この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
「就労移行支援を使ってみたいけど、どの事業所を選べばいいか分からない」
「ネットで調べても、事業所がたくさんありすぎて違いが分からない」
「見学に行っても、何を見て・何を聞けばいいのか不安」
と悩んでいる方も多いと思います。
実は就労移行支援事業所には大きく分けて4つのタイプがあり、それぞれ支援内容や雰囲気が全く異なります。
この記事では、事業所選びで失敗しないための判断基準と、見学・体験時に使えるチェックリストを、初めての方にも分かりやすく解説します。記事の後半では、見学当日にそのまま使えるチェックリストも掲載しています。読み終わったあとには、どのタイプの事業所が自分に合いそうかが見え、見学時に確認すべきポイントが具体的に分かるようになっています。
特に重要なのは、就職率などの数字だけで選ばず、自分のペースや目標に合った支援内容かどうかを見極めることです。
この記事で分かること
- 就労移行支援事業所が4つのタイプに分かれている理由と、それぞれの特徴
- 自分がどのタイプの事業所に向いているかを判断する方法
- 失敗しないための4つの判断基準(支援内容・スタッフ・通いやすさ・実績)
- 見学・体験時に使える具体的なチェックリスト
- 見学後の比較方法と、決めきれないときの考え方
- よくある失敗パターンとその回避方法
まず結論:就労移行支援事業所選びで大切な3つのポイント
就労移行支援事業所は全国に約3,000か所以上あり(年々増減しています)、支援内容や雰囲気は事業所ごとに大きく異なります。選び方を間違えると、通うのが苦痛になったり、就職につながらなかったりする可能性があります。
まず押さえておきたい3つのポイントをお伝えします。
ポイント1:事業所は大きく4つのタイプに分けられる
全ての事業所が同じ支援をしているわけではありません。手厚いサポート重視型・就職重視型・スキル習得重視型・ペース調整重視型の4タイプがあり、それぞれ利用者層も訓練内容も異なります。自分の状況や目標に合ったタイプを選ぶことが、成功への第一歩です。
ポイント2:就職率の数字だけで選ぶと失敗しやすい
「就職率90%」という数字は魅力的に見えますが、その中身を確認することが重要です。短時間のアルバイトも含まれているか、定着率はどうか、自分の希望する職種での実績はあるかなど、数字の背景を見極める必要があります。
ポイント3:必ず複数の事業所を見学・体験してから決める
少なくとも2〜3か所は見学することをおすすめします。比較することで、各事業所の特徴や自分との相性が見えてきます。多くの事業所で無料の体験利用が用意されており、この期間は就労移行支援の正式な利用期間には含まれないケースが一般的です(ただし、扱いは事業所や自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です)。
就労移行支援事業所の「選び方」が大事な理由
「主治医や相談員に紹介された事業所があるから、そこでいいかな」 「家から一番近い事業所に決めよう」 「とりあえず最初に見学した事業所で申し込んでしまおう」
こうした決め方をしてしまう方は少なくありません。しかし、就労移行支援は原則として最大2年間利用できる貴重な制度です(体調や状況によっては、市区町村の判断で延長される場合もあります)。自分に合わない事業所を選んでしまうと、通所自体が苦痛になり、就職どころではなくなってしまう可能性があります。
就労移行支援はどの事業所でも同じではない
就労移行支援は国の制度ですが、支援の具体的な内容や方法は事業所ごとに大きく異なります。これは、各事業所が独自のカリキュラムやプログラムを組み立てているためです。
違いが出やすいポイントは以下の通りです。
- 訓練内容:ビジネスマナー中心か、PCスキルや資格取得に力を入れているか、軽作業中心か
- 支援のペース:週5日フルタイムが基本か、短時間・週数日からスタートできるか
- スタッフの専門性:精神保健福祉士や臨床心理士など専門職がいるか、企業出身者が多いか
- 企業との連携:企業実習の機会が豊富か、求人開拓に力を入れているか
- 利用者の特性:精神障害のある方が多いか、発達障害のある方が多いか、身体障害のある方が多いか
- 在宅訓練の有無:完全在宅やハイブリッド型に対応しているか
同じ「就労移行支援」という名前でも、実際の中身は事業所によってまったく違うのです。
「合う/合わない」が就職にも影響する
