この記事は、サービス管理責任者の市原 早映が監修しています。
- 就労移行支援を制度ごと「やめとけ」と言うのは言い過ぎです。2024年の国の調査では、就労移行支援の利用を終えた人のうち60.2%が一般企業などに就職しています
- ただし、事業所による差は大きいです。国が報酬を決めるときの区分で見ると、就職して6か月続いた人が1人もいない事業所が6.4%、続いた人の割合が5割以上(定員に対する割合)の事業所が31.0%あります(2025年12月)
- 「やめとけ」が当てはまるのは、事業所を比べずに入る場合と、「給料が出ない」「原則2年まで」といった仕組みが自分の暮らしに合わない場合です
- 見学では「前の年度と、その前の年度に何人が就職して、何人が6か月続いたか」を人数で聞いてから決めるのがおすすめです
就労移行支援を調べていたら「やめとけ」「ひどい」という言葉ばかり出てきて、不安になった方も多いと思います。この記事では、そう言われる理由を「どの事業所でも変わらない制度の仕組み」と「事業所によって当たり外れがあるもの」に分けて、厚生労働省や自治体の資料で本当かどうかを確かめました。なお、当サイト(ERABERU)は就労移行支援の事業所を探せるサイトですが、この記事では特定の事業所をすすめることはしません。
就労移行支援は「やめとけ」なのか:問題は制度より「事業所」と「使い方」
制度そのものを「やめとけ」と言い切れるデータは見当たりません。利用を終えた人の6割は就職しています。「やめとけ」と言われる原因の多くは、事業所ごとの差と、仕組みが合わない人が入ってしまうことにあります。
厚生労働省の資料によると、2024年の調査で、就労移行支援の利用を終えた人のうち一般企業などに就職した人は60.2%でした。2021年の調査では56.3%、2023年は58.8%で、少しずつ上がっています。参考までに、同じ調査で就労継続支援A型は29.2%、B型は11.8%です。ただしA型・B型は就職より「働く場」としての役割が大きいので、この数字で就労移行支援との優劣はつけられません。
この60.2%は「利用を終えた人」の中での割合です。通い始めた人の6割が就職する、という意味ではありません。この数字をどう読めばいいかは、あとの「データで見る当たり外れ」で詳しく説明します。
「やめとけ」の記事を書いているのは誰か
2026年11月に「就労移行支援 やめとけ」で検索して、上位10件を調べました。そのうち7件は、事業所を運営する会社のブログか、事業所や転職サービスを紹介するサイトの記事でした。記事の終わりで、自社の見学や紹介先への申し込みをすすめるものが目立ちます。
それ自体が悪いわけではありません。ただ、読む側としては「この記事を書いた人は、どこに案内したいのか」を頭の片すみに置いて読むのがおすすめです。当サイトも事業所を載せている立場です。だからこの記事の数字には、1つずつ出どころを添えています。
「やめとけ」の声は2種類に分かれる
ネットにある「やめとけ」の理由を集めてみると、2種類が混ざっています。
1つは、どの事業所に行っても変わらない制度の仕組みです。給料が出ない、使える期間に限りがある、といったものです。もう1つは、事業所によって当たり外れがあるものです。支援員の対応がひどい、訓練が合わない、入る前と話が違う、といったものです。
制度の仕組みは、自分の暮らしに合うかどうかで判断するしかありません。事業所の当たり外れは、入る前に比べることで減らせます。どの理由がどちらに当たるかは、次の表にまとめました。
「やめとけ」と言われる理由を仕分け:制度のせいか、事業所のせいか
よく言われる理由を9つ並べ、本当かどうかと、原因が制度にあるのか事業所にあるのかを整理しました(9つは、検索で上位に出た記事から当サイトが集めてまとめたものです)。
| よく言われる理由 | 本当か | 原因 | 入る前にできること |
|---|---|---|---|
| 給料が出ない | 本当 | 制度 | 通っている間の生活費を先に考える |
| アルバイトができない | 市区町村による | 制度+市区町村 | 市区町村の窓口に聞く |
| 2年しか使えない | 原則2年(延長は最大1年) | 制度 | 期間の見込みを立てておく |
| お金がかかる | 世帯の所得による(0円の人も多い) | 制度 | 自分の上限額を確かめる |
| 長く通わせて稼ぐ「からくり」がある | 1日ごとの報酬は本当。ただし成果でも報酬が変わる | 制度+事業所 | 就職と定着の人数を聞く |
