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発達障害×AI|仕事で使える無料ツールと就労移行での活用法【2025年最新】

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

目次

【結論】AIは発達障害のある方の「働きづらさ」を軽減する実用的なサポートツールです

「AIって難しそう…」「本当に自分でも使えるの?」「職場で使っていいのかな?」

そんな不安を抱えながら、この記事にたどり着いたあなたへ。まずお伝えしたいのは、AIは特別なスキルがなくても、スマホがあれば今日から使える実用的なツールだということです。

プログラミングの知識も、高度なパソコンスキルも必要ありません。話しかけるだけ、文字を入力するだけで、あなたの「困りごと」に答えてくれます。

そして就労移行支援では、このAIを「仕事で使えるスキル」として、基礎から実践まで段階的に学ぶことができます。利用期間は原則最長24ヶ月。その間に、あなたの特性に合ったAI活用法を見つけ、就職後も使い続けられるスキルを身につけていきます。

この記事では、発達障害のある方が実際に抱えている「困りごと」に対して、AIがどう役立つのか、そして就労移行支援でどのように学べるのかを、具体的にお伝えします。

AIで解決できる「働きづらさ」5つの困りごと

困りごと1:「指示を聞き逃してしまう」

どんな状況で困っていますか?

  • 上司からの口頭指示をメモし忘れて、後で何を言われたか思い出せない
  • 会議の内容が頭に入らず、議事録が書けない
  • 複数の指示が一度に来ると、優先順位がわからなくなる
  • 電話対応で相手の話を聞きながらメモを取るのが難しい

AIでこう変わります

  • 音声の自動文字起こし:会議や指示の内容をリアルタイムでテキスト化
  • 録音データの後読み:聞き逃した部分を何度でも確認できる
  • 要点の自動抽出:長い会話から重要なポイントだけを取り出せる
  • 検索機能:「あの件について何て言ってたっけ?」がすぐ見つかる

「聞き逃し」は、ADHDや聴覚情報処理の特性がある方にとって、仕事で最も困る場面の一つです。メモを取ろうとすると話が聞けなくなり、話を聞こうとするとメモが取れない。この板挟みの状況で、いつも焦ってしまいますよね。

音声文字起こしツールを使えば、「とりあえず録音しておく」ことで、後からゆっくり内容を確認できます。スマホの録音機能とAIの文字起こし機能を組み合わせれば、無料でもかなりの精度で利用できます。

ただし、注意点もあります。会議や通話を録音する際は、必ず相手の許可を取る必要があります。また、個人情報や機密情報を含む内容をAIサービスに送信する場合は、社内規定の確認が必須です。

就労移行支援では、こうしたツールの使い方だけでなく、「職場でどう許可を取るか」「どんな場面で使うべきか」といった実践的な判断も学べます。上司への相談の仕方、試用期間の設け方、効果の報告方法まで、一緒に考えていけるのが大きな安心材料です。

聞き逃しが多い方へ
文字起こしツールは「記憶の外付けハードディスク」のようなものです。全部を覚えようとしなくていい。記録しておいて、必要な時に見返せばいい。そう思えるだけで、会議中の緊張感が全然違ってきますよ。

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文字起こし編|会議の要点を即座にリスト化


困りごと2:「メールや報告書を書くのに時間がかかる」

どんな状況で困っていますか?

  • メールの書き出しが思いつかず、画面の前で固まってしまう
  • 敬語や言い回しが正しいか不安で、何度も書き直す
  • 簡潔に書けず、長文になってしまう
  • 相手の気分を害さない言い方がわからない

AIでこう変わります

  • 文章の下書き自動生成:要点を箇条書きで入力すれば、整った文章に
  • 敬語への自動変換:カジュアルな文章を丁寧な表現に書き換え
  • 文章の要約:長すぎる文章を適切な長さに調整
  • トーンの調整:硬すぎる・柔らかすぎる文章のバランスを整える

文章を書くことへの苦手意識は、多くの発達障害のある方が抱える悩みです。特に、「正しい敬語」「適切な距離感」「簡潔な表現」の3つを同時に満たすのは、本当に難しいですよね。

1時間かけてメールを書いても、「これで大丈夫かな」と不安になって送信ボタンを押せない。そんな経験、ありませんか?

AIは、あなたが伝えたい内容を、適切な形式の文章に変換してくれます。例えば「明日の会議、資料まだできてないから延期してほしい」という要点だけをAIに伝えれば、「お世話になっております。明日予定されている会議についてですが、資料の準備が間に合わない状況のため、誠に恐縮ですが日程の調整をお願いできますでしょうか」といった丁寧な文章を生成してくれます。

もちろん、AIが出した文章をそのまま送るのではなく、自分で確認して、必要に応じて修正します。でも「ゼロから書く」のと「たたき台があってそれを修正する」のでは、心理的なハードルが全く違います。

就労移行支援では、この「プロンプト(AIへの指示文)」の書き方を練習します。どう伝えれば、自分が望む形の文章が出てくるか。これは一種のスキルで、練習すればどんどん上達します。

文章が苦手な方へ
AIは「文章の型」を教えてくれる先生のようなものです。何度も使っているうちに、「こういう時はこういう書き方をするんだな」というパターンが身についてきます。結果的に、AIなしでも書けるようになることも多いんですよ。

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メール編|下書きから丁寧メールを3分で作成


困りごと3:「タスクの優先順位がわからない」

どんな状況で困っていますか?

  • やることが多すぎて、何から手をつければいいかわからない
  • 締切が複数あると、どれを先にすべきか判断できない
  • 予定を忘れてしまい、締切直前に慌てる
  • 「これは今すぐやるべき?後回しでいい?」の判断ができない

AIでこう変わります

  • タスクの自動優先順位付け:締切や重要度から順番を提案
  • スケジュールの可視化:1日・1週間の予定を分かりやすく表示
  • リマインダー自動設定:締切前に通知が来るので忘れない
  • 所要時間の見積もり:「このタスクは何分かかりそうか」を予測

ADHDの特性がある方にとって、タスク管理は最大の難関かもしれません。頭の中ではやるべきことがたくさんあるのに、それを整理して順番に実行することができない。結果、締切を過ぎてから気づいて、周りの信頼を失ってしまう。この繰り返しで、自信をなくしていませんか?

