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就労移行支援の在宅訓練|始め方・条件・費用を完全解説【全国対応】

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

「通うのが難しいけど、就労移行支援を受けたい」
「近くの事業所に、学びたいスキルを教えてくれるところがない」
「対人関係が苦手で、人と会うこと自体が負担…」

そんな悩みを抱えているあなたに知ってほしいのが、就労移行支援の「在宅訓練」です。

この記事では、在宅訓練の制度、実際の訓練内容、事業所の選び方、成功のコツまで、在宅訓練について知りたいすべての情報を分かりやすくまとめました。さらに、実際に在宅訓練を提供している事業所の支援員の方に直接お話を伺い、現場のリアルな声もお届けします。

目次

まず結論:在宅訓練で何ができるのか

在宅訓練の3つの重要ポイント

  • 自宅でオンライン訓練を受けられる:通所が困難な方も就労移行支援を利用可能
  • 月1回の対面義務あり、ただしスタッフ訪問でもOK:これにより全国の事業所が選択肢に
  • 通所型と同じ公的サービス:利用料の上限あり(0円〜9,300円/月)

利用できる人

  • 障害福祉サービス受給者証を取得できる方(障害者手帳は必須ではない)
  • 通所が困難な理由がある(身体的・精神的・地理的)
  • 自宅に訓練環境がある(PC、ネット回線、集中できる空間)

在宅訓練とは|制度の基本を理解する

在宅訓練が認められた背景と現在の位置づけ

就労移行支援は本来「通所」が原則でしたが、2020年のコロナ禍をきっかけに在宅でのサービス提供が正式に認められました。現在は恒久的な制度として、自治体の判断で在宅訓練の利用が承認されます。

法的根拠は障害者総合支援法に基づく「就労移行支援事業所における在宅でのサービス提供」で、厚生労働省の通知により運用されています。通所型と同じ公的サービスなので、利用料も同じ負担上限が適用されます。

【現場の声 サービス管理責任者 市原早映さん】
「コロナ禍で行政の対応が柔軟になり、在宅訓練が許可されるようになりました。もともと在宅訓練はありましたが、コロナ前は重度の身体障害など通所が本当に困難な方に限られていました。コロナ禍を経て、在宅訓練が出席扱いとして広く認められるようになり、現在も継続しています」

在宅訓練を利用する代表的な4つのパターン

在宅訓練を利用する理由は人それぞれですが、自治体への申請時には「通所が困難な理由」を説明する必要があります。必ずしも以下のパターンに当てはまる必要はありませんが、実際の利用者の多くがこれらの理由で在宅訓練を選んでいます。

①身体的理由

  • 肢体不自由、車椅子利用、慢性疾患による体調不良
  • 通所に片道1時間以上かかる身体的負担
  • 公共交通機関の利用が困難

医師の診断書や意見書があれば、自治体が在宅訓練を承認する根拠となります。身体障害者手帳の有無は問われず、主治医の意見書で判断されるケースが多いです。

②精神的理由(最も多いパターン)

  • 対人不安、社交不安障害、パニック障害
  • うつ症状、適応障害による外出困難
  • 発達障害による感覚過敏(人混み、電車が苦手)

「人と会うのが怖い」「電車に乗れない」という悩みも、医師の診断があれば在宅訓練の理由として認められます。実際に在宅訓練を選ぶ利用者の約60%※がこのパターンです。精神障害者保健福祉手帳がなくても、精神科や心療内科の診断書で申請できます。

※複数の事業所へのヒアリングに基づく推定値です。実際の割合は事業所や地域により異なります。

③地理的理由(専門性を求める方に多い)

  • 居住地域に適切な事業所がない
  • 近くに学びたいスキル(Webデザイン、プログラミング、生成AI等)を教えてくれる事業所がない
  • 公共交通機関がない、本数が少ない
  • 通所に片道2時間以上かかる

特に地方在住の場合、「地元の事業所はビジネスマナー中心だけど、IT特化の専門スキルを学びたい」という理由で、都市部の専門事業所に在宅で通う方が増えています。自治体もこの点を考慮して承認判断を行います。

④その他の理由

  • 育児・介護との両立が必要
  • 感染症リスクへの配慮(免疫抑制剤使用など)
  • 季節性の体調変動がある

【最重要】月1回の対面義務とその革命的な意味

対面支援=事業所に通所、ではありません

制度上、月1回以上の対面支援が義務付けられていますが、「事業所スタッフが利用者の自宅を訪問する」形でもOKです。

これが意味する3つのこと:

1. 北海道在住でも東京の専門事業所に申し込める

月1回スタッフに来てもらえば、残りの日はすべて在宅訓練で完結します。つまり、物理的な距離は問題になりません。ただし、事業所が訪問対応を行っているか、交通費をどう負担するかは事業所ごとに異なります。

【現場の声 サービス管理責任者 市原早映さん】
「事業所まで来られる方は来所で面談、難しい方はスタッフがご自宅や近くまで伺う形で対応しています。基本的に利用者さんの希望に合わせています。全国どこにいても公平に学べる環境を提供していきたいと考えています」

2. 地方在住でも都市部の専門事業所を選べる

「近くの事業所はビジネスマナー中心だけど、Webデザインを学びたい」という場合、東京・大阪の専門特化型事業所に申し込めます。これにより、地方と都市部の教育格差が大幅に縮まります。実際に、青森から東京のプログラミング特化事業所を利用している例もあります。

3. 交通費より専門性を優先できる

通所型なら交通費が毎日かかりますが、在宅訓練なら月1回の訪問交通費のみ。トータルコストで考えると、遠方の専門事業所の方が合理的なケースもあります。事業所によっては、訪問交通費を事業所が全額負担するところもあります。

確認すべき3つのポイント:

