この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
就労移行支援・A型・B型、あなたに合うのはどれ?30秒でわかる選び方ガイド
「就労移行支援とA型・B型って、名前が似ていてどれが自分に合うのか分からない…」 「今の自分の体調や状況で、どのサービスを選べばいいんだろう?」
そんな風に、一人で悩んでいませんか? これらの制度は、あなたの「次の一歩」を支える大切な選択肢ですが、違いが分かりにくく、最適なものを選ぶのは簡単ではありません。
この記事では、単なる制度解説だけでなく、あなたが今どんな状況にいるかを基に、最適な選択肢が見つかる「30秒セルフチェック」を用意しました。読み終わる頃には、あなたが進むべき道の具体的なイメージが湧いているはずです。
まずは要点(この記事の結論)
就労移行支援:一般企業への就職と職場定着がゴール。事業所とは雇用契約を結びません(原則2年・必要時は延長可)。
A型:事業所と雇用契約を結んで働きます。最低賃金以上の賃金が支払われ、継続就労が目的です。
B型:雇用契約は結ばず、日中活動として生産活動に参加します。対価は「工賃」です(お給料ではありません)。
自己負担:1割+上限月額制。多くの世帯では実質0円〜9,300円、上限は37,200円(通所の場合)。
まずはチェック!あなたに合うのはどのタイプ?
まずは3つの質問に答えるだけで、あなたに最も近い選択肢を見てみましょう。
- Q1. 今の目標は「一般企業への就職」ですか?
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「はい」の場合 → 就労移行支援が第一候補
一般企業での就職を目指し、履歴書・面接・職場実習などの就活支援を2年以内で受けたい方に最適です。
「いいえ/まずは様子を見たい」の場合 → Q2へ
次の質問で、より詳しく診断してみましょう。 - Q2. 事業所と雇用契約を結び、安定した給与を得ながら働きたいですか?
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「はい」の場合 → A型事業所が合っている可能性大
週3〜5日、1日4〜6時間程度の勤務で、最低賃金以上の給与を得ながら継続して働けます。
「いいえ/まだ自信がない」の場合 → Q3へ
最後の質問で、あなたに合った選択肢を確認しましょう。 - Q3. まずは自分のペースで、週1日や短時間から社会参加に慣れていきたいですか?
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「はい」の場合 → B型事業所がおすすめ
雇用契約はありませんが、体調や体力に合わせて無理なく生産活動に参加できます。工賃は少額ですが、生活リズムを整える第一歩として最適です。
「迷っている」の場合 → 複数の事業所を見学・体験
見学や短期体験で、実際の雰囲気や支援内容を確認することをお勧めします。
一目でわかる!就労移行支援・A型・B型の違い
あなたのタイプが何となく見えてきたところで、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
比較項目 | 就労移行支援 | A型(就労継続支援) | B型(就労継続支援) |
---|---|---|---|
一言でいうと | 就職の「訓練校」 | 「福祉的な配慮のある職場」 | 社会参加の「リハビリの場」 |
目的 | 一般就労への移行(就職と職場定着) | 雇用契約の下で働き続ける(継続就労) | 日中活動・生産活動で生活リズム/ステップアップ |
契約関係 | 福祉サービスの利用契約(雇用契約ではない) | 事業所と雇用契約(労働者) | 福祉サービスの利用契約(雇用契約ではない) |
収入 | 賃金は原則なし(企業実習は無給が一般的) | 賃金(最低賃金以上が原則) | 工賃(お給料ではない) |
主な内容 | 就職準備訓練、ビジネス・PC、就活支援、職場実習 など | 実際の業務に従事(軽作業・事務・清掃 等) | 生産活動(内職・創作・軽作業 等)と生活リズムづくり |
期間 | 原則2年(必要に応じ最大1年の更新可) | 期間の定めなし | 期間の定めなし |
次の一歩 | 一般就職 → 就労定着支援へ | A型で継続/一般就職へ移行も | 体調・希望に応じてA型・移行・地域活動へ |
数字でみる:全国平均(令和5年度/厚労省)
タイプ別詳細解説:それぞれに向いている人
セルフチェックで分かれた3つのタイプについて、さらに深掘りします。
- 就労移行支援:半年〜2年で就職を目指したい方
詳しく解説
目標:一般企業への就職と職場定着
状況:基本的な生活リズムは整っており、就職活動の具体的なサポート(書類添削、面接練習、企業実習など)を求めている