タスク管理AIツールは、あなたの「やること」を一箇所に集めて、自動的に優先順位を付けてくれます。「今日やるべきこと」だけを表示する機能もあるので、長いToDoリストに圧倒されることもありません。

例えば、こんな使い方ができます:

  • 朝、AIに「今日やるべきタスクを3つ教えて」と聞く
  • 1つ終わったら報告し、次のタスクを確認
  • 予定外の仕事が入ったら、AIに追加してもらい、優先順位を再調整

これを続けることで、「今、自分が何をすべきか」が常に明確になります。頭の中でタスクを覚えておく必要がないので、ワーキングメモリの負担が大幅に減ります。

就労移行支援では、様々なタスク管理ツールを試しながら、自分に合ったものを見つけていきます。視覚的なカンバン方式が合う人もいれば、シンプルなリスト形式が合う人もいます。実際に使ってみて、「これなら続けられそう」と思えるツールを探すプロセスが大切です。

タスク管理が苦手な方へ
完璧なタスク管理を目指す必要はありません。「今日やるべきことが分かる」「締切を忘れない」、この2つができるだけで、仕事の安定度は大きく変わります。まずはそこから始めましょう。

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タスク管理編|今日やる3つを自動抽出


困りごと4:「集中が続かない/過集中してしまう」

どんな状況で困っていますか?

  • 5分ごとに気が散って、作業が進まない
  • 好きな作業に没頭しすぎて、休憩を忘れる
  • 疲れていても気づかず、後でどっと疲れが出る
  • 作業の切り替えができず、1つのことに固執してしまう

AIでこう変わります

  • 作業時間の自動記録:何にどれだけ時間を使ったか可視化
  • 定期的な休憩通知:設定した時間ごとに休憩を促す
  • 集中度の分析:自分がいつ集中しやすいかのパターンを発見
  • タイマー機能:ポモドーロ・テクニック(25分作業+5分休憩)のサポート

集中力の問題は、ADHDの方に特に多い悩みですが、その実態は人によって大きく異なります。「全く集中できない」という方もいれば、「集中しすぎて止まらない」という方もいます。どちらも、仕事のパフォーマンスに大きく影響します。

集中できない場合、本人は「サボっている」つもりはないのに、周りからは「やる気がない」と見られてしまう。これは本当につらいですよね。一方、過集中の場合は、周りからは「頑張っている」と評価されますが、本人は燃え尽きてしまい、次の日に何もできなくなる。どちらも持続可能な働き方ではありません。

AIを使った時間管理ツールは、あなたの作業パターンを記録・分析してくれます。「午前中は集中しやすい」「昼食後は眠くなる」「夕方以降にまた集中力が戻る」といった自分のリズムが、データとして見えてきます。

このデータをもとに、重要な作業を集中しやすい時間帯に配置したり、休憩を強制的に入れたりすることで、無理のない働き方が実現できます。

就労移行支援では、こうしたツールを使いながら、自分の最適な作業リズムを見つける練習をします。25分作業して5分休憩する「ポモドーロ・テクニック」が合う人もいれば、50分作業して10分休憩する方が合う人もいます。正解は一つではありません。

集中力に悩む方へ
集中力は「意志の力」で何とかなるものではありません。環境、時間帯、タスクの種類によって変わる、とても繊細なものです。AIは、あなたの集中パターンを客観的に見せてくれる「鏡」のような存在です。自分を責める必要はありません。データを見て、対策を立てればいいのです。

📚 実践プロンプト集で今すぐ使える具体的な手順を学ぶ
集中・ポモドーロ編|25分+5分の作業リズムをAIがガイド


困りごと5:「コミュニケーションが苦手」

どんな状況で困っていますか?

  • 相手の言外の意味が読み取れず、誤解してしまう
  • 返信の言い回しに悩んで、いつもメッセージを送るのに時間がかかる
  • 口頭での説明が苦手で、うまく伝えられない
  • 「丁寧すぎる」「堅苦しい」と言われるが、どう直せばいいかわからない

AIでこう変わります

  • 文章のトーン分析:自分の文章が相手にどう伝わるか確認できる
  • 返信文の複数候補生成:状況に応じた返信例を複数提示
  • 口頭説明の文字起こし&整理:話した内容を整理して議事録化
  • 図解・フロー図の自動生成:言葉で説明しにくいことを視覚化

ASDの特性がある方にとって、特に難しいのが「暗黙のルール」を含むコミュニケーションです。「普通はこう言う」「常識的に考えて」といった曖昧な基準は、明確な答えがないため、常に不安を感じます。

メールの返信一つとっても、「早すぎると暇だと思われる?」「遅すぎると失礼?」「この絵文字は使っていい?」と、延々と悩んでしまう。そして結局、送信できずに時間だけが過ぎていく。この経験、ありませんか?

AIは、こうした「正解のないコミュニケーション」に対して、複数の選択肢を提示してくれます。例えば、「ミーティングの日程調整」という状況に対して、「丁寧な返信」「カジュアルな返信」「簡潔な返信」の3パターンを生成してくれます。

その中から、自分が送りたいトーンのものを選べばいい。あるいは、それをベースに少し修正してもいい。この「選択肢がある」という状態が、大きな安心につながります。

また、ビジネスチャットツール(SlackやTeamsなど)と組み合わせることで、テキストベースのコミュニケーションが中心になります。対面での会話と違い、考える時間を取れますし、過去のやり取りも記録として残ります。これは、発達障害のある方にとって、非常に働きやすい環境です。

就労移行支援では、実際のビジネスシーンを想定したやり取りを練習します。「急ぎの依頼を断る時」「ミスを報告する時」「締切延長をお願いする時」など、難易度の高い場面でも、AIを活用しながら適切な対応を学べます。

コミュニケーションが苦手な方へ
エンジニアやデータ分析の仕事では、対面コミュニケーションが最小限で済む職場も増えています。「コミュニケーションが苦手だから働けない」のではなく、「テキストコミュニケーション中心の職場を選ぶ」という選択肢があります。AIは、そのテキストコミュニケーションを強力にサポートしてくれます。