  1. 事業所が訪問対応を行っているか:見学時に必ず確認
  2. 交通費の負担方法:全額事業所負担、一部自己負担、実費精算など
  3. 自治体が他地域の事業所利用を認めるか:受給者証申請前に自治体の障害福祉課に相談

【重要な注意点】
在宅訓練や遠方からの利用は、お住まいの地域の障害福祉課の判断が必要で、必ず許可されるとは限りません。事業所は自治体と積極的に連携し、なるべく希望に沿えるよう努力しますが、最終的な判断は自治体が行います。申請前に必ず自治体に相談しましょう。

通所型との違い|比較表

項目通所型在宅訓練型
訓練場所事業所内(毎日通所)自宅(月1回のみ対面)
対人接触毎日、他の利用者・スタッフと対面オンライン中心、月1回のみ訪問 or 通所
通勤負担毎日の通所が必要(交通費も毎日)なし(訪問交通費は月1回のみ)
選べる事業所通える範囲(片道1時間程度)全国(訪問対応可能な事業所)
学習ペース事業所のカリキュラムに従う比較的柔軟(体調に合わせやすい)
最大のメリット対面サポート、仲間との交流、生活リズム確立通所負担ゼロ、専門事業所を選べる、対人ストレス軽減
最大のデメリット通所の負担、対人ストレス自己管理が必要、孤立感のリスク
向いている人生活リズムを整えたい、仲間と学びたい対人不安がある、通所困難、専門スキルを学びたい

※通所と在宅を組み合わせた「ハイブリッド型」も可能(例:週3在宅・週2通所)

在宅訓練を選ぶ本当の理由|あなたに当てはまりますか?

在宅訓練を選ぶ理由は人それぞれですが、実際の利用者データや事業所へのヒアリングによると、以下の3つが多数を占めています※。

※割合は複数の事業所データに基づく推定値です。実際の割合は事業所や地域により異なります。

理由①:対人不安・社交不安がある(約60%)

具体的な悩み:

  • 人と会うこと自体が大きなストレス
  • 集団の中にいると緊張して何も手につかない
  • 雑談が苦手で、休憩時間が苦痛
  • 他人の視線が気になって集中できない

在宅訓練なら、他の利用者と顔を合わせる必要がありません。Zoomの朝会も、ビデオオフ・音声のみの参加を認める事業所が多いです。チャットでのコミュニケーションが中心なので、対面より心理的負担が軽く、「これなら続けられる」と感じる人が多数います。

理由②:近くに学びたいスキルを教える事業所がない(約25%)

地方在住者の切実な問題:

  • 近くの事業所はビジネスマナー・軽作業が中心
  • Webデザイン、プログラミングを教えてくれるところがない
  • IT特化型の事業所は都市部に集中している

在宅訓練なら、物理的な距離は関係ありません。東京のWebデザイン専門事業所、大阪のプログラミング特化事業所など、全国から自分に合った事業所を選べます。実際に、地方から都市部の専門事業所を利用して、リモートワークで就職した事例が増えています。月1回の訪問対応が可能な事業所を選べば、地方在住でも問題ありません。

理由③:通勤による身体的・精神的負担が大きい(約15%)

通所の負担:

  • 電車の満員が耐えられない(感覚過敏)
  • 片道1時間の通所で体力を消耗
  • 天候や体調で通所できない日が多い

在宅訓練なら通勤ゼロ。体調が悪い日でも、自宅なら短時間だけ参加することもできます。エネルギーを訓練そのものに集中できるため、学習効率が上がったという声も多いです。

【現場の声 サービス管理責任者 市原早映さん】
「体調不安がある方は午前だけ、午後だけ、1時間だけなど短時間から始め、少しずつ増やすことができます。無理なく継続できる環境を整えています」

診断チェックリスト|在宅訓練が向いているか確認

在宅訓練 適性診断

✓ 在宅訓練が向いている可能性が高い人

△ 慎重に検討すべき人(ハイブリッド型がおすすめ)

  • ✓が5つ以上:在宅訓練が最適な可能性が高い
  • ✓が3〜4つ:在宅訓練の検討価値あり(体験利用推奨)
  • △が4つ以上:週2〜3日通所を組み合わせた「ハイブリッド型」を検討

在宅訓練の具体的な内容|何をどうやって学ぶのか

使用するツールとプラットフォーム

在宅訓練は、以下のツールを使ってオンラインで実施されます。全て使いこなす必要はなく、事業所が指定するツールを使って訓練を進めます。

①ビデオ会議ツール

  • Zoom、Google Meet、Microsoft Teams
  • 用途:朝会・終礼、個別面談、グループワーク、講義

②チャットツール

  • Slack、Chatwork、LINE WORKS
  • 用途:日常の報連相、質問、雑談、ファイル共有

③バーチャルオフィス

  • メタライフ(metalife)など
  • 用途:通所と在宅の利用者が同じ空間で過ごす感覚、会話も可能

④学習管理・出席管理システム

  • Googleクラスルーム、Moodle、ノウビー(khowbe)など
  • 用途:教材配布、課題提出、進捗管理、出席記録

⑤タスク・プロジェクト管理

  • Trello、Notion、Asana
  • 用途:自己管理、チーム作業、進捗の可視化

⑥ファイル共有

  • Google Drive、Dropbox
  • 用途:資料配布、成果物の提出

これらのツールは全て、在宅勤務でも使われる標準的なもの。つまり、在宅訓練でこれらを使いこなせば、そのまま就職後のリモートワークにも活かせます。

【現場の声 サービス管理責任者 市原早映さん】
「メタライフ上で通所の方と在宅の方が同じ空間にいる感覚で過ごせます。会話も可能です。Slackで情報共有し、ノウビーで出席・終了時刻を記録します。初日は、これらのサービスのアカウント発行や操作説明を行います」

学べる内容(4つのカテゴリ)