事業所選びは、単に「通いやすい場所」や「雰囲気が良さそう」だけで決めるものではありません。自分の目標や特性に合った事業所を選べるかどうかが、就職の実現と職場定着に直結します。
たとえば、IT企業への就職を目指している方が、ビジネスマナーや軽作業中心の事業所を選んでしまうと、必要なスキルが身につかず、結果的に就職活動で苦労することになります。逆に、まだ生活リズムが整っていない方が、週5日フルタイム前提の事業所を選ぶと、通所自体が続かなくなる可能性があります。
自分に合った事業所を選ぶことで得られるもの:
- 無理なく通い続けられる環境
- 自分の目標に必要なスキルや経験
- 特性を理解してくれるスタッフのサポート
- 似た目標を持つ仲間との出会い
- 希望する職種への就職実績とノウハウ
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
実務上、「紹介された事業所にそのまま通い始めたが、途中で通えなくなった」というケースを多く見てきました。事業所を変えること自体は可能ですが、時間のロスになります。最初に2〜3か所を比較して、納得して選んだ方のほうが、結果的に通所率も就職率も高い傾向にあります。
就労移行支援事業所は大きく4つのタイプに分けられる
全国に約3,000か所以上ある就労移行支援事業所ですが、支援の方針や内容から、大きく4つのタイプに分類できます。どのタイプが良い・悪いということではなく、自分の状況や目標に合ったタイプを選ぶことが重要です。
ここでは、各タイプの特徴・向いている人・注意点を具体的に説明します。
タイプ1|手厚いサポート重視型(安心・リハビリ寄り)
このタイプは、体調やメンタル面が不安定な方、まずは生活リズムを整えるところから始めたい方に向いています。医療・福祉の専門職(精神保健福祉士・臨床心理士・作業療法士など)が多く在籍し、個別面談やカウンセリングに時間をかける傾向があります。
主な特徴:
- 利用者の定員が少なめ(10〜20名程度)で、一人ひとりに時間をかける
- 個別支援計画を丁寧に作成し、体調やペースに合わせた柔軟な対応
- ストレスマネジメント・認知行動療法・SST(社会生活技能訓練)などのプログラムが充実
- 短時間(1〜2時間)や週2〜3日からのスタートも可能
- 就職よりも、まず「安定して通える」ことを最優先する雰囲気
向いている人:
- 精神障害や発達障害で、対人不安や感覚過敏が強い方(こうした悩みを抱える方は少なくありません)
- うつ病や適応障害からの回復期で、まずはリハビリから始めたい方
- 過去に就労移行を利用したが、ペースが合わず続かなかった方
- 就職までに時間がかかってもいいので、じっくり準備したい方
注意点:
- 就職実習や企業見学の機会は少なめの傾向
- PCスキルや資格取得のプログラムは基礎的な内容が中心
- 就職までに1年半〜2年かかることもある
- 「早く就職したい」という方には物足りなく感じる可能性
タイプ2|就職・企業連携重視型(実習・就職率重視)
このタイプは、できるだけ早く就職したい方、企業実習を通じて実践的な経験を積みたい方に向いています。企業との強いネットワークを持ち、実習機会が豊富で、就職活動のサポートに力を入れています。
主な特徴:
- 企業実習(インターン)の機会が多い(月1回以上など)
- 企業の人事担当者を招いた説明会や、職場見学の機会が定期的にある
- 履歴書・職務経歴書の添削、模擬面接などの就活支援が充実
- ビジネスマナー・報連相・電話対応など、実務に直結するプログラムが中心
- 週4〜5日、1日5〜6時間の通所を早い段階で目指す
向いている人:
- 生活リズムがある程度整っており、週4〜5日通える体力がある方
- 早期就職を目指したい方(利用開始から6〜12か月での就職を想定)
- 実際の職場を体験しながら、自分に合う仕事を見つけたい方
- 企業側の視点や期待を知りたい方
注意点:
- 通所ペースや就職時期について、一定のプレッシャーを感じる可能性
- 体調が不安定な時期には、プログラムについていくのが大変なこともある
- 個別面談の時間は、サポート重視型より短めの傾向
- 実習先が必ずしも希望職種とは限らない
タイプ3|スキル・資格取得重視型(PC・IT・専門スキル)
このタイプは、IT企業や事務職への就職を目指し、具体的なスキルを身につけたい方に向いています。PCスキル・プログラミング・Webデザイン・データ入力など、専門的なカリキュラムが充実しています。
主な特徴:
- PC(Word・Excel・PowerPoint)の実務レベルまでの訓練
- プログラミング(Python・Java・PHPなど)やWebデザイン(HTML・CSS・Photoshop)の講座
- MOS(Microsoft Office Specialist)や日商簿記などの資格取得サポート
- eラーニングやオンライン教材を使った個別学習が中心
- IT企業や事務職での就職実績が豊富
向いている人:
- IT企業・Web業界・事務職を目指している方
- 自宅でのリモートワーク(在宅勤務)を希望している方
- 手に職をつけて、長く働ける仕事を見つけたい方
- 自分のペースでコツコツ学習できる方
注意点:
- PC操作の基礎(マウス・キーボード入力)ができることが前提の場合が多い
- 自主学習の時間が長く、モチベーション管理が必要
- 対人スキルやビジネスマナーのプログラムは少なめの傾向
- 資格取得や作品制作に時間がかかるため、就職まで1年以上かかることもある
タイプ4|生活リズム・ペース調整重視型(短時間・在宅対応)
このタイプは、まずは生活リズムを整えることから始めたい方、通所自体が難しい方に向いています。短時間通所や在宅訓練に対応しており、無理のないペースで進められる柔軟性が特徴です。
主な特徴:
- 週1〜2日、1日1〜2時間からのスタートが可能
- 在宅訓練やオンライン支援に対応している
- 生活リズムの記録・振り返りを重視したプログラム
- 体調管理・服薬管理・ストレス対処法などのセルフケアプログラム
- 個別のペースを尊重し、段階的に通所日数・時間を増やしていく
向いている人:
- 生活リズムが不規則で、朝起きるのが難しい方
- 対人不安が強く、毎日通所するのが負担な方(よくあるお悩みです)
- 通所に片道1時間以上かかる、または公共交通機関の利用が難しい方
- まずは「続けられる」ことを優先したい方
注意点:
- スキル習得や企業実習の機会は少なめ
- 就職までに時間がかかる(1年半〜2年)
- 在宅訓練の場合、自己管理能力が求められる
- 通所日数が少ないと、他の利用者との交流機会も限られる
自分はどのタイプに近い?かんたん自己チェック
以下のチェックリストで、自分がどのタイプの事業所に向いているかを確認してみましょう。最も多くチェックがついたタイプが、あなたに合っている可能性が高いです。
自分はどのタイプに近い?かんたん自己チェック
最も多くチェックがついたタイプが、あなたに合っている可能性が高いです
・1つのタイプに3個以上チェック → そのタイプが最有力候補
・複数のタイプに同数チェック → 両方のタイプの事業所を見学して比較する
・どのタイプも2個以下 → まずは相談支援専門員や主治医に相談し、自分の状況を整理する
4つのタイプ早見比較表
| タイプ | 主な特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| タイプ1 手厚いサポート重視型 |
少人数制・専門職配置・個別面談重視・体調優先 | 対人不安がある/体調が不安定/じっくり準備したい | 就職まで時間がかかる傾向/スキル訓練は基礎中心 |
| タイプ2 就職・企業連携重視型 |
企業実習が多い・就活支援充実・実務訓練中心 | 早期就職を目指す/企業体験したい/ある程度通える体力がある | 通所ペースへのプレッシャー/体調不安定時は負担大 |
| タイプ3 スキル・資格取得重視型 |
PC・IT特化・資格取得サポート・個別学習中心 | IT・事務職希望/リモートワーク希望/コツコツ学習できる | PC基礎が前提/自己管理が必要/対人訓練は少なめ |
| タイプ4 ペース調整重視型 |
短時間・在宅対応・柔軟なペース・生活リズム重視 | 生活リズム不安定/通所困難/まず続けることを優先 | スキル訓練少なめ/就職まで時間がかかる |
💡 ここまでのまとめ
就労移行支援事業所は、支援内容や雰囲気が大きく異なります。自分の状況や目標に合ったタイプを選ぶことが、通所を続け、就職につなげるための第一歩です。チェックリストで気になったタイプの事業所を、まずは見学候補にリストアップしましょう。
失敗しないための4つの判断基準【タイプ別の見方】
事業所のタイプが分かったら、次は具体的に何を基準に比較・判断すればよいかを見ていきます。ここでは、失敗しないために押さえるべき4つの判断基準を、タイプ別の視点も交えながら解説します。
基準1|支援内容・カリキュラムの中身