| 就職できない | 事業所による差が大きい | 事業所 | 就職と定着の人数を聞く |
| 支援員の質が低い・訓練が合わない | 事業所による | 事業所 | 見学と体験で確かめる |
| 入る前と話が違う | 事業所による | 事業所 | 個別支援計画の中身を確かめる |
| 辞めにくい・ほかに移りにくい | 事業所による | 事業所 | 替えるときの手続きを聞く |
ここからは、表の上から4つ(給料・アルバイト・期間・お金)を先に説明します。
給料が出ない:就労移行支援は「訓練」のサービス
就労移行支援は、法律上「訓練等給付」というサービスに入っています。会社と雇用契約を結んで働く場所とは違い、就職に向けた訓練を受ける場所です。そのため、通うこと自体に対して給料(賃金)は出ません。
利用者が生産活動(商品づくりや請け負った作業など)をした場合は、その収入から経費を引いた分を「工賃」として払う決まりがあります。ただし、就労継続支援B型にある「事業所全体の工賃の平均を1か月3,000円以上にする」という決まりは、就労移行支援にはありません。生産活動をしていない事業所もあるので、工賃をあてにするのは難しいです。
通っている間の生活費をどうするかは、就労移行支援の工賃・給料で、障害年金や失業保険などの使い方とあわせて説明しています。
アルバイトができない:決めるのは住んでいる市区町村
「就労移行支援はアルバイト禁止」とよく言われます。ただ、厚生労働省の法令や通知を調べた範囲では、「アルバイトを禁止する」と書いた文書は見つかりませんでした。
だからといって、自由にアルバイトできるわけでもありません。国の通知が示しているのは、働いている人が就労移行支援を使える場面です。場面は3つです。会社で労働時間を延ばしたいとき。休職から復職するとき。就労移行支援を使って就職したあと、週10時間未満を目安に働きながら訓練を続けるとき。それぞれに条件があります。市区町村は、こうした国の考え方をもとに、一人ひとりの状況を見て決めます。
実際の扱いは市区町村によって違います。たとえば札幌市は、2024年7月の手引きで、利用者がアルバイトをすることを認めていないと書いています。神戸市は、2024年10月のガイドラインで、働いている間の利用は「原則として想定されない」としつつ、条件を満たせば認める場合があるとしています。アルバイトを続けたい方は、申し込む前に市区町村の障害福祉の窓口で確かめておいてください。
2年しか使えない:延長は最大1年、2回目の利用も相談できる
就労移行支援を使える期間は、原則2年(標準利用期間)と決まっています。2年を過ぎても必要だと市区町村の審査会が認めた場合に限り、最大1年まで延ばせます。
東京都の調査(2021年度の実績)では、都内の就労移行支援を使って就職した人のうち、1年以上通っていた人が62.5%でした。延長した人を含め、2年以上通っていた人も16.3%います。半年ほどで決まる人もいますが、1年以上かけて就職する人のほうが多いです。2年は余るほど長い期間ではないので、期間の見込みを立てて使うことが大切です。
一度使い終わった人が、もう一度使うこともあります。厚生労働省の2025年3月31日付の通知にも、就労移行支援は複数回使えると書かれています。ただし、一定の期間をあければ必ず使える、という仕組みではありません。使えるかどうかは、市区町村が一人ひとりの状況を見て決めます。期間の詳しいルールは利用期間と更新、2回目の利用は就労移行支援は一生に一度?にまとめています。
お金がかかる:世帯の所得で上限が決まり、0円の人も多い
利用料は、かかったサービス費用の1割か、世帯の所得で決まる1か月の上限額の、どちらか低いほうです。上限額は次の4つに分かれます。
| 世帯の区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 生活保護を受けている世帯 | 0円 |
| 市町村民税が非課税の世帯 | 0円 |
| 市町村民税が課税の世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| それ以外 | 37,200円 |
※グループホームを利用している人などは、所得割16万円未満でも上限は37,200円です。
18歳以上の人の場合、ここでいう世帯は原則として本人と配偶者です。親と暮らしていても、親の収入は入りません。少し古い数字ですが、厚生労働省の資料では、2016年12月の実績で、障害福祉サービス全体の利用者の93.3%が無料で使っていました(就労移行支援だけの割合ではありません)。働いていない一人暮らしの方などで、本人(と配偶者)の住民税が非課税なら、上限は0円です。