①基礎的なビジネススキル

  • ビジネスマナー(メール、報連相、敬語)
  • Office系ソフト(Word、Excel、PowerPoint)
  • タイピング、PC操作、ファイル管理
  • ビジネス文書作成

在宅訓練では、動画教材での学習、オンライン朝会での実践、チャットでの報連相練習を通じて身につけます。対面でなくても、添削フィードバックで十分習得可能です。

②専門スキル(事業所により異なる)

  • Webデザイン:HTML、CSS、Photoshop、Illustrator、Figma
  • プログラミング:Python、JavaScript、PHP、Rubyなど
  • データサイエンス・Webマーケティング:データ分析、SEO、広告運用
  • 生成AI活用:ChatGPT、画像生成AIなどの業務活用
  • 動画編集:Premiere Pro、After Effects
  • Webライティング:SEOライティング、記事作成
  • データ入力・分析:Excel応用、データベース操作

【現場の声 サービス管理責任者 市原早映さん】
「うちは少し特殊で、データサイエンス、Webマーケティング、生成AIなどIT に特化した訓練が中心です。午前・午後にさまざまなゼミを開催しており、在宅の方はそこに参加される方が多いです。一般的な事業所では、WordやExcelの学習、資格試験の学習、データ入力、オンラインのグループワーク、就活期には求人検索・応募書類作成・オンライン模擬面接などがあります」

在宅訓練では、オンライン講座、画面共有での個別指導、課題提出と添削フィードバックで学びます。コーディングやデザインなど、画面共有で教えやすいスキルは、在宅訓練との相性が抜群です。実際、専門スキル特化型の事業所ほど、在宅訓練の実績が豊富です。

③就労準備(キャリア支援)

  • 自己分析、適職診断
  • 履歴書・職務経歴書の作成
  • 面接練習(オンライン形式含む)
  • 企業研究、求人検索
  • 就職後の定着支援

Zoomでの模擬面接、チャットでの相談、オンライン企業説明会への参加など、実践的な準備ができます。特にリモート求人を狙う場合、オンライン面接の練習は必須なので、在宅訓練での経験が直接役立ちます。

④自己管理・健康管理

  • 生活リズムの記録と改善
  • ストレスマネジメント
  • 服薬管理、体調管理
  • セルフモニタリング

日報での記録、週次面談での振り返り、体調チェックシートの活用を通じて、自己管理能力を高めます。在宅勤務で最も重要なのは自己管理なので、この訓練は将来に直結します。

在宅訓練の1日|標準的なスケジュール例

Webデザイナーを目指すAさん(30代、社交不安障害)の1日

Webデザイナーを目指すAさん(30代、社交不安障害)の1日

10:00〜10:15
メタライフで朝礼(ビデオオフ・音声のみ参加OK)、今日のタスク宣言
10:15〜12:00
Webデザイン学習(HTML/CSS実践課題)※50分訓練+10分休憩を繰り返し
12:00〜13:00
昼休憩
13:00〜14:50
オンライングループワーク(3人チームでLP制作)
15:00〜15:30
キャリアアドバイザーと1on1面談(週2回)
15:30〜16:00
ノウビーで訓練内容・体調などを日報として記録
16:00〜16:15
メタライフで終礼、雑談チャンネルで締めの挨拶

【現場の声 サービス管理責任者 市原早映さん】
「1日の流れは、10:00朝礼→訓練(50分+10分休憩)を1時間枠で回し、12:00〜13:00が昼休み。13:00〜14:50も同様に訓練、終礼。その後、閉所時間までは訓練可能です。日報は、体調、開始・終了時刻、どんな訓練をしたか、感想や相談事を自由記述。一言でも可で、不合格扱いはありません」

ポイント:

  • 在宅でも「出社している感覚」を保つため、朝会・終礼は必ず参加
  • 休憩時間は画面から離れ、メリハリをつける
  • グループワークで孤立感を防ぎ、チーム作業を経験
  • 1on1面談で個別サポートを受ける
  • 日報は短くてもOK、無理なく継続することが大切

現場の声|在宅訓練支援員に聞く、リアルな実態

ここからは、実際に在宅訓練を提供している事業所の支援員の方に、在宅訓練の実態について詳しくお話を伺いました。

在宅訓練を希望する方へ、まず伝えたいこと

サービス管理責任者・在籍2年  市原 早映さん

——在宅訓練を検討している方に、まず知ってほしいことは何でしょうか?

市原さん:通所でなくても、オンライン上で通所と同じ支援を受けられます。メタライフというバーチャルオフィスを使えば、ゼミやグループワークにも同じ空間のような雰囲気で参加できるんです。「東京の事業所は遠いから…」と諦めている方に、全国どこにいても公平に学べる環境があることを知ってほしいですね。

ただし、在宅訓練や遠方からの利用は、お住まいの地域の障害福祉課の判断が必要で、必ず許可されるとは限りません。私たちは自治体とも積極的に連携し、なるべく希望に沿えるよう努めますが、申請前に必ず自治体に相談していただきたいです。

「ひとりにしない」伴走体制について

——在宅訓練で心配なのが「孤立感」です。どんなサポート体制がありますか?

市原さん:メタライフ上で通所の方と在宅の方が同じ空間にいる感覚で過ごせます。会話も可能です。毎日ゼミがあり、利用者同士の意見交換や相談も活発ですよ。

個別面談の頻度は人によってさまざまで、毎日の方もいれば、週1の軽い面談だけの方もいます。体調の相談は、決まった面談以外でも随時受けています。Slackでの質問には、営業時間内ならおおむね1時間以内には返信するように心がけています。

——もし連絡が取れなくなった場合は?

市原さん:その日に出席予定の方がメタライフにログインしていない場合は、まず半日ほど様子を見ることがあります。反応がなければSlackで状況をうかがい、それでも連絡がつかない場合は電話をします。

欠席が長く続く・連絡が取れない際は、相談支援や連携機関、主治医等に情報を確認することもあります。ただし、家族に知られたくない方も多いため、本人への連絡をなるべく優先しています。

就活への進み方と成長の見立て

——在宅訓練から就活へ進む基準はどのように判断していますか?