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コミュニケーション編|3つのトーン生成・説明の図解化


就労移行支援で学べるAI活用スキル

基礎編:誰でも使える無料AIツール

就労移行支援では、まず無料で使えるAIツールから始めます。高額なソフトウェアは必要ありません。スマホやパソコンがあれば、今日から使えるツールばかりです。

音声文字起こしツール

用途: 会議の記録、口頭指示のメモ、アイデアの記録

文章生成・校正AI

用途: メール作成、報告書の下書き、文章の推敲、要約

タスク管理ツール

用途: 日々のタスク整理、締切管理、プロジェクト管理

翻訳・要約ツール

用途: 長文資料の要約、英語資料の翻訳、複雑な文章の平易化


これらのツールは、どれも無料で始められます。もちろん有料プランもありますが、まずは無料版で十分に実用的な機能を使えます。

就労移行支援では、これらのツールを一つひとつ試しながら、「どんな時に使うと便利か」「自分の困りごとにどう活用できるか」を体験的に学んでいきます。

例えば、初日はGoogle音声入力で「話した内容が文字になる」という体験をしてみる。次の週はChatGPTに簡単な質問をしてみる。その次は、自分が書いたメールをAIに見てもらって、改善点を聞いてみる。

こうした小さな成功体験を積み重ねることで、「自分にもできる」という自信がついてきます。最初から完璧を目指す必要はありません。少しずつ、できることを増やしていけばいいのです。

パソコンが苦手な方へ
就労移行支援には、パソコンの基本操作から教えてくれる事業所もあります。「電源の入れ方」「マウスの使い方」から始めても大丈夫。AIツールは、実はスマホの方が使いやすいものも多いです。スマホが使えれば、音声入力で文字を入力できますから、タイピングが苦手でも問題ありません。


実践編:仕事で使える応用スキル

基礎的なツールの使い方に慣れてきたら、次は「仕事での実践的な活用法」を学びます。

プロンプト設計スキル

AIに対して「どう指示を出すか」は、スキルです。例えば、ただ「メールを書いて」と言うより、「取引先への日程変更の依頼メール。丁寧に。理由は資料準備が間に合わないため」と具体的に伝える方が、良い結果が得られます。

  • 状況の説明:どんな場面で使うのか
  • 望む結果:どういう形式が欲しいのか
  • トーンの指定:丁寧に?カジュアルに?
  • 制約条件:文字数制限、含めるべき情報

こうした「プロンプトの型」を覚えると、AIの精度が劇的に上がります。就労移行支援では、様々な業務シーンを想定したプロンプトのテンプレートを作ります。

業務フローへの組み込み

AIツールを「時々使う便利なもの」ではなく、「毎日の業務の一部」として組み込むことが、本当の活用です。
例えば、こんな業務フローが考えられます。

【毎朝のルーティン】
  1. AIに「今日のタスク」を確認
  2. 優先順位の高い3つをメモ
  3. 予定を音声でAIに入力し、リマインダー設定
【会議の時】
  1. 音声録音をスタート
  2. 会議後、AIに文字起こし&要約を依頼
  3. 重要なアクションアイテムをタスクリストに追加
【メール返信の時】
  1. 返信内容を箇条書きでメモ
  2. AIに「この内容を丁寧なメールにして」と依頼
  3. 自分で確認・修正して送信

このように、AIを「業務プロセスの中」に位置づけることで、使い忘れがなくなり、継続的な効果が得られます。

就労移行支援では、実際の業務シミュレーションを通じて、こうしたフローを体に染み込ませていきます。

セキュリティ編:安全に使うための知識

AIツールは便利ですが、使い方を間違えると情報漏洩などのリスクがあります。就労移行支援では、「何を入力してはいけないか」をしっかり学びます。

絶対に入力してはいけない情報

  • 顧客の個人情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス)
  • 社内の機密情報(未発表の製品情報、経営情報)
  • パスワードやアカウント情報
  • 社外秘の契約内容や金額

安全な使い方のルール

  • 入力する前に「この情報は外部に出ても大丈夫か?」を自問する
  • 個人情報は匿名化する(「田中様」→「A社の担当者様」)
  • 社内規定を必ず確認する
  • 無料版より企業向けプランの方がセキュリティが高い
  • オフライン版やオンプレミス版の検討

職場での許可の取り方

AIツールを職場で使う際は、事前の相談が必須です。就労移行支援では、こんなステップを練習します:

  1. 上司に相談:「業務効率化のため、AIツールを使いたい」と提案
  2. 試用期間の設定:1ヶ月間試してみて、効果を測定
  3. 報告:「メール作成時間が50%短縮した」など数値で報告
  4. 正式承認:効果が認められれば、継続使用の許可

こうした交渉も、就労移行支援の支援員と一緒にシミュレーションできます。実際の職場で一人で対応するのは不安ですが、事前に練習しておけば、自信を持って相談できます。

情報漏洩が心配な方へ
心配性なのは、悪いことではありません。むしろ、情報セキュリティ意識が高いということです。就労移行支援では、「どこまでOKで、どこからNGか」の境界線を、具体例とともに学べます。不安なら何度でも質問できますし、実際の文章を見せて「これは大丈夫ですか?」と確認することもできます。

💡 今すぐ使える実践プロンプト集 具体的な使い方を知りたい方は、以下の実践ガイドをご覧ください


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AI活用で広がる職種選択肢

AIを活用できるようになると、これまで「自分には無理」と思っていた職種も、選択肢に入ってきます。

データ入力・整理業務

どんな仕事?

  • 紙の書類をデジタル化
  • データベースへの入力
  • 情報の整理・分類
  • 重複チェックや誤字脱字の確認

AIでどう変わる?

