就労移行支援で簿記・経理は学べる?学習内容・向き不向き・就職先まで完全解説

この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。

簿記・経理に興味を持ったあなた。でも、こんな不安はありませんか?

  • 「就労移行支援で本当に簿記・経理が学べるの?」
  • 「数字が苦手だけど大丈夫かな…」
  • 「簿記3級だけで就職できるの?」

こうした不安を抱えるのは、あなただけではありません。読み終える頃には、「自分にもできそう」「まずはここから始めよう」と、具体的な行動イメージが湧いているはずです。

目次

就労移行支援で簿記・経理は本当に学べる?

結論:学べます。ただし事業所選びが重要です。

簿記・経理を学べる事業所は確かに存在します。ただし、すべての事業所で対応しているわけではありません。専門カリキュラムを持つ事業所は限られています。

学べる事業所の特徴

1

簿記検定対策のカリキュラムがある

日商簿記3級・2級の合格を目指した体系的なプログラムが用意されています。「何から始めればいいか分からない」という方でも、カリキュラムに沿って進めば自然と理解が深まります。
2

経理実務を教えられるスタッフがいる

簿記の知識だけでなく、実際の仕訳入力や会計ソフトの操作を教えてもらえます。見学時に「経理の実務経験があるスタッフはいますか?」と確認しましょう。
3

会計ソフトの実習環境がある

弥生会計やfreeeなど、実際の職場で使われるソフトに触れる機会があります。繰り返し練習することで操作に慣れていきます。

【重要】「事務訓練あり」と書いてあっても、簿記・経理に特化しているとは限りません。見学時に必ず「簿記の資格取得をサポートしてもらえますか?」と確認してください。


未経験・初心者でも大丈夫?

大丈夫です。就労移行支援を利用する方の多くが、簿記未経験からのスタートです。

  • 「簿記って何?」から始められる:貸借対照表、損益計算書といった基本用語から丁寧に学べます
  • 計算は電卓とExcelがやってくれる:簿記で必要なのは四則演算程度。電卓の使い方から教えてもらえます
  • あなたのペースに合わせた個別学習:分からないところは何度でも復習できます。試験日も自分のタイミングで決められます

独学で挫折した経験がある方へ
「テキストを買ったけど続かなかった」「仕訳の意味が分からなくて諦めた」という経験は珍しくありません。事業所では「分からないところをすぐ質問できる」「モチベーションが下がったときに励ましてもらえる」サポートがあります。一人で頑張る必要はありません。


簿記・経理でよくある不安に答えます

Q 数字が苦手でも大丈夫?
A 大丈夫です。簿記で使う計算は足し算・引き算・掛け算・割り算だけ。電卓を使えば計算ミスも減らせます。数学的なセンスより、コツコツ続ける力のほうが大切です。
Q 電卓やExcelが使えないとダメ?
A 最初から使える必要はありません。電卓の基本操作やExcelの入力方法は、事業所で一から教えてもらえます。毎日少しずつ触っているうちに自然と慣れていきます。
Q 簿記3級だけで就職できる?
A 就職できます。障害者雇用枠では、簿記3級を持っていれば「基礎知識がある」と評価されます。3級でも経理補助や一般事務の求人に応募できます。まずは3級を取得し、働きながら2級を目指す方も多いです。
Q 独学と就労移行支援で学ぶ違いは?
A サポートの有無が最大の違いです。独学だと「分からないところで止まる」「モチベーションが続かない」という壁にぶつかりがちですが、事業所では質問できる環境があり、学習計画も一緒に立ててもらえます。
Q 経理専任として採用されるの?
A 最初から経理専任は稀です。障害者雇用枠では、一般事務+経理補助からスタートするケースが多いです。経験を積んで、徐々に経理業務の割合を増やしていくのが現実的なキャリアパスです。見学時に就職実績を確認しましょう。
Q 年齢制限はある?ブランクがあっても大丈夫?
A 就労移行支援は18〜65歳未満が対象です。30代・40代から簿記を始める方も珍しくありません。資格取得という明確な目標があれば、ブランクを埋めやすいです。
Q 実務経験がないと意味がない?
A 資格だけでも意味があります。障害者雇用枠では「学ぶ意欲がある」「基礎知識がある」ことが評価されます。事業所によっては企業実習の機会もあり、就職前に実務を経験できる場合もあります。

自分の障害特性でも受け入れてもらえる?