市原さん:ゼミの参加率・発言回数・ゼミ内の成果物を見ることもありますが、個別面談での聞き取りや日々の報告も重視します。

就活へ進む基準は出席率や出席時間で見ることが多いです。やむを得ない理由がない限り、直近1か月で8〜9割以上の出席率、10時から終礼まで遅刻なく参加できるのが理想です。ただ、欠席が多くても理由によっては進めることもあります。

特に在宅勤務での就職を希望する場合は、進捗報告や連絡頻度も大事です。訓練時間内でおおむね1時間以内に返信できるかどうかも見ています。

成功事例:完全在宅から在宅就職へ

——最近の成功事例を教えていただけますか?

市原さん:対人や外出で強いストレスがある方が、完全在宅で訓練を開始しました(月1対面はあり)。出席率はほぼ100%で、連絡や報告もしっかりしていました。

早期に就活を始め、社内DXの長期インターン(半年)に在宅で参加。最初の2か月は無給でしたが、その後の4か月はアルバイト契約として時給が出ました。インターン後に再度選考があり、契約社員として採用されました。

就労後は在宅勤務・実働7時間。2週間に1度の通院があり、通院時間の確保や早退などの配慮を受けています。評価は「真面目で知識が豊富、グループワークでリーダーシップを発揮」とのことでした。在宅訓練の経験が、そのまま在宅勤務のスキルとして評価された好例ですね。

体験利用について

——受給者証の申請前に体験することはできますか?

市原さん:はい、体験利用は無料です。ただし、申請前と申請後で期間が異なります

申請前の体験:多くの事業所では1週間程度など期間制限を設けています。事業所により異なるので確認が必要です。

申請後(受給者証発行待ち)の体験:受給者証が発行されるまでの間は、基本的に制限なく体験利用として訓練を受けられます。この期間も正式利用と変わらない支援を受けられ、就労移行の原則2年の利用期間にはカウントされません。

受給者証の発行期間は自治体により差があり、早いところで数日〜数週間、長いところでは1〜2か月かかることもあります。その間も訓練を続けられるので、待ち時間を無駄にせず、事業所との関係を築くことができます。

受け入れが難しいケース

——どのような場合、受け入れを見送ることがありますか?

市原さん:月1対面がどうしても不可な場合は難しいです。また、自宅にインターネット環境がない場合も在宅は難しいですが、インターネットカフェやコワーキングスペースなど利用環境が確保できれば可能性があります。

PCの使い方が全くわからない場合は、最初は通所でPC操作に慣れるところから始め、ひとりで操作できるようになってから在宅に移行するのが現実的です。

費用について

——在宅訓練にかかる費用を教えてください。

市原さん:就労移行の自己負担額がある方はその費用になりますが、ほとんどの方が無料で利用しています。教材費や訓練に関するツール利用料は基本的に事業所負担です。

通信費(Wi-Fiなど)は利用者負担が基本。月1の対面の交通費は事業所ルールにより異なります。パソコンの貸出は事業所によって条件が異なりますが、有償の貸出はあまり多くない印象です。周辺機器は原則ご自身で用意いただきますが、事業所によっては貸出や購入補助、全額負担がある場合もあります。

最後に、在宅訓練を検討している方へ

——最後に、在宅訓練を検討している方へメッセージをお願いします。

市原さん:最近は在宅勤務の求人も増えています。在宅訓練で働くイメージを持ちながら、安心して就活できるようサポートします。「東京の事業所は遠いから」「対人が苦手だから」と諦めず、まずは体験利用から始めてみてください。

全国どこにいても、あなたに合った専門性の高い訓練を受けられる時代です。一緒に、あなたらしい働き方を実現しましょう。

在宅訓練を始めるまでの流れ|申込み〜開始の5ステップ

在宅訓練を実際に始めるまでの全体像を、5つのステップで解説します。

全体の流れ(目安期間:最短1週間〜最長2ヶ月)

STEP 1:事業所選び(1〜3日)

学びたいスキルで事業所を検索・比較。在宅訓練対応+訪問対応の可否を確認。

STEP 2:体験利用

無料。申請前は1週間程度の制限がある事業所が多い。申請後は受給者証発行まで基本的に制限なし。実際のツールや雰囲気を体験。

STEP 3:自治体への事前相談(1〜3日)

市区町村の障害福祉課で、他地域の事業所利用が可能か確認。医師の意見書があると承認されやすい。

STEP 4:受給者証の申請(数日〜2ヶ月)

必要書類:①申請書(自治体指定様式)②サービス等利用計画案(相談支援専門員が作成)③医師の意見書(通所困難な理由を記載)
発行期間:早い自治体で数日〜数週間、標準で1ヶ月、長い自治体で1〜2ヶ月
※自治体により大きく異なります

STEP 5:訓練開始

受給者証の開始日から正式利用スタート。初日はアカウント発行・操作説明。体験期間は2年の利用期間にカウントされません。

ポイント:受給者証の申請後、発行されるまでの間は基本的に制限なく体験利用として訓練を受けられます。待ち時間を無駄にせず、早めに事業所との関係を築きましょう。

【現場の声 サービス管理責任者 市原早映さん】
「体験利用は無料です。申請前の体験は多くの事業所で1週間程度など期間制限がありますが、受給者証の申請後、発行されるまでの間は基本的に制限なく体験利用として訓練を受けられます。この期間も正式利用と変わらない支援を受けられ、就労移行の原則2年の利用期間にはカウントされません。受給者証の発行期間は自治体により差があり、早いところで数日〜数週間、長いところでは1〜2か月かかることもあります」