  • OCR(文字認識)で紙の文字を自動読み取り
  • AIが入力ミスを自動検出
  • データの重複を自動チェック
  • 分類作業をAIが支援

向いている特性

  • 細かい作業が得意
  • ルーティンワークが苦にならない
  • 正確性にこだわれる

データ入力は、一見すると「単純作業」に見えますが、実は正確性が極めて重要な仕事です。一文字のミスが、後々大きな問題になることもあります。

発達障害のある方の中には、「細部に気づく力」が非常に高い方がいます。他の人が見落とすような小さな違いに気づける。これは、データ入力業務では大きな強みです。

AIのOCR機能を使えば、紙の文字を自動でデジタル化できます。ただし、OCRは100%正確ではありません。だからこそ、人間の目での最終チェックが必要です。ここで、あなたの「細かさ」が活きるのです。

就労移行支援では、実際のデータ入力業務を想定した訓練を行います。AIを使いながら、どこを重点的にチェックすべきか、どうやって効率と正確性を両立させるかを学びます。


バックオフィス業務(事務・総務)

どんな仕事?

  • 社内文書の作成
  • 会議の議事録作成
  • スケジュール調整
  • 備品管理・発注

AIでどう変わる?

  • 議事録を音声から自動生成
  • 定型文書をテンプレートから作成
  • スケジュール調整をAIが最適化
  • 発注タイミングをAIが提案

向いている特性

  • ルーティンワークが得意
  • 正確性を重視できる
  • テキストコミュニケーション中心で働きたい

事務職は、多くの発達障害のある方が目指す職種の一つです。対人コミュニケーションが比較的少なく、決まった手順で進められる業務が多いためです。

ただし、従来の事務職には「突然の電話対応」「複数の業務の同時進行」「曖昧な指示への対応」といった、発達障害のある方にとって難しい要素もありました。

AIを活用することで、これらの困難を軽減できます。例えば、電話の内容を文字起こしして、落ち着いて対応を考える時間を作れます。複数の業務は、AIが優先順位をつけてくれます。曖昧な指示は、AIに「こういう解釈で合っていますか?」と確認の文章を作ってもらえます。

就労移行支援では、実際の会社を想定したバックオフィス業務のシミュレーションを行います。架空の会社の一員として、様々な業務をAI活用しながらこなしていく。この実践的な訓練が、就職後の自信につながります。


カスタマーサポート(チャット対応中心)

どんな仕事?

  • 顧客からの問い合わせ対応
  • よくある質問への回答
  • 問題解決のサポート

AIでどう変わる?

  • FAQ(よくある質問)の自動検索
  • 返信文のテンプレート生成
  • 過去の対応事例から最適解を提案
  • 感情的なメッセージの対応アドバイス

向いている特性

  • 文字でのコミュニケーションが得意
  • ルールに従った対応ができる
  • 人の役に立ちたいという気持ちがある

カスタマーサポートと聞くと、「電話対応があるから無理」と思うかもしれません。しかし最近は、チャットやメールでの対応が中心の職場も増えています。

チャット対応の良いところは、「考える時間がある」ことです。電話のように即座に返事をする必要がなく、AIで適切な回答を検索したり、文章を整えたりする時間が取れます。

また、カスタマーサポートの業務には、明確なマニュアルがあることが多いです。「こういう問い合わせには、こう答える」というルールが決まっている。ルールに従って正確に対応することが得意な方にとっては、実は向いている仕事なのです。

AIは、膨大なFAQの中から、顧客の質問に最も適した回答を瞬時に見つけてくれます。また、顧客が少し感情的なメッセージを送ってきた場合、「この返信は丁寧すぎないか」「もう少し共感を示した方がいいか」といったアドバイスもくれます。

就労移行支援では、実際の問い合わせを想定したロールプレイを行います。様々なパターンの顧客対応を経験することで、「こういう時はこう対応すればいい」という引き出しが増えていきます。

対人業務が不安な方へ
カスタマーサポートは「人と関わる仕事」ですが、それは「対面で話す」こととは違います。テキストベースなら、あなたのペースで、適切な言葉を選んで対応できます。そして、その「丁寧に言葉を選ぶ姿勢」こそが、良いカスタマーサポートの条件なのです。


就労移行支援でのAI学習5ステップ

ステップ1:AI体験・基礎理解(1〜3ヶ月目)

この期間にすること

  • 無料AIツールを実際に触ってみる
  • スマホやパソコンでの基本操作を学ぶ
  • 自分の困りごとに対して、どのツールが使えそうか考える
  • 安全な使い方の基礎知識を身につける
  • 週5日の通所リズムを確立する

最初の3ヶ月は、「AIとは何か」「自分にも使えるのか」を確かめる期間です。難しいことは何もありません。

例えば、初日は音声入力を試してみます。スマホに向かって「今日の天気は?」と話しかけるだけ。文字が表示される。これだけで、「AIって思ったより簡単だな」と感じられます。

次の週は、ChatGPTに簡単な質問をしてみます。「発達障害のある人が仕事で困ることって何?」と聞いてみる。AIが丁寧に答えてくれる。「へえ、こんなことまで答えてくれるんだ」という発見があります。

この時期は、失敗しても全く問題ありません。むしろ、たくさん失敗して、「こういう聞き方だとうまくいかないんだな」と学ぶことが大切です。

就労移行支援の支援員は、あなたのペースに合わせて進めてくれます。「今週はこのツールを使ってみましょう」と提案はしますが、強制はしません。あなたが「これは面白そう」と思ったツールから始めればいいのです。

また、この時期は生活リズムを整えることも重要です。週5日、決まった時間に通所する。これ自体が、就職後の生活に向けた大切な訓練です。

最初の一歩が不安な方へ
就労移行支援の初日は、誰もが緊張します。「自分にできるかな」「周りはみんなすごい人たちだったらどうしよう」と不安になるのは当然です。でも、周りを見渡すと、みんな同じように不安を抱えています。そして、支援員は何百人もの利用者を見てきたプロです。あなたの不安も、きっと想定内です。安心して、「できないこと」「分からないこと」を正直に伝えてください。


ステップ2:日常業務での活用(4〜9ヶ月目)

この期間にすること

  • メール・報告書作成の練習(AI活用)
  • タスク管理ツールを日常的に使う
  • プロンプト(指示文)の書き方を学ぶ
  • 業務シミュレーションでの実践
  • 自分に合った使い方のパターンを見つける

生活リズムが安定し、基本的なツールの使い方がわかってきたら、いよいよ「仕事で使う」ことを意識した訓練に入ります。

この時期の中心は、「文章を書く練習」と「タスクを管理する練習」です。実際の会社を想定して、様々なシチュエーションでAIを使ってみます。

例えば、こんな課題に取り組みます:

課題1:上司への報告メール

  • 状況:昨日のミーティングの内容を報告する
  • 条件:箇条書きでまとめ、読みやすく、200文字以内
  • AIの使い方:箇条書きをAIに渡し、整った文章に変換してもらう

課題2:1週間の業務計画

  • 状況:複数のタスクがある中で、優先順位を決める
  • 条件:締切を守り、無理のない計画を立てる
  • AIの使い方:タスク管理ツールで全体を可視化し、優先順位を確認

課題3:顧客への返信メール

  • 状況:製品の使い方について質問が来た
  • 条件:丁寧に、分かりやすく、好印象を与える
  • AIの使い方:FAQを検索し、回答の下書きを生成してもらう

これらの課題を、繰り返し練習します。最初はAIに頼りきりでも構いません。回数を重ねるうちに、「こういう時はこう聞けばいい」というコツがつかめてきます。

また、この時期は「自分に合った使い方」を見つけることも大切です。ある人は朝一番にAIでその日の計画を立てるのが合うかもしれません。別の人は、作業が終わるたびにAIに振り返りをしてもらう方が合うかもしれません。

就労移行支援では、様々なパターンを試しながら、あなたにとって最も効果的な使い方を一緒に探していきます。

この時期につまずきやすい方へ
「やることが多すぎて、何から手をつければいいかわからない」と感じることがあるかもしれません。そんな時は、支援員に相談してください。タスクを細かく分解して、一つひとつクリアしていけば大丈夫です。完璧を目指す必要はありません。「昨日の自分よりできることが増えた」、それだけで十分です。


ステップ3:職種別の専門活用(10〜15ヶ月目)

この期間にすること

  • 目指す職種に特化したAI活用法を学ぶ
  • ポートフォリオ作成への応用
  • 企業実習でのAI活用(可能な場合)
  • 効果測定と改善(どれだけ効率化できたか)
  • より高度なツールへの挑戦

この時期になると、あなたが目指す職種がある程度見えてきます。その職種に特化した、より実践的なAI活用を学びます。

事務職を目指す場合

  • Excel作業の効率化(関数の自動生成)
  • 複雑なスケジュール調整
  • 契約書の要点抽出
  • 社内マニュアルの作成支援

プログラミングを目指す場合

  • コードの自動生成とデバッグ
  • エラーメッセージの解説
  • コードの最適化提案
  • ドキュメント作成の自動化

カスタマーサポートを目指す場合

  • 顧客対応のパターン学習
  • トラブル時の対応マニュアル検索
  • 多言語対応(翻訳AI活用)
  • 感情的な顧客への対応練習

この時期の大きな目標は、「ポートフォリオ」の作成です。ポートフォリオとは、あなたができることを証明する作品集のようなものです。

例えば、事務職を目指すなら、「AIを活用して作成した業務マニュアル」「効率化した業務フローの図解」などがポートフォリオになります。プログラミングなら、「AIと協力して作成したWebアプリ」などです。

このポートフォリオは、就職活動で非常に重要なアピール材料になります。「私はAIを使ってこんなことができます」と具体的に示せるからです。

また、可能であれば企業実習(インターンシップ)にも参加します。実際の職場でAIを使ってみることで、「本当にこれで通用するのか」を確認できますし、改善点も見えてきます。

就労移行支援では、実習先の企業と連携して、あなたのAI活用スキルを理解してもらい、適切な業務を任せてもらえるよう調整します。


ステップ4:就職活動でのアピール(16〜20ヶ月目)

この期間にすること

  • AI活用スキルを履歴書・職務経歴書に記載
  • 面接での説明練習(実演を含む)
  • 企業へのAI活用提案書の作成
  • 職場でのルール確認方法を学ぶ
  • 複数企業への応募と面接

スキルが身についたら、いよいよ就職活動です。ここで重要なのは、「AI活用スキル」を効果的にアピールすることです。

履歴書・職務経歴書への記載例

【スキル欄】

  • 文章生成AIを活用した業務効率化(メール作成時間50%短縮)
  • 音声文字起こしツールによる議事録作成
  • タスク管理AIによるスケジュール最適化

【自己PR】 「就労移行支援でAI活用スキルを学び、文章作成やタスク管理において大幅な効率化を実現しました。特に、メール返信時間を平均30分から15分に短縮し、正確性も向上させることができました。入社後も継続してAIを活用し、業務の質と速度の両立に貢献したいと考えています。」

面接では、実際にAIを使っている様子を見せることも効果的です。スマホやタブレットで、「このように使っています」とデモンストレーションできれば、説得力が増します。

また、「職場でAIを使うためのルール」についても、面接で確認します。こんな質問ができるといいでしょう:

  • 「業務でAIツールを使用することは可能でしょうか?」
  • 「使用する場合、事前に申請や承認が必要ですか?」
  • 「個人情報の取り扱いについて、社内規定を教えていただけますか?」

こうした質問をすることで、あなたが情報セキュリティを意識していることも伝わります。

就労移行支援では、模擬面接を何度も行います。質問への答え方、AIスキルの見せ方、企業への質問の仕方、すべてを練習します。実際の面接前には、想定問答集も一緒に作ります。

面接が不安な方へ
面接は、誰にとっても緊張するものです。でも、準備をすれば、その不安は大きく軽減できます。就労移行支援では、あなたの特性を理解した上で面接対策をします。「視線をどこに向けるか」「手をどこに置くか」といった細かいことまで、必要であればアドバイスします。一人で悩む必要はありません。


ステップ5:就職後の実践・定着(就職後6ヶ月〜)

定着支援の内容

  • 職場でのAI活用サポート
  • トラブル時の相談対応(企業との調整含む)
  • スキルアップ支援(新しいツールの情報提供)
  • 定期的な面談(月1〜2回)

就労移行支援は、就職したら終わりではありません。就職後も、6ヶ月から1年程度、定着支援が続きます。

職場で実際にAIを使い始めると、訓練では予想していなかった問題が出てくることがあります。

「上司がAIの使用を快く思っていない気がする」
「セキュリティポリシーが厳しくて、使いたいツールが使えない」
「同僚に『AIに頼りすぎじゃない?』と言われて傷ついた」