利用料とは別に、交通費や昼食代がかかる場合があります。事業所によって補助があるかどうかも違います。料金のしくみは就労移行支援の料金で詳しく説明しています。
「からくり」は本当?事業所にお金が入るしくみ
事業所の収入は、利用者1人が1日通うごとに国や市区町村から支払われる「報酬」です。就職して利用を終える場合、その人の分の報酬は原則として就職した日の前日までしか出ません。ここだけを見ると「長く通わせたほうが得」に見えるので、「からくり」と言われます。
ただ、話には続きがあります。報酬の1日あたりの基本の単価は、「就職して6か月続いた人」が多い事業所ほど高くなる仕組みになっています。
就職して6か月続いた人の割合で、基本の単価が約2.5倍変わる
基本の単価は7段階に分かれていて、どの段階になるかは「就職して6か月続いた人」の割合で決まります。この割合は、前の年度とその前の年度の2年間で6か月続いた人の数を、2年分の定員の合計で割って出します。2024年度の改定後の単価(定員20人以下の場合)は次のとおりで、2026年11月の時点でもこの単価が使われています。
| 就職して6か月続いた人の割合 | 1日あたりの基本の単価(単位) |
|---|---|
| 5割以上 | 1,210 |
| 4割以上5割未満 | 1,020 |
| 3割以上4割未満 | 879 |
| 2割以上3割未満 | 719 |
| 1割以上2割未満 | 569 |
| 0割超1割未満 | 519 |
| 0(続いた人がいない) | 479 |
続いた人がいない事業所の基本の単価は479単位で、5割以上の事業所の1,210単位と比べると約4割です。裏返せば約2.5倍の差です。加算などがあるので収入全体がそのまま4割になるわけではありませんが、就職して続く人を出せるかどうかで、事業所に入るお金は大きく変わります。
「5割以上」は、たとえば2年とも定員20人の事業所なら、その2年間で6か月続いた人が合計20人以上いる状態です。成果で単価が変わる仕組みは2018年度に始まり、2021年度からは、前の年度とその前の年度の2年分で数えるようになりました。
長く通い続ける人が多いと、報酬が減らされる決まりもある
1年を超えて通っている人の、通った期間の平均が2年6か月より長い事業所は、基本の単価が5%減らされます。2年6か月は、標準の2年に6か月を足した長さです。標準の2年を大きく超えて通う人が多い事業所には、国が歯止めをかけているということです。
さらに、事業所には利用者が就職したあと6か月以上、職場での相談などの支援を続ける義務もあります。就職させたら終わり、にはならないように作られています。
それでも「からくり」の心配が当たるのは、定員を埋めることばかり考えていて、就職した人も、就職して6か月続いた人も出ていない事業所です。見分ける手がかりは、このあとの「見学で聞く5つの質問」で紹介します。
データで見る当たり外れ:定着0の事業所は6.4%、5割以上は31%
就職して6か月続いた人の割合(定員に対する割合)が0の事業所は、2025年12月の時点で全体の6.4%(178か所)でした。一方、5割以上の事業所は31.0%(868か所)です。事業所ごとの差はたしかに大きいものの、「ほとんどの事業所がダメ」という状態ではありません。
ここでいう「5割」は、就職した人の半分が続いたという意味ではありません。報酬を決めるときに使う、定員に対する割合です(2年間で6か月続いた人の数を、2年分の定員の合計で割った数字)。報酬の区分ごとの事業所の割合は、次のとおりです。
| 就職して6か月続いた人の割合(報酬の区分) | 2018年4月 | 2020年4月 | 2024年4月 | 2025年12月 |
|---|---|---|---|---|
| 5割以上 | 15.3% | 23.2% | 26.3% | 31.0% |
| 4割以上5割未満 | 4.8% | 6.6% | 11.3% | 11.5% |
| 3割以上4割未満 | 30.7% | 32.4% | 27.9% | 28.4% |
| 2割以上3割未満 | 8.4% | 7.2% | 9.7% | 9.9% |
| 1割以上2割未満 | 17.4% | 13.4% | 9.7% | 7.8% |
| 0割超1割未満 | 3.1% | 1.7% | 6.1% | 5.1% |
| 0 | 20.4% | 15.5% | 9.1% | 6.4% |