必要書類の詳細

書類名入手先ポイント
申請書市区町村の障害福祉課自治体指定の様式。窓口またはWebサイトで入手
サービス等利用計画案相談支援専門員訓練内容・目標・頻度を記載。事業所が相談支援を紹介してくれる場合も
医師の意見書主治医(精神科・心療内科等)通所困難な理由を明記。障害者手帳がなくても診断書で申請可能
その他自治体により異なる印鑑、マイナンバーカード等が必要な場合も。事前確認を

在宅対応事業所の探し方と選び方

STEP1:学びたいスキルで事業所を絞り込む

在宅訓練の最大のメリットは、地域に縛られず、専門性で事業所を選べること。まずは「何を学びたいか」を明確にしましょう。

検索キーワード例:

  • 「就労移行支援 Webデザイン」
  • 「就労移行支援 プログラミング」
  • 「就労移行支援 動画編集」
  • 「就労移行支援 IT特化」
  • 「就労移行支援 データサイエンス」
  • 「就労移行支援 生成AI」

複数の事業所をリストアップし、Webサイトでカリキュラムを確認します。この段階では、まだ地域を絞り込む必要はありません。

STEP2:「在宅訓練対応」「訪問対応」を確認

気になる事業所が見つかったら、以下を確認します。

確認項目1:在宅訓練に対応しているか

  • Webサイトに「在宅訓練対応」「オンライン対応」の記載があるか
  • 在宅利用者の実績はあるか
  • 在宅訓練用のカリキュラムが整っているか

確認項目2:訪問対応は可能か

  • 月1回の対面支援を、スタッフ訪問で対応してくれるか
  • 訪問エリアに制限はあるか(同一都道府県のみ、など)
  • 他県からの利用実績はあるか

確認項目3:交通費の負担は?

  • 訪問にかかる交通費は誰が負担するか
  • 全額事業所負担、一部自己負担、実費精算など
  • 遠方の場合の上限額はあるか

これらは電話やメールで問い合わせましょう。丁寧に説明してくれる事業所は信頼できます。

STEP3:自治体に他地域の事業所利用が可能か相談

気になる事業所が他の都道府県にある場合、受給者証を発行する自治体(あなたの住所地の市区町村)に事前相談します。

相談先:

  • 市区町村の障害福祉課・福祉事務所
  • 基幹相談支援センター
  • 計画相談支援事業所(相談支援専門員)

相談内容:

  • 「他県の事業所を在宅訓練で利用したいが可能か」
  • 「月1回の訪問対応がある場合、受給者証は発行されるか」
  • 「通所困難な理由(対人不安、専門性など)で承認されるか」

自治体によって判断が異なりますが、訪問対応があれば承認される可能性は高いです。医師の意見書があると、さらに承認されやすくなります。

STEP4:オンライン見学・体験利用で最終判断

多くの事業所がオンライン見学・体験利用に対応しています。実際に使うツールを体験し、雰囲気を確認しましょう。

見学・体験で確認すべき5つのポイント

チェック項目A判定(推奨)C判定(要注意)
①在宅利用者の割合30%以上10%以下
②チャット質問への返信時間営業時間内1〜2時間以内翌日以降
③個別面談の頻度週1回以上月1回程度
④リモート就職実績年間5件以上実績なし or 不明
⑤オンライン完結度カリキュラムの90%以上対面前提の内容が多い

※この表を印刷して、見学時に確認しましょう。判定基準はあくまで目安であり、事業所や個別の状況により異なります

見学時に必ず聞くべき質問リスト

訪問対応について:

  1. 月1回の対面支援は、スタッフの自宅訪問で対応可能ですか?
  2. 訪問にかかる交通費はどのように負担しますか?
  3. 他の都道府県からの利用者はいますか?どのエリアの方が多いですか?
  4. 訪問が難しい場合、Zoomでの月次面談で代替は認められますか?(自治体により異なる)

サポート体制について:

  1. 在宅利用者は現在何名いますか?全体の何%程度ですか?
  2. チャットでの質問には、平均どのくらいで返信がありますか?
  3. 画面共有でのリアルタイムサポートは可能ですか?
  4. 孤立感を防ぐための具体的な取り組みはありますか?(朝会、雑談チャンネル、バーチャルオフィスなど)
  5. 連絡が取れなくなった場合の対応手順を教えてください

就職実績について:

  1. 在宅訓練からの就職実績(特にリモート求人)を教えてください
  2. リモートワーク求人専門の転職エージェントとの連携はありますか?
  3. 在宅訓練の修了生で、実際に在宅勤務している方は何名いますか?

環境・費用について:

  1. PCの貸与はありますか?返却条件は?
  2. 必要な通信速度の目安は?
  3. ソフトウェア(Office、Adobe等)のライセンスは提供されますか?
  4. 教材費や資格受験料の自己負担はありますか?
  5. 周辺機器(マイク、ヘッドセットなど)の貸出や補助はありますか?

体験利用について:

  1. 体験利用は無料ですか?回数や期間の制限はありますか?
  2. 体験期間中も正式利用と同じ支援を受けられますか?
  3. 受給者証の申請中でも体験利用は可能ですか?