こうした問題が起きた時、支援員が企業と本人の間に入って調整してくれます。企業側に、「なぜAIが必要なのか」「どんな配慮があれば働きやすいか」を説明してくれます。

また、新しいAIツールが登場した時に、「これはあなたの業務に使えそうですよ」と情報提供してくれることもあります。AI技術は日々進化しているので、常に最新の情報にアクセスできるのは大きなメリットです。

定期的な面談では、職場での困りごとを話したり、「最近、こんなうまい使い方を見つけました」と成功体験を共有したりします。こうした振り返りが、長く働き続けるための支えになります。

厚生労働省の調査によると、就労移行支援を利用して就職した方は、定着支援があることで、継続的に働けている例が多く報告されています。特に、職場での配慮や支援が適切に行われている場合、定着率が高くなる傾向があります。

就職後の不安がある方へ
「就職できても、すぐに辞めてしまうのでは」という不安、よく分かります。でも、就労移行支援を経て就職した方の多くは、定着支援のおかげで長く働けています。一人で抱え込まず、困った時にすぐ相談できる相手がいる。これが、働き続ける上で最も大切なことかもしれません。


AI活用で成功するための3つのポイント

ポイント1:完璧を目指さず「7割で動く」

大切な考え方

  • AIは補助ツール、最終判断は自分で行う
  • 「動くもの」をまず作り、後から改善する
  • 小さな成功体験を積み重ねる
  • 失敗から学ぶ姿勢を持つ

完璧主義の方に特に伝えたいのは、「AIの答えは100%正しいわけではない」ということです。

AIが生成した文章も、提案したタスクの優先順位も、必ずしも完璧ではありません。だからこそ、最終的には自分で確認し、判断する必要があります。

でも、これは決してデメリットではありません。「たたき台がある」というだけで、ゼロから作るより遥かに楽です。そして、AIの答えを見て「ここはちょっと違うな」と気づくプロセス自体が、学びになります。

プログラミングには「動けばOK」という考え方があります。最初から綺麗で完璧なコードを書こうとすると、いつまで経っても完成しません。まずは動くものを作り、それを少しずつ改善していく。この「反復的アプローチ」が、挫折せずに成長するコツです。

AIの使い方も同じです。最初は下手でも、使い続けるうちに上達します。「7割の完成度で一度動かしてみる」、この勇気を持ってください。

完璧主義の方へ
完璧を目指す姿勢は、本来は長所です。でも、「完璧じゃないとダメ」と思うと、身動きが取れなくなります。「完璧を目指すけど、70点でも許容する」、このバランス感覚を、就労移行支援で一緒に身につけていきましょう。失敗しても大丈夫な環境で、たくさん失敗してください。それが、本番で失敗しないための最良の練習です。


ポイント2:自分の特性に合ったツールを選ぶ

選び方のヒント

  • 視覚優位の方:図解、マインドマップ、カンバン方式のツール
  • 聴覚優位の方:音声入力、読み上げ機能のあるツール
  • 言語優位の方:文章生成、要約、チャット形式のツール
  • 試行錯誤しながら、自分に合うものを見つける

AIツールには、たくさんの種類があります。そして、どれが「最適」かは、人によって違います。

例えば、視覚的な情報処理が得意な方なら、タスクをカード形式で視覚的に管理できる「Trello」のようなツールが合うかもしれません。一方、シンプルなリスト形式の方が集中できる、という方もいます。

音声入力が得意な方もいれば、文字入力の方が考えを整理しやすい、という方もいます。どちらが優れているわけではなく、単に「合う・合わない」の問題です。

就労移行支援では、様々なツールを試せます。「今週はこれを使ってみて、来週は別のを試してみましょう」という柔軟なアプローチで、あなたに最適なツールセットを見つけていきます。

そして、「一つのツールにこだわる必要はない」ということも覚えておいてください。タスク管理はこのツール、文章作成はこのツール、と使い分けてもいいのです。大切なのは、「あなたが使いやすい」ことです。

自分に合うツールがわからない方へ
最初から「これが自分に合う」と分かる人はいません。料理と同じで、実際に食べてみないと好みは分かりません。就労移行支援では、「ツールの試食会」のように、色々試せる環境があります。遠慮なく、たくさん試してください。合わなかったら、別のを試せばいいだけです。


ポイント3:セキュリティ意識を持ち続ける

常に意識すべきこと

  • 個人情報は絶対に入力しない
  • 社内規定を必ず確認する
  • 無料版と有料版の違いを理解する
  • 定期的に使い方をアップデートする

AIツールは便利ですが、だからこそセキュリティには細心の注意が必要です。

特に気をつけるべきは、「慣れてきた頃」です。最初は緊張感を持って使っていても、慣れてくると「このくらいいいか」と気が緩みがちです。ここで情報漏洩が起きます。

就労移行支援では、定期的にセキュリティの確認をします。「最近、どんな使い方をしていますか?」「危ない使い方をしていませんか?」と、チェックする機会があります。

また、AIツールは頻繁にアップデートされます。利用規約が変わることもあります。「以前は無料だった機能が有料になった」「データの保存期間が変更された」といった変更に気づかないと、思わぬトラブルになることもあります。

こうした情報は、就労移行支援の支援員が定期的に提供してくれます。一人で全てを追いかけるのは大変ですが、サポートがあれば安心です。

ルールを守ることが得意な方へ
発達障害のある方の中には、「決められたルールを正確に守る」ことが得意な方が多くいます。これは、情報セキュリティの分野では大きな強みです。ルールさえ明確であれば、それを確実に守れる。この特性は、企業から高く評価されます。


よくある質問

Q1:AI活用スキルを学べる就労移行支援事業所の選び方は?

