この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援を使いたいけど、受給者証って何?」「障害者手帳とは違うの?どうやって取るの?」「料金はいくらかかる?有効期限があるって本当?」
障害福祉サービスを初めて利用しようとしたとき、多くの方が「受給者証」という言葉につまずきます。この記事では、受給者証の基本から使い方、料金の仕組み、有効期間、取得方法まで、初めての方にも分かりやすく解説します。
特に重要なのは、受給者証があれば就労移行支援などの障害福祉サービスを、ほとんどの方が無料(自己負担0円)で利用できるという事実です。
- 受給者証とは何か、障害者手帳との違いが分かる
- どんな人が受給者証を取得でき、どんなサービスが使えるのか分かる
- 受給者証の中身(記載内容)と見方が分かる
- 料金の仕組みと、実際にいくら負担するのかが分かる
- 有効期間と更新手続きの流れが分かる
- 取得から利用開始までの大まかな流れが分かる
まず結論:受給者証とは何か
受給者証(障害福祉サービス受給者証)とは、障害福祉サービスを利用するための公的な証明書です。市区町村が発行する、あなた専用の「サービス利用許可証」のようなものだと考えてください。
3つの重要ポイント
障害者手帳がなくても取得できる
医師の診断や意見書があれば、手帳を持っていなくても申請可能です。
ほとんどの方が無料(自己負担0円)で利用できる
世帯収入に応じた負担上限があり、生活保護世帯や住民税非課税世帯は0円、一般世帯でも月額9,300円が上限です。詳しくは就労移行支援の料金・自己負担ガイドもご覧ください。
有効期間がある
基本的に1年間で、更新手続きが必要です(サービスによっては3年の場合もあります)。
受給者証は、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、自立訓練、グループホームなど、さまざまな障害福祉サービスを利用する際に必要になります。この証明書があることで、サービス事業所はあなたに対して正式にサービスを提供でき、自治体から報酬を受け取ることができます。
受給者証の基本|制度・仕組みの全体像
受給者証は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの利用を可能にする仕組みです。法的には、市区町村が「この人には、このサービスが、この期間、この支給量で必要だ」と判断した証明書です。受給者証には、利用できるサービスの種類、1か月あたりの利用日数(支給量)、有効期間、負担上限月額などが記載されています。
障害者手帳との違い
障害者手帳
障害があることの「証明書」。身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類があり、等級によって税の減免・交通機関の割引などが受けられる。ただし手帳だけでは障害福祉サービスは利用できない。
受給者証
障害福祉サービスを利用するための「許可証」。手帳を持っていなくても、医師の診断や意見書があれば取得できる。逆に手帳を持っていても、受給者証がなければ就労移行支援などのサービスは利用できない。
- 手帳あり・受給者証なし:公的支援(割引など)は受けられるが、就労移行支援などの福祉サービスは利用できない
- 手帳なし・受給者証あり:福祉サービスは利用できるが、交通機関の割引などは受けられない
- 手帳あり・受給者証あり:両方の制度を活用できる(最も選択肢が広い)
【監修者コメント|市原早映/サービス管理者】
「相談者の多くが『手帳がないとサービスを使えない』と誤解されています。実際には、手帳がなくても医師の診断書があれば受給者証は取得できます。特に精神障害や発達障害の方は、手帳取得に時間がかかることもありますが、診断書があればすぐに就労移行支援を始められます。『手帳を取ってから』と待つ必要はありません。」
どんなサービスで必要になるのか
就労系サービス
訓練・生活支援系サービス
自立訓練、自立生活援助、共同生活援助(グループホーム)など
その他のサービス
居宅介護(ホームヘルプ)、短期入所(ショートステイ)、移動支援など
これらのサービスを利用する際、事業所は必ずあなたの受給者証を確認します。受給者証がない状態でサービスを受けることはできません。
受給者証が必要になる場面と、利用できる人
対象となる人の条件
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている方は基本的に対象になります。ただし、手帳があっても利用したいサービスが「必要」と認められなければ受給者証は発行されません。