在宅訓練を成功させる4つの自己管理術

良い事業所を見つけたら、次は日々の訓練を成功させる「自己管理」が重要です。在宅勤務で最も求められるスキルでもあるので、訓練期間中に身につけましょう。

①環境を制する|集中できる物理的空間の作り方

訓練専用スペースの確保

  • 可能な限り、寝室とは別の場所にデスクを設置
  • 難しい場合は、パーテーションやカーテンで区切りを作る
  • 「ここは仕事場」と脳に認識させることが重要

寝室とワークスペースを分けることで、オンオフの切り替えがしやすくなります。ワンルームでも、カーテンやパーテーションで視覚的に区切るだけで効果があります。デスクに向かうことで「訓練モード」に入る習慣をつけましょう。

時間の区切り(ポモドーロ・テクニック)

  • 25分集中+5分休憩を1セットとする
  • スマホアプリでタイマーを設定
  • 休憩時間は必ず席を立つ

在宅だと時間の感覚が曖昧になりがち。タイマーで区切ることで、メリハリがつき、集中力も持続します。多くの事業所では50分訓練+10分休憩のサイクルを採用しており、このリズムに慣れることが大切です。おすすめアプリ:Focus To-Do、Forest、Pomofocus(Web版)

誘惑の排除

  • ゲーム、漫画、テレビなど気が散るものを視界から排除
  • スマホは別の部屋に置くか、通知をオフ
  • SNSは休憩時間のみ

特にスマホは最大の誘惑。訓練中は別の部屋に置くか、引き出しにしまうのが効果的です。どうしても手元に置く必要がある場合は、「集中モード」や「おやすみモード」で通知をオフにしましょう。

②時間を制する|タスク管理とスケジュールの立て方

タスク可視化ツールの活用

  • Trello、Notion、GoogleカレンダーでTO DOリストを作成
  • 「今日やること」「今週やること」を明確に分ける
  • 完了したタスクにチェックを入れる達成感を味わう

頭の中だけで管理すると、やり忘れや不安が増えます。ツールで可視化することで、「今やるべきこと」が明確になり、余計な不安が減ります。初心者にはGoogleカレンダーが使いやすいです。

朝会での目標宣言

  • オンライン朝会で「今日の目標」を宣言
  • 夕方の終礼で「達成度」を報告
  • 他の利用者への宣言が、適度なプレッシャーになる

一人だとサボりがち。朝会で宣言することで、「やらなきゃ」という意識が生まれます。達成できなくても責められることはありません。むしろ「できなかった理由」を振り返ることで、改善点が見えてきます。

週末の振り返り習慣

  • 金曜の終礼後に「うまくいったこと」「改善点」を書き出す
  • 翌週の目標を立てる
  • 小さな成功体験を積み重ねる

振り返りなしに前に進むと、同じ失敗を繰り返します。5分でいいので、週末に振り返る習慣をつけましょう。「今週はSlackでの質問が上手くできた」など、小さな成功も書き出すことがポイントです。

③コミュニケーションを制する|テキストでの報・連・相

結論ファーストの文章

  • ❌「相談があります」
  • ✅「○○について、AかBかで迷っています。私はAが良いと思いますが、どうでしょうか?」

テキストでは、結論や論点を最初に書くことが鉄則。相手が忙しくても、すぐに理解できる文章を心がけます。これは就職後のビジネスチャットでも必須スキルです。

質問の具体化

  • ❌「わからないです」
  • ✅「HTML課題の3番目で、背景色が反映されません。CSSファイルは添付の通りです。どこが間違っていますか?」

状況を具体的に説明することで、相手も答えやすくなります。スクリーンショットを添付すると、さらに分かりやすいです。

感謝の具体的表現

  • ❌「ありがとうございます」
  • ✅「○○のアドバイスのおかげで、エラーが解決しました。ありがとうございます!」

「何に対して感謝しているか」を具体的に書くことで、相手も嬉しくなります。良好な関係を築くコツです。

④孤独を制する|意識的な雑談と相談の習慣

雑談チャンネルの活用

  • 業務連絡だけでなく、「今日のお昼は○○でした」「この本面白かったです」など、何気ない投稿を
  • 他の人の投稿に絵文字でリアクション
  • 完璧な文章でなくてOK

在宅訓練の最大の敵は孤立感。雑談チャンネルでの何気ないやり取りが、仲間意識を育みます。最初は見ているだけでもOK。慣れてきたら、少しずつ投稿してみましょう。バーチャルオフィスを導入している事業所なら、通所の方とも自然に会話できます。

小さな相談の習慣

  • 週1回の面談を待たず、「ちょっとした疑問」もすぐにチャットで相談
  • 遠慮は禁物
  • 「こんなこと聞いていいのかな」と思うことこそ、聞くべき

分からないことを溜め込むと、どんどん訓練が嫌になります。小さな質問を気軽にできる関係を、早めに作りましょう。良い事業所は「質問大歓迎」の雰囲気があります。

同期との繋がり

  • 同じ時期に訓練を始めた仲間との定期的な情報交換会
  • オンライン飲み会、ゲーム会などの企画
  • 就職活動の情報共有

同期は貴重な存在。お互いの悩みを共有し、励まし合えます。事業所が企画してくれることもありますが、自分たちで企画するのもおすすめです。

在宅訓練から在宅就職への橋渡し

在宅勤務スキルを棚卸しする

在宅訓練で身につけたスキルは、就職活動で大きな武器になります。履歴書・職務経歴書にしっかり書きましょう。

記載例:

【ITスキル】

  • Zoom、Slack、Microsoft Teams、Google Workspaceを日常的に使用
  • メタライフ(バーチャルオフィス)での協働作業経験
  • Trello、Notionでのタスク管理経験
  • ノウビーでの勤怠・進捗管理経験
  • Git/GitHubでのバージョン管理(プログラミング学習者の場合)

【自己管理能力】

  • 在宅環境で6ヶ月間、自律的にスケジュール管理を行い、月20日の訓練を完遂(出席率90%以上)
  • ポモドーロ・テクニックを活用した集中力管理
  • 週次での振り返りと改善サイクルの実践
  • 日報での訓練内容・体調記録を継続

【リモートコミュニケーション】

  • テキストベースでの報告・連絡・相談の実践(Slack、Chatwork)
  • オンライン会議でのファシリテーション経験
  • 画面共有を使った説明・プレゼンテーション
  • 営業時間内1時間以内の返信対応を維持

【チームワーク】

  • リモート環境でのグループプロジェクト(○名チーム)を複数回経験
  • オンラインでの役割分担、進捗管理、成果物の統合
  • バーチャルオフィスでの日常的な協働作業

面接でのアピール方法(想定問答)

Q:リモートワークの経験はありますか?