A:見学時に以下のポイントを確認しましょう

確認すべきポイント

  • 具体的なツール名を挙げて説明してくれるか
  • 実際にAIツールを触れる環境(PC、タブレット等)があるか
  • 講座の頻度(週何回?個別指導は?)
  • 指導者のスキルレベル(資格、実務経験)
  • 就職実績(AI活用スキルを活かして就職した事例)
  • 就職後のフォロー体制(定着支援の内容)

就労移行支援事業所によって、AI活用スキルの指導レベルは大きく異なります。「AI講座があります」と言っていても、内容が薄い場合もあります。

見学時には、具体的な質問をしてください。「ChatGPTは使いますか?」「音声文字起こしツールの練習はできますか?」「セキュリティについても教えてもらえますか?」といった質問に、明確に答えられる事業所は信頼できます。

また、可能であれば体験利用をしてみてください。実際に講座を受けてみて、「自分でもついていけそうか」「支援員との相性はどうか」を確認できます。

厚生労働省の「WAM NET」という検索サイトでは、全国の就労移行支援事業所を検索できます。また、ハローワークでも情報提供を受けられます。複数の事業所を比較検討することをおすすめします。


Q2:パソコンが苦手でもAIは使えますか?

A:はい、スマホから始められます

スマホでできるAI活用

  • 音声入力で文字を入力(タイピング不要)
  • アプリで直感的に操作
  • 音声で質問して、音声で回答を聞く
  • 写真を撮って、AIに説明してもらう

「パソコンが苦手」という理由でAI活用を諦める必要は全くありません。実は、スマホの方が使いやすいAIツールもたくさんあります。

音声入力機能を使えば、キーボードを打つ必要すらありません。スマホに向かって話すだけで、文字になります。そして、その文字をもとに、AIが答えてくれます。

就労移行支援には、パソコンの基本操作から教えてくれる事業所も多くあります。「電源の入れ方」「マウスの持ち方」というレベルから始めても、決して恥ずかしいことではありません。

また、タイピングが苦手なら、音声入力を活用すればいいのです。最近のAIは、音声認識の精度が非常に高くなっています。ある程度はっきり話せば、かなり正確に文字起こしをしてくれます。

段階的に学習すれば、必ずできるようになります。焦る必要はありません。


Q3:無料版で十分ですか?有料版は必要?

A:まずは無料版で十分です

無料版と有料版の比較

機能無料版有料版
文章生成○(月間制限あり)○(無制限)
音声文字起こし○(月間上限あり)○(無制限・高精度)
応答速度普通高速
データ保存期間限定的永久保存
広告表示ありなし
サポート基本的になしメール・チャットサポート

有料版を検討すべきタイミング

  • 仕事で毎日使うようになった
  • 無料版の月間制限に達するようになった
  • より高度な機能が必要になった
  • 企業が費用負担してくれる場合

就労移行支援で学習する段階では、無料版で十分です。むしろ、無料版の制限内で効率的に使う方法を学ぶことが、良い訓練になります。

有料版は、就職後に「業務で毎日使う」ようになってから検討すれば十分です。その頃には、「このツールがないと仕事にならない」というレベルで使いこなせているはずなので、有料版への投資も納得できるでしょう。

また、企業によっては、業務効率化ツールの費用を負担してくれる場合もあります。就職後、上司に「このツールを使いたいので、会社で契約してもらえませんか?」と相談してみる価値はあります。


Q4:AIに頼りすぎて自分で考えなくなりませんか?

A:適切な使い方を学べば問題ありません

AIとの健全な付き合い方

  • AIは「たたき台」を作るツール、最終判断は自分
  • AIの答えを必ず検証する習慣をつける
  • 時にはAIなしで考えてみる
  • AIが間違うことがあると理解する

この心配をする方は、実は「真面目に考えている」証拠です。AI依存のリスクを理解しているからこそ、不安になるのです。

確かに、AIに頼りすぎると、自分で考える力が衰える可能性はあります。でも、それは「AIが悪い」のではなく、「使い方の問題」です。

例えば、計算機を使うことで暗算能力は衰えるかもしれません。でも、だからといって計算機を使わないのは非効率です。大切なのは、「いつ計算機を使い、いつ暗算するか」を判断する力です。

AIも同じです。「AIに頼っていいタイミング」と「自分で考えるべきタイミング」を見極める。この判断力を、就労移行支援で学びます。

また、AIは完璧ではありません。時には間違った答えを出すこともあります。だからこそ、「AIの答えを検証する」というプロセスが必須です。このプロセスを通じて、むしろ批判的思考力が鍛えられる、とも言えます。

AIとの距離感に悩む方へ
AIは「優秀なアシスタント」だと考えてください。アシスタントが下調べをして資料を作ってくれる。でも、最終的に判断し、責任を持つのは自分。この関係性が、健全なAI活用のあり方です。


Q5:職場でAIを使っても良いのでしょうか?

A:事前確認が必須です

職場でAIを使うためのステップ

  1. 入社前・入社直後に相談:面接時または入社初日に確認
  2. 社内規定の確認:情報セキュリティポリシーを読む
  3. 試用期間の設定:1〜2ヶ月、限定的に使ってみる
  4. 効果の報告:「作業時間が○%短縮した」など数値で示す
  5. 正式承認:問題なければ、継続使用の許可を得る

相談する際のポイント

  • 「業務効率化のため」という目的を明確に
  • 使用するツールの具体名を伝える
  • セキュリティへの配慮を示す
  • 試用期間を提案する

職場でAIツールを使う際、最も重要なのは「事前相談」です。黙って使い始めて、後から問題になるケースが実際にあります。

企業側の立場になって考えると、「社員が何か知らないツールを使っている」「もしかしたら機密情報が漏れているかも」という不安があります。だからこそ、オープンに相談することが大切です。

相談する際は、こんな風に伝えるといいでしょう:

「私は発達障害があり、タスク管理に困難を感じています。就労移行支援でAI活用スキルを学び、効率的に業務を進められるようになりました。御社でも、業務効率化のためにAIツールを使用させていただきたいのですが、可能でしょうか?使用するツールは○○で、個人情報は一切入力しません。まずは1ヶ月間試用し、効果を報告させていただきたいと思います。」