| 事業所数 | 3,376 | 3,019 | 2,868 | 2,800 |
出典: 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第15回(2020年9月)・第55回(2026年4月)資料。国保連のデータ(あん摩マッサージ指圧師などを養成する事業所を除く)。2021年度から、数える期間が前の年度の1年分から、前の2年度分に変わっています。
0の事業所は2018年4月の20.4%から6.4%まで減り、5割以上の事業所は15.3%から31.0%に増えました。途中で数え方が少し変わっているので、まったく同じ物差しでの比較ではありませんが、大きな流れはつかめます。
事業所の数ではなく利用者の数で見ると、「0」の事業所に通っている人の割合は、6.4%よりさらに小さくなります。2025年12月には、利用者の47.9%が「5割以上」の事業所に通っていて、「0」の事業所に通っている人は1.2%でした。
「就職率0%の事業所が3割」は10年前の数字
ネットの記事では「就職率0%の事業所が約3割」という数字をよく見かけます。厚生労働省の資料をさかのぼると、この数字の元は2016年4月の資料で、そこでは29.7%でした。しかも「4月1日に通っていた人のうち、その年度に就職した人の割合」という、いまとは違う数え方の数字です。
最近の資料で、同じ数え方の「0%の事業所の割合」は見つかりませんでした。いま確認できるのは、上の表の「就職して6か月続いた人が0の事業所」という別の物差しで、こちらは6.4%です。別の物差しなので、3割から6.4%に減ったという意味ではありませんが、10年前の3割をいまの数字として読まないように気をつけてください。
「5割以上の事業所は26%」も別の数字が混ざっている
「就職率が5割以上の事業所は約26%しかない」という数字もよく出てきます。これは厚生労働省の社会保障審議会の資料にある2024年度の数字で、利用を終えた人の5割以上が就職した事業所が全体の26.4%あった、というものです。上の表の2024年4月の26.3%(就職して6か月続いた人の割合が5割以上)とは、数字は近くても別のものです。
国は障害福祉計画で、利用を終えた人の半分以上が就職する事業所を、全体の半分以上に増やす目標を立てています。2024年度の26.4%は、この目標にまだ届いていません。
人で数えると6割が就職しているのに、事業所で数えると5割以上の事業所は26.4%しかないのは、数える単位が違うからです。就職した人が多い事業所と少ない事業所の差が大きいと、こうしたずれが出ます。「6割」と「26.4%」はどちらも正しく、事業所を選ぶときに大事なのは後者のほう、と考えてください。
「6割が就職」の読み方:利用を終えた人の中での割合
記事のはじめに出した「6割が就職(60.2%)」は、1年間に利用を終えた人のうち、就職して終えた人の割合です。途中で体調を崩してやめた人や、ほかのサービスに移った人も「利用を終えた人」に入っています。
東京都の調査(2021年度の実績)では、利用を終えた3,653人のうち、就職した人は61.8%でした。残りの人の中には、就労継続支援B型に移った人(6.3%)や、利用をやめたあと家で過ごしている人(11.4%)もいます。就職せずに利用を終える人も一定数いる、ということは知っておいてください。
事業所は入れ替わりがあり、運営する会社もさまざま
就労移行支援の事業所数は、上の表のとおり2018年4月の3,376か所から減り続けていて、2025年12月は2,800か所です。一方で利用者は増えているので、残った事業所に利用者が集まっていると考えられます。
当サイトでWAM(福祉医療機構)の公表データを数えると、2026年3月から9月の半年で、約200か所が一覧から外れ、約160か所が新しく加わっていました(いったん休んでいる事業所や、事業所番号が変わっただけのところも含むので、すべてが閉所とは限りません)。2026年9月のデータでは、事業所の半分以上は株式会社などの会社が運営していて、1つの法人が1か所だけ運営している事業所も約半数ありました。
大手のチェーンでも支援員は拠点ごとに違いますし、小さな事業所でも実績を出しているところはあります。運営する法人の大きさではなく、その事業所の数字で比べてください。
「やめとけ」が当てはまる人:就労移行支援が合わない4つのケース
制度の仕組みが暮らしに合わない人は、良い事業所に入っても「意味ない」と感じやすいです。次の4つに当てはまる場合は、ほかの方法も一緒に考えてみてください。