事業所のWebサイトやパンフレットには「就労に必要なスキルを学びます」と書かれていても、その具体的な内容は事業所によって全く異なります。自分の目標や希望職種に必要なプログラムがあるかを確認しましょう。
確認すべきポイント:
- 1日のスケジュール例:何時から何時までか、どんなプログラムがあるか
- プログラムの頻度と時間:週に何回どのプログラムがあるか
- 個別カリキュラムの有無:一人ひとりに合わせた訓練計画を立ててくれるか
- 企業実習の機会:年に何回くらいあるか、実習先の業種は多様か
- 在宅訓練の対応:完全在宅は可能か、週何日まで在宅OKか
タイプ別の見方:
- サポート重視型:個別面談の頻度(週1回以上が理想)、メンタルケアプログラムの充実度
- 就職重視型:企業実習の実施回数、求人開拓の実績、企業説明会の頻度
- スキル重視型:使用するソフトウェアやツール、講師の専門性、資格取得実績
- ペース調整型:短時間通所の柔軟性、在宅訓練の環境(ツール・サポート体制)
見学時に聞くべき質問:
- 「自分の希望職種(例:IT事務)に向けたプログラムはありますか?」
- 「個別支援計画は、どのくらいの頻度で見直しますか?」
- 「体調が悪い日の対応はどうなりますか?」
基準2|スタッフの専門性と雰囲気
どんなに良いプログラムがあっても、スタッフとの相性が悪ければ通所は続きません。スタッフの専門性・対応の丁寧さ・相談のしやすさを、見学時に必ず確認しましょう。
確認すべきポイント:
- スタッフの職種構成:精神保健福祉士・臨床心理士・作業療法士・就労支援員などの有資格者がいるか
- スタッフ一人当たりの利用者数:手厚いサポートができる体制か(目安:スタッフ1人に対し利用者5〜10人程度)
- 質問への対応:見学時の質問に対し、具体的に・分かりやすく答えてくれるか
- 雰囲気:話しかけやすいか、利用者との距離感は適切か
タイプ別の見方:
- サポート重視型:専門職(PSW・臨床心理士)が常駐しているか、カウンセリング経験は豊富か
- 就職重視型:企業出身者や人事経験者がいるか、求人開拓の実績はあるか
- スキル重視型:IT業界出身の講師がいるか、実務経験は何年か
- ペース調整型:体調不良時の柔軟な対応実績があるか、オンライン面談の対応は丁寧か
見学時に聞くべき質問:
- 「スタッフの専門職の構成を教えてください」
- 「個別面談は週に何回くらいありますか?」
- 「急な体調不良や欠席の連絡は、どのように受け付けていますか?」
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
見学時のスタッフの対応は、その事業所の支援姿勢を映す鏡です。質問に対してあいまいな返答が多い、利用者への声かけが少ない、説明が一方的、といった事業所は要注意です。逆に、「分からないことは調べてから回答します」と正直に答えてくれる事業所は、誠実な支援が期待できます。
基準3|通いやすさ(場所・時間・体調配慮)
どんなに良い事業所でも、通い続けられなければ意味がありません。通所にかかる時間・交通手段・体調に合わせた配慮があるかを確認しましょう。
確認すべきポイント:
- 通所時間:自宅から片道何分か(目安:片道1時間以内が理想)
- 交通手段:電車・バスの本数、乗り換えの回数、駅からの距離
- 開所時間:何時から何時まで開いているか、遅刻・早退への対応
- 通所日数・時間の柔軟性:週何日・1日何時間から始められるか、段階的に増やせるか
- 在宅訓練の対応:体調不良時に在宅で参加できるプログラムはあるか
タイプ別の見方:
- サポート重視型:短時間・週数日からのスタート実績、体調に合わせた柔軟な対応
- 就職重視型:通所日数・時間の目安(週4〜5日・1日5〜6時間を想定しているか)
- スキル重視型:オンライン教材の有無、自宅学習との組み合わせ
- ペース調整型:完全在宅やハイブリッド型の実績、オンラインツールの充実度
見学時に聞くべき質問:
- 「体調が悪い日は、どのように対応してもらえますか?」
- 「週2〜3日からスタートして、徐々に増やすことは可能ですか?」
- 「在宅訓練は、どの程度のプログラムに対応していますか?」
基準4|実績とその中身(就職率だけに惑わされない)
事業所のWebサイトに「就職率90%」と書かれていても、その中身を確認することが重要です。数字だけでなく、どんな職種・雇用形態・定着率なのかを見極めましょう。
確認すべきポイント:
- 就職者数の実数:年間何名が就職しているか(母数が少ないと率が高く見える)
- 職種・業種の内訳:自分の希望職種での実績はあるか