精神科・心療内科・発達障害の専門医などから診断を受けている方は、手帳がなくても受給者証を申請できます。うつ病・適応障害・社交不安障害・ADHD・ASDなど、さまざまな診断名が該当します。医師の診断書や意見書に「就労移行支援の利用が適当」と書かれていれば、市区町村はそれを根拠に受給者証を発行します。
国が指定する難病(指定難病)の方も、障害福祉サービスの対象になります。難病の診断を受けており、日常生活や就労に支障がある場合、受給者証を取得できます。
障害福祉サービスの多くは18歳以上が対象です。65歳以上の方は介護保険サービスが優先されるため、障害福祉サービスの利用が制限される場合があります。
手帳の有無別:申請パターン
手帳あり
手帳のコピーと計画書(相談支援専門員が作成)を提出すれば、多くの場合数週間から1か月程度で受給者証が発行されます。手帳があることで障害の存在が公的に証明されているため、追加の診断書が不要になるケースが多いです。
手帳なし・医師の診断あり
医師の診断書や意見書が必要です。費用は医療機関によって異なりますが、3,000円〜10,000円程度が一般的です(保険適用外)。手帳がない場合、審査に少し時間がかかることがあります(1〜2か月程度)。「手帳取得を勧める」と言われることもありますが、手帳取得は強制ではありません。診断書があれば申請は可能です。
手帳なし・診断なし
現時点で診断を受けていない方は、まず医療機関を受診し診断を受ける必要があります。「何となく生きづらい」「働くのが難しい」という悩みがある方は、精神科・心療内科・発達障害の専門クリニックに相談してみましょう。診断を受けた後、医師に「就労移行支援を利用したい」と伝えれば意見書を書いてもらえます。
受給者証の中身と見方|ここだけは押さえたいポイント
受給者証には以下の情報が記載されています。実際に手にしたときにどこを見ればいいのかを確認しておきましょう。
氏名・生年月日・住所・受給者証番号。受給者証番号はサービス利用時に事業所が必ず確認する重要な番号です。
利用できるサービス名(例:就労移行支援)が記載されています。受給者証に書かれていないサービスは利用できません。追加が必要な場合は変更申請が必要です。
1か月あたりに利用できる日数の上限(例:22日)。就労移行支援の場合、多くの自治体が月20〜22日を標準としています。支給量を超えて利用することはできません。
開始日と終了日が明記されています。就労移行支援の場合、初回は通常1年間。期限が切れる前に必ず更新手続きをしましょう。
あなたが1か月に支払う自己負担額の上限(例:0円・9,300円・37,200円)。世帯の収入に応じて設定されます。
費用の仕組み|自己負担はいくらかかる?
障害福祉サービスの利用料は、原則として「サービス費用の1割を自己負担」というルールになっています。しかし、実際にはほとんどの方が無料(自己負担0円)でサービスを利用しています。その理由は、世帯収入に応じた負担上限があるからです。詳しくは就労移行支援の料金・自己負担ガイドもあわせてご覧ください。
| 負担区分 | 対象となる世帯 | 負担上限月額 | 該当する人の割合(目安) |
|---|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | 約5〜10% |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯(年収目安:単身100万円以下、2人世帯156万円以下) | 0円 | 約60〜70%(最も多い) |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満。年収目安:600万円以下) | 9,300円 | 約20〜30% |
| 一般2 | 上記以外(所得割16万円以上) | 37,200円 | 約5%未満(該当者は少ない) |
※18歳以上の障害者の場合、本人と配偶者の収入のみで判定されます(親や兄弟姉妹の収入は含まれません)
世帯の範囲(誰の収入を見るか)
具体例:ケース別の自己負担額シミュレーション
【監修者コメント|市原早映/サービス管理者】
「お金がかかるから利用できない」と諦める方が時々いらっしゃいますが、実際には当事業所でも利用者の約70%が自己負担0円です。親と同居していても、18歳以上であれば本人の収入のみで判定されるため、多くの方が無料で利用できます。経済的な理由で諦める前に、ぜひ一度相談してください。
その他の費用(交通費・昼食代など)
受給者証に関連する自己負担額とは別に、交通費・昼食代・教材費・資格受験料などが発生することがあります。事業所によって補助制度がある場合もあるため、見学時に確認しましょう。詳しくは交通費・昼食・在宅訓練の補助についての解説もご覧ください。
有効期間と更新手続き|いつまで使える?切れたらどうなる?