求めること:自分に合う仕事を見つけ、長く働き続けるためのスキルと自信を身につけたい
事業所とは雇用契約を結ばず、訓練と就活支援に集中します。実習は原則無給ですが、職場体験と応募〜面接同行〜内定後の定着準備まで一連でサポートされます。 - A型:4〜6時間×週3〜5日を継続できそうで、雇用契約で働きたい方
詳しく解説
目標:すぐに一般就労は難しいが、雇用契約のある安定した環境で働きたい
状況:週3〜5日、1日4〜6時間程度の勤務が可能で、支援を受けながら継続して働く意欲がある
求めること:最低賃金以上の収入を得ながら、社会の一員として役割を果たしたい
事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の賃金が発生します。勤怠や業務の指示に沿って働く前提のため、安定通所が見込める方に向いています。状況により一般就労へ移行するケースもあります。 - B型:まずは短時間の作業や日中活動から始め、生活リズムを整えたい方
詳しく解説
目標:まずは生活リズムを整え、社会とのつながりを取り戻したい
状況:毎日通うのはまだ難しい。週1日や1日1時間など、ごく短時間から始めたい
求めること:安心できる環境で簡単な作業を行い、少しずつ自信と体力をつけたい
雇用契約は結ばず、作業への参加に対して工賃が支払われます(賃金ではありません)。体調の波に合わせて無理なく取り組めるため、体力づくりや生活リズム作りのステップに向いています。
選び方のコツ(3つの視点)
どの制度が自分に合うか迷った時は、以下の3つの視点で整理してみましょう。
- 1)いま通える日数と時間(週◯日・1日◯時間)を書き出す
詳しく解説
「週3以上・1日4時間程度」が一つの目安です。就労移行では訓練や実習の日程を組みやすく、A型はシフト勤務に近い運用になります。迷う場合は、まずは少ない日数から体験で確認しましょう。 - 2)就職希望時期(◯か月以内/1年以内 など)を決める
詳しく解説
就労移行は標準24か月の中で計画を組みます。早期就職を狙う場合は、見学→実習→応募までの道筋を最初に共有しておくとスムーズです。 - 3)必要な配慮(通勤・在宅可否・人間関係のサポート 等)を箇条書きにする
詳しく解説
配慮事項は見学・体験でのチェック項目です。通勤ルートや勤務時間帯、コミュニケーション支援の有無、在宅訓練の可否など、具体的に書き出して相談に持参すると、事業所・自治体の判断が早まります。
料金・自己負担の仕組み(上限月額)
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限(月額) |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 課税(所得割16万円未満)※通所 | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
利用までの流れ(かんたん)
1)相談:市区町村の障害福祉課や計画相談へ。 2)見学・体験:適合度をチェック(在宅可否・通所日数・配慮事項)。 3)申請:受給者証を申請(詳しい手順は「受給者証の取り方(保存版)」をご覧ください)。
よくある質問(FAQ)
- A型とB型はどちらが”上”ですか?
-
上下の関係ではありません。体調や希望に合わせて支援内容が異なるだけです。
- 就労移行支援からA型/B型に切り替えることはできますか?
-
できます。ご本人の状況に合わせて相談支援で調整します(自治体の判断があります)
- 就労移行支援は本当に2年までですか?
-
原則2年ですが、必要性が認められる場合は最大1年の更新が可能です(自治体審査あり)。
- 就職後の支援はありますか?
-
あります。就労定着支援により、就職6か月後から最長3年間の定着支援を受けられます。
まとめ:最適な「次の一歩」を見つけるために
就労移行支援・A型・B型に「どれが優れている」という序列はありません。大切なのは、「今のあなた」の状態に最も合ったサービスを選ぶことです。
- まずは「就職」が目標か、「働く練習」が目標かを考える
- 通える日数や時間、欲しいサポートを書き出してみる
- 少しでも気になったら、必ず複数の事業所を見学・体験する
この記事が、あなたの道筋を照らすコンパスになれば幸いです。焦らず、あなたに合った最適な一歩を見つけてください。
出典(一次情報)と更新履歴
- 厚生労働省「令和5年度 工賃(賃金)の実績について」(PDF)
- 厚生労働省「障害者の利用者負担(負担上限月額)」
- 厚生労働省「就労移行支援(標準期間24か月・更新可)」(PDF)
- 厚生労働省「就労定着支援の実施について」(PDF)
・最終更新日:2025年8月12日

この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。