- 雇用形態:正社員・契約社員・パート・アルバイトの割合
- 定着率:就職後6か月・1年時点で何%が働き続けているか
- 就職までの期間:平均的な利用期間は何か月か
タイプ別の見方:
- サポート重視型:定着率の高さ(目安として、就職後1年時点で7割前後の方が働き続けていると、定着支援にも力を入れていると考えやすい)、短時間勤務からの実績
- 就職重視型:就職までの期間の短さ(6〜12か月)、企業実習からの採用実績
- スキル重視型:IT職種・事務職での就職実績、リモートワーク求人の実績
- ペース調整型:短時間・週3〜4日勤務での就職実績、在宅勤務の実績
見学時に聞くべき質問:
- 「昨年度の就職者数と、その職種の内訳を教えてください」
- 「正社員とパート・アルバイトの割合はどのくらいですか?」
- 「就職後6か月・1年の定着率を教えてください」
- 「私の希望職種(例:IT事務)での就職実績はありますか?」
4つの判断基準チェック表
失敗しない4つの判断基準(見学時チェック用)
見学・体験前に決めておきたい5つのこと
事業所を絞り込んで見学に行く前に、自分のゴールや優先順位を整理しておくことが大切です。これをしておくことで、見学時に確認すべきポイントが明確になり、事業所選びで迷いにくくなります。
自分のゴールと優先順位を整理する
まずは、以下の項目について自分の考えを書き出してみましょう。完璧に決める必要はありませんが、「だいたいこんな感じ」というイメージを持っておくと、見学時の質問がしやすくなります。
整理すべき項目:
①就職の時期
- いつまでに就職したいか(例:1年以内、2年以内、期限は決めていない)
- 焦らず時間をかけたいか、早く就職したいか
②希望職種・業種
- どんな仕事をしたいか(例:事務職、IT系、軽作業、接客など)
- 在宅勤務を希望するか、通勤型を希望するか
- まだ決まっていない場合は「いろいろ体験しながら決めたい」でOK
③雇用形態・勤務時間
- 正社員・契約社員・パート・アルバイトのどれを目指すか
- フルタイムか、短時間勤務か
- 週5日か、週3〜4日か
④体調・ペース
- 現在の体調で、週に何日・1日何時間くらい通えそうか
- 通所が難しい日は、在宅訓練を利用したいか
- 生活リズムを整えることから始めたいか
⑤譲れない条件
- 通所時間は片道○分以内
- 在宅訓練に対応していること
- PCスキルを本格的に学べること
- 個別面談が週1回以上あること、など
これらの項目をメモに書き出し、見学時に持っていくと便利です。
見学する事業所をどう絞り込むか(何か所行く?)
結論から言うと、少なくとも2〜3か所は見学することをおすすめします。比較することで、各事業所の特徴や自分との相性が見えてくるからです。
絞り込みのステップ:
STEP1:4つのタイプから、自分に合いそうなタイプを1〜2つ選ぶ
- 先ほどのチェックリストを参考に、自分に向いているタイプを選ぶ
- 迷ったら、両方のタイプの事業所を見学候補に入れる
STEP2:インターネットで事業所を検索する
- 「就労移行支援 ○○市」「就労移行支援 IT 在宅」などで検索
- 各事業所のWebサイトで、プログラム内容・在宅対応・実績などを確認
STEP3:候補を3〜5か所にリストアップする
- 通所時間・プログラム内容・雰囲気などを総合的に見て、候補を絞る
- 相談支援専門員や主治医に相談し、おすすめを聞くのも有効
STEP4:見学予約を入れる
- 電話またはWebフォームで見学予約を申し込む
- 「見学だけでもOKか」「体験利用も可能か」を確認
見学の順番:
- 最も興味のある事業所は2番目に見学する(1番目だと比較対象がないため判断しづらい)
- 3か所目以降は、1〜2か所と比較しながら判断していく
見学前チェックリスト 印刷用
見学前の準備チェックリスト
当日使える!就労移行支援の見学チェックリスト
いよいよ見学当日です。ここでは、見学時に確認すべきポイントを、4つのカテゴリーに分けてチェックリスト形式でまとめました。スマホで見ながら、または印刷して持っていくと便利です。
① 事業所の雰囲気・利用者の様子
事業所の雰囲気は、長く通い続けられるかどうかに直結します。パンフレットやWebサイトでは分からない「空気感」を、実際に足を運んで確認しましょう。
確認ポイント:
- 清潔感:訓練室・トイレ・共用スペースは清潔に保たれているか
- 明るさ・静けさ:照明は適切か、雑音が気にならないか
- 利用者の様子:集中して取り組んでいるか、リラックスしているか