A:「就労移行支援で6ヶ月間、在宅訓練を受けました。Zoom、Slack、Google Workspaceなどのツールを毎日使い、バーチャルオフィスでチームでのWeb制作プロジェクトも経験しました。特に、テキストでの報連相では、結論を先に書くことや、状況を具体的に説明することを意識してきました。」

Q:在宅勤務で自己管理はできますか?

A:「在宅訓練で毎日決まった時間に学習を継続できました。Googleカレンダーでタスクを管理し、週次で振り返りを行う習慣が身についています。また、ポモドーロ・テクニックで集中力を維持する方法も実践しています。出席率は90%以上を維持し、日報での進捗報告も欠かしませんでした。」

Q:孤独感は感じませんでしたか?

A:「最初は少し感じましたが、朝会・終礼で毎日顔を合わせることや、雑談チャンネルでの何気ないやり取りで、孤立感は解消されました。バーチャルオフィスで通所の方とも同じ空間で過ごせたので、リモートでも仲間意識を持って訓練できました。むしろ、チャットでのコミュニケーションの方が、自分には合っていると感じました。」

Q:体調管理はどうしていましたか?

A:「毎日の日報で体調を記録し、週次面談で支援員と振り返りを行っていました。体調が優れない日は午前だけ、短時間だけなど、柔軟に調整しながらも、できる限り毎日訓練に参加するよう心がけました。これにより、体調の波と付き合いながら継続する力が身につきました。」

段階的な職場適応戦略

在宅訓練の経験があるからといって、いきなり完全リモートで就職する必要はありません。段階的な移行が成功の鍵です。

訓練後半(修了2〜3ヶ月前)

  • 可能なら週1〜2日は事業所に通所し、対面でのコミュニケーションにも慣れる
  • ハイブリッド型に移行して、両方の良さを経験

就職直後(1〜3ヶ月)

  • 出社メインで職場の文化や人間関係を把握
  • リモートワークは週1〜2日から開始
  • 上司・同僚との信頼関係を構築

定着期(3〜6ヶ月)

  • 業務に慣れたら、上司と相談してリモート日数を段階的に増加
  • 週3在宅・週2出社などの柔軟な働き方

安定期(6ヶ月以降)

  • 完全リモート、またはほぼリモート(月1出社など)
  • パフォーマンスを維持しながら、希望する働き方を実現

重要なのは、「在宅訓練の経験があるから完全リモートで」ではなく、段階的な移行で信頼関係を構築すること。焦らず、着実にステップアップしましょう。

費用の詳細|在宅訓練でかかるお金

費用項目一般的な金額補助・支援注意点
サービス利用料0円〜9,300円/月国の制度で上限あり世帯の収入区分で決定。低所得・非課税世帯は0円。ほとんどの方が無料
PC・タブレット無料貸与が多い事業所負担返却条件、故障時の対応を確認。有償貸出は少ない
ソフトウェア無料提供が多い事業所アカウントOffice、Adobe等のライセンス。基本的に事業所負担
通信費(Wi-Fi等)3,000円〜7,000円/月基本的に自己負担安定した回線速度(推奨:下り30Mbps以上)
教材・資格受験料事業所により異なる一部補助あり基本的に事業所負担。自己負担分の上限額を確認
スタッフ訪問交通費事業所により異なる全額 or 一部事業所負担遠方の場合の対応を事前確認
周辺機器(マイク等)事業所により異なる貸出・補助・全額負担など原則自己負担だが、事業所により支援あり

※サービス利用料の負担上限は世帯の収入区分で決定。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯は0円、一般は月額9,300円が上限です

コスト比較:通所型 vs 在宅訓練型(月額概算)

通所型の場合

  • サービス利用料:0〜9,300円
  • 交通費:10,000〜20,000円(毎日通所)
  • 昼食代:15,000〜20,000円
  • 合計:25,000〜49,300円

在宅訓練型の場合

  • サービス利用料:0〜9,300円(多くの方は0円)
  • 通信費:5,000円
  • 訪問交通費:0〜5,000円(事業所負担の場合は0円)
  • 合計:5,000〜19,300円

在宅訓練の方が、トータルコストは安くなる傾向があります。特に交通費がかからない点が大きいです。

よくある質問(FAQ)

Q1:在宅訓練は誰でも利用できますか?

A:自治体・事業所の承認が必要です。通所困難な理由(身体的制約、対人不安、感染症リスク、地理的制約など)と、在宅で訓練を継続できる環境(通信環境、集中できる空間など)が求められます。医師の意見書があると承認されやすくなります。

Q2:障害者手帳がないと在宅訓練は利用できませんか?

A:手帳がなくても利用可能です。医師の意見書などに基づき、市区町村がサービスの必要性を判断します。精神科や心療内科の診断書でも申請できます。

Q3:北海道在住でも東京の事業所に申し込めますか?

A:月1回の対面支援を「スタッフ訪問」で対応できる事業所なら可能です。ただし、訪問交通費の負担方法や、自治体が他地域の事業所利用を認めるかは事前確認が必要です。実際に、遠方から都市部の専門事業所を利用している例もあります。

Q4:月1回の対面は必ず事業所に行かないといけませんか?

A:いいえ。事業所スタッフが自宅訪問する形でもOKです。訪問対応の可否は事業所により異なるため、必ず確認しましょう。一部の自治体では、Zoomでの月次面談で代替を認めるケースもあります。

Q5:通所と組み合わせることはできますか?

A:はい、「ハイブリッド型」が一般的です。例えば、週3日在宅・週2日通所など、個人の状況に応じて柔軟に調整可能です。体調や季節に合わせて比率を変えることもできます。

Q6:孤立感が不安ですが、どんな対策がありますか?