有効期間の基本的な考え方
就労移行支援
最長2年間の利用が原則ですが、受給者証の有効期間は1年ごとに区切られます。1年目の受給者証が切れる前に更新手続きをして、2年目の受給者証を発行してもらいます。詳しくは利用期間・延長の完全ガイドをご覧ください。
就労継続支援A型・B型
有効期間は1年間のことが多いですが、自治体によっては3年間の長期設定をしているところもあります。安定して利用できている方には、長期の受給者証が発行されることがあります。
グループホームなど居住系
1年ごとの更新が一般的です。
更新の流れ(STEP1〜STEP4)
期限を切らさないための工夫
- 受給者証を受け取ったらすぐに、スマホのカレンダーに有効期限の2か月前のリマインダーを設定する
- 受給者証の写真を撮ってスマホに保存し、いつでも確認できるようにしておく
- 事業所のスタッフに「更新時期が近づいたら教えてください」と伝えておく
- 相談支援専門員と定期的に連絡を取り合う
【監修者コメント|市原早映/サービス管理者】
「実務上、更新を忘れて期限が切れてしまうケースは年に数件あります。多くの自治体は柔軟に対応してくれますが、中には『期限が切れた期間は遡及できない』という厳格な自治体もあります。スマホのリマインダー設定を強くおすすめします。」
取得から利用開始までの流れ(ダイジェスト)
受給者証を取得し、実際にサービスを利用し始めるまでの流れを6つのステップで説明します。詳しい手続きは受給者証の取り方ガイドで解説しています。
利用したいサービス・事業所を決める
どのサービスを利用したいかを決め、具体的な事業所を探します。多くの事業所は無料で見学・体験利用を受け付けています。見学・体験の完全ガイドも参考にしてください。
市区町村の障害福祉課に相談
お住まいの市区町村の障害福祉課に相談に行きます。自治体によっては、最初に「基幹相談支援センター」や「計画相談支援事業所」に相談するよう案内されることもあります。
相談支援専門員との面談(計画書の作成)
受給者証の申請には「サービス等利用計画」が必要です。相談支援専門員と面談し、あなたの状況・希望するサービス・目標などを話し合います。この面談をもとに計画書が作成されます。
受給者証の申請(必要書類の提出)
計画書ができたら、市区町村に受給者証を申請します。必要書類:申請書・サービス等利用計画・医師の診断書または意見書(手帳がない場合)・障害者手帳のコピー(持っている場合)・マイナンバーが分かるもの。詳しくは受給者証の取り方ガイドをご覧ください。
調査・審査(市区町村による)
申請後、市区町村の担当者が状況を確認するための調査を行うことがあります。日常生活の状況・サービスの必要性などを確認されます。特に難しいことを聞かれるわけではないので、リラックして答えましょう。
受給者証の発行・サービス利用開始
審査が通ると、受給者証が発行されます。申請から1か月程度が一般的です。受給者証が届いたら、事業所に受給者証番号を伝え、正式に利用を開始します。多くの事業所は、受給者証が発行される前でも体験利用として無料でサービスを提供してくれます。
ケーススタディ|具体的な利用イメージ
ケース1:Aさん(26歳・社交不安障害・手帳なし)
26歳男性。大学卒業後に就職したが対人不安が強く1年で退職。その後アルバイトを転々としたが長く続かなかった。精神科を受診したところ社交不安障害と診断されたが、障害者手帳は持っていなかった。
市区町村の障害福祉課に相談。「手帳がなくても診断書があれば受給者証を申請できます」と説明を受けた。相談支援専門員と面談し計画書を作成。医師に診断書を書いてもらい(費用5,000円)、計画書とともに申請。申請から約1か月後に受給者証が発行された。
負担区分は「市町村民税非課税世帯」で自己負担は0円。Webデザインを学べる就労移行支援事業所に週5日通所。1年半後、在宅勤務可能なWeb制作会社に就職しました。
ケース2:Bさん(32歳・うつ病・精神障害者保健福祉手帳あり)