簿記・経理の学習は、多くの障害特性と相性が良い分野です。

障害特性 相性 理由・配慮例
ASD(自閉スペクトラム症) ルールが明確で、一度覚えれば応用が効く。静かな環境で集中できる事業所を選ぶと◎
ADHD 短時間で区切って学習すると集中しやすい。ケアレスミス対策として見直しの習慣化を支援してもらえる
うつ病・双極性障害 体調に合わせてペース調整可能。調子の良い日に集中して進められる
不安障害 自分のペースで学べる。試験も準備が整ってから受験できる
知的障害 簿記3級は抽象的な概念が多いため、より具体的な事務作業から始めるほうが合う場合も
身体障害 デスクワーク中心のため、身体的負担が少ない。在宅訓練対応の事業所も

上記はあくまで一般的な傾向です。同じ診断名でも特性は人それぞれ。「自分には向いていない」と決めつけず、まずは見学で相談してみてください。


簿記・経理に向いている人・向いていない人

向いている可能性が高い人

  • コツコツ続けることが苦にならない(毎日少しずつ学習を積み重ねられる)
  • ルールや手順を覚えるのが得意
  • 細かい作業や確認作業が嫌いではない
  • デスクワーク中心の仕事がしたい
  • 資格を取って自信をつけたい
  • 静かな環境で集中したい

「向いている可能性が高い人」に3つ以上当てはまれば、簿記・経理が向いている可能性が高いです。

慎重に検討すべき人

  • 長時間座っていることが苦手:ただし、立ち作業を挟むなどの工夫で対応可能な場合も
  • 同じ作業の繰り返しがストレスになる:ただし、スタッフと相談しながら進められる

これらに当てはまっても、サポート次第で学習可能です。見学時に相談してみてください。


取得できる資格

就労移行支援で目指せる簿記・経理関連の資格を紹介します。

資格名 難易度 学習期間目安 受験料 就職での評価
日商簿記3級 ★☆☆(入門) 3〜6ヶ月 2,850円 経理の基礎知識があることを証明。事務職応募の際にアピールできる
日商簿記2級 ★★☆(中級) 6〜12ヶ月 4,720円 経理職として即戦力に近い評価。求人の幅が広がる
全経簿記3級 ★☆☆(入門) 2〜4ヶ月 2,000円 日商より難易度が低め。まずは合格体験を積みたい方に
全経簿記2級 ★★☆(中級) 4〜8ヶ月 2,200円 日商3級と同等程度の評価
MOS Excel ★☆☆(入門) 1〜3ヶ月 10,780円 経理業務で必須のExcelスキルを証明。簿記と合わせて取得すると◎

学習期間は週5日通所で順調に進んだ場合の目安です。受験料は2024年度時点の金額です。

まずは日商簿記3級がおすすめです。簿記の基礎が一通り身につき、「経理の基本が分かる人」として評価されます。3級を取得してから2級にチャレンジするのが王道ルートです。

見学時に確認したいポイント:教材は事業所で用意してもらえるか、受験料の補助はあるか、過去の合格実績、ネット試験(CBT)に対応しているか。


具体的に何を、どう学ぶのか?

学習内容の例(段階別)

基礎段階(1〜3ヶ月目)

簿記の基本概念(資産・負債・純資産・収益・費用)、仕訳の基本ルール、勘定科目の理解、電卓の使い方

応用段階(4〜6ヶ月目)

試算表・精算表の作成、決算整理仕訳、日商簿記3級の過去問演習、会計ソフト(弥生会計など)の基本操作

実践段階(7〜12ヶ月目)

日商簿記3級の受験・合格、日商簿記2級の学習開始(希望者)、企業実習での経理補助体験、履歴書・職務経歴書の作成

上記は順調に進んだ場合の一例です。週3〜4日の場合はもう少し時間がかかります。体調の波や障害特性によってペースは異なります。焦る必要はありません。

1週間のスケジュール例(通所型・週5日)

時間帯
午前 簿記学習 簿記学習 会計ソフト実習 簿記学習 過去問演習
午後 ビジネスマナー 個別面談 簿記学習 グループワーク 振り返り

事業所によってカリキュラムは異なります。見学時に確認してください。

在宅訓練を併用する場合

在宅訓練に対応している事業所も増えています。在宅日の過ごし方(例):9:00 体調チェック報告、10:00〜12:00 テキスト学習・問題演習、13:00〜15:00 会計ソフトの練習、15:30 学習報告・質問。在宅訓練の条件・ルールは事業所によって異なります。


どのくらいの期間で、何ができるようになる?