- 利用者同士の交流:休憩時間に自然な会話があるか、孤立している人はいないか
- スタッフと利用者の距離感:声をかけやすい雰囲気か、スタッフは利用者の様子に気を配っているか
- 座席の配置:個別ブースか、オープンスペースか、自分に合っているか
- 感覚過敏への配慮:パーテーション・耳栓・イヤーマフなどの貸し出しはあるか
自分の感覚も大切に:
- 「ここなら通えそう」と思えるか
- 緊張しすぎず、リラックスできるか
- 利用者やスタッフの雰囲気が自分に合っているか
② スタッフの説明・質問への対応
スタッフの対応から、その事業所の支援姿勢が見えてきます。質問に対して誠実に答えてくれるか、分かりやすく説明してくれるかを確認しましょう。
確認ポイント:
- 説明の分かりやすさ:専門用語を使いすぎず、初めての人にも分かる言葉で説明してくれるか
- 質問への対応:質問を遮らず、最後まで聞いてくれるか
- 答えられない質問への対応:「分からない」ときは正直に言い、後で調べて回答してくれるか
- 押し付けがましさはないか:「今日決めてください」などの圧力をかけてこないか
- 利用者への声かけ:見学中に、利用者に自然に声をかけているか
- 個別の相談への対応:「あなたの場合は〜」と、個別の状況に応じた提案をしてくれるか
見学時に必ず聞くべき質問:
- 「私の場合、週何日・1日何時間くらいから始めることになりますか?」
- 「体調が悪い日の対応はどうなりますか?」
- 「希望職種(例:IT事務)に向けたプログラムはありますか?」
- 「個別面談はどのくらいの頻度でありますか?」
- 「就職実績(職種・雇用形態)を具体的に教えてください」
③ プログラム・カリキュラムの具体的な中身
パンフレットやWebサイトには書かれていない、具体的なプログラム内容を確認します。「どんなことを、どのくらいの時間やるのか」をイメージできるまで聞きましょう。
確認ポイント:
- 1日のスケジュール:開始時刻・終了時刻・休憩時間・プログラムの内容
- 週間スケジュール:毎日同じプログラムか、曜日ごとに違うか
- 個別カリキュラムの作成方法:誰が・いつ・どのように作るか
- プログラムの選択肢:必須のプログラムと、選択できるプログラムの割合
- 企業実習の頻度と期間:年に何回・1回何日間くらいあるか
- 在宅訓練の内容:どのプログラムがオンラインで受けられるか
- 使用するツール・教材:PC貸与はあるか、ソフトウェアは何を使うか
見学時に確認すること:
- 実際に使っている教材やツールを見せてもらう
- 1日のスケジュール表をもらう(あれば週間・月間も)
- 「私の場合、どんなプログラムから始めることになりますか?」と聞く
④ 通いやすさ・配慮・在宅訓練の有無
無理なく通い続けられるかどうかは、事業所選びの重要なポイントです。体調に合わせた配慮があるか、在宅訓練に対応しているかを確認しましょう。
確認ポイント:
- 通所時間:自宅から片道何分か(実際に通う時間帯の交通手段で確認)
- 開所時間:何時から何時まで開いているか
- 遅刻・早退への対応:柔軟に対応してくれるか、ペナルティはないか
- 欠席時の連絡方法:電話・メール・LINEなど、連絡しやすい方法があるか
- 体調不良時の配慮:休憩室があるか、短時間参加は可能か
- 在宅訓練の対応範囲:完全在宅は可能か、週何日まで在宅OKか
- 段階的な通所計画:週2〜3日から始めて、徐々に増やせるか
見学時に確認すること:
- 「体調が悪いとき、どのように対応してもらえますか?」
- 「在宅訓練は、月1回の訪問で対応可能ですか?」
- 「週3日から始めて、様子を見ながら増やすことはできますか?」
見学当日チェックリスト 印刷用
見学当日チェックリスト
【1】事業所の雰囲気・利用者の様子
【2】スタッフの説明・質問への対応
【3】プログラム・カリキュラムの中身
【4】通いやすさ・配慮・柔軟性
【5】実績の確認
📌 監修者コメント(市原早映/サービス管理責任者)
見学時には、「この質問をしたら迷惑かな」と遠慮する方が多いですが、遠慮は不要です。事業所側は、利用者が納得して選んでくれることを望んでいます。気になることは全て聞いて、クリアにしてから決めることが、後悔しない選択につながります。メモを取りながら聞くのもおすすめです。
見学後にやるべき振り返りと事業所の比較方法
見学・体験が終わったら、忘れないうちに振り返りと比較を行いましょう。ここで丁寧に整理することが、後悔しない選択につながります。
見学直後にメモしておきたいこと