A:優良な事業所では、オンライン朝会、雑談チャンネル、グループワーク、週次の個別面談など、孤立を防ぐ仕組みが整っています。バーチャルオフィス(メタライフなど)を導入している事業所なら、通所の方とも同じ空間で過ごせます。利用者同士のオンライン交流会を企画する事業所もあります。見学時に「孤立感対策」を確認しましょう。

Q7:在宅訓練でも就職できますか?

A:はい、多くの修了生が就職しています。特にリモートワーク求人では、在宅訓練の経験が大きなアピールポイントになります。ただし、就職実績は事業所によって大きく異なるため、見学時に確認が必須です。

Q8:PCやネット環境がないのですが?

A:多くの事業所がPCの無料貸与を行っています。ネット回線がない場合は、モバイルWi-Fiのレンタル補助を行う事業所もあります。また、インターネットカフェやコワーキングスペースを利用する方法もあります。見学時に相談しましょう。

Q9:体験利用は無料ですか?回数制限はありますか?

A:体験利用は無料です。申請前の体験は1週間程度など期間制限がある事業所が多いですが、受給者証の申請後、発行されるまでの間は基本的に制限なく体験利用として正式利用と変わらない支援を受けられます。この体験期間は就労移行の原則2年の利用期間にはカウントされません。

Q10:PCの使い方が全くわからないのですが…

A:PCの使い方が全くわからない場合は、最初は通所でPC操作に慣れるところから始め、ひとりで操作できるようになってから在宅に移行するのが現実的です。事業所に相談してみましょう。

トラブル事例と対策|失敗から学ぶ成功の秘訣

ケース1:サボり癖がついて、訓練に参加しなくなった

原因:

  • 明確な目標設定がない
  • 外部からのプレッシャーがない
  • 生活リズムが崩れた

対策:

  • 週単位・月単位の具体的な目標設定(「HTMLを習得」ではなく「ポートフォリオサイトを3つ完成させる」など)
  • 朝会で毎日の目標を宣言する仕組みを活用
  • 進捗を可視化するツール(Trelloなど)を使う
  • 同期との定期的な情報交換会で刺激を受ける
  • ノウビーなどの出席管理システムで、自分の出席記録を意識する

最も重要なのは、「なぜ在宅訓練を選んだのか」「どんな働き方を実現したいのか」を常に意識すること。目標を忘れそうになったら、デスクに付箋で貼っておくのも効果的です。

ケース2:質問しづらくて、わからないことが積み重なった

原因:

  • 「迷惑をかけたくない」という遠慮
  • 質問の仕方がわからない
  • 対面じゃないと質問しづらいと感じる

対策:

  • 「小さな質問歓迎」の文化がある事業所を選ぶ(見学時に「チャット質問への返信時間」を確認)
  • 質問テンプレートを活用:「○○の△△で困っています。□□を試しましたがうまくいきません。どうすれば良いですか?」
  • 定期面談以外にも気軽に相談できる窓口があるか確認
  • 「1日1質問」を目標にして、質問する習慣をつける
  • 画面共有でのリアルタイムサポートが可能か確認

質問することは、学ぶ意欲の表れです。遠慮せず、どんどん質問しましょう。良い事業所は、質問を歓迎します。

ケース3:家族の理解が得られず、集中できない

原因:

  • 家族が「在宅=暇」と誤解
  • 訓練時間の理解不足
  • 生活音が気になる

対策:

  • 家族への事前説明(訓練スケジュール、重要性を共有)
  • 可能であればパーテーションで物理的に区切る
  • 「訓練中」の表示を明確に(ドアに札をかける、など)
  • 事業所からの説明資料を家族にも共有
  • Zoom中は「会議中」の表示を見せる
  • メタライフやバーチャルオフィスの画面を見せて、「職場と同じ環境」であることを理解してもらう

家族の協力は不可欠。事前にしっかり説明し、理解を得ましょう。事業所によっては、家族向けの説明会を開催するところもあります。

ケース4:技術的なトラブルで訓練が中断される

原因:

  • 通信環境の不安定
  • 機器の故障
  • ソフトウェアの問題

対策:

  • 事前の環境チェック(回線速度テスト、使用機器のテスト)
  • バックアップ手段の確保(モバイル回線、スマホからの参加)
  • 事業所の技術サポート体制を確認
  • トラブル時の連絡手順を明確化(Slackが使えない時は電話、など)
  • 初日のアカウント発行・操作説明をしっかり受ける

技術トラブルは誰にでも起こります。大切なのは、トラブル時の対応を事前に決めておくこと。慌てず対処できるようにしましょう。

まとめ:在宅訓練は、働き方の選択肢を広げる制度です

在宅訓練は、単に「通わなくていい」という選択肢ではありません。

在宅訓練の3つの価値:

  1. 対人不安や通所困難があっても、就労支援を受けられる
  2. 地方在住でも、都市部の専門事業所を選べる
  3. リモートワーカーとして活躍するための実践的訓練の場

この記事で紹介した内容を実践すれば、あなたは在宅訓練のメリットを最大限に活かし、希望する働き方を実現できるはずです。

成功への4つのアドバイス:

  1. 完璧を求めすぎない:最初は慣れないことだらけ。小さな改善を積み重ねることが大切
  2. 積極的にコミュニケーションを取る:遠慮は禁物。わからないことは即座に質問
  3. 将来の目標を明確に:「なぜ在宅訓練を選ぶのか」「どんな働き方を実現したいのか」を常に意識
  4. 柔軟性を保つ:在宅だけにこだわらず、通所との組み合わせ(ハイブリッド型)も検討

次のステップ

在宅訓練について理解が深まったら、次は受給者証の取得手続きを進めましょう。専門家と安心して申請できる完全ガイドをご用意しています。

受給者証の取り方ガイドを見る

出典・一次情報

監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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