期間 到達レベル できること
1〜3ヶ月 入門 仕訳の基本ルールが分かる、勘定科目を覚え始める
4〜6ヶ月 基礎 日商簿記3級の範囲を一通り学習、過去問に挑戦
7〜9ヶ月 実践 日商簿記3級合格レベル、会計ソフトの基本操作ができる
10〜12ヶ月 応用 日商簿記2級の学習開始、経理補助業務ができるレベル

上記は週5日通所で順調に進んだ場合の一例です。体調の波によって時間がかかることは珍しくありません。大切なのは「続けること」です。


就職先はどんなところ?

就職先の例

  • 一般企業の経理部門:仕訳入力、伝票整理、経費精算などを担当。障害者雇用枠では未経験OKの求人も多くあります
  • 会計事務所・税理士事務所:データ入力や書類整理からスタート。補助的な業務から始められる事務所もあります
  • 一般事務(経理業務を含む):電話対応・書類作成に加えて経費処理や請求書発行を担当。中小企業では事務全般を担当することが多いです
  • データ入力・事務センター:決まったフォーマットへの入力業務が中心。簿記の知識があると数字の意味が分かるため正確な入力ができます

期待値の調整:障害者雇用枠での就職の場合、最初から「経理専任」として採用されるケースは現状では稀です。一般事務+経理補助業務からスタートし、経験を積みながら専門業務の割合を増やしていくのが現実的です。「経理だけをやりたい」という方は、見学時に就職実績を確認してください。

給与の目安

一般的に月給16万〜22万円程度の募集が多いです(地域・企業規模・経験により異なります)。簿記2級を取得すると、より条件の良い求人に応募できる可能性が広がります。


簿記・経理が学べる事業所の選び方

チェックリスト(20点満点)

見学の際に以下のポイントを確認してください。15点以上なら環境として◎、10〜14点なら基本的な環境は整っている、9点以下なら他の事業所も検討を。

  • 日商簿記3級・2級の対策カリキュラムがある(2点)
  • 会計ソフト(弥生会計、freeeなど)の実習環境がある(2点)
  • 簿記検定の合格実績がある(2点)
  • 経理関連の就職実績がある(2点)
  • 企業実習の機会がある(2点)
  • 簿記・経理の実務経験があるスタッフがいる(2点)
  • 個別の学習計画を立ててもらえる(2点)
  • 体調不良時の振替・在宅訓練に対応している(2点)
  • 静かに集中できる学習スペースがある(1点)
  • 電卓や教材が事業所で用意されている(1点)
  • 通いやすい立地・交通費補助がある(1点)
  • 見学・体験利用ができる(1点)

見学で聞くべき質問リスト

カリキュラムについて:日商簿記3級・2級の対策カリキュラムはありますか?簿記検定の合格実績を教えてください。会計ソフトの実習はできますか?どのソフトを使っていますか?経理関連の企業実習の機会はありますか?

サポートについて:簿記や経理の実務経験があるスタッフはいますか?個別の学習計画を立ててもらえますか?体調が悪い日の振替はできますか?在宅訓練に対応していますか?

就職について:経理・会計関連の就職実績はありますか?就職後の定着支援はどのような内容ですか?

IT・事務系全般の事業所選びにはITに強い事業所の選び方ガイドもあわせてご覧ください。


利用にかかる費用

利用料金

利用料は前年の世帯収入(本人と配偶者)に応じて決まります。

生活保護受給世帯・住民税非課税世帯

0円

世帯収入約600万円以下

月額上限 9,300円

世帯収入約600万円超

月額上限 37,200円

金額の基準は制度改正で変わる場合があります。詳しくは市区町村の障害福祉窓口でご確認ください。多くの利用者さんが0円で利用しています。詳しくは就労移行支援の料金・自己負担もご覧ください。

その他にかかる費用

  • 交通費:補助がある事業所も多いです。見学時に「交通費の補助はありますか?」と確認しましょう。詳しくは交通費・昼食費の補助をご確認ください
  • 教材費:基本的に事業所が用意してくれます。一部自己負担の場合もあるので事前に確認を
  • 資格受験料:日商簿記3級は2,850円、2級は4,720円(2024年度)。自己負担が一般的ですが、受験料を補助してくれる事業所もあります