見学の印象は、時間が経つとあいまいになります。見学直後(できれば帰り道や帰宅後すぐ)に、以下の項目をメモしておきましょう。
見学直後メモテンプレート
このように修正することで、より実用的で使いやすくなります。
家族・支援者と相談するときのポイント
事業所選びは、家族や支援者(相談支援専門員・主治医など)と相談しながら進めると、より良い判断ができます。以下のポイントを意識して話し合いましょう。
相談時に共有すべき情報:
- 見学した事業所の概要(場所・タイプ・プログラム内容)
- 自分が感じた印象(良かった点・気になった点)
- 通所の現実性(通所時間・交通手段・体調面での不安)
- 就職までの見通し(どのくらいの期間を想定しているか)
家族に理解してもらいたいこと:
- 就労移行支援は「訓練」であり、すぐに就職するわけではないこと
- 自分のペースで進めることが、結果的に就職・定着につながること
- 体調や特性に合った事業所を選ぶことの重要性
支援者(相談支援専門員・主治医)に相談すべきこと:
- 見学した事業所の評判や実績
- 自分の体調やペースで通えそうか
- 他におすすめの事業所はあるか
迷ったときの決め方と「合わなかった場合」の考え方
複数の事業所を見学して、どこにするか迷うのは自然なことです。以下の基準で考えてみましょう。
迷ったときの最終判断基準:
①「ここなら通い続けられそう」と思える事業所を選ぶ
- 就職実績やプログラム内容も大切ですが、最も重要なのは「続けられるか」です
- 無理なく通える事業所を選びましょう
②体験利用で実際に試してから決める
- 多くの事業所で無料の体験利用が用意されています(扱いは事業所や自治体によって異なるため、事前に確認しておくと安心です)
- 数日〜1週間体験してから決めることで、失敗のリスクが減ります
③「100点満点の事業所」を求めすぎない
- 全ての条件を満たす事業所を見つけるのは難しいです
- 「譲れない条件」が満たされていれば、他の点は妥協することも検討しましょう
通ってみて合わなかった場合の対応:
就労移行支援は、途中で事業所を変更することも可能です。「合わない」と感じたら、我慢せずに相談しましょう。
STEP1:まずはスタッフに相談する
- 何が合わないのか(プログラム・ペース・雰囲気など)を伝える
- 個別支援計画の見直しや、プログラムの調整で改善できる場合もある
STEP2:改善が難しい場合は、相談支援専門員に相談
- 事業所変更の手続きについて相談
- 他の候補事業所を紹介してもらう
STEP3:新しい事業所で再スタート
- 受給者証の支給期間内であれば、事業所の変更は可能です
- 変更にあたっては、相談支援専門員や市区町村の障害福祉担当課に相談しながら手続きを進めていきます
- 事業所を変えることで、これまでの経験を活かしながら、自分に合った環境を選び直すことができます。「自分には何が合うか・合わないか」が分かったことも、貴重な経験です
事業所比較表テンプレート 印刷用
事業所比較表(見学後の整理用)
| 比較項目 | 候補A | 候補B | 候補C |
|---|---|---|---|
| 事業所名 | |||
| 見学日 | |||
| タイプ | |||
| 通所時間 | |||
| 第一印象 (5段階評価) |
|||
| プログラム内容 (自分の目標との一致度) |
|||
| スタッフの対応 | |||
| 柔軟性 (体調配慮・ペース) |
|||
| 就職実績 | |||
| 気になった点 | |||
| 総合評価 (100点満点) |
よくある失敗パターンと回避するコツ(Q&A形式)
実際に就労移行支援を利用した方の中には、「事業所選びで失敗した」と感じる方もいます。ここでは、よくある失敗パターンと、それを回避するためのコツをQ&A形式でまとめました。
Q1:家から近いという理由だけで選んでしまい、プログラム内容が合わなかった
A:通いやすさは重要ですが、それだけで決めるのは危険です。プログラム内容が自分の目標に合っているか、希望職種での就職実績があるかを必ず確認しましょう。少し遠くても、自分に合ったプログラムがある事業所を選ぶ方が、長い目で見ると良い結果につながります。
Q2:「就職率90%」という数字に惹かれて選んだが、実際は短時間アルバイトが多かった
A:就職率の数字だけでなく、その中身(職種・雇用形態・定着率)を確認することが重要です。見学時に「正社員とパート・アルバイトの割合」「希望職種での実績」「就職後6か月・1年の定着率」を具体的に聞きましょう。数字のトリックに惑わされないことが大切です。