32歳女性。長時間労働によりうつ病を発症し退職。精神障害者保健福祉手帳(2級)を取得済み。体調が不安定でフルタイムで働く自信がなかった。
障害福祉課に行き申請。手帳を持っていたため手続きはスムーズで、約2週間で受給者証が発行された。「まずは週3日から始めて、徐々に日数を増やす」という計画を立てた。
負担区分は「一般1」で月額9,300円の自己負担。最初は週3日から始め、3か月後には週5日通えるようになった。1年後、事務職として一般企業に就職。就労定着支援を受けながら安定して働いています。
ケース3:Cさん(40歳・発達障害・手帳なし・親と同居)
40歳男性。親と同居。何度か就職したがコミュニケーションの問題やミスが多く続かなかった。38歳のときに発達障害(ADHD・ASD)の診断を受けたが手帳は取得していなかった。
障害福祉課に相談。親と同居のため「親の収入も含めて判定されるのでは」と心配したが、「18歳以上の障害者の場合、本人と配偶者の収入のみで判定します」と説明を受け安心した。医師に診断書を書いてもらい(費用8,000円)申請。約1か月後に受給者証が発行された。
負担区分は「市町村民税非課税世帯」(本人の収入で判定)で自己負担は0円。IT特化型の就労移行支援事業所でプログラミングを学び、1年半後に在宅勤務可能なIT企業にプログラマーとして就職しました。在宅勤務の活用については在宅訓練の完全ガイドも参考になります。
【監修者コメント|市原早映/サービス管理者】
「上記の3つのケースは当事業所でも実際によくあるパターンです。共通しているのは、『もっと早く相談すればよかった』という声です。まずは相談してみることが第一歩です。見学や体験利用は無料ですし、合わなければ断ることもできます。」
よくある質問(FAQ)
まとめ:受給者証の3つのポイントと次の一歩
受給者証は、障害福祉サービスを利用するための公的な証明書
就労移行支援、就労継続支援A型・B型、自立訓練など、さまざまなサービスを利用できます。障害者手帳とは別物で、手帳がなくても医師の診断書があれば取得可能です。
ほとんどの方が無料(自己負担0円)で利用できる
世帯収入に応じた負担上限があり、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯は0円。一般世帯でも月額9,300円が上限です。18歳以上の障害者の場合、親の収入は含まれず、本人と配偶者の収入のみで判定されます。
有効期間は1年間(サービスにより異なる)で、更新が必要
期限の2〜3か月前から準備を始めましょう。更新手続きは、相談支援専門員がサポートしてくれます。
次にやるべきこと
市区町村の障害福祉課に相談する
お住まいの市区町村の障害福祉課に行き、受給者証の取得について相談してみましょう。電話での相談も可能です。
医師に相談する
すでに精神科や心療内科に通院している方は、医師に「就労移行支援を利用したい」と伝え、診断書や意見書を書いてもらえるか相談しましょう。
事業所を見学・体験する
気になる事業所があれば、見学や体験利用を申し込みましょう。受給者証がなくても無料で見学・体験できる事業所がほとんどです。見学・体験の完全ガイドも参考にしてください。
受給者証の取り方ガイドを読む
より詳しい手続きの流れや必要書類については、受給者証の取り方|申請から交付まで完全ガイドで詳しく解説しています。
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出典・一次情報
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律) 厚生労働省「障害福祉サービスについて」 厚生労働省「障害者の就労支援について」※各市区町村の障害福祉サービスに関する案内は自治体により内容が異なるため、詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

