(締切:明日、所要時間:2時間)

固有名詞は、AIが作った結果に後から自分で追加すれば安全です。

AIの提案をそのまま実行しない

AIが作った「今日やる3つ」は、あくまで「提案」です。最終的に判断するのはあなた自身です。

確認するポイント:

  • 体調は大丈夫か(無理していないか)
  • 午後に予定外の会議が入る可能性はないか
  • 集中できる環境があるか

AIの提案を見て、「これは今日は厳しいな」と思ったら、遠慮なく調整してください。

就労移行支援のスタッフと一緒に使うと安心

就労移行支援を利用している方は、AIの使い方をスタッフと一緒に練習できます。

「このタスクリストでいいでしょうか?」「AIの提案を見て、どれを選べばいいかわからない」といった悩みも、一緒に考えてもらえます。

職場でAIツールを使う際の許可の取り方や、社内規定の確認方法なども、サポートしてもらえるので安心です。

まとめ:完璧なタスク管理は目指さなくていい

「全部のタスクを完璧にこなす」のは、誰にとっても無理です。

でも、「今日やる3つ」だけなら、できるかもしれません。

AIは、あなたを評価する相手ではなく、苦手を補うための道具です。タスク管理という苦手なことを、AIというツールで補えば、あなたは本当にやるべきことに集中できるようになります。

この記事のポイント

  • タスク管理が苦手なのは、発達特性による情報処理の違いが原因
  • AIを使えば、優先順位づけ、タスク分解、時間見積もりをサポートしてもらえる
  • 「今日やる3つ」だけに集中すればいい。残りは「やらないリスト」へ
  • 完璧を目指さず、7割できたら上出来と考える

今日からできること

まずは、今抱えているタスクを箇条書きで書き出してみてください。それをAIに渡して、「今日やる3つを選んでください」と頼んでみましょう。

それだけで、「頭の中がスッキリした」「何をすればいいかわかった」という感覚を得られるはずです。

AIは、あなたのタスク管理の強力なパートナーになってくれます。


5. 記事内で紹介したプロンプト集(A群)のタイトル一覧

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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