Q3:見学時の印象が良かったが、通い始めたらスタッフの対応が冷たく感じた
A:見学時は、事業所側も良い印象を与えようと努力します。本当の雰囲気を知るには、体験利用で数日間通ってみることが有効です。また、見学時に「利用者の声」を聞かせてもらうのも参考になります。可能であれば、見学とは別の日に再度訪問し、普段の様子を見せてもらいましょう。
Q4:週5日通所が前提だと言われ、体調的に無理だと分かった
A:見学時に、自分の体調や通えるペース(週何日・1日何時間)を正直に伝えることが重要です。「週2〜3日から始めて、徐々に増やせますか?」と確認しましょう。柔軟に対応してくれる事業所を選ぶことで、無理なく続けられます。
Q5:希望職種(IT系)を学びたかったが、基礎的なPC操作しか教えてもらえなかった
A:「PCスキルを学べます」という説明だけでは不十分です。「具体的にどのソフトウェアを使いますか?」「プログラミング言語は何を学べますか?」「どのレベルまで到達できますか?」と、具体的に聞きましょう。可能であれば、使用している教材やカリキュラムを見せてもらうと安心です。
Q6:見学で良いと思ったが、実際に通ってみたら利用者同士の雰囲気が合わなかった
A:利用者同士の相性は、見学だけでは分かりにくい部分です。体験利用で実際に訓練に参加し、グループワークや休憩時間の様子を体験してから決めることをおすすめします。また、少人数制の事業所を選ぶと、利用者同士の距離感が近すぎると感じる場合もあるので、自分に合った規模の事業所を選びましょう。
Q7:相談支援専門員に勧められた事業所にそのまま決めたが、自分には合わなかった
A:相談支援専門員の意見は参考になりますが、最終的な判断は自分で行うことが大切です。複数の候補を挙げてもらい、必ず自分で見学・体験してから決めましょう。「勧められたから」という理由だけで決めると、後悔する可能性があります。
Q8:初めて見学した事業所で即決してしまい、後で他にもっと良い事業所があると知った
A:最低でも2〜3か所は見学してから決めることをおすすめします。比較することで、各事業所の特徴や自分との相性が見えてきます。「早く決めなければ」と焦る必要はありません。じっくり比較して、納得してから決めましょう。
💡 失敗を減らすための3つのコツ
- 数字や第一印象だけで決めない
- 必ず複数の事業所を比較する
- 体験利用で実際に通ってから決める
この記事を読んだあとにできる次の一歩
この記事で、就労移行支援事業所の選び方と見学のポイントが分かったと思います。最後に、具体的な次のステップをお伝えします。
STEP1:自分のゴールと優先順位を整理する(今すぐできる)
この記事の「見学・体験前に決めておきたい5つのこと」のセクションを参考に、自分の希望や条件をメモに書き出しましょう。これをするだけで、事業所選びの軸がはっきりします。
STEP2:候補事業所をリストアップする(1〜2日)
- 「就労移行支援 ○○市」「就労移行支援 IT」などで検索
- 4つのタイプを意識しながら、3〜5か所をピックアップ
- 各事業所のWebサイトで、プログラム内容・在宅対応・実績を確認
STEP3:見学予約を入れる(今週中)
- 候補事業所に電話またはWebフォームで見学予約
- 「見学だけでも可能か」「体験利用もできるか」を確認
- 見学日程は、1週間に1〜2か所のペースで無理なく
STEP4:見学・体験に行く(1〜2週間)
- この記事のチェックリストを印刷またはスマホで見ながら確認
- 気になることは遠慮せず質問する
- 見学直後に振り返りメモを作成
STEP5:比較して決定する(見学後1週間以内)
- 複数の事業所を比較表で整理
- 家族や支援者に相談
- 体験利用で最終確認してから決定
STEP6:受給者証の申請(事業所決定後)
- お住まいの市区町村の障害福祉課で受給者証を申請
- 申請から発行までの期間は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉担当課にも確認しておくと安心です
- 受給者証の申請中でも、体験利用は可能な場合があります(事業所に確認を)
あなたに合った事業所は必ず見つかります
事業所選びは、時間をかけて丁寧に比較することが大切です。焦らず、自分のペースで、納得できる事業所を選びましょう。この記事が、あなたの事業所選びの一助になれば幸いです。
出典・一次情報
監修者情報
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