- 通っている間の収入がすぐに必要な人:給料は出ず、アルバイトも市区町村によっては認められません
- 体調が安定せず、決まった日に通うのが難しい人:まずは医療機関と相談しながら、生活のリズムを整えることが先になる場合があります
- すでに自分で就職活動ができる人:応募書類が書けて、面接も受けられるなら、ハローワークの障害者窓口や転職サービスのほうが早く決まることがあります
- 一般企業で働くことを目指していない人:就労移行支援は一般企業への就職のためのサービスです。働き方によっては、A型やB型が合うことがあります
この中で一番大きいのは、1つ目のお金の問題です。先ほどの東京都の調査のとおり、1年以上通う人のほうが多いです。通う期間の見込みと、その間に使えるお金(障害年金・失業保険・貯金など)を、申し込む前に書き出しておくと安心です。
2つ目に当てはまる方も、すぐにあきらめる必要はありません。条件はありますが、自宅で訓練を受けられる場合もあるので、市区町村や事業所に相談してみてください。くわしくは在宅訓練の始め方にまとめています。
合わない場合のほかの選択肢
就労移行支援以外にも、働くための支援はいくつかあります。
- ハローワークの障害者窓口:障害者向けの求人の紹介と、就職活動の相談ができます
- 就労継続支援A型・B型:A型は雇用契約を結んで給料をもらいます。雇用なので、勤務日や時間の決まりがあります。B型は雇用契約を結ばず、自分のペースで作業をして工賃をもらいます。違いはA型とB型の違いへ
- 就労選択支援:2025年10月に始まった、自分に合う働き方を原則1か月かけて確かめるサービスです。くわしくは就労選択支援とはへ
どれが合うか分からないときは、市区町村の障害福祉の窓口か、相談支援専門員に相談するのが近道です。
「やめとけ」な事業所を見抜く:見学で聞く5つの質問
事業所の当たり外れは、見学のときに実績を人数で聞くと比べやすくなります。特に1つ目の質問で聞く人数は、国が報酬を決めるときにも使う数字です。これにすぐ答えられる事業所は、自分たちの実績をつかんでいると考えてよいと思います。

- 前の年度と、その前の年度に何人が就職したか。そのうち何人が6か月続いたか:「就職率○%」ではなく人数で聞き、定員と比べます。たとえば定員20人なら、2年間で合計20人以上が目安です。これが、国の報酬の区分で一番上(5割以上)にあたる人数です
- 開所して何年か、支援員は何人で、入れ替わりは多いか:開所したばかりの事業所は、まだ就職した人や6か月続いた人の人数がありません(国の報酬でも、実績が出るまでは決まった単価で扱われます)。その場合は、同じ法人のほかの事業所の人数を聞いてみましょう
- 個別支援計画は誰と、どうやって作り、何か月ごとに見直すか:計画は、案を本人に説明して書面で同意をもらってから決め、3か月に1回以上見直すことになっています。ここをあいまいにする事業所は注意が必要です
- 自分が目指す仕事に近い訓練があるか、自習の時間はどのくらいか:パソコンの訓練でも、講師がつくのか、教材を渡されて自習するのかで中身は大きく違います。体験利用で実際に確かめるのが確実です
- 合わなかったときに、事業所を替えたり辞めたりする手続きはどうなるか:利用は事業所との契約なので、ほかの事業所に替えることはできます。そのときの流れを先に聞いておきましょう
1つ目の人数が事業所のホームページに載っていない場合は、見学で直接聞いてみてください。自分と似た状況の人の実績まで聞けると、さらに役に立ちます。たとえば「事務職で就職した人は何人か」「自分と同じ障害の人で、6か月続いた人はいるか」です。
「入る前と話が違う」というトラブルは、3つ目の個別支援計画の中身を書面で確かめておくと防ぎやすくなります。見学と体験の進め方は見学・体験の流れ、事業所の比べ方は就労移行支援の選び方で詳しく説明しています。
いま通っていて「意味ない」と感じたら
すでに通っていて「意味ない」と感じている場合も、すぐに辞める前にできることがあります。できることは、計画の見直しを頼む、事業所を替える、外の窓口に相談する、の3つです。最後に、辞めたあとにまた使える場合があることも書いておきます。
サービス管理責任者に、計画の見直しを頼む
事業所には、個別支援計画を担当する「サービス管理責任者」を置くことが義務付けられています。訓練が簡単すぎる、目指す仕事と合っていない、と感じたら、この人に計画の見直しを頼んでみてください。計画は3か月に1回以上見直す決まりですが、その時期を待たずに相談してかまいません。