利用条件と利用開始までの流れ

利用条件

  • 障害者手帳をお持ちの方、または医師の診断書がある方
  • 18歳以上65歳未満(原則)
  • 一般企業への就職を希望する方

利用開始までの流れ

1

事業所を探す(1〜2週間)

WAM NET、ハローワークで「簿記」「経理」で検索。気になる事業所を3箇所以上リストアップ。

2

見学・体験(2〜4週間)

3箇所以上を見学するのがおすすめ。体験利用で学習の雰囲気を確認。

3

市区町村で申請(2〜4週間)

障害福祉窓口で受給者証を申請。認定調査を受ける。

4

利用開始

事業所と契約。個別支援計画を作成し、学習スタート。


あなたのタイプ別:次の一歩ガイド

タイプA:簿記に全く触れたことがない人

今週中にどれか1つ:

  • 「簿記とは何か」を解説した動画やサイトを30分だけ見てみる
  • 「就労移行支援 簿記 +(お住まいの地域)」で検索してみる
  • 「自分が簿記を学びたい理由」「不安なこと」を3つずつ紙に書き出す

タイプB:独学で挫折した・ブランクがある人

今週中にどれか1つ:

  • 以前使っていたテキストを開いて、10分だけ眺めてみる(完璧に思い出さなくてOK)
  • 「なぜ挫折したか」「今回は何が違うか」を紙に書き出す
  • 就労移行支援の見学を1件予約する

タイプC:ある程度学んだことがあり、就職につなげたい人

今週中にどれか1つ:

  • 自分のスキルレベルを整理する(3級は取得済み?2級の勉強はどこまで?)
  • 経理・会計関連の求人を5件チェックし、求められる資格・スキルを確認する
  • 会計ソフト(弥生会計、freee)の無料体験版を触ってみる

全部やる必要はありません。この中から1つだけ選んで、今週中にやってみてください。1つ動くだけで、次に何をすればいいかが見えてきます。


簿記・経理訓練のある事業所インタビュー

簿記・経理の訓練を行っている事業所に、実際の取り組みについてお聞きしました。

エナベル市川

千葉県市川市


よくある質問(FAQ)

Q 2年間で就職できなかったらどうなりますか?
A 就労継続支援(A型・B型)への移行や、条件付きでの延長が選択肢になります。市区町村の窓口で相談してください。利用期間の詳細は利用期間・延長ガイドをご覧ください。
Q 通所中に給料や工賃はもらえますか?
A 就労移行支援では原則として工賃は発生しません。生活費は障害年金や貯蓄、家族のサポートで賄う方が多いです。
Q 週5日通えないのですが、利用できますか?
A 多くの事業所で週3〜4日からの通所が可能です。体調に合わせて徐々に増やすこともできます。
Q 障害者手帳がなくても利用できますか?
A 医師の診断書があれば利用できる場合があります。市区町村の障害福祉窓口で確認してください。詳しくは受給者証とはをご覧ください。
Q 途中で辞めることはできますか?
A いつでも退所できます。体調や状況の変化に合わせて、他の事業所への移行も可能です。
Q 簿記以外のスキルも学べますか?
A 事業所によってはビジネスマナー、Excel、コミュニケーション訓練なども並行して学べます。簿記だけに集中したい場合は、見学時に確認してください。

まとめ

この記事のポイント

  • 就労移行支援で簿記・経理は学べる。ただし専門カリキュラムを持つ事業所は限られている
  • 未経験からでも大丈夫。数字が苦手でも、電卓とExcelがあれば問題ない
  • 独学との違いは「サポートがある」こと。分からないところをすぐ質問できる
  • 事業所選びが最重要。必ず複数の事業所を見学・比較すること
  • 最初から経理専任は稀。一般事務+経理補助からスタートが現実的

今週中にやること(どれか1つでOK)

  • 「就労移行支援 簿記 +(お住まいの地域)」で検索する
  • 気になる事業所に見学の問い合わせをする
  • 簿記の入門動画やサイトを30分だけ見てみる

この中から、「今の自分でもできそう」と思ったものを1つだけ選んで、今週中にやってみてください。


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監修者 市原早映の写真

この記事の監修者

市原 早映(いちはら さえ)

サービス管理責任者介護職員初任者研修修了

2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

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