このように、目的、配慮、提案をセットで伝えることで、企業側も安心して許可を出せます。

就労移行支援では、こうした「企業への説明の仕方」も練習します。実際に支援員が企業側とやり取りする場面に同席することもできます。


まとめ:AIは発達障害のある方の「働く」を支える実用ツールです

この記事のポイント

  • AIは特別なスキル不要で今日から使える実用ツール
  • 発達障害のある方が抱える「働きづらさ」の多くをAIが軽減できる
  • 就労移行支援で、基礎から実践まで段階的に学べる
  • 無料版から始めて、自分に合ったツールを見つけられる
  • セキュリティ意識を持って使えば、職場でも活用できる
  • AI活用スキルは、就職活動で大きなアピールポイントになる

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

「発達障害 AI」で検索したあなたは、きっと「今の働きづらさを何とかしたい」「もっと自分に合った働き方を見つけたい」と真剣に考えているのだと思います。

AIは、魔法ではありません。使えば全ての問題が解決するわけではありません。でも、あなたが抱えている困りごとの一部を、確実に軽くしてくれるツールです。

「指示を聞き逃す」「メールに時間がかかる」「タスクの優先順位がわからない」「集中が続かない」「コミュニケーションが苦手」。これらの困りごとを、一人で抱え込む必要はもうありません。

AIという「外付けの脳」を使うことで、あなたの持っている本来の能力を、より発揮しやすくなります。そして、就労移行支援という場所で、その使い方を基礎から学べます。

厚生労働省の令和6年障害者雇用状況調査によると、民間企業で働く障害者数は67万7,461人で、21年連続で過去最高を更新しています。働く環境は、少しずつですが確実に改善されています。

そして、AI技術の発展は、発達障害のある方にとって追い風です。これまで「できない」とされていたことが、「AIがあればできる」に変わりつつあります。

あなたの「細かいことに気づく力」「ルーティンを守る力」「好きなことに没頭する力」は、AI時代にこそ輝く特性です。


今すぐできる3つのアクション

アクション1:まずは無料AIツールを試す(今日中)

やってみること

  • ChatGPTやGeminiに簡単な質問をしてみる
  • スマホの音声入力を使って、思いついたことをメモしてみる
  • 「自分の困りごと」をAIに相談してみる

難しく考える必要はありません。スマホでGoogle検索をしたことがあれば、それとほとんど同じです。

例えば、ChatGPTにアクセスして(無料で使えます)、こう聞いてみてください:

「発達障害のある人が仕事で困ることを3つ教えて」

AIが答えてくれます。その答えを見て、「自分もそうだな」と思ったら、さらに質問してみましょう:

「指示を聞き逃しやすいんだけど、どうすればいい?」

AIが具体的な対処法を教えてくれます。この対話を通じて、「AIって、思ったより簡単だな」「これなら使えそうだな」と感じられるはずです。

今日、この記事を読み終わったら、5分だけ時間を取って試してみてください。それが、新しい可能性への第一歩です。


アクション2:AI活用講座のある事業所を探す(今週中)

やってみること

  • 近くの就労移行支援事業所を検索する
  • 「AI活用」「IT」「プログラミング」などのキーワードで絞り込む
  • 気になる事業所を2〜3箇所リストアップ
  • 見学予約の電話をする(メールでもOK)

厚生労働省の「WAM NET」というサイトで、全国の就労移行支援事業所を検索できます。お住まいの地域、「就労移行支援」で検索すると、近くの事業所が出てきます。

各事業所のホームページを見て、「AI活用」「IT講座」などの記載があるか確認してください。載っていなくても、電話で「AIツールの使い方を学べますか?」と聞いてみる価値はあります。

見学予約の電話は緊張するかもしれませんが、「ホームページを見て、見学したいと思いました」と伝えれば大丈夫です。事業所側も、見学希望の連絡は毎日受けています。あなただけが特別なわけではありません。

複数の事業所を見学して、比較することをおすすめします。事業所の雰囲気、支援員との相性、通いやすさ、カリキュラムの内容。色々な要素を比べて、「ここなら通えそう」と思える場所を選んでください。


アクション3:見学で実際に触れてみる(来月中)

やってみること

  • 事業所でAIツールを実際に体験する
  • 自分の特性や困りごとを支援員に相談する
  • 「このツールは自分に合いそうか」を確認する
  • 他の利用者の話を聞く(可能であれば)

見学に行く際は、遠慮なく質問してください。「こんなこと聞いていいのかな」と思うことでも、大丈夫です。

例えば、こんな質問をしてみてください:

  • 「未経験ですが、本当にできるようになりますか?」
  • 「パソコンが苦手ですが、大丈夫ですか?」
  • 「発達障害の特性で、こういうことが苦手なんですが、サポートしてもらえますか?」
  • 「就職実績を教えてください」
  • 「利用料金はどのくらいかかりますか?」

良い事業所であれば、これらの質問に丁寧に答えてくれます。逆に、曖昧な答えしか返ってこない場合は、その事業所は避けた方がいいかもしれません。

可能であれば、体験利用もしてみてください。1日〜数日、実際に通ってみることで、「ここなら続けられそう」という感覚がつかめます。


あなたへの最後のメッセージ

「AIは難しい」「自分には使いこなせない」「仕事で使えるレベルにはならない」。

そんな風に思っているかもしれません。でも、実際にやってみると、意外と「あれ、これならできるかも」と感じることが多いです。

この記事で紹介したAI活用法は、どれも特別なものではありません。今、多くの発達障害のある方が、実際に仕事で使っている方法です。あなたにもできます。

発達障害の特性は、「弱み」ではありません。見方を変えれば「強み」になります。そして、AIは、その強みをさらに活かし、弱みを補ってくれるツールです。

就労移行支援は、そのAIの使い方を、基礎から実践まで学べる場所です。一人で悩む必要はありません。同じような困りごとを抱えた仲間がいて、経験豊富な支援員がいます。

「働くことが怖い」「また失敗するのではないか」。そんな不安を抱えているなら、まずは情報を集めることから始めてください。AIツールを試してみる。事業所を検索してみる。見学に行ってみる。

小さな一歩を踏み出すだけで、見える景色が変わります。

あなたが、自分に合った働き方を見つけられること。AIというツールを味方につけて、あなたらしく働けること。そして、「働くって、思ったより悪くないな」と感じられること。

心から願っています。


参考文献・データ出典

最終閲覧日:2025年10月22日

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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