事業所を替える
見直しても合わない場合は、ほかの事業所に替えられます。今の事業所との契約を終えて、別の事業所と契約し直す形です。受け入れ先に空きがあるかも確かめておきましょう。
気をつけたいのは、事業所を替えただけで、使える期間が新しく2年になるわけではないことです。替えるなら、残りの期間がどのくらいあるかを市区町村に確かめておきましょう。
事業所の苦情窓口と、都道府県の運営適正化委員会
支援員の対応がひどいなど、サービス管理責任者に話しても解決しないときは、まず事業所の苦情窓口に伝えられます(苦情を受け付ける窓口を置くなどの対応は、事業所の義務です)。それでも解決しなければ、各都道府県の社会福祉協議会に「運営適正化委員会」という、福祉サービスの苦情を受け付ける窓口があります。
市区町村の障害福祉の窓口や、相談支援専門員に相談することもできます。一人で抱えずに、事業所の外の人を一度通すと、話が進みやすくなります。
一度辞めても、また使える場合がある
体調などで一度辞めても、2回目の利用が認められる場合があります(「2年しか使えない」の項を参照)。辞める前に「また使いたくなったらどうなるか」を窓口に聞いておいてください。
よくある質問
まとめ:「やめとけ」を信じる前に、人数を1つ聞いてみる
- 2024年の国の調査で、就労移行支援の利用を終えた人のうち就職した人は60.2%。制度ごと「やめとけ」と言うほど悪い数字ではありません
- 一方で、就職して6か月続いた人が1人もいない事業所も6.4%あります。事業所による差は大きいです
- 給料が出ない、期間が原則2年といった制度の仕組みは、どこの事業所でも変わりません。暮らしに合うかどうかは、入る前に考えておく必要があります
ネットの評判は、良いものも悪いものも、誰が何のために書いたかで中身が変わります。迷ったときは評判より、その事業所で就職して続いた人の人数を聞いてみるほうが確かです。
まずは気になる事業所を2〜3か所選んで、「前の年度と、その前の年度に何人が就職して、何人が6か月続きましたか」と聞いてみてください。答え方を比べるだけでも、どこが合いそうかが見えてくると思います。
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出典・一次情報
厚生労働省 障害者就労に係る雇用福祉横断検討会 第1回(2026年6月1日)資料2「障害者雇用・福祉施策の現状等について」(一般就労への移行率) 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第55回(2026年4月28日)参考資料1(就職後6月以上定着率の区分別の事業所数・利用者数、事業所数の推移、基本報酬) 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第15回(2020年9月24日)資料1、第9回(2017年9月13日)資料2 厚生労働省 社会保障審議会障害者部会 第152回(2025年11月10日)資料1-2(成果目標の実績) 障害福祉サービス費等の報酬算定構造(2024年度)、費用の額の算定に関する基準の留意事項通知(2026年度版) 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(2025年3月31日) 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」(2026年7月版) 障害者総合支援法、同施行令・施行規則、指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準、社会福祉法 厚生労働省「障害者の利用者負担」、障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第1回(2017年5月31日)参考資料 東京都福祉局「令和4年度 就労移行等実態調査 結果概要」(2021年度実績) 札幌市「就労系サービスに関する手引き(Q&A集)」(2024年7月)、神戸市「障害福祉サービス支給に関するガイドライン(通所系サービス)」(2024年10月) 独立行政法人福祉医療機構 WAM NET 障害福祉サービス等情報公表システム オープンデータ(2026年3月版・9月版、当サイト集計)
この記事の監修者
市原 早映(いちはら さえ)
2017年より就労移行支援・定着支援の現場で支援に従事。就労移行の立ち上げにも携わり、現在は定着支援に従事しながら就労移行支援もサポートしています。

